チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

あれは駐機場か。

季節はすっかり秋めいて、日中でもヒンヤリとした風が心地良いワケで、夏よさらば。

昨日、諸用で出かけたのだが、外をトンボが飛び交っていた。一匹、二匹が悠々と宙を舞う様は風情があって、秋を感じさせるに十分だろう。しかし、昨日遭遇したのはそれどころではなく、普通に歩いているだけで、ぶつかってしまいそうなくらいの数だった。ふと気になって上を見やると、曇り空の下、夥しい数のトンボの群れが所狭しと飛び交っているではないか。辺り一帯、見渡す限りそんな状況だったから驚き慄いててしまった。僕は虫の生態に通じているワケでもなく、またこれまでトンボにさして気をかけた事もなかったので、この状況が例年と比較してどうなのかは分からないし、それ以前に、あのトンボの種類の判別すら付かないが、とにかく初めて見る光景に目を見張った。

更に仰天したのが電線に目をやった時で、突起みたく何か付着している様に見えたのだが、まじまじと観察したらそれら全てがトンボだった!はぅあっ!どの電線にも一様にトンボが止まっていて、どれも等間隔に、そして同じ方向を向いて並んでいるではないか。大量のトンボが整然と列を成して羽根を休めているその様子は、彼らには申し訳ないが、美しさよりグロテスクさの方が勝っていた様に思う。飛び交う奴らを尻目に、椅子取りゲームよろしく居場所を確保した奴ら。そんな彼らを見た僕の口を突いて出てきた言葉が「駐機場か・・・」だった。自分の発想力とボキャブラリーの貧困さを露呈してしまったが、本当に何かの力が働き、ディスプレイされている感じであった。

ネットで調べるとトンボにはそんな習性があるらしいが、僕が昨日見たまさにあの光景に匹敵する情報は見当たらず、詳しいことはよく分からない。こんな時、スマホがあったらビジュアル化した情報として残しておけるのに口惜しい。ま、無いものねだりをしても仕方ないのだが、日常を切り取っておきたい願望というのは日増しに募るばかりで、いい加減にそろそろ機種変して幸せになりたい。結局、また物欲のハナシで締めくくる事になってしまった。

 

映画鑑賞記

マシュー・ヴォーン監督作「レイヤー・ケーキ」("Layer Cake" : 2004)

麻薬ディーラーの男が、引退前に遭遇する災難の数々を描くクライム・スリラー作品。

その男(役名なし:ダニエル・クレイグ)はロンドンでコカインの密売を手がける麻薬ディーラー。マフィアのボス、ジミーの元で、忠実に働く彼に対する信頼は厚い様に思われた。その男は既に十分な蓄えを築き、また表稼業の不動産ビジネスの方も順調だった為、麻薬ビジネスの方から足を洗う機会を覗っていた。そんな折、彼はジミーに呼び出され、知人のマフィアの娘の捜索を命じられる。本業ではない人探しに戸惑いを隠せない彼は、更にジミーの手下が入手した、百万錠もの大量の合成麻薬を売り捌くようにも命じられ、途端に引退の計画に影が差し始める。なぜならその合成麻薬は、戦争犯罪人としてその名が轟く、セルビア系の凶悪な犯罪組織から奪取した物だったからである。強奪を主導した人物だと誤解され、セルビアの組織にその首を狙われる事になった男の運命やいかに。

レイヤー・ケーキ=断層社会がテーマというだけあって、複数の組織とその手下の関係が重層的に描かれ、またそれぞれの登場人物の個性が際立っているところに妙味がありますな。ストーリーの方も重層的に入り組んだ構成になっており、裏切りや化かし合いの連続で、先読みできない展開が楽しい。名も無き男はディーラーとしてはデキる人物なのだけど、少し場当たり的な部分が目立ち、不用心というか間が抜けているというか。ダニエル・クレイグにはどうしてもジェームズ・ボンドの完璧なイメージを重ねてしまうからねぇ。本作は「カジノ・ロワイヤル」以前の作品だけど。最後の最後には意外と策士であった事も分かって、しかしながらオチではまた足を掬われる感じで、哀れな名も無き男よ。

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