チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

コズモポリス

デヴィッド・クローネンバーグ監督作「コズモポリス」("Cosmopolis" : 2012)[DVD]

投機を見誤り、今まさに資産の大半を失おうとしている大富豪が、倒錯の果てに、自分の命を狙う何者かと対峙する様を描くサイコ・スリラー作品。

サイバーキャピタルが格差を固定化し、世界がディストピアの様相を呈する時代。庶民の金持ちに対する憎悪は、デモとして顕在化し、一部では暴徒化した者達によるテロも発生していた。総資産数百億ドルを通貨取引で運用する大富豪エリック(ロバート・パティンソン)は、特別仕様に改造したリムジンをオフィス代わりにする変わり者だった。エリックは散髪の為に、マンハッタンを抜け、旧知の床屋を目指すのだが、折り悪く、その日は大統領の車列が通行する為に厳戒態勢が敷かれており、更に有名なラップミュージシャンの葬列も重なり、市内の道路は大渋滞で、エリックを乗せたリムジンは遅々として進まなかった。

エリックの専属ボディーガード主任のトーヴァル(ケヴィン・デュランド)は、エリックもまた何者かに命を狙われているという情報筋からの連絡を伝え、エリックに外出を控えるように促す。しかし、エリックは床屋に行くといって聞かなかった。エリックには新婚早々の妻エリーズ(サラ・ガドン)がおり、彼女もまた大富豪で資産家の娘だった。しかし、超エリート同士のカップルでありながら、その関係はどこか冷めていた。エリックは密かに他の女とセックスに興じており、エリーズはそのことを察知していた。

エリックのリムジンには、彼のブレーン達が入れ替わり立ち代り乗り合わせ、エリックと現下の運用状況から将来の見通しまでを議論した。エリックは巨額の資産を通過の元に投資していたのだが、その値動きがエリックの予想を大きく外れ、このままでは数百億の保有資産が消失してしまうのは時間の問題だった。ところが、不思議とエリックには焦りの色が垣間見えなかった。一方で、エリックは非常に神経質な性格で、リムジンに毎日専属医を呼びつけ、健康診断を受けていた。その日はいつもと違う医者が代わりに訪れたが、彼の診断によりエリックの前立腺は非対称である事が判明する。

資産を失う為なのか、前立腺の問題が発覚した為なのか、エリックは徐々に倒錯していく。エリックは再びエリーズと会い、資産を失う事を告げると、エリーズは自らの資産で彼を救う事を約束するが、同時に2人の関係の終焉を言い渡す。その後、エリックはトーヴァルを欺き、射殺するという奇行に及び、夜遅くにようやく床屋に到着する。散髪もそこそこに床屋を飛び出したエリックは、その足で自分の命を狙うという男の部屋に向かう。その男はベノ(ポール・ジアマッティ)と言い、かつてエリックの会社でバーツの運用を担当していた人物だった。エリックはベノとの対話を通じ、元の運用に失敗した真因を知る事になる。全てに諦観したエリックに、ベノは銃口を向ける。

大半がサイバー感漂うハイエンドなリムジンの車内で展開し、世界観や人物背景の細かい部分はほとんど描写されないので、なかなか取っ付きにくい作品ではある。観終わったところで、結局何がどうなっているのかよく分からず困惑した。本作を漂うディストピアな印象は、過度なキャピタリズムの行く末を暗示している様で、単にエリックという男個人の抱える問題とも見受けられる。ブレーンとの会話の内容から、エリックには将来を見透せる能力があるらしく、そのおかげで巨万の富を得たと推察できるが、その割には元の投機に失敗しているイミフぶり。床屋に固執するのも良く分からなければ、自分を狙う男の部屋に単身乗り込む動機も分からない。ただ、雰囲気だけは面白く、決して嫌いではない。

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