チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

ラブストーリーズ エリナーの愛情

ネッド・ベンソン監督作「ラブストーリーズ エリナーの愛情」("The Disappearance of Eleanor Rigby: Her" : 2013)[DVD]

陰鬱な出来事が夫婦関係に影を落とし、行き詰まりを感じた妻が夫の元から離れ、人生の再生を図る様を描く恋愛ドラマ作品。

ニューヨークで暮らす、出会いから7年目の夫婦コナーとエリナー。授かった子供を生後間もなく喪ってしまった事が、二人の関係に暗い影を落とす。ある日、エリナーは思いつめた後に、橋から川へ身を投げる。エリナーはすぐに救助されるも、右手を骨折して入院する。程なく、退院したエリナーは、妹ケイティの迎えで実家に身を寄せる。父ジュリアンと妻メアリーはエリナーを気遣い、大学への復学を提案する。

後日、回復したエリナーは、髪を短く切って印象を変えると、大学教授ジュリアンのニューヨーク大学でのかつての同僚リリアンを通じて、大学の美術史の聴講生となる。

ある日、聴講中のエリナーに、後を追ってやってきたコナーが接触を図ると、エリナーは憤慨して退出する。コナーは失踪した理由と居場所をエリナーに問い質すが、エリナーは返答を拒否する。コナーは関係を改善する様な言葉を掛けたかったと伝え、消える前に話し合うチャンスが欲しいと請い、二人は別れる。

程なく、ジュリアンはエリナーの状態を慮り、心理学部の部長を招き、エリナーに面談を受けさせようとする。エリナーは病人扱いされる事に憤慨するが、ジュリアンは孫を喪った悲しみは自分も同じだと理解を求める。

ある日、エリナーはリリアンと会食し、リリアンオレゴン大専任教授の元夫についていかなかった事を知る。リリアンは既に大人になった息子が一人おり、子育てがいかに辛かったかを明かすと、子供の将来を思い描いたり、理想の親を目指しても無駄だと説き、大人になると過去の些末な事で息子が親を非難する様になると嘆く。エリナーはこれまで普通の人生を歩んでいたと告げ、息子がいると偽ると、自分もまた夫についていけなかったと明かす。

8歳の息子フィリップを育てるシングルマザーのケイティは、演劇を止めた後、図書館で司書のバイトをしながら、法科大学院を目指す。ある日、ケイティは男に誘われ、デートに行く事をエリナーに報告する。エリナーは女としての自信を失っているケイティを励まし、送り出す。ケイティの不在中、フィリップの面倒を見ることにしたエリナーは、二人で蛍を取りに出かける。エリナーはそこで、かつて飛び交う蛍に囲まれながら、コナーと共に愛を囁きあった時の事を回想する。

その後、帰宅したケイティはデートに満足した事を伝える。エリナーはコナーが急に恋しくなると打ち明ける。ケイティはメアリーに口止めされていたが、コナーが家に訪ねてきた事を伝える。エリナーは自分が原因で家族に心配をかけ、雰囲気を重くしている事を詫びる。ケイティはコナーとの間に何があったのか尋ねる。エリナーは、ある時コナーが、亡き息子の遺品をぞんざいに扱った事に心の距離を感じ、消えてしまいたいと思った事を明かす。

後日、エリナーはジュリアンに夫婦円満の秘訣を尋ねる。ジュリアンはそれが忍耐だとし、別れを切り出さない事が秘訣だと応える。その後、エリナーは密かにコナーの経営する店の前まで様子を覗いに行く。

ある日、リリアンは息子がワシントンで小説の真似事をしていると明かして嘆く。エリナーはかつてニューヨーク大で人類学の学位取得を、妊娠をきっかけに諦めた事を明かす。

その夜、エリナーはふと思い立ち、蛍を入れた瓶を携え、車に乗って川べりへ向かう。エリナーはかつてコナーと愛しあった場所を訪ね、回想に耽り、蛍を野に帰す。

翌朝、エリナーが帰宅すると、心配したメアリーが叱る。メアリーは家族全員がそれぞれ重大な局面に立っている事を明かし、それが今は言えない夫婦の秘密だと告げる。メアリーはエリナーを産んだ時がまだ子供で、母親になりたくはなかったと打ち明ける。嘘を付きたくないから話したというメアリーの真意を、エリナーは図りかねる。エリナーがコナーが来た事について尋ねると、メアリーはエリナーにニューヨークを離れて、かつてエリナーが過ごしたメアリーの故郷フランスに戻り、復学する様に促す。

その後、エリナーはコナーの店を訪ねる、コナーは店を畳む意向を明かすと、エリナーと会って自分が何者か分かったはずなのに、また分からなくなったと告げる。エリナーはコナーを連れ出し、二人でドライブに出かけるが、途中で大雨に降られて立ち往生する。コナーは二人で人生を歩んでいけると思ったと告げると、来週アパートを引き払う意向を伝える。二人は口づけを交わして抱き合うが、コナーは制止する。エリナーが他の女と寝たのかと尋ねると、コナーはそれを認める。コナーはそれがエリナーが提案した事であり、出て行ったのがエリナーの方だと告げると、自分に怒りをぶつけ、罵る様に促す。エリナーはそれがどうでもいい事で、最低なのは自分だと応じる。二人はそのまま街に戻り、別れる。

後日、エリナーはケイティと彼氏を連れ、夜の街に繰り出す。エリナーは酔った勢いで、クラブで出会った男の家まで行くが、関係を持つ直前に我に返り、その場を後にする。

その後、エリナーはリリアンの元を訪ね、ニューヨークを離れる意向を明かす。リリアンは、かつてニューヨーク大の人類学教授がパリ・アメリカ大におり、紹介すると勧める。

夜、アパートに電話をかけ、コナーがいる事を知ったエリナーは、アパートに赴く。エリナーの来訪に眠っていたコナーは目を覚ます。自分がそんなに変わったかと尋ねるエリナーに、コナーは変わっていないと応える。エリナーは突然の失踪を詫びると、過去の素敵なところへは戻れないと告げ、息子の顔を忘れてしまったと嘆く。コナーは息子の特徴を挙げ、エリナーによく似た世界で一番美しい子だったと伝える。二人は共に苦しみを抱えている事を知り、愛しあう。翌朝、エリナーはコナーの元を去り、パリ行きを決意する。

出発の朝、ジュリアンはエリナーが2歳の時、海で一緒に泳がせていたら大波に飲まれて見失い、その直後に傍で見つけた時の事を打ち明ける。ジュリアンはそれが誰にも話していない、二度と味わいたくない最悪で最高の瞬間だったと述懐する。出発直前、エリナーは家族が気を遣って外した、コナーと息子と共に撮った写真を掛け直す。エリナーは家族に別れを告げ、実家を発つ。

時が流れ、ニューヨークへ戻ったエリナーは、夜の街でコナーを見つけ、声をかける。

 

 

二部作の妻編。夫編で謎だった要素が、本作を観る事で明らかになった。逆に妻編から先に観て不明な要素は、夫編を観れば分かる様にできており、なかなか趣向を凝らした作品だと思う。双方で共通のシーンも、若干台詞やカットが異なっており、この辺は意図してそうしているのか、単に便宜上そうしているのか、よく分からなかった。ラブストーリーと言ってもストレートな恋愛を描いているワケでは無く、子供を喪った事で破綻しかけた夫婦が、新たな道を模索し、再生を図る話であり、その再生の形が夫と妻とでは異なる為に、時に衝突し合っては互いの気持ちに寄り添っていく。終盤にかけてジワジワと感極まる様な展開が繰り広げられ、僕が普通の感性の持ち主だったらきっと泣いた事だろう。二作を観終わってみて、コナーは未来志向、エリナーは過去に囚われ気味という印象を受けたが、これはちょっと浅はかかも知れない。コナー編が父親との微妙な関係を描いた様に、エリナー編も家族とのこれまた微妙な関係を描いており、恋愛作品に留まらない見応えがあった。どうでもいいけど、ニューヨーカーの生活ってサレオツだよなぁ。

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