コリン・ミニハン監督作「エクストラ テレストリアル」("Extraterrestrial" : 2014)[BD]
余暇を過ごす為に山小屋を訪ねた若者達が、UFOの墜落を目撃した後、やがて宇宙人に襲撃されていく様を描くSFホラー作品。
ある夜、閉店間際のガソリンスタンドに女が助けを求めてやってくる。店主は面倒を避け、閉店を伝えると、女は傍にある電話ボックスに駆け込み、911に通報して夫と息子が拉致された事を伝えようとする。その時、電話ボックスが上空に吸い上げられ、程なく落下し大破する。一部始終を目撃した店主は、女が忽然と姿を消した事を知る。店主の通報により、保安官マーフィと保安官代理のミッチェルが駆け付けるが、店主は説明に窮する。残された身分証から消えた女がナンシーと判明する。
街で暮らす学生のエイプリルは、母親から売りに出す山奥の小屋の写真撮影を依頼される。恋人のカイルが同行を求め、エイプリルは二人きりの旅のつもりで承諾するが、意に反してカイルが友人のセス、メラニー、レックスを呼んでいる事を知って萎える。道中、セスの悪戯の度が過ぎたせいで、マーフィに車を停止させられる。マーフィは周辺で不法侵入、破壊行為、家畜が殺されるなど物騒な事件が相次いでいる事をエイプリル達に伝えて警告する。
小屋に到着した一同は、エイプリルが撮影を行った後、酒や大麻に興じ、馬鹿騒ぎをして過ごす。一方その頃、マーフィは飼育場から通報を受け、そこで発見された豚の不可解な死骸に立ち会う。
エイプリルはメラニーと共に森の中を散歩し、近況を語り合う。エイプリルはカイルと結婚して出産するだけの人生を望まない事を明かす。突然、メラニーが連れてきた犬のラッセルが吠え始め、メラニーを振りきって走り去る。二人はラッセルを追いかけて、私有地の中へ忍び込むと、そこに大麻の栽培施設を見つける。施設の中に入った二人は管理人の男と遭遇し、エイプリルはその男が古い知人トラヴィスだと知る。
トラヴィスはベトナム戦争当時の従軍経験を語ると、先週、熱探知カメラに映った飛行物体について明かし、極秘の超高速戦闘機が試験飛行していると説く。トラヴィスは更に、国民が享受している自由が実は見せかけで、裏で操作している連中がおり、彼らに監視されているという陰謀論を打つ。
小屋に戻ったエイプリルは、カイルから突然プロポーズされる。動揺したエイプリルは、一ヶ月後からニューヨークで働く事が決まっていると打ち明け、結婚できないと告げると、カイルは激しく落胆する。
セス達はテレビも携帯も使えない小屋に不満を抱き始める。カイルはエイプリルの返事に納得できず、理由を問い質す。エイプリルは離婚した両親のいがみ合う姿を見て、結婚に意味を感じていない旨を伝える。その時、上空から炎上する物体が飛来し、森の中に墜落する。大雨の降る中、一同は墜落現場に向かい、そこで損壊した小型のUFOを発見する。当惑した一同が引き返そうとすると、小屋の方へ向かった宇宙人の物と思しき足跡を発見する。
一旦、小屋に戻った一同は、危険を感じて小屋を離れようとするが、その直後に停電が起こり、一同は地下室にあるブレーカーの修理に向かう。地下に降りた一同は、階上からラスティの吠え声と共に、異様な足音が響き渡るのを聞く。エイプリルは備え付けのショットガンを携え、カイルと共に一階に戻る。二人は荒らされた屋内を捜索し、ラスティが消えているのを知る。そこへドアの外から宇宙人が接近し、エイプリルは咄嗟に発砲する。血痕を辿って屋外へ出た一同は、負傷してプールに沈んだ宇宙人の死体を発見する。
一同は車で小屋から逃走を図るが、大木が何者かに切断されて道を塞いでおり、立ち往生を余儀なくされる。その時、上空に巨大な宇宙船が飛来する。一同は車に逃げ込むが、レックスが車外に飛び出し、宇宙船に吸い上げられる。
その頃、マーフィはキャンプ場に放置されたRV車内の捜索を行う。マーフィは、車内に残されたビデオカメラの映像からナンシーとその夫子が所有者だと知り、更に子供が吸い上げられる瞬間の映像を発見する。その直後、マーフィは車内に隠れていたナンシーを発見する。負傷し、酷く怯えるナンシーは、夫子が連れ去られ、自らも抵抗できずに拘束されたと訴え、宇宙人が人間を実験対象にし、人間の心に恐ろしい物を植え付けていると主張する。
エイプリル達は車を捨てて現場から離脱し、トラヴィスの小屋に逃げ込むと、携帯で撮影した映像を見せて事情を説明し、助けを求める。トラヴィスは、政府がロズウェル事件の際に宇宙人と取り決めを交わし、拉致や実験を見逃す代わりに無闇に人間の生活を脅かさない、互いに攻撃しないという点で基本的合意をしたと主張し、エイプリル達がそれを破った為に宇宙人が報復に来ると推測する。その時、レーダーが宇宙船の接近を捉え、停電が起こる。銃で武装したトラヴィスは、エイプリル達を別荘に逃すと、宇宙人との応戦に向かう。トラヴィスは現れた宇宙人に銃撃を浴びせ、負傷させるが、不意を突かれて殺される。
一方、救急車で搬送直前のナンシーは、宇宙船内に自分の様には地上に帰されない数百人が残っている事をマーフィに明かす。マーフィは10年前に突然失踪した恋人が、アブダクトされたとの疑いを強める。
小屋に戻ったエイプリル達は、宇宙人の侵入を防ぐ為に、ドアと窓を封鎖する。その直後、エイリアンがドアの前に現れ、強引に開けようとする。セスがショットガンを発砲するや否や、マーフィ達が突入し、セスを拘束する。エイプリルはこれまでの経緯をマーフィに説明し、宇宙人がうろついていると理解を求めるが、ミッチェルは笑い飛ばす。エイプリルはプールの死体を見せようとするが、姿が消えており、宇宙人が死んでいなかったと悟る。その時、離れの倉庫から物音がした為、マーフィは皆を小屋に残し、一人で探索に向かう。マーフィは倉庫の内部で粘液溜まりと、更に惨殺されたラスティを発見する。その時、マーフィは何者かが倉庫を飛び出し、森の中に逃げ込むのを確認する。
パトカーに戻ったマーフィは、エイプリル達の話が本当だとミッチェルに主張するが、ミッチェルは作り話だと笑い飛ばし、恋人の失踪は単にフラれた為だと説く。マーフィはアブダクトの疑いが濃厚なら諦められず、エイプリル達にも同じ事が起きているとすれば助けるべきだと反駁する。その時、目の前に宇宙人が現れ、手をかざした途端、マーフィは心を操作され、ミッチェルを銃殺した後、自らの頭部を撃ち抜き自殺を図る。車内に拘束されていたセスは、エイプリルに助けられ小屋に戻る。動転したセスは、エイプリルから銃を奪うと、皆を残して小屋を出て行く。
その直後、小屋が振動に見舞われ、閃光と音響が三人を襲った後、爆発と衝撃が生じる。カイルはエイプリルとメラニーを地下室に逃すと、ドアを封鎖し、身を挺して守ろうとする。屋外から宇宙人が侵入すると、カイルはナイフを構えて浴室で待ち伏せるが、宇宙人に捉えられる。一方、セスは森の中で宇宙人に襲われた後、宇宙船に吸い上げられる。エイプリルは、メラニーが宇宙人に捕まるのを恐れて鎮静剤を大量に服用し、自殺を図った事を知る。程なく、メラニーが意識を失うと、エイプリルは地上へ出る決意をする。その途端、閃光が消え、気配が失せ、電気が復旧する。出口付近でカイルの血痕と指輪を発見したエイプリルは、屋外に飛び出し、彼方へ飛び去ろうとする宇宙船を見つける。エイプリルは咄嗟に、小屋に持ち込んでいた打ち上げ花火を上げ、存在を気付かせると、宇宙船は再び上空に舞い戻り、エイプリルは吸い上げられる。
目覚めたエイプリルは、体を覆う粘膜を解き、通路を進んでいくと、自分のいる場所が巨大な船内の一部だと知る。一方、別の場所で目覚めたセスは、拘束されたまま実験対象となる。エイプリルは通路を彷徨った先で意識を失ったカイルを発見し、救出する。エイプリルは結婚への恐れをカイルに打ち明け、プロポーズを断った事への後悔を告げる。エイプリルの懸命な呼びかけで、カイルは意識を取り戻す。そこに宇宙人が現れ、手をかざすと、二人は意識を失う。
二人は森の中で目を覚まし、無事を確かめ合うと、人の気配を感じて森の外へ向かう。その途端、二人は事態の収集に当っていた軍の兵士達に射殺される。謎の男(シガレットマン)は軍の指揮官から掃討完了の報告を受け、UFOの墜落原因が嵐に巻き込まれた為だと知ると、いつもどおりに遺体の処理を行うように命じる。軍はエイプリルとカイルの死体を焼却し、周辺の隠滅工作を行う。
グレイヴ・エンカウンターズのヴィシャス・ブラザーズが関わっているから、興味が湧いて鑑賞。若者集団が人里離れた小屋で余暇を過ごしに行くという、ホラーとしては超絶王道な導入部から、突然UFOの墜落を目撃した後、あれよあれよと宇宙人の襲撃やアブダクトに遭遇していくという、破茶目茶な展開が愉快な作品。この手の作品は、宇宙人のデザイン、属性、習性などが肝になるのだが、本作ではグレイを長身痩躯にしたタイプのみが出現する。人型でパッと見では理知的な雰囲気を醸し出しているのだが、その習性はさながら野獣或いはモンスター然としており苦笑した。あれだけ高度な科学技術を有する宇宙人が、どうしてそこまで野蛮に人を襲うのか全くイミフ過ぎる。もっと高度な武器は無いのか(笑)その一方で、テレパシーで人の心を操作する能力を持っており、なんともちぐはぐな奴らである。終盤、エイプリルが花火を使って宇宙船を呼び戻すシーンはそのバカバカしさに呆れたが、舞台が宇宙船に移ってからは若干ハードSFな展開となりワクワクした。オチに登場した謎の男は、かの有名なXファイルシリーズに登場した悪役シガレットマンをモチーフにしていると思うが、登場した瞬間に爆笑してしまい、イマイチな内容も全て許せてしまった。全部、シガレットマンの為の前フリだったとは粋な計らいだ。