ジョージ・A・ロメロ監督作「死霊のえじき 完全版」("Day of the Dead" : 1985)[DVD]
世界中に蔓延るゾンビへの対抗策を模索すべく、シェルターで研究を続ける科学者達が、軍のグループとの対立により窮地に陥る様を描くホラー作品。
死者がゾンビ化し、世界全域に蔓延る時代。ゾンビに対して生存者は圧倒的少数になり、文明は壊滅寸前に追いやられる。僅かに残った政府職員や軍人、科学者達は軍事基地内のシェルターに身を隠し、生き残る術を模索する。
冬を目前に控えた10月末日。ゾンビ化の根本的な解決法を研究する科学者サラと、陸軍所属の兵士でサラと恋仲にあるミゲル、無線技師ビリー、ヘリの操縦士ジョンは、フロリダの郊外に位置する基地内の地下シェルターを拠点に、周辺の街に赴いては生存者の捜索を行うが、どこにも夥しい数のゾンビ達が群がるばかりで、思惑は不振に終わる。サラ達は基地に戻るが、基地と外部を隔てるフェンスにもまた、ゾンビ達が押し寄せ始める。ジョンは基地から離れ、安息の地を探すべきだと主張するが、サラは科学者としての使命を果たす事に専念する意向を示す。
シェルターにはサラ達の他、ローガン博士、テッドの科学者2人と、科学者達に協力する任務を帯びた、指揮官のクーパー少佐、ローズ大尉、スティール、リックルス、トレズ、ジョンソン、ミラーら陸軍の残党が共同で生活していたが、クーパーがその日の朝に死んだ為に、ローズが新たな指揮官に取って代わる。シェルター内の地下坑道には、囲いが設けられており、その中にはゾンビの人体実験に腐心する、フランケンシュタインと揶揄されるローガンの要請で、兵士達が地上で捕獲してきた標本と称するゾンビ達が囚われている。
サラとミゲルは、スティール、リックルスらと共に、標本を囲いからローガンの研究室へ移送する作業に参加する。気弱なミゲルはゾンビと対峙する生活で精神的に参っており、失態続きでスティール達に危険を及ぼしてしまい、激しく咎められる。サラは、思い詰めて倒錯するミゲルの身を案じ、半ば強制的に鎮静剤で休ませる。
ローズはこれまでのクーパーの方針を転換し、部下達が危険な目に遭っている事を理由に、標本を無駄遣いする事無く、速やかに成果を上げる様に科学者達に要求する。サラはミゲルが回復するまで、任務を外す様に求めるが、ローズは一笑に付す。一方、ローガンはゾンビを飼い馴らす事で、人間の意のままに操れる様にすべく、標本を次々に切り刻んでは、実験に明け暮れる。サラはゾンビの捕獲には危険が伴う事から、標本が無くなれば研究を中止させられる危惧を伝え、もっと実用的な研究をすべきだと主張する。ローガンは意に介さず、クーパーの死体をも秘密裏に実験台として使用している事を認める。サラはローズ達への発覚を恐れ、それを咎める。
その後もローズ達とサラ達の間で溝が深まっていく。ローズは有益な成果をもたらさない科学者達に痺れを切らし、何かにつけ反発するサラを銃で脅して、服従を強要する。ローズは標本のゾンビを始末した上で撤収する意向を示し、成果を示す様に科学者達に命じる。ローガンは、どこに行こうにもゾンビ達に数で圧倒されており、勝ち目が無い事を説くと、人間を食糧と思わせる事無く、ゾンビを飼い馴らすという、自らの研究が数週間で実現する見通しを伝える。サラはそれを否定するが、ローガンはサラの研究が問題の根絶を狙っており、より実現性に乏しいと指摘すると、自らの研究が終わるまで留まる様にローズ達に促す。ローズは渋々それを受け入れるが、報告無しで事を起こせば、軍法会議にかけて処刑すると釘を刺す。
ジョンは自分やビルが、その能力においてローズ達に必要とされており、またローガンは弁が立つ事から、殺されない見通しを説くと、サラとテッドに用心する様に促す。サラは自分を遠ざけようとするミゲルに愛想を尽かし、宿舎を出ると、ジョンとビリーが快適に暮らすトレーラーに赴く。ジョンはサラの研究が時間の無駄であり、基地を離れて新天地を探す様に提案すると、世界中に蔓延るゾンビが、人類の傲慢さに対して怒った神が下した罰だと主張する。
一方、ローガンはバブと名付けた標本に歯ブラシやカミソリ、本といった道具を与え、様子を観察する。バブはそれらに関心を示すと共に、ローガンが近づいても危害を加えない様になり、更には視察に訪れたローズに敬礼までする程になる。ローガンは弾を抜いた拳銃をバブに与え、様子を見る。バブはローズ目掛けて引き金を引き、ローズは憤慨するが、ローガンはゾンビが人間と意思を通じ、殺し合う事無く、秩序を持って暮らす順応への第一歩だと説くと、その為には報いが必要だと主張し、更なる標本の捕獲を要請する。
サラとミゲルは再び標本の捕獲に参加するが、その際にミゲルの不手際でジョンソンとミラーがゾンビの犠牲となり、ミゲルもまた腕を齧られる。サラはミゲルの感染を食い止めるべく、ジョン、ビリーと協力して直ちにミゲルの腕を切り落とす。そこへローズが部下を率いてミゲルを始末する為にやってくる。ジョン、ビリーとローズ達は互いに銃を向け合い、一触即発の事態を迎える。サラはミゲルがゾンビ化したら自分が始末すると誓う。ローズは殺すのが情けだと説くと、今後一切、科学者達に協力しない意向を示し、標本の始末を言い渡す。
サラ達はミゲルをトレーラーに運び込み、介抱する。サラはビリーと共に宿舎へ薬を取りに向かう。その最中、サラ達はローガンの研究室で悍ましい人体実験の様相を目の当たりにし、基地からの脱出を決意する。そこに駆け付けたローズの追求により、ローガンがバブへの褒美として、死んだ兵士達の肉を与えていた事が判明する。激昂したローズは、ローガンを銃殺により処刑すると、サラ達から武器を取り上げ、人質にしてトレーラーへ連行する。
ローズはジョンに武器を捨てさせると、軍人だけをヘリに乗せて、基地から脱出させる様に要求する。ジョンがそれを拒むと、ローズはテッドを見せしめに処刑し、サラとビリーをゾンビの群がる囲いの中に閉じ込めようとする。ジョンは已む無く要求に応じる意向を示すが、ローズは意に介さず、サラとビリーを囲いの中に放逐する。ジョンは2人を囲いから出す事を条件に課すが、ローズはスティールにジョンを痛めつけさせ、屈服させようとする。サラとビリーは決死の覚悟で坑道の出口を目指す。その時、トレーラーを抜け出したミゲルが、エレベーターで地上へと昇り始める。スティールとリックルスは対処に向かう。一方、バブは自らを拘束する鎖を外し、研究室を抜け出す。
サラとビリーはゾンビ達を退けながら、地下道を先に進む。ジョンは不意を突いて、ローズとトレズを撃退すると、武器を奪い、サラ達の後を追う。ミゲルは敷地のフェンスを開放し、ゾンビ達を招き入れると、自らを餌食にする事でゾンビ達をエレベーターに集め、地下のシェルターに送り込む。ローズはスティール達を見捨てて、カートでゾンビの群れから退避する。バブはローガンの死体を発見すると、憤怒し、傍に落ちていた拳銃を持ち去る。
シェルター内に夥しいゾンビ達が侵入し、スティール、リックルス、トレズが為す術もなく餌食となる。ジョンはサラ達と合流すると、間もなく、地上へ通じるハシゴに到達し、3人はシェルターを脱出する。ローズはバブに遭遇した後、不意を突かれて銃撃を受け、逃れた先でゾンビ達の餌食になる。ゾンビ達はシェルターの方々で死肉を貪り食う。サラ達はヘリで基地を離れた後、安穏無事な浜辺に着陸し、11月を迎える。