カリン・クサマ監督作「インビテーション」("The Invitation" : 2015)[DVD]
息子の死がきっかけで離婚した元妻から、二年ぶりに突然ディナーパーティの招待を受けた男が、訪れた邸宅で経験する惨劇の一部始終を描くホラー・スリラー作品。
ロサンゼルス、ウィルは妻イーデンとの間に儲けた愛息タイを幼い内に不慮の事故で亡くした。悲しみに打ちひしがれた二人は離婚した。その後、ウィルはキーラと、イーデンはデビッドと再婚したが、互いに連絡を取り合う事は無かった。二年後、ウィルの元にイーデンとデビッドからディナーパーティへの招待状が突然届く。ウィルはかつて家族で暮らしていた思い出深いイーデンの豪邸にキーラを連れて訪れる。イーデンとデビッドはウィルとキーラを心から歓迎する。ウィルはイーデンと集まった共通の友人ジーナ、クレア、ベン、カップルのミゲルとトミーに久しぶりに再会する。ジーナは恋人チョイが遅れており、電波が届かない為に連絡も取れない事を明かす。デビッドは新しいスタートを切る門出への祝いと称して一同に高級ワインで乾杯を促す。そこにウィル達とは面識が無い奇妙な女セイディが現れる。デビッドとイーデンはメキシコでセイディと出会い、一緒に住んでいる事を明かす。
ウィルは屋内を見て回る内に、かつては無かった窓に付けられた柵に気付く。イーデンはウィルが出た後、独り暮らしだった頃に防犯の為に付けたのだと説く。ウィルは、かつて自殺未遂を図るまでに追い詰められたイーデンを心配する。イーデンは二年間メキシコにいた事を明かすと、無用な苦痛から解放されて自由になり、今が最高に幸せだと説き、ウィルにもそうなるよう望む。イーデンはマイナスの感情は全て化学反応に過ぎず、変えられるものだと主張する。そこへやってきたベンはそれを聞いて馬鹿げていると笑い飛ばす。イーデンはベンに平手打ちをして非難するが、直ちにワインを勧めて和解する。
居間に集まった一同は和やかに過ごすものの、妙な雰囲気を共有する。そこへ新たに、デビッドとイーデンの友人だというプルイットがやってくる。ジーナはチョイが来ない事を心配する。イーデンは料金の払いそびれで固定電話が止められ、使えない事を明かす。ウィルはデビッドがドアの鍵を抜くのを見て、その理由を問い質す。デビッドは一ヶ月前に付近に強盗が入り、夫婦が襲われた事を明かし、用心の為だと答えるが、ウィルの疑念を払う為に鍵を戻す。ウィルはイーデンに頼まれて庭に薪を取りに行く。その際、ウィルはイーデンが寝室のベッドサイドに何かを隠すのを目撃する。ウィルは密かに寝室に忍び込み、瓶に詰まった大量の錠剤を見つけると、それを一粒持ち出し、居間に戻る。
デビッドは大切な人を亡くした者が助け合う科学的な集団の一員である事を明かす。一同はそれがカルト宗教の類では無いかと疑う。デビッドはそれを否定し、国中に大勢の仲間がいる事を明かすと、理解を促す為に、ラップトップで集団の活動風景を収めたビデオを見せる。その中で、代表のジョセフ博士は故郷たるメキシコのソノラにおいて、トラウマを払拭する術の探求について説くと共に、がんを患った女の最期を看取り、仲間達にその魂を吸うよう促す。デビッドはそれについて何も恐れるものは無いと教える為だと説くが、一同は揃って違和感を口にする。プルイットは、人間は皆いつか死ぬのであり、それが共有なのだと説く。デビッドは自らも以前コカイン漬けで苦しんだが、ジョセフがそこから解放してくれて、本来の自分を取り戻せた事を明かすと、恐れに支配されてはいけないのだと説く。イーデンはかつて自らも命を絶とうとしたが、救われた今は平穏で幸せだと同調する。ウィルは不快感を露わにし、そんな簡単な話では無いと憤り、居間を出る。ウィルは心配してやってきたミゲルに錠剤について尋ねる。ミゲルはそれがよくある鎮静剤だと説く。ウィルはミゲルとトミーに対し、場を支配する空気が妙では無いかと問う。トミーは久しぶりの再会に加え、初対面で奇妙な二人がいるから当然だと説く。
デビッドは雰囲気を改める為に、正直に自分の願望を告白するゲームを皆に提案する。一番手のセイディは、全員の名を挙げて愛していると告げた後、突然、傍のジーナにキスをする。ジーナはコカインを所望する。プルイットは、最愛の妻を、七年前に酔って口論になった末に殴って死なせてしまった事、刑務所で罪を償った後も変わる事はできなかったが、「招待」を受けて前だけ見て生きる事を学び、嘆きや罪の意識といった無意味な感情を手放した事を明かすと、許しを得るのに待つ必要は無く、自分を許すのは自由だと主張する。クレアはその考え方に疑義を呈す。次にイーデンは既婚者のベンにキスを希望し、ディープキスをする。クレアはいよいよ不快感に耐えかね、帰る意向を示す。デビッドは慰留するが、ウィルはクレアに理解を示し、好きにさせるよう促す。プルイットはクレアの車の後ろに自分の車を停めた事を明かし、移動させる為にクレアに同行する。ウィルはプルイットを訝り、車へ向かう二人を見張る。デビッドはウィルと二人で話す事を希望し、居間から連れ出すと、大切な友人でありながら饗しを疑う態度に対する困惑を伝えると同時に、ウィルの心情にも一定の理解を示す。ウィルはデビッドが自分の過去に触れる事への不快感を示す。戻ってきたプルイットは、クレアに不快な思いをさせた事を謝り、分かってもらえた事を明かす。
一同は二階のテーブルに移動し、豪勢なディナーパーティを囲みながら談笑するが、ウィルのみ心ここにあらずの状態で過ごし、やがて輪から外れる。ウィルは暗い部屋で奇行に及ぶセイディの姿を目撃する。ウィルは携帯の電波を調べにプールサイドに出る。そこへセイディがやってきてウィルを誘惑するが、ウィルは拒絶する。間もなく、トミーがウィルを心配してやってくる。ウィルは何か悪い事が起きそうで不安だと訴える。トミーはこの邸宅で不幸があったのだから当然だと諭す。その直後、携帯に電波が入り、ウィルはチョイが残したメッセージを聞く。邸宅の前に着いたチョイはデザートを買うのを忘れた事に気付き、ウィルに代わりに買ってきて欲しいと頼んでいたのだった。
ウィルは再びテーブルに戻る。デビッドとイーデンはケーキを持ち込み、ミゲルの誕生日を祝う。ウィルはチョイの伝言について明かし、チョイがどこにいるのかデビッドに問い質す。イーデンは困惑し、チョイは来ていないと答える。ウィルは妙な空気が流れているのに誰も指摘しない理由、プルイットとセイディがここにいる理由、二年も音信不通だったのに突然ディナーに招待し、馬鹿げた話を吹き込もうとする理由を問い質すと、デビッドの見せたビデオは共有どころか否定、或いは洗脳だと指摘する。ウィルはイーデンがタイの死に背を向けている事を非難し、タイが生きていたのは現実だと訴えると、ドアに鍵をかけ、窓に柵を付け、大量の鎮静剤を隠し持っている理由を問い質す。一同はウィルに落ち着くよう促す。キーラは痺れを切らし、ウィルと一緒に帰る意向を示す。そこへチョイがやってきて、職場から電話があって呼び戻された事を明かす。ウィルは立つ瀬が無くなり、デビッドとイーデンに詫びる。イーデンは自分が立ち直った方法を批判しないよう求め、デビッドは皆が家族だと諭す。
ウィルは呆然自失し、再び輪から外れる。キーラは一緒に帰るよう促す。ウィルは自分の不注意でタイを死なせてしまった事への深い悔悟を吐露する。キーラはそれが予測し得なかった事故だったと慰める。ウィルは事故以来、死を待っている事を明かす。キーラは前に進む事は裏切りでは無いと諭し、二人で助け合って生きていく事を望むが、ウィルはキーラには自分を救えないと説く。ウィルはタイの部屋を見に行くと、過去に思いを馳せ、涙する。その際、ウィルはデビッドが庭に赤いランタンを灯しに行くのを目の当たりにする。ウィルは書斎のデスクの中にラップトップを見つけ、教団のビデオを再生する。その中でジョセフは、疑念を抱く信者に対し、「今夜、我々の信念が現実になる。一番難しいのは始める事であり、私を信じて身を委ねて欲しい。狂おしい程に愛している君達を待っている。」という旨のメッセージを伝える。ウィルはプルイットに呼ばれ、再び一同が集まるテーブルに戻る。
デビッドはグラスにワインを注ぎ、皆に配ると、互いに見つめ合うよう促し、より良い世界と平和を願って乾杯する。ウィルは咄嗟にグラスを叩き割ると、皆に飲むのを止めさせ、キーラを連れて帰ろうとする。セイディは水を差された事に憤慨し、ウィルに飛びかかるが、退けられた拍子に頭を打って気絶する。ミゲルがセイディを手当しようとした矢先に、乾杯直前にワインに口をつけたジーナが泡を吹いて倒れる。ミゲルはジーナの蘇生を試みるが、デビッドは背後から拳銃でミゲルを撃ち殺す。プルイットは動揺するデビッドから拳銃を受け取るとチョイを撃ち殺す。ウィル、キーラ、ベンはその場から逃げ出す。激昂したトミーはデビッドに襲いかかるが、目を覚ましたセイディに包丁で切りつけられる。
ウィルとキーラは追ってきたセイディを退け、出口を探す。ベンはプルイットとデビッドに捕まり、撃ち殺される。イーデンは計画が失敗だと嘆く。デビッドは自分達が選ばれた存在であり、これは苦しみを終わらせる唯一の方法で試練なのだと説くと、二人でやり遂げようとイーデンに奮起を促す。二人の会話を盗み聞きしたウィルとキーラは、追ってきたプルイットに奇襲を仕掛けた上で殴り殺す。その直後、ウィルはイーデンと出会い頭に銃撃を受ける。イーデンは自らの腹を撃って自殺を図る。ウィルは致命傷を免れ、キーラと共にその場を離れようとする。そこへデビッドが包丁を持って迫るが、セイディを撃退したトミーが駆けつけ、揉み合いの末にデビッドを刺し殺す。ウィルはイーデンの傍に駆け寄る。イーデンはタイを忘れられず、それゆえに信じたかったのだと詫び、外に連れて行って欲しいと請う。ウィルとキーラはイーデンを庭に担ぎ出す。イーデンは間もなく息を引き取る。ウィルとキーラは庭から臨むロサンゼルスの家々に、赤いランタンが灯っているのを目の当たりにする。方々で悲鳴が上がり、また救急車のサイレンが鳴り響き、上空には数機のヘリが飛び交う。二人は置かれた状況を把握し、手を繋ぐ。