チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

太陽の下で -真実の北朝鮮-

ヴィタリー・マンスキー監督作「太陽の下で -真実の北朝鮮-」("Under the Sun" : 2015)[DVD]

新たに少年団に入る少女とその両親の暮らしぶりから、「普通」の北朝鮮の様子を知らしめる事を趣旨とする北朝鮮側の台本の虚を衝く形で、体制の真の姿を描くドキュメンタリー作品。

 

本作は監督が北朝鮮から渡された台本に従って撮影されたものである。最高の国の「普通」の生活を撮影させる為に、当局の人間はロケ地に常に同行し、監視及び映像のチェックを行っている。ヒロイン役を担う平壌在住の少女ジンミは、比較的裕福な両親の元で生まれ育ち、平壌で最も優秀な学校に通っている。本作では光明星節に合わせて朝鮮少年団に入る直前のジンミが、金日成によって築かれた体制への第一歩を踏み出す様子を中心に描かれる。その一方で、当局の人間が出演者の台詞や演出が普段通りに見えるよう、満足のいくまで手直しさせる様子が捉えられており、北朝鮮に都合の良い台本通りである事が明示的になるよう編集されている。

二月の早朝。ジンミは両親に見送られ、バスで学校へ向かう。その日の授業では、敬愛する金日成大元帥が、国を占領した憎むべき日本人とその手下の地主達を懲らしめ、追い払ったという武勇伝が教科書に則って教えられる。教師はジンミを含む女子生徒達に教科書を復唱、書写させる事で、日本、米国、韓国に対する敵意と憎悪を抱かせる。

光明節を迎え、少年団の全国大会が盛大に行われる。少年団は偉大な指導者であり、父親の様に慈愛に満ちた存在の金正日大元帥を称揚する。新たに入団するジンミは同級生達と共に大会に参加し、団員の証たる赤いスカーフとバッジを贈呈された後、一斉に入団の宣誓を行う。

本作で、ジンミの父親は記者でありながら縫製工場の技師の設定に、また母親は食堂勤めでありながら豆乳工場の従業員の設定で、北朝鮮における模範的な労働者をそれぞれ体現している。当局の人間は演者に逐一指示を発する事で体制のイメージ向上に躍起になるが、演者の中には白けている者も垣間見える。一方、ジンミを始めとする新参の少年団は、党の年長者から熾烈を極めた対米戦争に纏わる金正日と軍の武勇伝を聞く。幼い生徒達がそれを退屈そうに聞いている様子が映し出される。

程なく、ジンミは太陽節の公演に備えて朝鮮舞踊のレッスンに参加するが、幼い彼女にとってそれは難しく、堪えきれずに泣いてしまう。その後、ジンミは太陽節を祝う行事で新少年団の代表を務めるなどの大役を果たし、公演の稽古に励む。太陽節を迎えると、ジンミの両親は娘の晴れ舞台を観客席から見守る。

演出の一環として、少年団への入団に際して何に期待するか問われたジンミは、型通りの模範的な回答で応じるが、その途端、涙が止まらなくなる。監督は泣くのを止めさせる為に、ジンミに嬉しかった事を思い出すよう促し、好きな詩を尋ねる。ジンミは泣くのを止め、かつて学校で教わった金正恩と体制を賛美する教科書の一節を暗唱してみせる。

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