チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

顔のないヒトラーたち

ジュリオ・リッチャレッリ監督作「顔のないヒトラーたち」("Im Labyrinth des Schweigens" : 2014)[DVD]

若き地方検事が、アウシュヴィッツ収容所で虐殺に加担しながら平然と暮らしている元親衛隊達の罪を暴き、ドイツ国民に真実を知らしめるべく奔走する様を描くドラマ作品。

 

1958年、フランクフルト・アム・マイン地方検察庁に勤める若き検事ラドマンは、野心を抱きながらも交通違反を担当する日々を送っていた。尊敬する父は45年に戦地で行方不明となり、その後、母が他の男と交際を始めた事に、ラドマンは不快感を抱いていた。ある日、ラドマンは違反を犯しながらも罰金の支払いに窮する女マレーネの減額の懇願に応じず、自ら金を建て替えてやるが、マレーネはその杓子定規ぶりに反発する。その後、庁舎に新聞社の記者グルニカが友人シモンと共に押しかける。グルニカは殺人鬼が野放しになっているのに警察は相手にしてくれないと訴え、アウシュヴィッツ収容所にいた武装親衛隊の一人シュルツが、本来認められないはずの教職に就いている事を示す書類を突きつける。検事正フリードベルクはグルニカ達を追い返す。グルニカの訴えに興味を持ったラドマンは、グルニカが捨てていった書類を回収すると、事実確認の為に教育委員会を訪ね、シュルツの39~45年の記録が欠けている事を知る。ラドマンは資料センターを訪ね、シュルツが確かに教職に就いている事を確認する。ラドマンは定例会議でそれを報告する。フリードベルクは文部省に確認する意向を示す。

後日、再び庁舎にグルニカがやってくる。ラドマンはシュルツが免職になっている事を伝えると、シュルツが収容所で何をしたのか尋ねる。グルニカは、アウシュヴィッツ収容所における史上最悪の残虐行為が忘れ去られている事を嘆き、検事のラドマンですら保護拘禁用の施設だと理解しているのが恥ずべき事だと詰ると、免職などされていないはずだと指摘する。ラドマンは小学校を訪ね、シュルツが勤務している事をその目で確認すると、それをフリードベルクに知らせる。フリードベルクは教師が足りないからであり、収容所はどの国にもあったのだと嘯く。同僚のハラーは収容所の件が連合国によるプロパガンダに過ぎないと説く。間もなく、ラドマンがシュルツを調査している件がグルニカによって誌面に掲載される。ラドマンは同僚らに冷やかされた挙句、検事総長バウアーに呼び出される。バウアーはヒトラーが死んでもナチスが滅びたわけでは無く、公的機関に平然とナチスが潜んでいながら、殺人以外の戦争犯罪は三年前に時効を迎えている事から、殺人の証拠無くして彼らを辞めさせるのはできないのだと諭す。

ラドマンはグルニカがオフィスから書類を持ち出した事に気付くと、新聞社に押しかけ、グルニカを非難する。グルニカは記事にしない方が恥だと反論すると、友人が集うパーティにラドマンを招待する。ラドマンはそこでマレーネと再会し、ダンスを共にする。パーティの後、ラドマンはグルニカと共に酔いつぶれたシモンを家まで送っていく。グルニカは現在は画家で収容者だったシモンが当時の事を話したがらず、また賠償金も受け取ろうとしない事を明かす。ラドマンとグルニカは収容所にいた証拠を求めて、シモンのスーツケースを無断で開け、そこに書類の数々を見つける。シモンはそれに気付き、二人を追い出す。その際、ラドマンは書類の一部を持ち出し、その中に収容所で囚人を撃った親衛隊員のリストを見つける。二人はバウアーの家を訪ねる。バウアーはリストに目を通すと、起訴できる見込みを示すも書類だけでは不十分だと説く。バウアーはラドマンに捜査を率いるよう命じ、敵に悟られぬ為に記事にしないようグルニカに要請する。ラドマンは再びシモンに会い、書類の入手先を尋ねる。シモンは解放時に手当たり次第持ち出した物だと答える。ラドマンは犯罪行為を目撃しなかったか尋ね、シモンは殺害を見ていないと答える。ラドマンは証人が必要だと訴えるが、シモンはこの国が求めているのは体裁の良さだけであり、真実は二の次だと諦観する。ラドマンは警察にリストを提出し、捜索を要請するが、刑事は彼らが兵士の義務を果たしただけだと答え、邪険に扱う。

ラドマンはグルニカやマレーネと交流を続ける。その最中、グルニカの家に石が投げ込まれる。ラドマンは生存者団体の代表ラングバインを通じて収容者を証人として招き、聴取を行う。証人の男は妻と息子を含む大勢が収容所で殺された事を明かすと、ラドマンが収容所の実態に関して余りに無知過ぎると訴える。ラドマンは収容所にいた親衛隊全員を容疑者に据えて真相究明に臨む決意を示すと、証人の男から知りうる全てを証言してもらう。ラドマンは収容所で想像を絶する残虐非道な犯罪が行われていた事を知る。ラドマンはグルニカと共に、男が証言した元親衛隊の元を訪ね、過去についておくびにも出さずにパン屋を営む様子を目の当たりにする。間もなく、フリードベルクがラドマンの元へ非難にやってきて、既にニュルンベルク裁判で終わった話だと説く。ラドマンはドイツの法で裁かねば終結しないと反論する。フリードベルクは戦時中の事で自国の兵を裁くなど前代未聞であり、癒え始めた傷を再び開こうとしていると詰る。その後、マレーネはラドマンを父に紹介する。

ラドマンは再び資料センターを訪ねると、センター長に収容所の捜査を行っている事を明かし、収容所にいた親衛隊全員の書類提供を要請する。センター長はラドマンの正気を疑いながらも資料室へ案内すると、60万人分の書類から収容所にいた親衛隊8000人の分を自力で探すよう促す。ラドマンは早速膨大な書類から必要な資料の探索を始め、8000人分の証人を探す必要に迫られる。ラドマンはグルニカと共にシモンの元を訪ね、証言を要請するが、シモンはそれを拒む。ラドマンは被害者を代弁する義務があると説く。シモンは捜査をしても何も変わりはしないと憤激すると、収容所で二人の幼い娘が、一見人の良さそうな医師に連れて行かれて安心だと思っていたところ、後に二人が悍ましい人体実験にかけられて惨殺されたと知った事を明かし、それでも自分が生きている事を嘆く。ラドマンは必ずその医師を裁きにかけると約束する。間もなく、その医師がメンゲレだと判明すると、ラドマンはバウアーにメンゲレこそアウシュヴィッツの象徴だと訴える。バウアーはそれを否定し、犯罪に関わった者全員がアウシュヴィッツを作ったのだと説く。

ラドマンはラングバインに紹介された収容者らの聴取を重ね、丹念に証言を積み重ねていくが、一人では手に負えなくなり、フリードベルクにハラーの協力を要請する。フリードベルクはそれに反対し、不運な歴史との線引は必要だという首相の言葉を引用する。バウアーは事実を揉み消す方が民主主義に反すると応じ、ラドマンを支持する。それを受け、ラドマンはハラーと共に捜査を開始する。ラドマンはメンゲレへの憎悪を募らせていく。マレーネは父が月に一度、戦友と会って大騒ぎする事に不快感を示す。ラドマンはマレーネを自宅に招いて愛し合う。

ラドマンはメンゲレの家族の長距離電話の記録から、メンゲレがブエノスアイレスに潜伏していると確信する。ラドマンはBKA(連邦刑事局)に逮捕状を持ち込み、メンゲレのドイツへの移送を要請する。刑事フィッシャーはメンゲレの居場所を掴んでいながら、上の命令で手が出せないでいる事を明かすと、メンゲレが時折ドイツに戻り、家族を訪ねている事を伝える。それを聞いたバウアーはメンゲレやアイヒマンが権力者に守られているのだと説くと、メンゲレを自分に任せて他の容疑者に集中するよう命じる。ラドマンはハラーと共に書類を総当りで調べ始める。その矢先に、フィッシャーからメンゲレの父の訃報がもたらされる。ラドマンは早速グルニカとメンゲレの実家を訪ね、葬儀に集った親族にメンゲレの居場所を問い質すが、親族は協力を拒む。二人はメイドの父がメンゲレを墓地で見たとの情報を得る。ラドマンはメンゲレが南米へ発つと考え、空港で足止めしようと企てるが、協力を拒まれる。ラドマンは無闇に騒いだせいでブランドナーを逃してしまった事についてバウアーに叱責される。バウアーは捜査を始めて四ヶ月経って成果はゼロであり、自らもいつ飛ばされるか分からぬ身だと説くと、ラドマンのメンゲレへの執着自体が捜査全体を危うくしているのだと指摘し、追うべき容疑者は他にたくさんおり、戦いの目的はヒトラーだけでなく一般市民が自らすすんで罪を犯したという真実をドイツ国民に知らせる事だと諭す。ラドマンは収容所の副官ムルカに直撃するが、ムルカは関与を否定する。

間もなく、ラドマンは資料センターでシュルツが収容所にいた事を決定づける写真を見つけ、それを元にシュルツを殺人幇助罪で逮捕する。ラドマンは取り調べにおいて、シュルツが収容所の人選に関与したとの証言を開示する。同席する弁護士リヒターは、20年前の出来事に関する証言であり、写真もピンぼけで裏付けに乏しく、シュルツは命令に従って任務を遂行していただけだと主張する。ラドマンはシュルツの勾留を決定する。ラドマンはフリードベルクに招待され、メルテンス率いる大手弁護士事務所のパーティにマレーネと出席する。メルテンスはラドマンの腕を見込んで弁護士にスカウトする。その後、バウアーはラドマンをエルサレム・ポストの特派員とモサドの二人に引き合わせると、アイヒマンとメンゲレの逮捕の為に三人に協力を要請した事を明かし、情報共有を命じる。ラドマンは三人を訝りながらも書類を提供する。一方、マレーネはラドマンの助言を得て小さな服飾会社を起こす。

ラドマンは署名入りのツィクロンB注文書を元にムルカを逮捕する。それを受けてフリードベルクは、ラドマンが法の原則に反していると冷やかす。ラドマンは罪を償わせるのが正義だと反論する。フリードベルクは悪者が大勢にいるのにラドマンは小物の逮捕に躍起になっており、そのせいで若い世代が父親に犯罪者かと問い詰める様になると非難する。ラドマンはそれこそが狙いであり、嘘と沈黙はもう終わりにすべきだと反論する。その後もラドマンは、所長ベーアを含む元親衛隊を次々に逮捕していく。そんな折、シモンが心臓発作で入院し、ラドマンはグルニカと見舞いに訪れる。シモンは収容所に神がいないと思って、娘達の為に祈ってやらなかった事を悔いると、もう行けそうにない自分に代わって祈りに行って欲しいと二人に請う。ラドマンは裁判で手一杯だと断る。

間もなく、アイヒマンがアルゼンチンでモサドに拘束され、イスラエルへ移送される。バウアーはラドマンに、身柄引き渡し要求を政府が却下した為にアイヒマンがドイツへは移送されない事、メンゲレはアルゼンチンにおらず、パラグアイにいるらしい事を明かすと、複雑な事情があって簡単にはいかないのだと説く。ラドマンは納得がいかず、特派員に会ってメンゲレの移送を要請する。特派員はバウアーの意向でアイヒマンの逮捕を優先し、その為にメンゲレに逃げられた事を明かす。その矢先に、メンゲレ邸のメイドからメンゲレがフランクフルトを今日発つとの報せがもたらされる。ラドマンは直ちにBKAを訪ねるが、フィッシャーが謹慎処分になった事を知る。ラドマンはメンゲレの偽名が掴めない為に、直接空港に向かうが、途中でパトカーが故障してチャンスをふいにする。ラドマンは落胆して庁舎に戻る。そこに母がやってきて、求婚された事と同時に父の死亡証明を申請した事を明かし、結婚式に来て欲しいと請う。ラドマンは母の相手がナチだと詰る。母は父もナチだった事を明かし、当時は誰もが党員になるしかなかったのだと説く。ラドマンは憤慨し、母を追い出す。その後、ラドマンは資料センターで調査を依頼し、父が党員だった事を知る。ラドマンは酔った勢いでマレーネに会いに行き、悪態をつくと、皆が犯罪者であり、マレーネの父も収容所にいたのだと詰る。マレーネは憤慨し、ラドマンと決別する。

グルニカは自らも学校で選ばれて収容所へ送られ、見張りを命じられていた事をラドマンに明かす。ラドマンはグルニカに軽蔑を示した後、失意に暮れ、酒に溺れて街を徘徊する。ラドマンはバウアーに辞職を申し出ると、メルテンスの事務所で働き始めるが、メルテンスがリヒターと協力関係にある事を知って事務所を去る。ラドマンはシモンの元を訪ねると、何をすべきか分からなくなったと苦悩を吐露し、シモンにドイツで暮らし続ける理由を尋ねる。シモンは18歳でウィーンからやってきて妻と出会い、二人の娘を授かった場所から他へ移る理由が無いと答える。ラドマンは収容所へ祈りを捧げに行くと約束する。シモンはグルニカと二人で行くよう促す。ラドマンはグルニカと二人でアウシュヴィッツを訪ね、収容所の柵の外から跡地を望むと、収容所にいた事をなぜ黙っていたのかグルニカに尋ねる。グルニカはただ傍観していた事を恥じていたからだと答える。逆にグルニカは裁判から離れた理由をラドマンに尋ねる。ラドマンは大義を見失ってしまい、他人を裁く自信がもうないからだと答えると、自分が兵士だったら同じ事をしたかも知れないと憂う。グルニカは裁判をしなければ収容所が忘れ去られてしまうと訴え、罪ではなく被害者とその記憶に目を向けるよう促す。二人はユダヤ教に則って、収容所の前で祈りを捧げる。

フランクフルトに戻ったラドマンはバウアーの元を訪ね、辞職を撤回すると、自分にできるのは正義の追求だけだと説く。ラドマンはハラーが続けていた裁判の準備に復帰する。ラドマンはマレーネの元を訪ね、酔って徘徊した時に破れたジャケットの直しを依頼するが、マレーネは修復は無理だと指摘して拒む。ラドマンは店の前のゴミ箱にジャケットを置いていく。やがて全ての準備が整い、裁判を翌日に控えたラドマンの元に、マレーネは修復したジャケットを持参し、ラドマンを励ます。1963年、ドイツに大きな転機をもたらすアウシュヴィッツ裁判が遂に始まる。20ヶ月の裁判で19名の元親衛隊員が罪に問われ、17名に有罪判決が下るが、自責の念を表す被告はいなかった。バウアーは1968年に心不全で死去した。メンゲレはブラジルで暮らし続け、1979年に水泳中に死亡した。

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