ケヴィン・ケルシュ,デニスウィドマイヤー/ゲイリー・ショア/ニコラス・マッカーシー/サラ・アディナ・スミス/アンソニー・スコット・バーンズ/ケヴィン・スミス/スコット・スチュワート/アダム・エジプト・モーティマー監督作「ホリデイズ」("Holidays" : 2016)[DVD]
8つの異なる祝日を題材にした短編を束ねたホラー・アンソロジー作品。
"Valentine's Day"(ケヴィン・ケルシュ,デニスウィドマイヤー)
内向的で妄想癖のあるマキシンは体育のコーチに密かに想いを寄せる一方、クラスメイトのハイディらにいじめられていた。ハイディはコーチと密通しており、心臓に疾患を抱えるコーチの為に、バレンタインデーの夜に心臓移植の為の寄付金を募る一芸大会を企画していた。バレンタインデー当日、コーチは生徒らにプールに高飛び込みして底に沈むレンガを取ってくる課題を出す。マキシンは飛び込み台で躊躇う内にハイディから散々誂われた挙げ句、背後から突き落とされて溺れる。見かねたコーチはマキシンを助け出す。放課後、ハイディは尚もロッカー室でマキシンを誂い続け、マキシンが亡き父が自殺する際に使ったカッターを持ち歩いている事を揶揄する。マキシンがハイディを睨みつけると、ハイディは怯んでそそくさと退散する。コーチはいじめに遭うマキシンを不憫に思い、マキシンがシャワーを浴びている間に、バレンタインデーのカードをロッカーに忍ばせる。マキシンはそのカードを見るなり、コーチが自分を愛してくれているのだと誤解する。マキシンは森を抜けて帰路に着くハイディを付け回す。ハイディは気味悪がって逃げようするが、ぬかるみに嵌って転ぶ。マキシンはハイディをレンガで殴りつけ、カッターで殺す。夜、マキシンは一芸大会に出かける直前のコーチの家を訪ね、微笑みながらハイディの心臓を差し出す。
"St. Patrick's Day"(ゲイリー・ショア)
小学校の教師エリザベスは出産を切望しながら、独り身で寂しい日々を送っていた。エリザベスは担任を勤めるクラスに転入したばかりで友達を作れずにいる、反抗的なグレインに手を焼いていた。ある日の放課後、エリザベスはグレインの机に「あなたの願いが私を笑顔に」というメッセージを添えた、藁で編んだ蛇の飾りを見つけ、それを持ち帰る。二週間後、スーパーでエリザベスの前に姿を現したグレインは、エリザベスの腹に顔を宛てがって微笑んだ後、走り去る。間もなく、エリザベスは妊娠の兆候に気付き、病院を受診するが、歓喜したのも束の間、医師から赤子ではなく蛇を宿していると伝えられる。翌日、グレインは読書感想文の課題で竜王伝説の感想文を提出する。エリザベスはその矢先に黒い血を嘔吐すると、それを見て不敵に笑うグレインをひっぱたく。一年後、エリザベスは母親から動物園で蛇を除去してもらうよう電話で強く促されるがそれを拒み、心神耗弱の状態で日々を過ごす。それからひと月後のセントパトリックスデー。エリザベスは自宅の浴室で大蛇を出産すると同時に、幻想の世界に誘われる。そこにグレインとその父親と思しき男が現れる。エリザベスは動物の面を着けた集団と一緒に、自分が産んだ大蛇を祭り上げる。男はグレインの行いを褒めると、エリザベスの様に孤独で惨めな女達を利用すれば、パトリックが現れる前の蛇の数にすぐ戻せると説く。後日、グレインはエリザベスに代わる新任教師を、前と同じ様に蛇の飾りで幻惑する。
"Easter"(ニコラス・マッカーシー)
イースターの前夜。男やもめの母は、いい子にして寝ていれば、うさぎがやってきて卵のキャンディがもらえると説き、娘を寝かしつける。娘はイエスの復活への怖れと同様に、うさぎの訪れに対しても怖れを訴える。母はイエスの復活は良い事であり、うさぎとイエスは別の事だと諭すと、考え過ぎずに寝るよう促す。夜更け、居間の窓が開いて外から卵が転がり込む。娘は水を飲みに起き出すと、暗い居間でイエス然としたウサギ男が掌に空いた穴からひよこを出す様を目の当たりにする。娘は男に気づかれない様に部屋に逃げ戻ろうとする。男は娘の前に立ちはだかる。娘はそれが現実では無く夢だと叫ぶ。男は娘の手を自らの腹の傷に触れさせると、自分を見た子はいないと説く。娘は見た事を誰にも言わないと約束する。男は自分を見た以上は自分と代わらなければならず、これから行く場所で魔法を見るだろうと説く。男は娘の手を握ると、娘の口の中に卵を入れる。娘はウサギの姿と化す。間もなく、目覚めた母は居間に駆け付けるが、既に痕跡は全て消えており、最後に窓の鍵が掛かる。
"Mother's Day"(サラ・アディナ・スミス)
ケイトはパートナーとセックスする度に、しっかりと避妊をしているにも関わらず毎回妊娠し、数十回の中絶を繰り返していた。ケイトは幾つも病院を回って治療を受けるも、その甲斐虚しく改善せず、周囲からは正気を疑われ、呪われているなどと罵られる事に苦悩を募らせる。ケイトを診断した医師ハーディングは、医療では救えないと判断し、豊穣神崇拝の儀式を週末に執り行っている姉を紹介する。ケイトは人里離れた荒野のその家を訪ね、妊娠を望んで藁にもすがる思いで集まった女達と共に、宗教的な儀式に参加する。ケイトはその最中に怖れを感じて帰りたいと訴えるが、薬を飲まされて酩酊状態に陥り、屈強な男を受け容れる。妊娠したケイトは薬を投与されながら、女達の元で抑圧的な暮らしを強いられる。臨月に入ると、ケイトは診察にやってきたハーディングのバッグから、密かに携帯を取り出す。ケイトは女達がいなくなった隙に乗じて、家の前の広場で911に通報し、誘拐されたと訴える。女達がそれに気付くと、ケイトは逃走を図ろうとして転倒し、産気付く。女達はケイトの股から成人の血塗れの腕が飛び出すのを見て仰け反る。
"Father's Day"(アンソニー・スコット・バーンズ)
独身の教師キャロルの家に父の日祝と記された小包が届き、中からテープが収まったレコーダーが現れる。キャロルがそれを再生すると、母から死んだと聞かされていた父がキャロルに向けて吹き込んだメッセージが始まる。父は最愛のキャロルを幼い頃に置き去りにした事を詫びると、母と心が離れてしまった事についてキャロルには責任が無いと伝えたかったのだと弁明する。父はそのテープを信頼できる人に預け、キャロルが大人になったら渡すよう依頼した事を明かすと、自分の意思に反して置き去りにしたキャロルとやり直す事を希望し、自分を許してくれるのなら、最後の日に一緒に遊んだ場所へ来て欲しいと請う。キャロルはこれまで嘘をついていた母を非難するメッセージを留守電に残し、父が指定した浜辺へ向かう。キャロルはそこで父の指示通りにテープのB面を再生し、父が幼いキャロルと会話しながら吹き込んでいたメッセージが始まる。キャロルは父の指示に従って歩き続ける。父は幼いキャロルに対して諭す様に、自らは遠くへ行かねばならないもののまたすぐに会う事ができるのであり、リスクを冒さねば何も手に入らないし、何者にもなれないのだと語りかける。日没後、キャロルは寺院の様な建物に辿り着き、開いたままの入口から中へ入る。父は幼いキャロルに対し、女に会いに行く為にその場で待つよう命じる。父は女に対し、約束通りに自分が行ったら娘の面倒を見てくれるのかを確認する。父は現在のキャロルに対し、再び自分の意思では無かったと説き、この場所で自分と会えるチャンスは一度きりであり、その為に録音した事を明かすと、テープが届いたら自分を見つけて欲しいと訴える。キャロルは歩みを進める内に現れたドアを抜け、異世界に移動する。キャロルは廃墟の中で椅子に腰掛ける不気味な存在を見つける。その時、車に置き忘れてきた携帯に母から着信が入る。父はここが目的地であり、自分はここにいると伝え、どうするかは自分で決めるようキャロルに促すと、また一緒になれると説く。キャロルは目の前の存在が父だと考え、廃墟の前に白い砂で引かれた線を超え、その存在に手を差し出す。その存在が振り向きざまに叫ぶと、キャロルとその存在は消え、レコーダーだけがその場に残される。父はこれで一緒だと告げる。
イアンはビデオ通話で客の男達を性的に満たす風俗まがいの仕事の求人広告を出し、高待遇を謳って各地から女達を募集する。LAの事務所にはイアンに騙されて田舎から出てきた18歳のホリーを始め、ブリー、セリーナが在籍しており、イアンから売春婦同然の扱いを受け、ひたすら稼ぐよう強要される。ハロウィン当日、客が少ない事を理由にホリー達は暇を持て余す。イアンは新たに新人二人が来る事を明かし、稼げなければお払い箱にすると脅すと、客がいなければ自分を相手にするよう命じる。気の強いホリーはそれに反発するが、イアンは意に介さず、セリーナを性奴にしようとする。ホリーはアイスボックスでイアンを殴り飛ばして気絶させると、肛門にバイブを接着して車のバッテリーに接続した状態で、イアンをチャットルームに監禁する。イアンが目覚めると、ホリーらは端末上のチャットを通じてイアンに命令を出し、逆らう度にバイブの強度を上げると脅す。ホリーらはナニを見せろと命じ、イアンはペニスを見せる。ホリーらはペニスではなくナニだと説き、部屋にナイフを放り込むと、それでナニを作るよう命じる。イアンは許しを請うが、ホリーらのバイブ攻めに抗えず、命令に従ってナイフで陰部を切り裂く。ホリーらは画面越しにそれを見て楽しむ。そこへ新人が訪ねてくる。ホリーは会社が新体制に移行したところであり、イアンは在籍しておらず、「切られた」と伝える。
"Christmas"(スコット・スチュワート)
クリスマス・イブ。ピートは「あなた自身を見せる」という触れ込みで大人気の、バーチャルリアリティ機器「ユービュー」を息子ボビーにプレゼントしようと考え、閉店直前のオモチャ屋にそれを買いに行くが、事前に連絡していたにも関わらず、一足遅く直前の男の分で品切れになる。ピートはその男に高値で買うと懇願するが拒まれ、更に恐妻サラからはメールで再三せっつかれ、途方に暮れる。その矢先に男が心臓発作を起して目の前で倒れる。ピートは助けを呼ばず、ユービューを奪って立ち去る。帰宅後、ピートはサラから上司エドがボーナスを出さない件について愚痴を聞かされると共に、ピートの稼ぎの悪さを詰られる。ピートはサラに夜の相手もしてもらえず意気消沈する。翌日、ピートはユービューをボビーに贈り、喜ばせる。ピートはそれがネット検索の履歴に対応し、人によって見るものが変わるのだと知って、初めて使用したところ、ポルノ映像がリアルに具現化された事に感嘆する。夜更け、ピートはこっそり起き出してユービューを楽しむ。その途中、置き去りにした男が死に際に見た光景が再現される。狼狽したピートは、翌日、不都合なイメージを見る事もあるという点についてサポートに問い合わせるが、異常の調査にログイン情報を求められて調査を拒む。帰宅後、ピートはログアウトを忘れたユービューをサラに見られた事で、男を見捨てた理由について問い質されると、欲しいものを手に入れる為であり、善人ぶるのは止めたのだと弁解する。サラはピートに惚れ直し、二人は激しく愛し合う。翌朝、ピートはサラがログアウトを忘れたユービューを見て、エドがサラに薬を盛られた後、電ノコで惨殺される光景をエドの視点で追体験する。
"New Year's Eve"(アダム・エジプト・モーティマー)
殺人鬼のレジーは出会い系サイトで知り合い、交際を続けたマンディを自宅で拘束し、拳銃で撃ち殺す。大晦日、レジーは再び出会い系サイトを通じて、相性が良いと診断されたジーンとレストランで落ち合う。ジーンはネットで出会う男は体目的ばかりだと嘆く。レジーは前の女よりずっと魅力的だと褒める。ジーンは大晦日に独りぼっちでいるのは寂しいと説き、自らのアパートにレジーを招くと、直ちにレジーの股間を掴む。意表を突かれたレジーは、麻酔薬の準備の為にトイレに入る。レジーは洗面所のキャビネットの中に、ホルマリン漬けにされた無数の男の臓器を見つけ、その中に自分のラベルが貼られた空き瓶を見つけて驚愕する。レジーは居間にかけたジャケットに拳銃を忘れて動揺し、更に浴槽に血塗れのバラバラ死体を見つけて嘔吐する。その時、斧を持ったジーンが押し入り、レジーに襲いかかる。レジーは抵抗し、逃げようとするが、ジーンに片足を切断される。レジーはジャケットに駆け寄り、拳銃を取り出すと、ジーンとの格闘の末に引き金を引くが空撃ちとなる。ジーンはレジーの頭に斧を振り下ろす。テレビはタイムズスクエアの新年を迎える様子を伝える。ジーンはハッピーニューイヤーと告げ、殺人に酔いしれて踊る。