ウディ・アレン監督作「カフェ・ソサエティ」("Café Society" : 2016)[DVD]
仕事を求めて故郷のニューヨークからハリウッドへやってきた男が、勤め先の叔父の会社で働く女に一目惚れするも、その女と叔父の関係に翻弄されていく様を描くロマンティック・コメディ・ドラマ作品。
1930年代、ニューヨークのブロンクス。ユダヤ人の青年ボビーは宝石職人を営む父マーティの元で働いていたが、退屈な仕事に嫌気が差す。母ローズはハリウッドで最大手のエージェント事務所を営む弟フィルに連絡し、ボビーへの仕事の融通を依頼する。二週間後、ハリウッドに到着したボビーは、アリババモーテルに身を寄せると、フィルの事務所を訪ねる。しかし、多忙を極めるフィルとの面会は叶わず、ボビーは数週間の待ち惚けを食らった後、ようやくフィルと対面する。ボビーはやりがいを求めており、何でもやる意向を示す。フィルは空きのポストが無い事からボビーを雑用係として雇うと同時に、自らが催すディナーやパーティに来て人脈を作るよう促す。フィルは秘書のヴォニーを呼ぶと、ボビーに街を案内してやるよう命じる。間もなく、ボビーは兄ベンの送金による援助を受けながら仕事を始め、近況を姉エヴェリンに手紙で報せる。ベンはギャングで身を立てた男であり、表向きはレストラン補助業を営みながら、バーやクラブに雇われて犯罪行為で荒稼ぎしている。教師のエヴェリンは共産主義者で教授の夫レナードと娘と穏やかに暮らしている。
週末、ボビーはヴォニーにビバリーヒルズの住宅街を案内してもらう。ヴォニーは自らもスターになるのを夢を見てハリウッドにやってきたが、彼らが常に見栄を張る事を強いられる哀れな人達だと知って興味を失った事を明かす。ボビーはヴォニーに一目惚れするが、恋人の存在を聞けぬまま日々の仕事をこなす。次の週末、ボビーはヴォニーと映画を観に行った後で小さなバーに寄ると、談笑の合間に好意を伝える。ヴォニーは旅に出ずっぱりのジャーナリストの恋人がいる事を明かす。後日、フィルは自宅で催すパーティにボビーを呼ぶと、名だたる俳優や業界関係者に紹介する。ボビーは業界の噂や自慢話を聞き続ける事に早くも辟易する。その場でボビーは、ニューヨークで法律事務所を営むスティーブとその妻でモデルエージェンシーを営むラッドと親しくなる。
間もなく、ボビーは脚本を読む仕事に昇進する。ボビーは昇進祝いと称して、ヴォニーを新作の試写へ誘うが、ヴォニーは都合が付かないと応え、その代わりに後日ボビーの家で手料理を振る舞うと約束する。妻子のいるフィルと不倫しているヴォニーは、試写の夜にフィルと密会する。フィルは躊躇っていた離婚を遂に決意した事を明かす。ヴォニーは結婚生活を壊す事に後ろめたさを感じながらも、フィルの気持ちを受け入れる。一方、ベンはナイトクラブの経営を始める。スティーブとラッドはニューヨークへ帰る。エヴェリンはボビーの片思いについて知ると、諦めずに口説き続けるよう励ます。
ディナーを約束した夜、ボビーはヴォニーから急用で行かれないと連絡を受けて落胆する。ヴォニーはレストランでフィルと密会すると、交際一年祝いにルドルフ・ヴァレンチノの直筆の手紙を贈る。フィルは離婚を翻意し、愛していながらもヴォニーと二度と会わない苦渋の決断を伝える。傷ついたヴォニーは泣きながらボビーの家を訪ねると、恋人がフィルだとはおくびにも出さず、ヴァレンチノの手紙を贈りながらも捨てられた事を明かす。ボビーはヴォニーを慰めながらも、一目惚れしていた事を明かして別れを喜ぶ。その後、ボビーはヴォニーと一緒に海や映画に出かけ、失恋を忘れさせようと懸命に努力する。やがてヴォニーもボビーに惹かれていき、恋に落ちる。ある時、ボビーは結婚してニューヨークで暮らす事をヴォニーに提案すると、ハリウッドへの失望を吐露し、ベンのナイトクラブで働ける見込みを示す。
苦悩の日々を送るフィルは身内で信頼するボビーに対し、妻と離婚して相愛の仲だった女と結婚する決心を固めた事を打ち明ける。ボビーはその相手がヴォニーだとは思いも寄らず、離婚に理解を示してフィルを励ます。その際、ボビーはヴォニーとの交際を明かし、結婚する意向を示す。その後、ボビーはヴォニーにフィルが苦悩の末に離婚を決意し、恋人と結婚するつもりでいる事を話す。ボビーとニューヨークへ行く事を決断していたヴォニーは動揺する。フィルはヴォニーが働くレストランのクロークを訪ねると、話し合いを求める。ヴォニーは今更身勝手だと詰る。フィルは困惑するヴォニーに求婚し、断るなら死ぬと告げて立ち去る。間もなく、フィルは離婚すると、ボビーにヴォニーの様子を尋ねる。ボビーはニューヨーク行きが不安で塞ぎ込んでいる様だと答え、目前に迫った結婚について嬉々として語るが、その矢先にフィルのオフィスに飾られたヴァレンチノの手紙を見つけ、フィルの恋人がヴォニーだと確信する。ボビーはクロークにヴォニーを訪ね、自分かフィルかの選択を迫る。ヴォニーはフィルと結婚する意向を示す。
ボビーは失意の内にニューヨークに戻ると、ベンのクラブで働き始める。フィルはヴォニーと再婚する。ボビーはスティーブ、ラッドと交流を続ける。ラッドはクラブに美しいモデルを紹介し、クラブを改装させる。クラブは数多の街の名士、名だたる裏社会の大物達、美女が一堂に会するカフェ・ソサエティとして大繁盛し、支配人に就いたボビーは水を得た魚の様に活躍する。ボビーはラッドの紹介で、親友に夫を寝取られて離婚したばかりの市庁舎勤めのヴェロニカと出会う。ボビーは直ちにヴェロニカを口説き落とし、デートを重ね、妊娠を機に結婚する。やがてボビーとヴェロニカは女児スーザンを儲け、ハドソン川沿いへ引っ越す。期せずして、エヴェリンとレナードは隣家の男による騒音を非難した事をきっかけに脅されるなどのトラブルを抱える。エヴェリンはベンに相談し、男への対処を依頼する。ベンは手下と共に男を拉致すると、これまでそうしてきた様に殺して埋める。
ボビーはクラブで街の名士らと交流する一方、ヴェロニカは自宅で子育てに勤しむ日々を送る。そんな折、フィルとヴォニーは大きな契約に伴い、ニューヨークに数週間滞在する運びとなり、ボビーに会いにクラブにやってくる。ボビーは二人の突然の来訪に困惑する。その矢先にボビーは街の有力者から、検事局がベンに目を付けている事を知らされ、万一に備えるよう警告される。ヴォニーは一人でボビーと話をしにやってくる。ボビーはヴォニーの変わりようが、毛嫌いしていた人気者そのものだと詰る。ヴォニーは人が変わるものであり、ボビーも同じはずだと説く。ボビーはヴォニーと食事に出かけ、今も変わらぬ気持ちを伝える。
レナードは隣家の男が急に静かになって姿を見せなくなった事をいぶかる。エヴェリンはベンに相談した事を明かして心配する。ギャングのベンを快く思わないレナードは、家族に累が及ぶ事を怖れてエヴェリンを責め立てる。フィルが多忙の間、ボビーはヴォニーにニューヨークを案内する。ヴォニーはかつて叶わなかった手料理を振る舞う。二人は方々を巡り、夜通し遊んだ後、明け方にセントラルパークに辿り着く。二人は互いに幸せに暮らしていながら、未練が残っている事を伝え合うと、口づけを交わす。
間もなく、ベンは第一級殺人罪を含む数多の容疑で逮捕される。レナードは隣人の男が殺されたのだと悟り、エヴェリンと口論する。ボビー達一家はベンの死刑を回避すべく、スティーブとフィルからそれぞれ有能な弁護士を紹介してもらうが、裁判では有罪の証拠が多数挙がり、ベンに死刑判決が下される。ベンは来世を信じる見地から、獄中でユダヤ教からキリスト教へと改宗する。ベンが処刑され、荼毘に付されると、ボビーは遺言に従って遺灰をベンが毎晩通ったマンハッタンの娼館の前に撒く。
その後、ボビーはスティーブ、ラッドの支援を受け、クラブの経営権を握る。クラブはますます繁盛し、ボビーは投資家からハリウッドにもクラブを開くよう勧められる。ボビーはハリウッドを訪ね、ヴォニーと再会すると、出会った頃に行ったバーを訪ねる。ボビーは一流店との競合を避ける為にハリウッドに進出するつもりが無い事を明かす。ヴォニーはフィルとニューヨークに寄って、年越しパーティを開く予定を伝えると、互いに感情が掻き立てられるのを懸念して会わない方が良いと説く。ボビーは永遠に続く感情もあると応える。大晦日、妊娠中のヴェロニカはクラブで催す年越しパーティに出かける直前に、ボビーに浮気した事があるか尋ねる。ボビーはそれを否定する。ヴェロニカはハリウッドでボビーが昔の恋人と寝た夢を見た事を明かす。ボビーはヴェロニカと、ヴォニーはフィルと新年を迎える。ボビーとヴォニーは別々の場所で、互いの事を想いながら遠望する。