チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

ケープタウン

ジェローム・サル監督作「ケープタウン」("Zulu" : 2013)[BD]

ケープタウンに蔓延る凶悪犯罪の裏で進行する、計画の全貌を解明する2人の刑事の姿を描くクライム・サスペンス作品。

ケープタウンでは、児童が行方不明になる事件が多発していた。ある時、植物園で若い女の撲殺死体が発見され、ズールー人でケープタウン警察強行犯撲滅課の刑事アリ(フォレスト・ウィテカー)が現場に赴く。女は元ラグビー選手の娘ニコールと判明し、アリは友人のジュディスに話を聴く。ジュディスはニコールの様子が最近急変した事を話す。

夜、アリは通りがかった空き地で狂った様に殴りあう少年2人を発見し、止めに入る。少年らはその場から逃げ出す。アリはそこで麻薬ティクを発見する。アリの部下であるブライアン(オーランド・ブルーム)も捜査に加わる。ブライアンは粗暴な性格だが、刑事としては優秀で、アリの信頼も厚かった。その後、ニコールの血液からもティクの成分が検出される。

ニコールのカード使用歴から、訪れたクラブが判明し、アリが訪れる。ニコールはストリッパーのジーナと親交があり、ニコールは殺された晩も媚薬を求めてジーナを訪ねていた。ニコールの交際相手はスタンというヤクの売人だという。

通話記録からニコールがミューゼンバーグ海岸を訪れていた事が分かり、スタンの消息を求めてアリ、ブライアン、ダンの3人が赴く。アリとブライアンは海岸に屯する若いゴロツキ達に事情聴取を行う。アリがコンテナの物色を始めるや否や、ゴロツキ達は激昂し、アリ達に襲いかかり、ダンが致命傷を負う。その場で銃撃戦となるが、ブライアンが追い払う。ダンは搬送先の病院で死亡する。程なくして海岸から大量のティクが発見される。

アリはスタンの行方を追い、黒人街で周辺一帯を取り仕切るキャットの店を訪ねる。キャットはスタンについて知らぬ存ぜぬを貫く。鑑識の調査で、発見されたティクは未知の分子が配合された新種で、攻撃性と自殺衝動を高める薬物だと判明する。その頃、キャットとそのボスがスタンを拷問し、警察が嗅ぎ回る意図を聞き出す。

アリの部下ジャネットが、海岸の傍に不審な一軒家を発見する。その家はダミー会社を通じて売買されていた。早速、ブライアンはその家を捜査に訪れる。目撃証言から家に四駆車が行き来していた事が判明する。家はもぬけの殻だったが、ブライアンは屋内でティクを発見する。

一方、アリは再び空き地を訪れ、以前殴りあっていた片方の子の自殺体を発見する。アリは子供の身元を照会する為に、近所の医師の元を訪ね、そこで他にも多くの子供の消息が不明となっている事を知る。アリは交友関係の広い母に、子供達の消息を知人に聞いてもらう様に頼む。

海岸で再び若い女ケイトの撲殺死体が発見される。遺体には「バゾカラ」(ズールー族の戦いの歌で”悲しませる”の意)が刻まれていた。ブライアンはケイトの情報を求め、ケイトと仕事で関わりのあった元妻ルビーを訪ねるが、不振に終わり、諍いが生じる。

署のゴミ箱にスタンの切断頭部が届き、顔のひっかき傷がケイトの爪の組織と一致する。スタンがケイト殺しの犯人と疑われるが、スタンは文字を書けなかった。アリとブライアンは、警官隊を率い、キャットの店の強制捜査に出向くが、そこで別のギャング達による急襲を受ける。ギャングを追跡する途中でアリは負傷し、入院を余儀なくされる。

署長はスタンの単独犯で幕引きを図ろうとし、ブライアンが激しく反発する。ジャネットの調査により、四駆を所有するのが警備会社DPSで、ダミー会社とDPSの間に、大金を介した接点が判明する。ダミー会社の代表者は分子科学の権威オパーマン博士で、彼はかつて政府の権限で、黒人抹殺用の化学兵器開発を主導していた人物だった。オパーマンは海岸の家を研究所とし、麻薬に似せた正気を奪うティクを子供を使って実験していたのだった。

アリの母は、アリが探している子供を見たという証言を頼りに、教会の牧師のメイドの元へ赴く。ブライアンはDPSを訪ね、四駆の所有者が社長で元軍人のデビアだと知る。夜、ブライアンはDPS内部に侵入し、事務所で大量のティク、血液サンプル、HDDを発見し、HDDを盗み出す。一方、病院を抜け出したアリは再びキャットの店に訪れ、隠れていた店の女を拘束する。ジャネットはコベンス製薬からオパーマンに毎月大金が入金されている形跡を掴む。ブライアンはHDDから、オパーマンケープタウンの子供達を実験台に、うつ病治療薬の研究を行っていた事を知る。

その直後、子供達が乱雑に埋葬された集団墓地が発見され、アリが急行する。アリの探していた子供の墓もあった。アリは墓地の傍の教会で、母とメイドの死体を発見し、慟哭する。ブライアンに、ギャングから人質に取ったルビーと、HDDと交換を要求する脅迫電話が来る。ブライアンはルビーの元へ急行し、HDDを手渡すが、その場でルビーと共に拘束されてしまう。

翌日、ブライアンは見張りを殺し、ルビーを救出する。ジャネットからの連絡で、アリがナミビアの牧場へ単身向かった事を知る。ブライアンはアリの元へ駆けつけ、復讐を止めようとする。しかし、アリは1人でアジトへ乗り込む。屋内で銃撃戦の末、キャットを殺すが、オパーマンは逃走する。駆けつけたブライアンはデビアを殺す。

弾が尽き、満身創痍のアリは、荒野の砂漠を一晩中オパーマンを追って歩き続ける。日が昇り、尚も追い続け、倒れこんだオパーマンをアリは撲り殺す。ブライアンはヘリでアリの行方を追い、オパーマンの死体を発見する。アリはそこから少し離れた場所で息絶えていた。

 

南アフリカの首都ケープタウンを舞台に、いまだ根強く残る黒人への差別感情や、黒人の貧困を起因とする犯罪性向の高さを描いた、硬派なクライムドラマ。ズールー人のアリは幼少期に黒人狩りで父を亡くし、自身は陰部を負傷させられ、性的不能となってしまった男。大人になり、性的欲求を満たせぬ事に苦悩し続けている。一方、ブライアンはその粗野な性格故にルビーと離婚した後、関係は改善する事無く、さらに一人息子との接し方が分からず、苛立ちを募らせている。2人は共に有能な刑事だが、その人生は対照的に描かれる。アリはアパルトヘイト当時の白人の仕打ちを赦す事で、復讐の連鎖を止めようと考える寛容さがあった。一方、ブライアンは、父が生前、検察官として黒人差別に加担した事を赦せないでおり、それが蟠りになっている。終盤、アリは母親が殺された事で、理性のタガが外れてしまう。寛容だったアリですら、復讐にその身を焦がし、結局命を落としてしまうのだが、その姿を目の当たりにしたブライアンは、アリの意を継ぎ、父を赦すのである。人物描写に絡む伏線が幾重にも張られ、とても切なく、面白い作品だった。

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