ジョン・クローリー監督作「クローズド・サーキット」("Closed Circuit" : 2013)[BD]
テロ事件の裏に潜む政府の陰謀を暴くべく、弁護士が真実を求め奔走する様を描くサスペンス作品。
2012年、ロンドンのボロー・マーケットで自動車爆弾によるテロ事件が発生、多数の市民が犠牲となる。警察は事件の首謀者としてエルドアンを逮捕する。法務当局は事の重大さを考慮し、非公開裁判によりエルドアンを裁く事に決定する。
事件から6ヶ月後、公判開始前に被告弁護士のサイモンが自殺する。事務弁護士のデヴリンにより、後任の弁護士に任命されたマーティン(エリック・バナ)は、特別弁護人に指名されたクローディア(レベッカ・ホール)の変更を願い出る。クローディアはかつてマーティンと恋仲にあった女で、その事が原因でマーティンは妻と親権を巡って離婚調停中であった。法廷弁護人と特別弁護人は互いに接触したり、情報を共有する事が固く禁じられており、反りが合わない2人は過去が支障になりかねないと危惧しながら、エルドアンの弁護に臨む事になる。
エルドアンは1996年に就労ビザでトルコからドイツへ渡るも、ヘロインの所持で逮捕、1998年にロンドンの義姉の元へ移り、再びドイツへ戻りタクシーの運転手をしていた。2009年に再度ロンドンへ渡り、2012年にテロを起こしたというのが調査で判明している経緯だった。匿名の通報により、エルドアンの逮捕が実現した事で、マーティンはその人物が事件に関する情報を握っていると睨む。クローディアは内務省に極秘資料の提供を受けると同時に、特別な事務所を設定される。内務省の男は資料の徹底した管理を厳命する。
クローディアは勾留中のエルドアンと面会し、ドイツでの拘禁刑を免れた経緯と、ロンドンで永住権を獲得できた理由を尋ねる。一方、マーティンはNYタイムスの記者ジョアンナと接触し、生前のサイモンと接触を図っていた理由を問う。マーティンは事件の調査を続ける内に、何者かに監視されている事を察知する。そして、サイモンが自分と同じ事実を掴み、その為に何者かにより殺害された事を確信する。クローディアも自室への何者かの侵入を疑い始める。
翌日、クローディアは内務省の庇護下にあるエルドアンの妻子と面会する。息子のエミアは監視を欺き、クローディアにトルコ語のメッセージを残す。マーティンはエルドアンと面会し、エルドアンがMI5の協力者だと確信する。MI5がエルドアンを反政府組織に送り込んだものの、組織に裏を突かれ、テロが発生した。サイモンはその陰謀に気付き、消されたのだと。マーティンは過去の資料からムッシ・カルタルというテロ容疑者と、エルドアンの関係を掴む。その直後、マーティンは事故に遭い、負傷する。病床に法務長官が現れ、深入りせぬようにと警告する。
退院したマーティンは、再びジョアンナと接触を図り、ムッシ・カルタルはエルドアン本人で、MI5が国内テロ組織を摘発する為に買収し、利用するつもりだったが失敗した事実を確認する。エルドアンは刑務所内での身柄の安全と引き換えに、事件を黙秘しているのだった。陰謀の全容を知ったマーティンは、MI5の目を掻い潜り、クローディアと接触する。クローディアの身を案じ、裁判から手を引く様に説得する。しかし、クローディアは拒否し、翌日から非公開審理が始まる。
クローディアは証人として出廷した内務省の女に尋問を行う。その中で、通報者がエミアだと判明する。クローディアは、当局が通報者の身元の一般公開を認めないのは、MI5とエルドアンの繋がりが暴かれるのを恐れるからだと指摘し、ムッシ・カルタルの件を暴露する。その上で、エミアの証人喚問を求める。内務省の女は苛立ちを募らせ、事態の収集に動き始める。
その頃、マーティンはジョアンナが殺害された事を知る。一方、エミアは監視を欺き、自宅から抜け出す。クローディアは自宅で刺客に襲われるが、命からがら逃れ、秘密の場所でマーティンと落ち合う。マーティンは内務省の女に取引を申し出るが、エミアが行方を眩ました事を知らされる。クローディアはかつてエミアが残したメッセージが、伯母の家を表す事を知り、マーティンと共に向かう。そこにエミアが現れ、エルドアンのPCから抜き取った情報を収めたUSBを手渡す。マーティンとクローディアは、翌日の審理でエミアを証人として出廷させるべく、MI5の猛追を逃れ、身を隠す。
審理が始まり、クローディアはUSBを証拠品として提出、エミアは証言台に立つが、その頃、エルドアンは自殺を装い、殺される。マーティンは法務長官に事件が覆らない事を告げられ、その言葉の通り、裁判は公訴棄却となる。
2ヶ月後、マーティンとクローディアは蟠りから解放され、再会し、関係を修復する。その頃、Mi5の疑惑は白日の下に曝され、法務長官が市民らに糾弾される。
うーん、これはなかなか残念な作品だったかなと。まず英国の裁判の仕組みを知らないから、導入から取っ付きにくい。法廷弁護士と事務弁護士で役割が明確に分かれている事は理解したが、そこに特別弁護人が別個に設けられ、被告の利益に資するように非公開審理に臨むらしい。通常の弁護人と特別弁護人の立場の違いを理解できず、それ以後のハナシも頭に入ってこず悶々。しかし、法廷でウィッグを付ける慣習は、失礼を承知で言えばコントみたく不思議な光景だ。エルドアンの過去が判明する経緯についても、見せ方とかもう少し捻って欲しかった。現実は小説よりなんちゃらとは言うが、英国のMI5にしても、米国のCIAにしても、諜報機関ってこんなに浅慮でダーティな集団なのかねぇ。見境なく殺しすぎだろうに・・・