チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

6才のボクが、大人になるまで。

リチャード・リンクレイター監督作「6才のボクが、大人になるまで。」("Boyhood" : 2014)[BD]

6歳の少年が大人になるまでの12年間の過程を、家族同士の絆や交友関係と共に描くドラマ作品。

6歳の少年メイソン・ジュニアは、シングルマザーの母親オリヴィアと、一つ歳上の姉サマンサと3人暮らし。オリヴィアは、夫メイソン・シニアと離婚して以来、女手一つで幼い姉弟を育てている。オリヴィアは恋人との関係が悪化して程なく、大学に戻ってより稼ぎの良い仕事に就くべく、ヒューストンへの引っ越しを決意する。姉弟はシニアとの距離が離れる事を心配するが、オリヴィアは理解を求める。メイソンは親友に別れを告げる余裕も無く、一家は住み慣れた土地を離れ、オリヴィアの祖母の家から程近いヒューストンの新居に移る。

ヒューストンでの生活が始まり、メイソンは小学校へ通い始める。程なくして、1年半ぶりにシニアが姉弟と再会する為にやってくる。シニアは歓喜する姉弟をボーリングに連れ出し、存分に遊ぶ。リベラル派のシニアは、姉弟にブッシュの推進したイラク戦争の欺瞞を説いて聞かせる。メイソンはシニアにオリヴィアとの仲直りを望むが、シニアは喧嘩しても嫌いなわけではないと諭す。シニアはアラスカで船働きしながら、気ままに音楽活動を続けている事を明かし、これからはもっと頻繁に会う機会を作りたいと姉弟に告げ、オリヴィアとも仲良くする事を約束する。シニアは姉弟に玩具を買い与えると、家まで送り届ける。姉弟は仲直りを期待するが、夫妻は会った途端に口論を始め、シニアは立ち去る。

オリヴィアは心理学の修士号取得を目指し、大学に通い始める。その最中、オリヴィアはバツイチで同じく2人の姉弟を育てている教授ウェルブロックと懇意となり、程なく2人は再婚する。オリヴィア達はウェルブロックの家に移り住み、姉ミンディ、弟ランディと共に暮らし始める。互いの姉弟はすぐに打ち解けあい、一家は賑やかで幸せな日々を送る。

ところが時を経る内に、温厚だったウェルブロックの酒癖が悪化し、言動が乱暴になり始める。やがてウェルブロックは昼間から酒を飲んでは、家族に当たり散らす様になる。ウェルブロックは子供達が遊んでばかりで役割分担をこなしていない事を咎め、オリヴィアが甘やかすからだと責め立てる。オリヴィアはルールが多く、束縛しすぎだと反論する。

メイソンとサマンサは、シニアと共に週末を過ごす為に出かける。シニアは会話によるコミュニケーション不足を嘆くが、姉弟は聞いてばかりでは無く、シニア自身の話をする様に求める。そこでシニアは互いに自然に会話をする様に提案する。シニアは姉弟と方々を回って遊んだ後、アストロズ戦のナイターに姉弟を連れて行く。メイソンはシニアの仕事を尋ねると、シニアは保険数理士の試験に受かった事を明かす。メイソンはオリヴィアの大学の成績が良好だと伝える。その後、シニアは姉弟を自宅へ招き、音楽仲間ジミーとのセッションを、姉弟への思いを詞に乗せて聞かせる。その夜、メイソンはシニアに魔法や妖精の存在について問う。シニアはクジラの方が妖精より不思議な存在だと応える。姉弟はシニアと再び週末に会う約束をする。

ある日、メイソンはウェルブロックに強制され、意に反して坊主にさせられる。メイソンは仮病による登校拒否を図る。オリヴィアは登校を命じる一方で、メイソンに多忙で構ってあげられない事の理解を求める。ウェルブロックを忌避するメイソンは、再婚した理由を問い質すが、オリヴィアはウェルブロックにも長所があり、世に完璧な人はいないと諭す。メイソンの坊主頭はクラスメートに笑われるが、女の子に好感を抱かれる。

しばらくした後、ウェルブロックはオリヴィアに手を上げる様になる。ウェルブロックは酒を飲むと、子供達にも見境なく当たり散らし、家族の雰囲気は陰鬱になる。オリヴィアの留守中、ウェルブロックは子供達にオリヴィアの外出先を詰問し、外に連れ出せば、飲酒運転で危険な目に遭わせる。耐え兼ねたオリヴィアは、メイソンとサマンサを連れて家を出て、知人キャロルの元へ身を寄せる。サマンサはランディとミンディを置き去りにした事を責めるが、オリヴィアは法的保護者では無く、連れ出せば誘拐になってしまう理解を求める。姉弟は突然、見ず知らずの土地の学校へ転校する事になり困惑し、憤る。メイソンは新しい教師とクラスメートに快く迎えられる。

オリヴィアがウェルブロックと離婚し、大統領選が近づく頃。姉弟はシニアに促され、民主党の応援活動に協力する。その後、シニアはダイナーで姉弟の近況を聞く。友人達とパーティに行くというサマンサに、シニアはFacebookの写真で一緒に写っている男が彼氏だと冷やかし、避妊の方法を説く。シニアは23歳の時にオリヴィアとの間にサマンサを儲け、理想の親になれる状況じゃなかった事を明かし、自分の過ちから学んで欲しいと説く。その後、シニアはメイソンと二人で山にキャンプに出かける。メイソンはオリヴィアが修士号を取得し、教師になるべく目下求職中で、引越する事になると伝える。シニアは保険会社に勤務しており、音楽を中断した事を明かす。メイソンはガールフレンドについて相談し、趣味が合わず会話で白けてしまうと告げる。シニアは相手を質問攻めにし、その答えを熱心に聞いてやる様に助言する。シニアはギターの弾き語りを聞かせ、夜が更け、そして朝を迎える。

時が流れ、一家はオースティンから程近いサンマルコスに移り、オリヴィアは大学の講師職を得て働き始める。一方、メイソンは中学校に通い、次第に芸術に感化し始める。メイソンは年上の不良少年らと付き合い、大人の世界に触れていく。ある日、オリヴィアは大学で教える生徒を自宅に招き、パーティを開く。オリヴィアは生徒の一人で、陸軍州兵としてイラクやアフガンに派遣され、無事帰還したジムと懇意になる。メイソンは15歳になると、酒やマリファナに興じる様になり、その一方でカメラに夢中になっていく。

程なく、オリヴィアはジムと再婚し、一家は新居へと移る。オリヴィアはリフォームを依頼した移民の配管工に、学校へ通うように勧め、夜間の公立短大なら授業料が安いと伝える。一方、シニアは新妻アニーとの間にクーパーを儲けており、姉弟はアニーの実家で週末を過ごす事になる。シニアが愛車GTOを売ってミニバンを買った事を告げると、メイソンはかつて16歳になったらGTOを譲ってくれるとシニアが約束した話を持ち出し、不満を述べる。シニアは約束に覚えが無く、自分で買うように窘める。シニアはメイソンの誕生日祝いと称して、自ら編集したビートルズのオリジナル・ベストCDを贈る。実家に着くと、姉弟は初めて会うアニーの両親に迎えられ、メイソンの誕生日パーティが開かれる。祖母はメイソンに聖書を贈り、夫妻はフォーマルなスーツを、祖父は先祖代々受け継がれてきた猟銃を贈る。祖父は早速メイソンに試射させ、見込みがあると褒める。その夜、シニアの弾き語りで一同は楽しい時間を過ごす。翌日、メイソンはスーツを来て、皆と教会に訪れ、牧師の説教を聞く。

時が流れ、高校に通い始めたメイソンは、写真家としての才覚を現し始める。撮影にのめり込むメイソンに、教師は自制心を備え、皆と共に努力する様に諭す。教師は写真を撮ってアート作品を作りたいというメイソンを激励し、新たに課題を与える。一方、家庭は金欠に見舞われ、オリヴィアは家財を売りに出す決意をする。同時にジムとの関係も次第に悪化し始める。ジムはメイソンのピアスやネイルのファッションを論って嘆くが、サマンサは今時普通だと指摘する。

メイソンはパーティで出会ったシーナに、世の中に対する不満を打ち明け、二人は意気投合する。その夜、遅く帰宅したメイソンに、酒を飲んだジムが絡み、帰宅時間を守る様に叱る。聞く耳を持たないメイソンと、生活費を払っていると主張するジムは一触即発の状態となる。

それから程なくして、オリヴィアとジムは離婚する。サマンサが大学に進学して寮に移ると、オリヴィアはメイソンと2人きりでは家が広すぎると主張し、授業料もかかる為に売りに出す事を決める。メイソンはダイナーでバイトを始め、稼ぎで購入した中古トラックで、シーナと共に旅行がてら、サマンサの元を訪ねる事にする。サマンサと再会し、共に時間を過ごした後、メイソンとシーナは宛もなく夜の町に繰り出す。テキサス大学への進学を検討するメイソンは、大学への進学で写真の腕が上がるのは良い事だが、決められたレールに乗っては未来が開かないのではないかという懸念をシーナに伝える。その夜、二人はサマンサの寮に泊まり、関係を持つ。

しばらくした後、卒業を間近に控えたメイソンは、校内の写真コンテストで銀賞に選ばれる。その頃、メイソンとシーナは次第に考え方の違いが表面化し、シーナは新たに大学生の恋人を作る。シーナはネガティブなメイソンの物事の捉え方に辟易し、二人は口論の末に決別する。

メイソンが晴れて高校卒業を迎えると、オリヴィアは親族や友人を招いてパーティを開き、皆でメイソンの大学進学を祝う。シニアは立派に育て上げたオリヴィアの労をねぎらい、感謝する。その後、シニアはメイソンをライブハウスに連れ出す。シニアはメイソンとシーナの別れを知ると、メイソンには否が無く、悩むのは無駄だと慰める。シニアはメイソンの自尊心の揺らぎを心配し、自分を貫けばもっと良い女といくらでも出会えると励ますと、鋭い感受性を大切にし、写真の道を極める様に促す。メイソンの為に、ジミーのバンドが曲を贈る。

メイソンが家を出るのに合わせて、オリヴィアはメイソンとサマンサをレストランに呼び、アパートへの引っ越しを決めた事を告げる。姉弟は帰る家が無くなる事を嘆くが、オリヴィアは子育てが終了し、自分の時間が欲しいと主張する。その時、かつてリフォーム時に配管工事をした男がレストランの店長として現れる。男はオリヴィアに勧められた通り、英語の学校に通い、短大で準学士号を取得し、学士号を目指している事を明かし、オリヴィアが人生の恩人だと感謝する。

メイソンが家を発つ日がやってくる。オリヴィアは浮かれているメイソンの様子を嘆くと、自分は結婚、出産、離婚、再婚、離婚を繰り返し、二人が家を出た後、残っているのは葬式だけで、人生最悪の日だと憂う。メイソンはあと40年は生きるとオリヴィアを慰めると、トラックに荷物を乗せ、新天地へ出発する。

大学の寮に到着したメイソンは、予めネットで親交を深めていたルームメイトのダルトンと出会う。メイソンはダルトンに誘われ、同じく寮暮らしのバーブ、ニコールと連れ立って、ビッグベンドにハイキングに出かける。メイソンは子供にダンスを教えているというニコールと、将来について語り合い、意気投合する。

 

 

取り立てて裕福でもなければ、すごく貧しいというワケでも無い、普通と言えば普通の生活水準の家庭で暮らす少年が大人になるまでの過程を、まるっと描いた作品。何が凄いって、同じ俳優で本当に12年間の長きに渡って(もちろん断続的にだが)撮影している事で、僕はそうとは知らず、よく似た子役を見つけてきたもんだなぁなんて別の意味で呑気に感心していたのだが、観終わった後に事実を知って驚嘆した。およそ12年間を160分という尺で駆け巡るから、展開は矢継ぎ早にサクサク進み、場面が変わるとガラッと環境が変わっていたり、登場人物の容姿が変わっていたりする。何が起こったのか細かい状況説明など不要で、何気ないやり取りや雰囲気で察する事ができる様に、実に巧く演出されているのが良い。ドラマチックで派手な出来事が起きるワケでもない、ちょっと母親が離婚と再婚を多めに繰り返す以外は(笑)、普通の男の子の普通の少年時代が淡々と描かれているだけなのに、これが本当に微笑ましくて一時も目が離せないのだから不思議だ。その時々のアメリカの時事ネタが、おそらく意図的に織り込まれているのも特徴的で、2000年代~の簡易的な文化史の様でもある。こういう作品を企画する監督と、それに参加する俳優陣には感服する。個人的には、イーサン・ホーク扮する父親がサマンサに避妊の方法を説いて聞かせるシーンが微笑ましくて良かった。ああいうシーンを見ると親子って本当に良いなぁと思う。しかし、こんな面白い作品はそうそう生まれてこないだろうな。これ観たら、和みすぎて俺も人生やり直したくなったよ。あーあ。

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