M・ナイト・シャマラン監督作「ヴィジット」("The Visit" : 2015)[BD]
年少の姉弟が素性を知らない祖父母の元で5日間を過ごす事になるも、祖父母の不可解な言動や奇行に脅かされていく様を描くファウンド・フッテージ型ホラー作品。
ロレッタはフィラデルフィアで15歳の娘ベッカと13歳の息子タイラーと共に暮らすシングルマザーである。ロレッタは高校卒業時に教師コリンと恋に落ちるも、両親に交際を反対された事から、駆け落ちの様に家出をした。その後、ロレッタはコリンと結婚するが、結婚10年目にしてコリンは愛人を作り、ロレッタと2人の子供の元を去った。ロレッタは家出以来、両親とは連絡すら取り合っていなかった。ベッカはしっかり者だが、それ故にコリンを許せないでおり、一方、タイラーはラップ好きのお調子者だが、コリンが去ってから、極度の潔癖症を患っていた。
ある時、カウンセラーをしているという両親がネットでロレッタを見つけ、孫と1週間を過ごしたいと希望してくる。ロレッタがそれを子供達に話すと、2人とも祖父母の元に行きたがった為に、ロレッタは已む無く、滞在を許可する。ベッカとタイラーには、ロレッタが恋人ミゲルと二人きりでカリブ海の旅行を満喫できる様にするという思惑があった。ベッカはロレッタの買い与えたカメラで、旅を記録映画に残すべく、一部始終を撮影していく事を決意する。ベッカはロレッタの家出の詳細な経緯に興味を示すが、ロレッタは口を噤み、それを祖父母に聞く様に促す。
月曜の早朝、ベッカとタイラーは土曜に帰る予定で、全く素性を知らない祖父母の暮らすペンシルバニア州メイソンビルへと列車で出発し、ロレッタが駅で見送る。メイソンビルの駅に着いたベッカ達を祖父母が出迎える。ベッカ達は祖父は農家カウンセラーをしており、祖母は料理上手な主婦だという事を知ると、人の良さそうな祖父母に安心する。祖父母はベッカ達を車に乗せ、携帯の通じない田舎の農場に位置する、2階建ての屋敷へ招く。
屋敷へ着くと、タイラーは早速、持ち前のラップを披露し、祖父母と親交を深める。ベッカ達は二階の寝室を貸し与えられる。祖父は地下室がカビだらけの為に立ち入らぬ様に2人に命じる。2人は持参したラップトップを有線でネットに接続すると、ロレッタにスカイプし、問題無い事を伝え、旅を楽しんで来る様に促す。タイラーは農場の小屋に入っていく祖父に声をかけるも、祖父が応答せず、間もなく出て行く様子を見て訝る。
その夜、祖父は2人に9時半には寝る様に諭し、2人はそれを守って眠りに就く。10時過ぎ、ベッカは空腹に耐えかね、祖母の作ったクッキーを取りに行く為に部屋を出る。その直後、ベッカは階下で祖母が嘔吐を繰り返しながら、徘徊しているのを目撃し、慄いて部屋に逃げ帰る。
火曜の朝、祖母は何事も無かった様にベッカの前で振る舞う。ベッカは祖父に昨晩の事について尋ねる。祖父は祖母が風邪を引いていたがもう治ったと明かす。ベッカとタイラーは軒下で隠れんぼをして、それを映像に残そうと試みる。2人が隠れんぼに興じている最中、突然、祖母が軒下に現れ、異様な雰囲気を漂わせながら地面を駆けずり、2人を執拗に追い掛け回し、ベッカ達は当惑する。
祖父母が散歩に出掛けている間に、医師のサムが訪れ、祖父がボランティアのカウンセラーを無断で欠席している事について、事情を尋ねに来た事をベッカに明かす。タイラーは祖父のいない隙に、密かに小屋の調査を目論み、悪臭漂う小屋の奥に山積みにされた汚物まみれのオムツを見つける。タイラーが慄いて小屋から出ると、そこに祖母が現れる。祖母は祖父が失禁症だと明かすと、その事を祖父が恥じており、オムツを小屋に隠して燃やすのだろうと推察し、タイラーに理解を促す。
午後、ベッカとタイラーは祖父に連れられ、ロレッタの思い出の場所巡りに出かける。2人はロレッタの通った高校を訪ね、撮影を行う。その直後、祖父は通行人の男に、ずっとこちらを見ていたなどと因縁を付け、突然殴りかかる。ベッカが制止し、祖父は我に戻る。タイラーは祖父を不気味がるが、ベッカは高齢故に混乱したのだと諭す。その夜、眠りに就いた2人は、部屋の外から聞こえてくる引っ掻く音で目を覚ます。タイラーが意を決してドアを開けると、2人は裸の祖母が真向かいのドアを引っ掻いている様子を目撃する。
水曜の朝、ベッカは昨晩の祖母の様子について祖父に打ち明ける。祖父は祖母が日没症候群という認知症を患っている事を明かすと、夜に症状が出るものの、医師に言わせれば寝言と同じだと説き、9時半以降は部屋を出ない事を取り決める。祖父は徐ろに着飾って、仮装パーティに行くと言い始め、ベッカはそれが勘違いだと諭す。ベッカがその事を祖母に話すと、祖母は祖父がボケているのだと指摘する。祖母はキッチンに置かれていたラップトップにバターをこぼした事を明かし、クリーナーが付着してカメラが使えなくなった事を詫びる。
ベッカは日没症候群についてネットで調べ、年寄り特有の症例だと知ると、怖がるのは偏見だとタイラーに説く。タイラーはカメラが使用できなくなったのは不可解だと指摘するが、ベッカは事故に過ぎないと諭す。2人は再びロレッタにスカイプし、ロレッタが旅を満喫している事を知る。タイラーは祖父母の奇行ぶりを打ち明けようとするが、ベッカはそれを制止し、問題が無い事を伝えてロレッタを安心させる。
ベッカは奇行の目立つ祖母にインタビューの撮影許可を得ると、ロレッタが家出した日に何があったのか尋ねるが、祖母は突然、動転して激しい奇行に及びだし、ベッカはインタビューを打ち切る。タイラーはリビングに隠しカメラを仕掛けて、祖母の奇行の正体を探る事を提案するが、ベッカに咎められる。
その夜、10時を過ぎると、部屋の外から異様な音が聞こえてくる。2人はドアを少しだけ開けて、様子を覗うと、祖母が両手を後ろに回し、取り憑かれた様に屋内を駆けずり回るのを目撃する。ベッカは寝言の様なものだとタイラーを説き伏せる。
木曜日の朝、ベッカ達は祖父母に連れられ、散歩に出かける。その際、2人は祖父母が井戸の前で意味ありげに立つ様子を見て訝る。その後、ベッカはタイラーへのインタビュー撮影を行い、タイラーに出て行ったコリンの印象を尋ねる。タイラーはコリンが出て行ったのはやむを得ない事で恨んでおらず、かつてタイラー自身が犯した失敗のせいで出て行ったと考えている事を明かす。2人は井戸の中を調べるも、何も見つけられずにその場を後にする。次に、タイラーがベッカにインタビュー撮影を行い、ベッカが鏡で自分の姿を頑なに見ようとしない事について尋ねる。タイラーはベッカが自分の事を無価値に思っているのではないかと指摘する。ベッカは父に対する蟠りを拭い去る事ができずに苦悩する。
祖父母の留守中、タイラーは祖父母が地下に何かを隠しているのではないかと推測し、カメラを設置する事を提案する。その直後、祖父にかつて世話になったというステイシーが訪ねてくる。ステイシーは祖父が約束の日に来なかった為に様子を見に来た事を明かす。
ベッカは祖父母の日常の様子を記録しようと企図し、リビングに赴き、一人で不気味に高笑いする祖母を見つける。祖母は「暗闇」がいると告げた後、口を塞ぐ奇行に及ぶと、「暗闇」を洞窟に閉じ込めるには笑わなければいけないと主張する。ベッカは祖母の異変を訴えるべく、祖父を探して小屋に辿り着くが、そこで祖父が猟銃の銃口を咥えているのを目の当たりにする。祖父は咄嗟にそれを止め、掃除をしているのだと説く。ベッカは祖母の様子がおかしいと伝え、祖父は後で様子を見ると応じる。ベッカはタイラーの提案どおり、リビングにカメラを仕掛ける事を決意する。
その夜、2人が眠りに就いた後、祖母は屋内で再び奇行に及び始める。祖母はカメラに気付くと、包丁を持ち出し、カメラを携えて二階へ向かい、ベッカ達の部屋に押し入ろうとする。目覚めたベッカとタイラーは息を潜めてやり過ごす。
金曜日の朝、2人はカメラに収められた映像を確認すると戦慄する。2人は荷造りを済ませると、滞在が終わる夜まで、祖父母を避け続ける事を決意する。しかし、その一方でベッカはロレッタと祖父母の仲を取り持つ事を希望し、祖父にインタビューを行う。祖父はかつて石炭工場に勤めていた頃の話を始め、夜勤時に工場内で白いものが走り回るのを目撃し、それを同僚に話したものの、誰にも信じてもらえず、無視された挙句、解雇された事を明かす。ベッカは祖父が統合失調症だと悟る。その後、2人は祖父母が屋外でステイシーと揉めているのを目撃する。
ベッカは改めて祖母にインタビューを行う。祖母は唐突に、シンモフィテリア星から来たという生物に関する創作話を始める。ベッカはロレッタが家出をした日に何をしたのか尋ね、ロレッタが内心では傷ついており、祖父母に会いたがっている事を明かすと、親子の仲が今後どうあるべきかについて問いかける。祖母は再会したらロレッタを許す意向を示す。ベッカはロレッタに見せる為の映像が撮れた事に成果を見出す。
午後、2人はロレッタが帰った頃を見計らってスカイプすると、祖父母達の奇行を記録した事を明かし、すぐに迎えに来る様に請う。ロレッタがそれを訝ると、2人は直したラップトップのカメラで屋外にいる祖父母の様子を見せる。ロレッタはその2人が本物の祖父母では無い事を知ると、ベッカ達の身を案じて地元警察に通報し、自らもメイソンビルに急行する。
その夜、祖父が最後に4人でボードゲームで遊ぶ事を提案する。ベッカとタイラーは隙を見て屋敷からの脱出を試みるが、その矢先に軒先の木で首を吊って死んでいるステイシーを発見する。そこに祖父が現れ、2人を連れ戻す。2人は祖父母に合わせて、ゲームに付き合う。ベッカはタイラーに祖父母の気を引かせている間に地下室へ向かう。
9時半を過ぎた頃、祖父は失禁してその場を後にする。タイラーの前で祖母が奇行に及び始め、タイラーを殴り倒す。祖父は祖母を寝かし付ける為に寝室へ連れて行く。ベッカは地下室の物置に押し込まれた本当の祖父母の遺体と、血の付着した金槌を発見する。そこに祖父が現れ、本当の祖父母からベッカ達の訪問の話を聞いた事を明かすと、白いものとシンモフィテリアと井戸に関する支離滅裂な事と共に、自らの妻クレアが祖母になる資格がある等と述べ、ベッカに襲いかかる。
ベッカは祖父母の寝室に監禁され、暗闇の中で祖母と二人きりにされる。祖父はタイラーを直立させると、オムツを脱ぎ、タイラーの顔に汚物を押し付ける。祖母は奇声を発してベッカに襲いかかる。ベッカは割れた鏡の破片で祖母をめった刺しにして寝室から脱出すると、階下に向かい、タイラーを助けようとするが祖父に退けられる。タイラーは突然、怒りに我を忘れて祖父に襲いかかり、冷蔵庫のドアで祖父を叩き殺す。間もなく、ロレッタが警察と共に駆け付け、2人は護送される。
後日、ロレッタはベッカのインタビューに応じ、家出した日の事について語る。ロレッタはコリンとの交際について両親に罵られ、家を出ようとしたところ、立ち塞がった母を殴り、反対に父に殴り返された為に、互いに険悪となり両親と決別した事、両親が歩み寄ろうとしたものの、自分が拒否してきた事を明かす。ロレッタはベッカが自分の為に祖父母の許しを撮ろうと考えていた事を知ると、もう大丈夫だと説き、ベッカを抱き締め、コリンへの怒りを忘れる様に諭す。