チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

アノマリサ

チャーリー・カウフマン,デューク・ジョンソン監督作「アノマリサ」("Anomalisa" : 2015)[DVD]

他者を全て同一に認識してしまう症状に苛まれる中年男が、出張先で偶然出会った特異的な女に惹かれ、心が揺さぶられゆく様を描く人形アニメ・コメディ・ドラマ作品

 

顧客サービス改善アドバイザーを営むマイケルは、長らく精神を病んでおり、全ての人間の顔と声を同一のものとして認識する状態に苛まれている。マイケルは講演の為に、妻子と暮らすロサンゼルスを発ち、飛行機でシンシナティへと向かう。

夜、マイケルはシンシナティの空港に到着すると、タクシーでダウンタウンの高級ホテルへ向かう。マイケルは口数の多い運転手に早速辟易する。マイケルはホテルの10階に位置するジュニアスイートに部屋を取り、ルームサービスを注文すると、妻ドナに到着を報せる。マイケルは一服しながら翌日の講演の原稿チェックを始めるが、気分が晴れない為に、かつて交際していたシンシナティ在住のベラにおよそ10年ぶりに連絡する。マイケルは既に結婚し、子供がいる事を明かす一方で、ベラは未だに独身だと明かす。マイケルは何もかもうんざりしている事を吐露すると、一緒に酒を飲む事を提案する。ベラは急な誘いに躊躇うが、それに応じる。

程なく、ベラはマイケルが待つバーにやってくる。二人は再会を喜ぶと、近況について語り合う。ベラはマイケルが一方的に自分を振った理由について問い質す。マイケルは精神的な問題を抱えていた事を明かす。ベラは二人の関係が特別だと思っていたにも関わらず、突然振られた為に傷つき、立ち直るまで時間を要した事を明かす。マイケルは交際していた頃との変化について尋ねる。ベラは真意を測りかね、怖れを訴える。マイケルは部屋で飲み直す事を提案するが、ベラは体目当てだと疑い、憤慨して帰る。その後、マイケルは息子ヘンリーへの土産を探す為に、タクシーの運転手に聞いた、ホテルの傍の大人の玩具屋を訪ねる。マイケルはそこで日本製の骨董品の人形に目を奪われる。

マイケルは部屋に戻り、シャワーを浴びた後、部屋の外から聞こえてくる他の人間とは異なる女の声に強く惹かれる。マイケルは声の主を探して、近くの部屋を訪ね回り、マイケルの講演を聞く為に遠方からやってきた、食品メーカーで顧客サービス係を務める二人組リサとエミリーを見つける。二人はマイケルの顧客サービス改善を説く著書「客のためは自分のため」の読者である事を明かし、尊敬する本人に会えた事に感激する。エミリーの洗練された印象に比べ、マイケルが惹かれたリサは右目尻の古傷を髪で隠し、冴えない印象だったが、マイケルはリサの声が素晴らしいと感嘆する。マイケルは二人をバーに連れ出す。

マイケル達はバーで酒を飲み交わし、一頻り談笑に耽った後、部屋へ戻る。マイケルは意を決してリサを自分の部屋に誘う。リサはエミリーを気遣いながらもそれに応じる。リサはエミリーの方が魅力的だと説くが、マイケルはリサに特別な何かを感じたのだと明かす。リサは傷のせいで店頭ではどこも雇ってもらえない事を嘆く。マイケルは傷について尋ねるが、リサはそれについて話す事を躊躇う。マイケルは傷にキスしたいと請う。リサはその真意が理解できず、変態趣味を持っているのかと尋ねる。マイケルはリサへの好意を伝える。リサは自らが不細工で学が無い事を卑下し、彼氏は8年前に交際していた既婚で体目当ての年増男以来だと明かす。マイケルはリサの声がまるで魔法だと説き、歌を歌う様に促す。リサは躊躇いながらも、シンディ・ローパーの"Girls Just Want To Have Fun"を歌う。マイケルはその歌に聞き入った後、感動して涙を流す。マイケルはリサに話し続ける様に請い、キスを繰り返した後、リサをベッドに誘う。リサはマイケルに促されるままに話し続け、その際にマイケルの著書にあった「変則的」(アノマリー)という言葉が好きであり、その理由が他人と違っても良いのだ、自分も特別な存在なのだという気分になれるからだと説く。それを受け、マイケルはリサに「アノマリサ」という愛称を付ける。リサはそれを甚く気に入る。リサはマイケルに体を許し、二人はセックスをする。マイケルはリサを失いたくないと吐露する。

マイケルはホテルの支配人ギルに地下のオフィスに呼び出され、リサを泊めた件について問い質された後、唐突に愛を打ち明けられ、当惑してリサの元へ逃げ帰るという旨の悪夢に魘され、目を覚ます。マイケルはリサと部屋で朝食を取る。その最中、マイケルは妻と別れる意向を示し、リサに一緒になる事を提案する。リサは困惑するが、マイケルはリサへの愛を止められないのだと説き、リサは快諾する。ところがマイケルは、リサの食事マナーや言動が気に触って仕方無くなり、それを指摘して正す内に、リサが他の人間と同じ声、顔つきに変わっていく様子を自覚する。マイケルが失望感を露わにすると、リサはそれを察知する。

その日、マイケルは講演の舞台に立つ。リサとエミリーは客席で講演を聴く。マイケルは原稿に沿って顧客サービスの重要性について説くが、話の流れは頻繁に脱線する。マイケルは、愛する人を失った自らの人生を憂い始め、挙句の果てには唐突に世界が崩壊し、大統領は戦争犯罪者であり、国は衰退の一途を辿っているなどと訴えた事から、聴衆の顰蹙を買う。マイケルは更に、人が死んで消えるもの、笑顔を忘れてはいけない、誰でもどこかに愛する人がいる、電話口の客にも愛が必要などと説き、講演を終える。

マイケルは大人の玩具屋で購入した、一見不気味な日本製の人形を携え、ロサンゼルスの自宅に戻る。ドナは大勢の客を招いてサプライズパーティを開いてマイケルを迎えると、皆がマイケルを愛しているのだと伝える。マイケルはドナに対し、君は誰なのかと問いかける。ドナは気分を害し、逆にマイケルに何者なのかと問い返し、それに答えられる人がいるのかと問い質す。ドナとヘンリーはマイケルの異変を察し、出ていかない様に請う。マイケルは出ていかないと応える。ドナとヘンリーがその場を後にし、客達はマイケルを置き去りにする様にパーティに興じる。人形がアノマリーな機械音で桃太郎の歌を歌い始めると、マイケルは人形の前に座り、その歌に聴き入る。

一方、リサはエミリーの運転する車に乗り、マイケルへの手紙を認める。その中でリサは、別れを惜しむと共に、いつか再会する事を望み、和英辞典に拠ればアノマリサが天国の女神を意味しており、それが面白いと付記する。

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