チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

はじまりのうた

ジョン・カーニー監督作「はじまりのうた」("Begin Again" : 2013)[DVD]

互いに人生に行き詰まった音楽プロデューサーの男と、ソングライターの女が、偶然の出会いを経て意気投合し、アルバム制作を行う過程を通じて、障害を乗り越えていく様を描くコメディ・ドラマ作品。

 

イギリス出身のソングライターのグレタと、映画の挿入歌で一躍有名になったミュージシャンで恋人のデイヴは、大手のレーベルがデイヴに用意したニューヨークの高級アパートに移り住む。グレタはデイヴに同伴してレーベルを訪ねる。デイヴはレーベルの面々に対し、グレタが閃きの源であり、一緒に作曲しているパートナーである事を明かすと、グレタの曲をアルバムに入れる事を希望する。しかし、グレタは常にデイヴの添え物の様な扱いを受ける。デイヴはレコーディングやビデオ撮影などでニューヨークを離れる機会が増え、グレタはデイヴが留守の間を一人で過ごす。そんな折、グレタは大学の同級生で、路上で地道にパーフォーマンスを続けているミュージシャンのスティーヴと再会する。

程なく、デイヴは出張先のロサンゼルスから帰宅すると、出来たばかりの新曲をグレタに聞かせる。グレタはそれが自分以外の女を想って作った曲だと悟ると、憤慨し、デイヴの顔を引っ叩く。デイヴはレーベルのアシスタントの女と関係を持った事を打ち明ける。グレタはデイヴのアパートを去ると、スティーヴが慎ましく暮らすアパートに身を寄せる。その夜、スティーヴは失意のグレタを馴染みのライブハウスに連れていく。スティーヴはグレタにステージで歌を披露する様に促す。グレタはそれを拒むが、抗しきれずにステージに上がると、都会で独りぼっちの者が前に一歩踏み出すという趣旨の曲を弾き語りで披露する。

一方、小規模レーベルの創立者でありながら、長らく誰とも契約を結べずにいるダンは、音楽記者の妻ミリアムと、難しい年頃の高校生の娘ヴァイオレットが暮らす自宅を出た後、安アパートで独り暮らしを始めるも、飲んだくれてばかりいる。ある日、ダンはヴァイオレットを学校に迎えに行くと、オフィスへ案内する。その場で、ダンは共同設立者サウルと会社の方針で真っ向から対立する。サウルはダンの直近数年の実績が無い事を論い、一方的にクビを通告する。ダンはその決定に反発するも、為す術無く、ヴァイオレットを自宅へ送り届ける。ミリアムはダンに対し、ヴァイオレットには父親が必要であり、ダンがその役割を果たそうとしない事を非難する。その夜、ダンは飲んだくれて街を徘徊する内に、ライブハウスに流れ着く。ダンはそこでステージに上がったグレタの弾き語りを聴く。

会場の客はグレタに興味を失うものの、ダンは職業柄、即座にその曲のアレンジが頭の中を駆け巡り、強く感銘を受ける。ダンは直ちにグレタに接触を図ると、それが運命だと説き、自分と契約をしてレコードを作る事を提案する。ダンは見せ方が問題だと説き、確実にヒットする見込みを示す。グレタは見た目では無く、大切なのは曲だと反論する。ダンはグレタをバーに誘い、酒を飲み交わす。ダンは自らの輝かしい経歴を明かすと共に、一年前に家を出ており、更にレーベルの信頼を失ってしまったという窮状を明かすと、まずはグレタの曲を聞いてもらわねば話にならないと主張する。グレタは契約に難色を示すと、明日にも帰国し、大学に戻るつもりでいる事を明かす。ダンはサウルにデモを聴かせるべく、グレタにもう一日留まる様に請う。グレタは検討する意向を示すと、スティーヴのアパートに戻る。

翌日、ダンはグレタからの応諾の返事を受けると、グレタをオフィスに連れていく。ダンはデモを作っていないグレタにサウルの前で弾き語りを披露させる。ダンはデモの制作費を要望するが、サウルはグレタに商機を見出せないと応える。ダンはグレタを金の卵だと称し、良いプロデューサーを付けてスタジオで録音すれば、その真価が判ると主張する。サウルはそれを拒み、デモを作って持って来れば、それで以って判断する意向を示す。

制作費用が無い事から、ダンはスタジオを借りずにPCとマイクと楽器のみで、ニューヨークを舞台に曲ごとに場所を変えて録音し、アルバムを作る事をグレタに提案する。グレタはダンがプロデューサーを担う事を希望する。趣旨に賛同したスティーヴは、機材を提供すると共に、移動式録音スタジオを構築する。

ダン達はバンドのミュージシャン集めに着手する。チェロとバイオリンに音楽の神童姉弟レイチェルとマルコム、キーボードにバレエ教室のピアノ伴奏で退屈していたザックが加わる。更に、ダンが昔、面倒を見て大成したラッパーのトラブルガムの紹介を得て、ベースとドラムが加わる。ダン達は早速、結成したバンドで路上セッションし、録音する。

ダンはヴァイオレットをグレタに紹介する。グレタはヴァイオレットに意中の男がいる事を知ると、好意を持ってもらえる様に助言する。グレタはヴァイオレットにギターでバンドに参加する様に誘う。ダンはヴァイオレットの腕前を知らない為に、ミリアムにヴァイオレットの参加を打診する。ミリアムはヴァイオレットが下手くそだと明かすが、ダンはミリアムにヴァイオレットと同伴して、バンドを見に来る様に促す。

その夜、グレタはヴァイオレットにダンが必要だと説く。ダンはグレタが知った風な口を利き、家出をした自分の責任を問うて批判する事に気分を害し、18年間連れ添った夫婦と、自分を裏切った男を思い続けているグレタとでは立場が違うのだと詰る。グレタは自分は躓いても逃げはしないと反駁する。ダンはミリアムが自分にヴァイオレットを預けている間に、別の男と恋に落ち、新たな人生を始めようと計画していた事があり、そのせいで心を病んでしまった事を明かす。グレタは言いすぎた事を反省する。ダンは車内のスプリッターにグレタが興味を示すと、ミリアムとの初デートでそれを使ってCDを聞きながら、街中を歩き回った思い出を述懐する。ダンとグレタは互いのプレイリストを共有し、スプリッターで音楽を聞きながら、街を練り歩く内に気脈を通じていく。その後、グレタはスティーヴに促され、デイヴを死ぬほど愛していたという気持ちを詞にしたためて曲を作ると、それをデイヴの留守電に弾き語って吹き込む。

ダン達はニューヨーク各所で屋外レコーディングを重ねていく。最後を飾るビル屋上でのレコーディングに、ミリアムがヴァイオレットを連れてやってくる。グレタはダンにベースを弾く様に促す。ヴァイオレットはギターで参加し、ダンはその腕前に感嘆する。その夜、ダン達はバンドやその仲間達を交えて打ち上げを行う。ダンは禁酒を宣言する。

後日、グレタはデイヴと再会する。グレタは近況を明かした後、レコーディングした音源をデイヴに聴かせる。デイヴはそれを評価すると、マスタリングを終えたばかりの自らの音源をグレタに聴かせる。グレタはかつて自らがデイブに贈った「さまよう星たち」が、本来バラードなのにポップスに変わってしまっている事を指摘すると、売れても曲の良さが失われていたら意味が無いと説き、リミックスを勧める。デイヴは自らが犯した過ちへの悔悟を示し、アルバムを捨ててでもグレタと復縁する事を希望する。グレタは全てが変わってしまったのだと説き、難色を示す。デイヴは二人で一緒に乗り越える事を希望し、ライブに来る様に促す。一方、ダンは、グレタの助言を得て服の趣向を変えたヴァイオレットと会うと、出来たばかりのアルバムを披露する。ダンはヴァイオレットが本物のギタリストだと評価し、一緒にバンドを始めてアルバムを作る事を提案する。

ダンはグレタとサウルの元へレコーディングした音源を持ち込む。サウルは直ちに契約を結ぶ意向を示す。グレタはダンをオフィスに戻す事を求めると共に、印税の取り分が一割である事への不満を示し、宣伝を行わずに口コミを頼りに販売する事を要望する。グレタはダンに対し、新たに欧州版などの企画を提案する。

その夜、グレタはデイヴのライブを訪ねる。デイヴはアレンジを変えた「さまよう星たち」を披露する。その途中、デイヴは会場の隅にグレタの姿を確認する。グレタはそのアレンジが次第にポップスに転調するのを目の当たりにし、涙すると、聴き終わる前に会場を後にする。

後日、ダンの元へグレタからスプリッターが返送される。ダンはミリアムと街へ繰り出すと、初デートの様に二人で音楽を聞く。程なく、ダンは家に戻る事を決意する。その矢先にグレタはダンのアパートを訪ねると、レーベルを介さず、ネットを通じてアルバムを1ドルで売り、その売上を皆で均等に分ける事を提案する。ダンはそれに応じ、早速ネットでアルバムを販売すると、トラブルガムにシェアして拡散してもらう。

翌日、サウルは一日で一万枚売れている事に感嘆するが、ダンはネットでの販売について白を切る。サウルはダンにクビを告げる。

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