田中重雄監督作「大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン」(1966)[DVD]
ニューギニアの奥地より持ち出された卵から孵化した冷凍怪獣バルゴンと人類の攻防、ガメラとの決闘の行方を描く特撮怪獣作品。
ガメラを収容し、火星に向けて打ち上げられたZ計画のロケットは、半年後に隕石と衝突して大破する。解放されたガメラは、エネルギー源を求めて地球に戻ると、黒部ダムを襲撃し、完全に破壊した後、赤道直下の火山を目指して飛び去る。
旧日本軍の兵士だった平田は、捕虜収容所に入れられる前に、ニューギニア奥地のジャングル内の鍾乳洞に隠した、時価二億円相当のオパールを回収すべく、小野寺、川尻と計画を練る。そこに、操縦士のライセンスを所持し、自前の観光飛行機会社の設立を企図する平田の弟の圭介が、足の悪い平田の代わりに計画に加わる。あわじ丸船員の川尻が手引する事で、圭介と小野寺もあわじ丸に乗り込み、三人は神戸港からニューギニアを目指す。
ニューギニアの港に到着した三人は、圭介の操縦するヘリでジャングル内の原住民部落に降り立つ。そこへ原住民と共に、風土病の研究で十数年前に来て住み着いた医師の松下と、助手を担う原住民の娘カレンが現れる。圭介達は洞窟の調査に来たと偽る。カレンは先祖代々からの言い伝えに基づき、そこが魔物がいて生きて帰る者が無いとされる虹の谷だと説き、行ってはならないと訴える。圭介達は意に介さず、洞窟へ向かおうとする。原住民は武器を携え、行く手を阻むが、小野寺は持参したピストルで威嚇し、原住民を退ける。
三人は険しいジャングルを抜け、目指す洞窟を見つけると、オパールの捜索を始める。程なく、川尻は岩に隠された拳大のオパールを発見する。三人は歓喜するが、その矢先に川尻は毒サソリに刺されて即死する。川尻の死を好機と捉えた小野寺はオパールを引き取る。圭介はその代わりにピストルを預かる。小野寺は哀しみに打ちひしがれる圭介の隙を見計らって、持参した手榴弾で洞窟を崩落させ、逃走する。
後日、部落の病院で目を覚ました圭介は、原住民に救助された事を知る。カレンは洞窟で何かを発見したのでは無いかと問い質す。圭介はそれが兄の隠したオパールである事から、自分達に権利があるのだと主張する。原住民達は広場で儀式に取り組む。カレンはその理由が神の呪いを恐れているからだと説き、圭介達が持ち出した物が宝石では無く、触れると災難が起こると伝えられている物だと明かすと、松下に自分を日本に行かせる様に請う。
一方、オパールを手にした小野寺は、船で帰途に就く。ジャングルでマラリアに加え、水虫を患った小野寺は、船医の佐藤の勧めで、赤外線の治療を受ける。船が神戸に近づく頃、小野寺は船員から麻雀に誘われ、オパールを背広に隠して部屋を離れる。その際、小野寺は赤外線照射器のスイッチを切り忘れた為、赤外線がジャケットを焼いてオパールが剥き出しになる。オパールと思われたその物体は赤外線の熱に曝される内に明滅を始め、間もなくトカゲ状の生物が孵化する。
船は神戸港に入った矢先に、突然、爆発して沈む。小野寺は救助されるが、オパールを持ち出せなかった事を悔やむ。そこへ小野寺達の帰りを待っていた平田が宝石ブローカーを連れて駆けつける。小野寺は圭介と川尻が谷底に落ちて死んだと欺くと、オパールが船と一緒に沈んだ事を明かし、潜水夫に依頼して引き揚げる事を提案する。その直後、海中から紫色の光を放って怪獣が出現し、港湾施設を破壊し始める。平田と小野寺は一旦大阪へ戻る。
平田は怪物騒ぎが落ち着くまで様子を見る意向を示す。小野寺は当局と保険会社があわじ丸を引き上げてしまってからでは取り返しが付かないと説き、騒ぎに紛れて引き揚げるべきだと訴え、潜水夫を雇う金の工面を求める。平田はそれに反対する。動転した小野寺は、二人も殺してグズグズしていられないと口走る。平田は激昂し、小野寺に殴り掛かる。小野寺は平田とその妻を半殺しにすると、金を奪って逃走する。
程なく、大阪に到達した怪獣は、舌の先から噴出する液体で、街を一瞬にして凍てつかせる。自衛隊は陸と空から怪獣を迎え撃つが、いずれも返り討ちにされる。司令部は阪神地区の住民の避難を確認すると、街から離れたカジカ峠よりミサイル部隊による攻撃を企図する。それを察知した怪獣は、背中の角から虹を照射し、ミサイル部隊を跡形もなく消滅させる。そこへ、虹のエネルギーに引き寄せられて、ガメラが飛来する。ガメラと怪獣は大阪城の傍で闘争を始める。ガメラは怪獣に火炎を浴びせるが、怪獣は冷凍液を噴霧してそれを無力化し、更にガメラの動きを封じる。ガメラは接近した怪獣の顔に爪を突き刺すが、間もなく全身が凍りつき、活動停止を余儀なくされる。
翌日、圭介はカレンを連れて日本に戻る。カレンはニュースで怪獣の姿を見て、それが言い伝えに登場するバルゴンであり、倒す方法がある事を明かす。バルゴンは尚も進撃を続ける。圭介は小野寺の家を訪ねると、裏切りへの憤怒を露わにする。小野寺は宝石を引き揚げて山分けする事を提案する。圭介は小野寺を殴り飛ばすと、それが宝石では無く、怪獣の卵だと明かす。小野寺はそれを笑い飛ばす。圭介は兄とその妻が焼け死んだ家から、直前に小野寺が逃げるのを目撃していた人がいる事を明かすと、小野寺を厳しく追求する。圭介は闘争の末に小野寺を柱に縛り付けると、その場を後にする。
圭介はカレンと共に自衛隊の司令部を訪ねる。カレンはバルゴンが陸上動物であり、水中では皮膚細胞が溶けて血液が流出して生きられず、更に冷凍液が出せなくなる事を明かすと、バルゴンが部落に先祖代々伝わるダイヤの光を一番好む事から、それを使ってバルゴンを水の中に誘い込み、溺死させる方法を提案する。圭介もそれに賛同する。司令官は琵琶湖が適当と考え、ダイヤモンド作戦の実行を決断する。一方、妻に救われた小野寺は、五千カラットのダイヤを琵琶湖に沈めるという話を聞いて目の色を変える。
圭介は自らの操縦するヘリにダイヤを吊り下げ、バルゴンを琵琶湖へと誘導する。しかし、バルゴンは途中で歩みを止め、引き返し始める。作戦は中止に追い込まれ、圭介とカレンは司令部に居合わせた大阪府知事に詰られる。二人は失敗を詫びる。そこへ佐藤が訪れ、小野寺の治療に使用していた赤外線が、切り忘れの為に長時間に渡って卵に放射され続けた可能性を指摘する。カレンは本来、バルゴンが現在の大きさになるまで10年近くかかるはずだと説き、赤外線で発育が促進され、特異体質を備えたのだと推測する。佐藤は現在のバルゴンが赤外線を好むはずだと説き、ダイヤに赤外線を照射する事を提案する。カレンはバルゴンが雨に晒されると動かなくなる事を明かす。それを受け、自衛隊はヘリで人口雨を降らせ、バルゴンの足止めを行う。
自衛隊はルビー殺人光線発射兵器の開発に従事する天野教授に協力を要請する。天野は発光体に赤外線ランプを、ルビーの代わりにダイヤを使用する事で、兵器を発光器へと転用すると、直ちにそれを車両に搭載し、バルゴンに向けて光線を照射する。バルゴンは思惑通りに光線に従って動き始める。湖畔に到達すると、天野達は発光器を船に載せ替え、バルゴンの誘導を続ける。
琵琶湖に居合わせた全員が作戦の成否を固唾を呑んで見守る。バルゴンが湖に入る直前になって、小野寺がボートで船に押しかける。小野寺はピストルで圭介達を脅し、ダイヤを発光器から強奪すると、ボートに乗って逃走する。バルゴンはボートを追って水の中に入ると、舌を伸ばして小野寺を捕らえ、ダイヤ諸共飲み込んだ後、再び陸に上がる。
万策が尽き、自衛隊は人口雨でバルゴンの足止めを続ける。圭介はカレンに促され、カジカ峠を訪ねる。カレンは部落では誰も見た事が無い、バルゴンの虹を見てみたかったとその胸の内を明かす。圭介はバルゴンの虹で全てが一瞬に消えたはずの現場に、唯一残された数枚のバックミラーを見つける。圭介はその理由を計り兼ねるが、バルゴンの弱点に繋がり得ると考え、それを司令部に持ち込む。
圭介は鏡が虹のエネルギーを反射したのでは無いかと推測し、大きな鏡を作ってバルゴン自身に虹を反射させる事を提案する。司令部はそれにバルゴン退治の可能性を見出すと、天野の協力を得て、カジカ山頂のマイクロウエーブ用アンテナを巨大な凹面鏡へと改造し、バックミラー作戦を実行に移す。アンテナの周辺に集結させた兵器が湖畔のバルゴン目掛けて攻撃を開始すると、バルゴンは直ちに虹を発生させる。アンテナによって反射された虹は、思惑通り、バルゴンの体に大ダメージを与えるが、バルゴンは反射を学習し、虹を出さなくなる。
圭介達は再び為す術を無くして途方に暮れる。程なく、冷凍から解き放たれたガメラは息を吹き返すと、琵琶湖に飛来する。ガメラはバルゴンとの闘争を制すと、首元に咬み付いたまま、バルゴンを湖の中に引きずり込む。バルゴンは断末魔にも似た虹を発生させた後、水中で息絶える。ガメラは琵琶湖から飛び去る。圭介はカレンの前で、自らの過ちにより、大勢の犠牲が出た事への悔悟を吐露する。カレンはできるだけの事をしたと労う。圭介はカレンに詫び、ニューギニアにカレンを送っていく意向を示すと、唯一の家族である兄を失って一人ぼっちだと嘆く。カレンはそれを否定し、圭介の手に自らの手を添えると、一人では無いと諭す。圭介もまたカレンの手に自らの手を添える。