フィリップ・ラショー,ニコラ・ブナム監督作「真夜中のパリでヒャッハー!」("Babysitting" : 2014)[DVD]
出版社に勤務するマンガ家志望の男が、誕生日の夜に社長から任された邸宅での子守の仕事が、誕生日を祝う為にやってきた大勢の友人達によって、収集が付かない程の大騒動に発展していく様を描くコメディ作品。
パリ、6月25日。マンガ出版社の受付として働くマンガ家志望のフランクは30歳の誕生日を迎える。フランクは自作のマンガを社長ショデルに見せに行く事を決意し、社長室に向かう。その途中、フランクはエレベーターで生意気な少年と乗り合わせる。フランクは社長室を訪ねると、ショデルに勤務歴二年でマンガ家を志望している事を明かし、原稿を差し出すが、ショデルはそれに見向きもせず、電話をしながら部屋を出て行く。その後、フランクは休憩中に幼馴染の親友サム、アレックスと一緒に誕生日パーティの買い出しに行く。サムはSNSを通じて大勢の友人達に参加を呼びかけている事を明かす。フランクは未練を抱く元カノのソニアが来ないとの見込みを示す。ソニアはフランクの同僚だったが、退職してカップケーキ屋を開業しており、フランクは送別会以来ソニアと会っていないのだった。
程なく、ショデルは妻から連絡を受け、雇っている子守が襲われて重傷を負って来られなくなったとの報せを受ける。ショデルはその日の夜に妻と一緒に出版大賞の授賞式へ出かけなければならず、目の前に居合わせたフランクに、週明けにマンガを見るという条件で子守を依頼する。フランクはマンガを見てもらう事を優先し、誕生日パーティの中止を決意する。
終業後、フランクは指定された時刻にショデルの邸宅を訪ねる。出迎えたショデル夫人はリビングとキッチンを案内し、翌日18時に戻る事を明かすと、息子レミの喘息発作用の吸入器をフランクに託す。夫人は息子レミを紹介する為に呼び寄せ、二階からエレベーターで会った少年が降りてくる。レミは約束していた自分のサッカーの試合をショデルが見に来ない事を非難する。ショデルはレミを適当に宥めると、フランクに給料200ユーロを手渡して、夫人と共にそそくさと出かける。フランクはレミの部屋に行くと、テレビゲームに熱中するレミに、エレベーターでの一件の仲直りを提案するが、レミはそれを拒み、部屋から出ていかないといたずらされたと親に告げ口すると脅す。その後、フランクはリビングで映画を見て過ごす。間もなく、レミが降りてきて遊園地へ連れて行くようフランクに命じるが、フランクはそれを拒む。一方、夫人は授賞式直前に会場からフランクに電話をかけてレミの様子を尋ね、もう寝ていると聞いて安心する。
翌朝、ホテルで朝を迎えたショデル夫妻は警察から連絡を受け、邸宅で事件があり、無人の屋内にレミが携帯を置いたまま行方不明になった事を知らされる。夫妻は直ちに帰宅し、散らかり放題で荒れ果てた状態の邸宅の様子を目の当たりにする。捜査を指揮する警部ラヴィルは捜査本部を設置し、誘拐情報をマスコミに流す意向を示すと共に、ショデルのレンジローバーが当て逃げ被害に遭った事で事件が発覚した事を明かす。間もなく、捜査員が屋内でビデオカメラを発見する。ショデル達はそれを早速再生し、ラヴィルらと共に収録された動画を確認する。
運送会社で働くアレックスは、客の荷物から盗んだビデオカメラで、フランクの誕生日パーティの模様を一部始終撮影し、動画をネットに投稿しようと企てる。アレックスは動画を撮影しながら、サムと共にショデルの邸宅をサプライズで訪問し、フランクを驚かせる。フランクは子守を頼まれた事を明かし、パーティの中止を招待客に伝えるようサムに促す。アレックスは持参した睡眠薬で子供を眠らせるよう勧める。フランクはそれを拒むが、ソニアが来ると知って、結局レミに睡眠薬を飲ませて昏睡させる。間もなく、フランクは夫人から連絡を受け、レミが遊び疲れて寝ており、子守は順調だと欺く。
その後、サムがSNSで呼びかけた大勢の友人達が邸宅に押しかける。フランクは困惑するが、ソニアがカップケーキを持参してやってくると、俄に気を良くする。サムは人妻と交際していながら、密かにソニアを狙っている事をアレックスに打ち明ける。ソニアはいとこのエルネストをフランク達に紹介する。その後も続々と客が集まり、サムを筆頭に地下から無断で持ち出した酒を飲んで馬鹿騒ぎを始める。フランクは手に負えなくなり、事情を伝えてパーティをお開きにしようと試みるが、客達は聞く耳を持たず、そうこうしている内にレミが目を覚まして二階から降りてくる。フランクは両親に黙っていて欲しいとレミに頼み込む。レミは300ユーロを要求する。フランクは給料以外に持ち合わせが無く、客から金を借りて回っている内に、レミの姿を見失い、屋内を探し回る。エルネストはレミが自転車に乗って出ていった事を知らせる。アレックスは無断でショデルの新車のレンジローバーを車庫から出す。フランクは友人にパーティをお開きにするよう依頼すると、サム、アレックス、ソニア、エルネストと共にレンジローバーでレミを捜しに出かける。
間もなく、フランクは遊園地の看板を見つけ、レミがそこに向かったと確信する。サムは交際中の人妻から連絡を受け、会話に興じる。エルネストはそれが自分の妻だと知って激昂し、サムに飛びかかる。エルネストが暴れた拍子に、車体が隣を走行中のトラックと接触し、アレックスは停車を余儀なくされる。エルネストが車を降りて激しい怒りを表出すると、そこにパトカーがやってくる。アレックスは警察に捕まるのを怖れる余り、咄嗟に車を発進させ、エルネストを置き去りにする。その直後、フランク達は自転車で走行するレミを発見するが、パトカーの追跡から逃れる為に通過する。アレックスは車道を外れて林道に逃げ込み、パトカーを撒くが、間もなく車を木に衝突させて大破させる。フランク達は傍に見える遊園地へ歩いて向かう。
フランク達は園内でレミを捜索し、射撃に興じるレミを発見する。フランクが連れ出そうとすると、レミはフランクが変質者だと喚き始める。フランクは一時間だけ遊ばせる事を認める。フランクとレミは色んなアトラクションを回って楽しむ内に心を通わせていく。休憩中、ソニアはレミに願いを尋ね、レミは父にサッカーを見せたいと答える。その後、ソニアは園内のステージで演奏に合わせてフランクと一緒に熱唱し、二人の距離が縮まる。ソニアはフランクに交際中の相手がいない事を明かす。
フランク達は帰路に就こうとした矢先に、屋台の男から食い逃げを非難されているエルネストと遭遇する。エルネストはサムを見つけるや、消火器で殴りかかろうとし、誤って屋台の男を殴り飛ばしてしまう。フランク達はその場から逃げ出す。その直後、レミが喘息の発作を起こして倒れる。フランクは吸入器を持ってきておらず、救急車を呼ぶのも躊躇われる事から困り果てる。その時、フランク達は傍に数台のゴーカートを見つけ、分乗して遊園地から脱出を図る。その際、サムが追ってきた男に襲われて置き去りになる。フランク達は追手を退け、公道を爆走して邸宅に戻る。
邸宅ではフランク達が出る前より更に多くの客が集まって、ナイトクラブさながらの乱痴気騒ぎに狂奔する。レミは吸入器で窮地を脱する。フランクは苦労の末に未明に客を追い返すも、荒れ果てた邸宅の惨状を見て途方に暮れ、サムに連絡して責任を問う。サムは武装した環境団体の集団が来て、出版社で再生紙を使うよう脅され、抵抗したが敵わなかったという筋書きを説く。一方、レミは密かにカメラに向かってフランクへのメッセージを記録し、一緒に過ごした時間が心底楽しかった事を明かし、フランクこそ理想の父親だと称賛する。その後、庭に残った客達が、騒音の苦情を入れに来た隣家に住むカールじいさん似の老人を、風船を付けたソファで夜空に飛ばす事で、空飛ぶ家を再現する場面でカメラの充電が切れ、動画は終わる。
夫人はフランク達が動画の中で早起きすると言っていた事から、レミの居場所はサッカーの会場だと悟る。そこへサムが掃除道具一式を持ってやってくる。サムはショデルらがビデオを見たとも知らず、環境団体襲撃の筋書きで弁解する。その際、サムは不慮の事故でショデルの父の形見の皿を割ってしまい、ショデルに殴り飛ばされた後、逮捕される。
フランク達はレミが出場する少年サッカーの決勝戦を観戦する。そこにショデルがやってくる。フランクもまた環境団体襲撃の筋書きで弁解しようとするが、ショデルにカメラを渡され、全てを知られたのだと悟る。ショデルは警察を外に待たせている事を明かすと、レンジローバーやピアノ、高級ワインに始まる被害額を論い、フランクが絶体絶命だと説く。フランクは自らの否を認めながらも、それと引き換えにレミは存分に楽しみ、ショデルもこうして試合を観に来たと反論する。ショデルは週明けに出社しなくても良いと告げ、夫人の元へ向かい、観戦を続ける。試合後、レミは両親が観に来た事を甚く歓ぶ。フランクは逮捕されるが、ソニアと熱いキスを交わし、復縁を叶える。後日、フランクはショデルの下で一部始終をマンガ「子守」と題して出版し、それを記念して開いたサイン会は大盛況を博す。