義のために命を落としながらも、謎の蟲の力で不老不死の体と化した剣客が、両親を殺された少女の用心棒を引き受け、仇討ちの死闘に挑む様を描く時代劇アクション作品。
江戸幕府の腰物同心を務める万次は、主の旗本の命令で、私服を肥やして民を苦しめているという役人を斬る。しかし、実はその役人こそ私腹を肥やす旗本をお上に訴えようとしていた。それを知った万次は義憤に駆られ、旗本とその場にいた同心六人を斬り殺す。しかし、殺した同心の一人が妹の亭主だった為に妹は気が触れてしまう。万次は自決を翻意し、妹を連れて江戸を離れる。間もなく、万次は立ち寄った川で怪しげな老僧の八百比丘尼と遭遇する。800年を生きているという八百比丘尼は、万次の心情を見抜き、理解を示す。その矢先に、妹は司戸率いる浪士組に捕らえられる。万次の首に掛かった賞金を狙う司戸は、妹の解放の条件として万次に刀を捨てるよう命じる。万次がそれに応じると、司戸は妹を解放した直後に背後から斬り捨て、百人を超える手下達をけしかける。激昂した万次は勇猛果敢にこれを迎え撃ち、左手と右目を失い、満身創痍になりながらも手下達を皆殺しにすると、最後に司戸と刺し違えて力尽きる。そこに八百比丘尼が現れると、万次は妹を亡くしては生きる意味が無いと説き、ひと思いに殺すよう頼む。八百比丘尼は身勝手だと詰ると、万次の胸に短刀を突き刺し、喇嘛僧が生んだという血仙蟲を傷口から注入する。万次は激痛に苦悶する。その途端に万次の左手は繋がり、傷口は塞がり、万次は不老不死の人間と化す。
五十年後。凛は無天一流の免許皆伝を目指し、師範代の父・浅野の道場で日々剣術の鍛錬に精進していた。ある夜、逸刀流統主の天津影久が率いる一派が道場に押し入る。流儀や格式にとらわれず、あらゆる武器、剣技を用いて勝つ事のみを目指す剣客集団と称する彼らは、国中の剣を滅ぼして流派を統一すべく、江戸中の道場を荒らし回っているのだった。天津は無天一流の師範代を全て殺した事を明かすと、逸刀流の軍門に加わるか滅びるかの選択を浅野に迫る。浅野はそれを拒む。天津は信条に基づき一対一での勝負を求め、浅野を一太刀で殺すと、凛には手出しせず、浅野の妻を自由に扱うよう手下に命じる。妻は手下達に慰みものにされた後、連れ去られる。手下の一人は浅野の刀を奪い去る。
二年後、凛は父の仇を討って母を見つけ出す為に修行に励んでいた。ある日、凛の前に八百比丘尼が現れ、事情を尋ねる。凛はそれに答え、天津らを捜し出して皆殺しにしてやりたいと訴える。八百比丘尼は江戸のどこかにいる絶対にくたばらない男を捜し出して用心棒に雇うよう促す。凛は江戸中を捜し回り、川辺の掘っ立て小屋で暮らす万次を見つける。万次は妹の生き写しの様な姿の凛に驚く。凛は万次に仇討ちの手伝いを哀願する。万次は全てを投げ打つ覚悟を凛に問い、その決意の程度を知ると、凛と町へ向かう。
夜、凛は毎月恋文を送りつけていた逸刀流の黒衣鯖人と遭遇する。黒衣は恋い焦がれる凛を殺して、永遠の自分のものにする意向を示す。黒衣は仲間の慰みぶりが悲惨を極めた為に、凛の母をその手で殺した事を明かすと、肩に据え付けた生首を見せる。凛は憤激して黒衣に苦無で襲いかかるが、黒衣は容易く退ける。そこに万次が現れ、黒衣に勝負を挑む。黒衣は万次の胸に致命傷を与えるが、傷は蟲によって直ちに塞がれる。万次は黒衣を殺すと、戸惑う凛に対し、蟲に生かされている事を明かす。万次は仇を討ちたければ強くなるよう凛に命じ、稽古を付ける意向を示す。凛は生きていると信じていた母の死を知って慟哭する。一方、町外れの屋敷に潜伏する天津の元へ、公儀から使わされた吐鉤群がやってくる。天津は人生を賭してあらゆる流派の垣根を取り除く決意を示す。それを受けて吐は、江戸全域に公儀御用達の武芸所を作る計画を明かし、逸刀流の剣士を師範として招きたいと打診する。天津は条件として流派を逸刀流と命名し、自らを頭取とする事を求める。吐は老中の判断を仰ぐべく一旦戻る。天津の手下の凶戴斗は、黒衣がやられた事を天津に報せる。天津は手下に用心するよう指示する。
凛は刀鍛冶に万次の扱う武器の数々を持ち込み、刀研ぎを依頼する。その際、凛は店の奥に父の刀を見つける。そこへ凶が仕上がったその刀を取りに来る。凛はそれがかつて道場から刀を奪った手下の男だと気付くと、直ちに万次にそれを報せる。万次は凛を小屋に残し、男がいるという宿に向かう。その途中の森で万次は待ち受けていた凶と遭遇する。凶は俊敏さで万次を翻弄した末に沼に嵌めて動きを封じる。凶はその出自について、百姓の小倅であり、妹が理不尽な咎を受けて殺された事を明かし、侍への敵意を露わにする。万次はそれを意に介さず、凶を撃退するが、止めを刺さずに立ち去る。万次は小屋に戻ると、凛に父の刀を返す。万次は凛が妹と似ている事を明かすと、思い出のおかげで力が出せる時があると説き、父の思い出を大事にするよう諭す。一命を取り留めた凶は、天津に凛が不死の剣士を用心棒に雇っている事を報せる。
万次と凛は逸刀流捜しの途中で茶屋に寄る。そこに天津の所在を知るという虚無僧で逸刀流剣士の閑馬永空が現れる。閑馬は天津の志や腕前に敬服しながらも、人である以上はいつ倒れるやも知れないが、万次ならその心配は要らないと説き、自分と組んで天津を殺す事を打診する。万次がそれを拒むと、閑馬は突然万次に襲いかかる。万次は閑馬の背中を刀で貫いて倒すが、閑馬はすぐに立ち上がる。万次は閑馬もまた血仙蟲により不死身なのだと悟る。閑馬は200年の長きに渡って時代が変わり、妻や友が先立つのを見てきた事を明かすと、死ねないのは酷い事だと説き、その場を後にする。万次は閑馬に斬られた傷口が一向に塞がらない事に気付く。その矢先に、古傷が開き始め、万次は閑馬が刀に何かを仕込んでいたのだと悟ると、激痛を訴えて倒れる。凛は医者を呼びに行こうとするが、その途中で閑馬に捕らえられ、山小屋に連れ去られる。その夜、万次は山小屋に駆け付け、凛の窮地を救う。万次と閑馬は激しく斬り付け、刺し合う死闘を繰り広げる。閑馬はチベットに訪れた時に入手したという、蟲の力を弱める毒「血仙殺」を刀に浸し、万次に襲いかかる。万次は閑馬の刀を奪うと、それで閑馬の体をバラバラに切り落とす。万次は閑馬が死ぬ為にわざと斬らせたのだと悟る。閑馬は生きるのが疲れたと吐露して息絶える。
それから数日、町で何者かによる逸刀流剣士の惨殺が相次ぐ。吐は天津の元を訪ね、老中が天津の申し出を承知した事を報せる。同じ頃、天津は、かつて公儀の剣術師範を務めていた由緒ある心形唐流統主の伊羽研水から、逸刀流の同志に加わりたいとの申し出を手紙を通じて受けており、それを以って名実ともに江戸の頂点を極められると確信し、伊羽の指南所がある高尾山に出向く意向を側近に伝える。一方、万次は町で天津が送った三味線弾きの乙橘槇絵と遭遇する。万次は凛を先に帰らせると、人気のない場所に移り、乙橘との闘いに臨む。乙橘は相次ぐ逸刀流剣士惨殺が万次の仕業だと疑い、俊敏な身のこなしで三節棍の刀を巧みに扱って襲いかかる。毒の影響で傷の塞がりが遅い万次は苦戦を強いられる。乙橘は万次を窮地に陥れると、急に恐れを訴えて武器を捨てる。乙橘は天津の志を疑い始めると刀が持てなくなってしまう事を明かす。そこへ万次の危機を察知した凛が駆け付ける。乙橘は復讐の為に大勢が死んで怖くないのかと凛に尋ねる。凛はどんな汚い事をしても仇を取ると決めており、命を張ってくれる万次を死なせられないと答える。乙橘は落涙すると、万次に凛を守ってやるよう言い残して立ち去る。乙橘は万次を斬れなかった事を天津に報せ、姿を眩ます。
程なく、凛は修行に向かう途中の林道で、一人で鍛錬する天津と遭遇する。凛は苦無で襲いかかるが、天津はそれを退ける。天津は凛が浅野の娘だと気付くと、自らが愛用する祖父の形見の斧と浅野を斬るに至った経緯について語る。その昔、天津と凛の祖父は互いに無天一流の免許皆伝を競う剣豪同志だった。ある日、二人は師たる凛の曽祖父と共に夜盗に囲まれ、天津の祖父は凛の祖父より多くを殺し、師を守った。しかし、師は天津の祖父の剣には資質が無いと言い放った。天津の祖父は一介の門弟には皆伝を許す気など無かったのだと詰った。師は南蛮の斧を使った事を咎め、天津の祖父を破門に処した。天津は憐れな最期を遂げた祖父の無念を晴らす為に凛の父を斬ったのだった。天津は自分を殺す為に編み出した凛の技が無天一流では邪道視されるだろう事から、凛が既に自分と同類だと説く。小屋に戻った凛は、天津と会った事を万次に伏せる。天津は吐から懇親の宴の申し出を受け、師範代を全員集めるよう求められるが、高尾山に出向く事から対応を側近に任せる。
万次と凛は、万次の異名「百人斬り」を騙って逸刀流の剣士を惨殺し、賞金を稼いでいる無骸流の尸良と出会う。尸良とその仲間の偽一と百琳が逸刀流を共通の敵としている事から、万次は凛の意向を受けて尸良と手を結ぶ事にする。尸良は天津の元に送っている内通者からの情報で、天津が女装して高尾山に行くつもりだと知る。万次は尸良と共に天津が通るであろう街道へ向かう。そこに天津の斧にそっくりな形の風呂敷を抱えた女が現れる。尸良は女に斬り付け、それが囮だった事が判明する。そこに逸刀流の刺客二人が現れる。尸良は内通者の情報が偽であり、天津に掛かった三十両の賞金をふいにした事に憤慨する。万次が一人を追ってその場を離れると、尸良はもう一人を殺した後で女を犯そうとする。それを止めに入った凛は尸良に殴り飛ばされるが、屈する事なく、尸良が逸刀流と一緒だと非難する。尸良は痺れを切らして凛を殺そうとする。そこへ万次が駆け付け、尸良の右手を鎖鎌で切断する。尸良は退散する。
小屋に戻ると、万次は不死の体になった日の出来事を述懐する。その後、凛は手紙を残して万次の元を去る。万次は百琳と偽一が公儀に雇われの身だと知って手を切る。百琳達は死罪の咎人で幕府の言うとおりにしなければ殺されるのだと弁解する。万次は幕府が逸刀流をお抱えにするつもりなどなく、潰そうとしているのだと喝破する。小屋に戻った万次は凛の手紙を見つける。その中で凛は、万次が死にたいと考えており、殺してくれる相手と巡り会えると思って用心棒を引き受けたのだと推察し、万次を死なせたくないと考えるに至った事を明かすと、自分の様に無力な人や無念を抱える人の助けになってやるよう願う。万次は凛を捜しに行く。
天津は伊羽の指南所を訪ねる。伊羽は申し出の件を一方的に辞退する。天津は指南所の前で公儀の軍勢の待ち伏せに遭い、全てが吐の謀略だったと悟る。伊羽は指南所で自刃する。天津は軍勢を皆殺しにする。一方、天津の屋敷では吐が懇親の宴に集った逸刀流の師範代らの食事に毒を盛り、皆殺しにする。天津は山を降りる途中で凛と遭遇する。そこへ新たに公儀の軍勢が追ってくる。万次は逸刀流の剣士三人の待ち伏せに遭うが、蟲の反応が悪く苦戦を強いられる。そこへ八百比丘尼が現れ、じっとしていれば命を捨てられるのになぜ生きようとするのかと問いかけ、凛の命を大事に思うその優しさを捨てきれない為に、無限の世界を彷徨い続ける事を憐れむ。万次は三人を撃退し、凛の元へ急ぐ。天津は吐率いる数百人からなる軍勢に包囲される。吐は逸刀流剣士が全滅した事を明かし、誇りある死を選ぶよう天津に促す。天津は志は滅びないと答える。凛は吐の卑怯なやり方に異を唱える。吐は手下に凛を殺すよう命じる。そこへ万次が駆け付ける。万次と天津は別々に公儀の軍勢に挑む。
万次と天津は満身創痍になりながらも死力を尽くして戦う。その最中、乙橘が駆け付け、天津に加勢する。乙橘は火縄銃部隊から天津を守って命を落とす。尸良は戦場に馬で乱入し、凛を攫う。天津は軍勢を撃退し、吐を決闘の末に殺す。万次もまた軍勢を撃退し、尸良の小屋に向かう。尸良は縛り付けた凛を、失った右手に取り付けた棘で刺すと、万次に武器を捨てるよう命じる。万次は傍の井戸に全ての武器を捨てると、尸良が油断した隙に乗じて、先に凛から受け取って忍ばせていた苦無を投げつけ、凛を解放する。万次は丸腰の状態で尸良を誘き寄せ、崖から突き落として殺す。万次は凛と共に天津の元へ向かう。万次は死闘の末に天津を屈服させると、凛を呼び寄せ、天津に止めを刺すよう促す。凛は刀を構えたまま逡巡する。天津は立ち上がり、自らの子孫が武の恐怖を蘇らせると告げて立ち去ろうとする。凛は天津を呼び止め、斬り付けに行く。天津は身を翻し、斧で凛を返り討ちにしようとするが、万次が咄嗟に身を挺してそれを受け止める。凛は天津の体を刀で貫いて殺す。万次はその場に崩れ落ちるが、凛の切なる呼びかけに応じて目を覚まし、尚も不死であり続ける事を示す。