ノーバート・ケイル監督作「スキン・コレクター」("Replace" : 2017)[DVD]
記憶を失った女が、原因不明の皮膚疾患を抑える為に、殺人を犯して皮膚を移植していく内に、隠された真実に辿り着く様を描くサイコ・スリラー作品。
近未来のトロント。ピアニストのキラはある晩、出会って間もない恋人ジョナスのアパートに招かれ、一晩を過ごす。朝になるとジョナスの姿は無く、キラはそのままアパートを出るが、自分の家に帰ろうとして無意識にジョナスのアパートに戻ってきてしまう。キラは鍵を持っており、部屋の中へ入る。その直後、キラは左手の指に乾癬状の疾患を見つける。キラはなぜかその部屋について良く把握しており、更に自分宛に届いた郵便物を見つける。ジョナスと連絡がつかない為、キラは携帯で自分の家の番号に電話を掛ける。その部屋の電話が鳴り出した事で、キラはそこが自分の部屋だと悟る。動転したキラは少女の幻覚を見る。キラはピアノの譜面に挟んであった、ジョナスと自分が写った写真を見つける。
キラは指の疾患が広がっているのを確認する。その矢先にキラの知人が訪ねてくるが、キラが応対を躊躇う内に立ち去る。キラはドアを開けて飛び出した直後に気を失う。そこへ隣人のソフィアが帰ってきて、キラを部屋に戻して介抱するが、キラはソフィアを思い出せずに困惑する。人当たりの良いソフィアは半年前からそこに住んでおり、大使館で働く為に中国語を学んでいる事を明かす。キラはジョナスについて尋ねるが、ソフィアは面識が無いと答える。ソフィアはキラの手の疾患を慮る。
キラは少女の幻聴に苛まれ、疾患は掌全体に広がる。改めて訪ねてきたソフィアはキラの疾患を心配し、医師に見せるよう促す。キラは診断書を見つけながらも、いつから受診しているか思い出せず困惑する。キラはソフィアと乾杯する際に勢い余ってグラスを割り、ソフィアは破片を踏んでしまう。破片に付いたソフィアの皮膚に魅せられたキラは、患部の皮膚を剥がしてそれと置換し、ソフィアの皮膚がたちまち癒着する様を目の当たりにする。キラはソフィアに泊まっていくよう促し、健康で美しい皮膚への執着心を自覚する。
翌日、キラは遺伝子研究所のクローバー博士の診断を受ける。クローバーはキラが一時的な記憶喪失状態にあり、また表皮が異常な速さで老化し、死滅している事を明かすと、移植の前にその原因を探る必要性を説き、後日分析結果を聞きに来るよう命じ、痛み止めを処方する。キラは薬局で薬を受け取り、早速飲み始めるが、疾患は腕から肩まで拡大する。その夜、キラは別の病院の医師の診断を仰ぐが、楽観視され、クローバーに従うよう促される。痺れを切らしたキラは、遺体安置室に忍び込むと、搬入されたばかりの女の遺体から皮膚を切除し、患部と置換するが、癒着しないと分かって逃走する。動転したキラはクローバーに連絡する。クローバーは薬が効いてくるまで落ち着くよう促し、明日の午前中に診察する意向を示す。キラは自棄を起こしてバーで酒を飲むと、閉店後に店員の女を突き倒して皮膚を剥ぎ、患部と置換して癒着を確認する。キラは女を殺して患部の皮膚を全て置換する。
翌朝、訪ねてきたソフィアは、キラの皮膚がすっかり綺麗になった事に驚き、キラと口づけを交わす。その後、キラはクローバーの診察を受ける。クローバーは新たな処方箋を出すと、一日毎に経過観察を行い、明日再び診察する意向を示す。間もなく疾患は再発する。キラはソフィアと親交を深めるが、ソフィアが疾患を心配して詮索する事に不快感を露わにする。翌日、疾患が下半身にまで拡大する。キラは夜中にクラブを訪ねると、トイレで女を襲って絞め殺し、皮膚を奪って逃走する。そこへ偶然居合わせたというソフィアが現れる。キラはソフィアを遠ざける。
キラは断片的に蘇るジョナスと過ごした記憶に苛まれる一方、疾患の再発に苦悩する。キラは若い女を拉致して浴室に監禁する。間もなく、ソフィアが心配してやってくる。キラは浴室の女に気付かれぬよう応対する。ソフィアは詮索について詫び、キラと口づけを交わす。キラはソフィアを帰すと、浴室の女から皮膚を奪い、クローバーの診察を受けに行く。クローバーは患部を切除するだけではなく、人工的に再生した幹細胞を移植する事で細胞レベルで治療する意向を示し、十分な研究の為にあと数日必要だと説く。キラはクローバーに不信感を抱き、夜中にクローバーのオフィスに忍び込んでカルテを盗み出す。
キラはカルテに付属するメモリーカードをソフィアの部屋の端末で見せてもらい、被験者フォルダの中に自分のデータを見つける。それにより、若返りを切望する64歳のキラがクローバーの治験に志願し、手術後に一度は若返りが実現した事、ジョナスとは20年前に離婚し、娘がいる事が明らかになる。ソフィアはそれに構わずキラを愛していると訴える。当惑するキラは娘に会う事を望むが、ソフィアは母親だと気付かないはずだと説く。キラは痛みと皮膚の老化を繰り返すのは限界だと訴える。ソフィアはクローバーが解決してくれるはずだと説くが、キラはクローバーやラボの人間がいないところへ逃げる事を望む。ソフィアはキラを支える為なら何でもすると応える。キラはソフィアを外で待たせて部屋に戻ると、娘の写真の裏に記された番号に電話をかけて謝意を伝えた後、部屋に油を撒いて火を放つ。
キラはソフィアとバイクに乗ってアパートを離れ、カルテに記された他の被験者を訪ねて回るが、皆失踪している事を知る。キラは最後に娘の家を訪ねる。玄関に出てきた6歳の孫娘は、キラの首の疾患を見て悲鳴を上げる。それに気づいて娘が出てくると、キラはその場から逃げ出す。夜、二人はモーテルに泊まる。ソフィアはクローバーに疾患を見せるようキラに促すが、キラは実験台になる事を拒む。ソフィアは睡眠薬入りの水をキラに飲ませると、自らが生物化学を専攻しており、クローバーに雇われてキラの監視を頼まれていた事を明かし、キラは最高の成功例なのだと説く。間もなくキラは意識を失う。
キラはラボの手術台の上で目を覚ます。クローバーはキラが若返りに必要な術を求めて、何年もかけてあらゆる医学界や研究所を訪ね、自分の元へやってきた事、老化の激しい組織だけを若返らせるつもりが、副作用によって記憶の中枢までリセットされてしまった事を明かすと、他人の皮膚に適応する原因を測りかねる。クローバーはキラの状態が目的達成に程遠いと嘆くと、別の仮説を検証すべく、新たな皮膚の適用試験を始める。そこへ駆けつけたソフィアは、事前に聞かされていた話と違うと知って、クローバーが暴走していると詰る。クローバーは老化を克服する為なら数人の被験者が犠牲になっても誰も気にしないと開き直る。ソフィアはキラの枷を外す。クローバーはキラの殺人に対する過失をソフィアが問われる事になると脅す。ソフィアはキラに二度と殺させず、また必要があれば公表すると応え、キラを連れ出そうとする。クローバーはソフィアの首元に薬剤を注射する。キラはクローバーを殴り倒し、足で絞殺する。
ソフィアはキラにこれ以上殺さないと約束させ、二人はラボから逃走を図る。間もなく、ラボの全面閉鎖と職員の避難命令が発令される。キラは職員をメスで刺殺してエレベーターを奪取し、ソフィアを匿うと、解毒剤を探しに行く。キラは警備員を背後から襲って拳銃を奪うと、逃げる直前の二人組の女職員を拳銃で脅し、解毒剤を要求する。職員はそれが作用時間の短い筋弛緩剤であり、解毒剤は無いと答える。キラは二人を射殺し、皮膚と制服を奪ってソフィアの元へ戻る。ソフィアはキラの皮膚を見て約束を破ったと悟る。キラはソフィアと一緒に生きていく事を望む。ソフィアはキラを愛しすぎたと告げると、拳銃をキラの顎に突きつけ、引き金を引く。