チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

ニンフォマニアック Vol.1

ラース・フォン・トリアー監督作「ニンフォマニアック Vol.1」("Nymphomaniac: Vol. I" : 2013)[DVD]

ある色情狂の女の、性欲に翻弄される半生を描くドラマ作品。二部構成の前篇。

ある冬の日。買い物帰りの老夫セリグマンは、雪のちらつく路地裏で、負傷し仰向けに横たわっている中年女ジョーを発見する。ジョーが病院や警察への連絡を拒んだ為に、セリグマンは自宅へ連れて行き、寝室で介抱する。自分を悪い人間だと言うジョーに、セリグマンは事情を話す様に促す。ジョーは寝室の壁に飾ってある釣り用の毛針に目をやると、それを話のきっかけにすると告げる。ジョーは教訓めいた長い話だと断った上で、章立てて彼女の半生を語り始める。読書家のセリグマンは、その知見を元に、時に批判的、時に好意的な感想を交えながら、ジョーの話に耳を傾けていく。

第1章「コンプリート・アングラー(釣魚大全)」

2歳で性器に気付いたジョーは、幼い頃から友達Bと共に、性を意識した遊びに耽っていた。ジョーは医者の父が大好きだったが、一方で冷たい母の事を快く思っていなかった。ジョーはセリグマンに対し、夕陽に多くを求めすぎた罪と称して、自らを批判的に語る。ジョーは幼い頃、よく父から木や葉について教わった。その中でも、父がよく話したトネリコの葉の話がジョーは好きだった。セリグマンはどこに釣りが絡むのかと疑問を呈す。ジョーは、処女を捨てる事が重要だったと返す。15歳になったジョーは、ジェロームという青年に処女を捧げた。ジェロームに膣を3回、アナルを5回突かれた事が屈辱となり、ジョーはもう誰ともセックスしないと誓うのだが、その誓いはすぐに破られる。2年後、Bの発案で、男を誘う服を着て列車に乗り、社内で男を漁り、性交した数を競うゲームをする。セリグマンはその話を川釣りに擬える。普通車の男達を漁り終えたジョーとBは、一等車で既婚者の男を誘惑し、ジョーがオーラルセックスに持ち込み、Bに勝利する。ジョーはこれらの話を内省的、批判的に語るが、セリグマンはユーモラスだと肯定的に評価する。セリグマンがミルクティとルゲラーを用意し、ジョーに振る舞うと、ジョーはルゲラーに添えられているケーキ用フォークをきっかけにして、話を進める。

第2章「ジェローム

列車のゲーム以来、性欲が刺激されたジョーは、多くの男達を取っ替え引っ替えし、セックスに明け暮れるようになる。またジョーはBと共に、好色な女を集めたグループを発足する。愛に取り付かれた世の中に反抗し、恋人は持たず、同じ男と2度はヤラないというのがグループの掟だった。しかし、リーダーのBがその掟を破った事で、ジョーはグループを抜ける。ジョーは父の様に医学を志すも挫折し、職を求めて、とある印刷会社のアシスタント職の面接に臨む。その会社の責任者はなんとジェロームだった。責任者である伯父が保養中である為、ジェロームが代理を務めていたのだった。ジョーはジェロームの一存で採用が決まる。ジェロームはジョーとの再会を喜び、肉体関係を迫るが、ジョーは拒絶する。社内で仕事を回してもらえないジョーは、ジェロームの執務室の掃除をし、紅茶とルゲラーを供する。ジェロームはケーキ用フォークが添えられていない事を詰る。ジョーはこれが女々しいと振り返る。ジョーはそれ以降、社内の男達を手当たり次第誘惑し、セックスをする。ジェロームはそんなジョーの振る舞いが気にいらなかった。ところが、ジョーはジェロームの所作に秩序を見出し、所有されたいと願う様になる。それは制御不能な愛だった。一方その頃、ジョーは散歩の習慣が根付く。どれだけセックスをしても、ジェロームの姿を追い求めてしまうジョーは、散歩の過程でジェロームの住む家を突き止める。一ヶ月が過ぎ、ジョーは思いの丈を綴った手紙をジェロームに手渡す事に決めるが、突然会社に伯父が戻ってくる。同時にジェロームは忽然と消息を絶つ。ジェロームは秘書リズと結婚し、世界中を旅すると言い残し、消えたという。会社をクビになり、記憶からジェロームのシルエットが消えていくと、ジョーはその反動でより激しく男漁りを始める様になる。セリグマンの寝室にある1枚の肖像画がきっかけとなり、次の話に進む。

第3章「H夫人」

ジョーは同時に複数の男達と付き合い、セックスをしながら、出会いと別れを繰り返す様になる。ジョーはその中の1人の男、妻子持ちのHが面倒になり、関係を絶とうとしていた。ジョーはHに、妻子を捨てられないのなら別れようと切り出すと、Hは妻子を捨てて、ジョーの部屋に戻ってくる。その直後、H夫人が3人の子供達を連れて、押しかけてくる。夫を寝取られた夫人は、ヒステリックに振る舞い、家庭を崩壊させたジョーの孤独を願うと告げると、子供達を連れて去っていく。ジョーはその時の事を、人生観に何ら変化をもたらさなかったと、あっけらかんと振り返る。ジョーはそうやって何人もの男達を破滅に追いやったが、色情狂は無感覚だった。しかし、孤独を感じる事は認めていた。セリグマンが拾い読みしているというポーの本から、せん妄の話題となり、次の話に進む。

第4章「せん妄」

ジョーの父が重い病を患い、入院をする。母は病院に訪れず、見舞うのはジョーだけだった。次第に父はせん妄に苦しむ様になる。父の症状が悪化する度、ジョーは病院の職員と行きずりのセックスをし、気持ちを宥める様になる。ジョーは父の回復を願ったが、その甲斐虚しく、父は息絶える。しかし、ジョーの感情は死んでいた。それどころか、ジョーは父の死の面前で濡れていた事を恥じる。セリグマンはそれすら肯定的に評価する。ジョーはセリグマンが聞いているテープに興味を示す。それはバッハのオルガン小曲集で、バッハがフィボナッチ数列を忍ばせ、作曲に多用していたポリフォニーで構成されていた。セリグマンがそれを低声部、中声部、高声部からなる定旋律だと説明すると、ジョーは色情狂が性的体験の総体だとし、次の話に進む。

第5章「リトル・オルガン・スクール」

ジョーは3声に合わせて、3人の男に絞って話すと告げる。その当時、ジョーは7~8人の男と同時に付き合い、セックスをしていた。低声部に当たるFは気遣いができ、ジョーの事は何でも分かってくれる男だった。Fの望みはジョーをイかせる事で、ジョーにとっては基礎となる存在だった。高声部に当たるGは、かつてない程に焦らす男で、しなやかで興奮させる野性的な動きが特徴だった。ジョーはフルタイムで働きながらも、男達とのスケジュール管理に余念が無かった。その最中にも散歩の習慣は欠かさなかった。ジョーにとって、繰り返される散歩は単調で意味が無い人生のメタファーだった。ある時、ジョーが森を散歩していると、破り捨てられた写真を拾い集める内に、ジェロームと再会する。ジェロームは妻と喧嘩別れをした後だった。セリグマンはその話を、偶然にしては出来過ぎていると訝る。信じるか、信じないかは自由とし、ジェロームがジョーを定旋律へと導く存在となる。その後、ジョーはジェロームとセックスに及ぶが、性器が何も感じなくなっている事に気付く。

 


鬼才ラース・フォン・トリアーの怪作ニンフォマニアック、すなわち色情狂である。二部構成だが、長いから前後編の二部に分かれているのであって、4時間で一本の作品である。道端で殴られ、倒れていた女が、助けてくれたおっさんに、自らの色情狂としての半生を余すところ無く語っていく、という形式だが、とにかく終始セックス尽くしで童貞の僕には完全に未体験ゾーン、別次元のハナシだった。18禁指定だが、肝心なところにはボカシがしっかり入っている。しかし、セックスもフェラもクンニもガチでやっている様に見える。当然、チンコもマンコもモロに曝け出している様に見える。エンタメというよりアート系の作品だが、それにしてもどの演出も凄まじく、ビジュアルだけでお腹いっぱいになってしまう。全く先読みできないこの世界観は、怖いもの見たさも相まって、とてもスリリングで心地よい。前篇はジョーの若い頃(10代~20代)が描かれ、ステイシーマーティンが若きジョーを演じているのだが、新人とは思えぬ怪演ぶりで感服した。後篇はもっと凄いんだよね。

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