ザック・ブラフ監督作「ジーサンズ はじめての強盗」（"Going in Style" : 2017）[BD]
隠居生活を送る老人トリオが、銀行に奪われた年金を取り戻すべく、無謀にも銀行強盗を企て、実行へ向けて奮闘する様を描くクライム・コメディ作品。
2016年5月、ブルックリン。隠居老人のジョーは、離婚して越してきた娘レイチェルと14歳の孫ブルックリンと、慎ましく年金生活を送っていた。ところが、定年まで勤め上げたウェクスラー製鉄から年金の振込が無くなり、ローンの返済が滞った事で自宅の差し押さえ通知が届く。ジョーは長年利用しているウィリアムズバーグ銀行に事情を訊きに行く。かつて融資を担当した行員チャックは、金利優遇期間が終了したのに伴い、返済額が三倍になった事を伝え、契約時に説明したと主張する。ジョーは娘が安月給の看護助手で孫の学費も必要な事から、家を手放すわけにはいかないと訴えるが、チャックはつれなく応じる。その時、マシンガンで武装し、マスクを着けた三人組の強盗団が襲来する。三人は無駄のない手慣れた所作で客と行員を制圧し、金を要求する。リーダー格の男がチャックの部屋に入ってくると、ジョーは財布を差し出して助けを請うが、男は年寄りを敬うのは社会の義務だと説き、受け取りを拒むと、チャックから有り金を全て奪う。三人は160万ドルを奪って颯爽と立ち去る。ジョーはFBI捜査官ヘイマーの聴取に応じ、男の首に見事なタトゥーがあった事を伝え、彫師を探せば強盗も見つかるはずだと説く。
ジョーは老人クラブの集まりに参加し、向かいの家に住む同僚で旧知の仲のウィリーとアルバートに銀行強盗の一部始終を語る。期せずして、ウェクスラーの年金課から書留が届いた事で、三人は年金の行く末に不安を抱く。間もなく、三人は従業員らと共にウェクスラーの集会に出席する。責任者はウェクスラーが同業他社と合併し、国内業務を閉鎖してベトナムへ移転する事、それに伴いウェクスラーの年金が消滅する事を一方的に通告する。従業員らは会社にブーイングを浴びせる。三人は途方に暮れる。ウィリーはなんとかなるはずだとジョーを励ますが、ジョーは家に新たに届いた債務不履行通知を見て、差し押さえを憂慮する。
腎不全を患うウィリーは、主治医から腎臓移植が直ちに必要だと知らされ、ドナーを探すよう促される。誕生日を迎えたウィリーは、離れた場所に暮らす最愛の孫カニカからシャツと写真を受け取る。一方、アルバートは趣味のサックスを知人アニーの孫エズラにレッスンしていたが、どうにも上達しない為に匙を投げ、その旨をアニーに伝える。アニーは理解を示すと共に、アルバートに対する好意を露わにする。
三人は老人クラブの食事会に参加する。ジョーとアルバートはウィリーに、カニカの写真をダイアルに収めた腕時計を贈る。ウィリーは甚く喜ぶ。ジョーは差し押さえまで30日の猶予しかない事を明かすと、二人に銀行強盗を提案する。ジョーは銀行が国を滅ぼし、庶民の夢を壊しているのだと説くと、三人で成功すれば良い老後が送れ、捕まったとしても寝床と三食付きでまともな医療も受けられ、このまま生き甲斐も無く死ぬのを待つよりマシだと主張するが、二人は困惑する。ウィリーはクラブの面々に誕生日を祝ってもらう。その夜、ウィリーはジョーに電話をかけ、マシな暮らしを送る為に銀行強盗の話に応じる意向を示す。二人は年金分だけを奪う事を約束する。ジョーはアルバートにも打診するが、アルバートは断る。
翌日、三人は予行演習の為に馴染みのスーパーマーケットを訪ねる。ウィリーとジョーはコルドンブルーに使う材料の万引きを企て、アルバートを車で待機させる。ウィリーとジョーは食材を服の中に詰め込み始めるが、すぐに巡回警備員に目をつけられる。アルバートは指示に従わずに店に入り、買い物を始める。店員として勤めるアニーはアルバートの手伝いを買って出るが、アルバートは恋愛するつもりは無いと伝える。ウィリーとジョーは店から食材を持ち出して車に向かうが、アルバートがいない事に気付くと、傍にあった電動カートに乗って逃走を図る。間もなく、二人は追ってきた警備員に捕まる。アルバートもまた巻き添えを食らって捕まる。店長は三人に説教すると、一度だけ多めに見る意向を示して帰らせる。アルバートは共犯にされた事に憤って一人で帰る。ジョーとウィリーは万引きすらままならない事を知ると、プロの助けを求めるべく、レイチェルの元夫で医療用大麻の販売を営むマーフィーの元を訪ねる。ジョーはマーフィーが仕事柄、顔が利くはずだと見込み、悪人の紹介を請う。
後日、アルバートは再びスーパーへ買い物に行く。アニーは毎日を精一杯生きるべきだと説き、アルバートをディナーに誘う。アルバートはそれに応じてアニーの家に招かれ、二人はセックスする。アルバートは嬉々として、ダイナーでウィリー達と落ち合う。三人は新聞記事から、ウェクスラーの年金が債務の返済に充てられ、結局のところ、銀行が年金を横取りにするのだと知って憤慨する。アルバートは銀行強盗に加わる事を決意する。三人はマーフィーに紹介してもらった、ペットショップを営むヘスースの元を訪ね、25％の報酬で強盗の手解きを請う。ヘスースは難色を示すが、ジョーの熱意のこもった訴えを聞いて三人が本気だと知り、応諾する。
三人はそれぞれの予測する寿命を合算した値27年に、年金額をかけ合わせた121万5000ドルを奪う事にし、それ以上の金を寄付する事で合意する。ジョーの家の差し押さえまで20日、三人はヘスースの指導の下、入念な下見を繰り返し、綿密な計画を立て、更に肉体トレーニングと、不測の事態に備えた拳銃の射撃演習に励む。また、三人はアリバイ工作の為に、当日催される老人クラブの慈善カーニバルの実行委員に立候補する。三人は成功を信じて訓練を重ね、いよいよ決行日を迎える。
当日の朝、ジョーはマーフィーを自宅に招くと、父親になる訓練と称して朝食を作らせ、ブルックリンの登校に同行させる。ジョーはマーフィーにチャンスを与えるようブルックリンに促すと、最期を覚悟し、愛を伝えて抱き締める。その後、ジョー達三人は慈善カーニバルでそれぞれの持場に付く。午後二時過ぎ、三人はそれぞれ趣向を凝らして会場から密かに抜け出すと、予め用意しておいた盗難車のトラックで銀行の前に到着する。三人はマスクを着け、空砲入りの拳銃を携えて銀行に押し入る。アルバートは客と行員の見張りを担い、ウィリーとジョーは受付に現金をバッグへ詰めさせる。その最中、客の幼い娘ルーシーがウィリーに話しかけ、持っていた人形を差し出す。ウィリーはそれに穏やかに応対するが、その間に行員が警報機のボタンを押す。間もなく、ウィリーは不調を来して助けを求める。ルーシーは苦悶するウィリーを楽にしてやる為にマスクを脱がせようとする。ジョーは直ちにウィリーを連れ出そうとする。チャックは警備員が手放した拳銃を手にすると、三人にそれを向けて見境なく発砲するが、何れも命中せず、アルバートはお返しに空砲を連発してチャックを脅す。三人はパトカーが到着する前に、奪った現金230万ドルを持ってトラックで逃走する。その夜、三人はレストランで祝杯を上げる。帰り道、ウィリーは激痛を訴えて倒れ、病院に搬送される。
翌日、ジョーとアルバートはウィリーが腎不全を患っており、直ちに腎臓移植しなければ助からない事を知る。アルバートは隠していた事を水臭いと詰る。ジョーは友人は助け合うものだと説き、進んで腎臓を提供する意向を示す。程なく、FBIが銀行の防犯カメラの映像を公表する。スーパーの店長は、一人の走り方からそれがアルバートだと気付いて通報する。それに因り、ジョーとアルバートは署に連行され、ウィリーの病室には捜査員がやってくる。ヘイマーはジョーとアルバートに対してアリバイを確認するが、三人がそれぞれ施した偽装工作が奏功し、容易に崩せないと悟る。強盗後、アルバートはウェクスラーの製鉄所で一切の証拠を溶かして隠滅した後で、またジョーはヘスースに金の洗浄を依頼した後で、それぞれカーニバルの持ち場に戻ったのだった。ヘイマーはそれでも犯人はミスを犯すものだと主張すると、ルーシーを呼び、三人に事件とは無関係の別の三人を加えた六人の中から、銀行で会話した男を探させる。ルーシーは銀行で目にした、カニカの写真が入った腕時計からウィリーがその人物だと気付くも、穏やかな人柄に好意を抱き、六人の中にはいないと嘘をつく。
その後、ジョーは予てからブルックリンと約束していた子犬を引き取るべく、ヘスースとダイナーで落ち合う。ヘスースはジョーが遭遇した強盗団のリーダー格だった事を明かすと、首のタトゥーはわざと印象を残す為のフェイクだと説く。そこへ尚もジョー達の関与を疑うヘイマーが現れ、子犬を入れたキャリーケースを覗き込む。ケースの天板には札束が貼り付けられていたが、ヘイマーはそれに気付かずに立ち去る。ジョーは馴染みの中年ウェイトレスにチップ代わりの札束を一つ置いていく。また、老人クラブにパイと一緒に大金が送り届けられる。ウィリーはアルバートから腎臓を提供してもらい、健康な体を取り戻す。ブルックリンは念願の子犬をもらって喜ぶ。程なく、アルバートはアニーと結婚し、盛大に披露宴を開く。三人は手に入れた幸せに乾杯する。
