チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

さよならドビュッシー

利重剛監督作「さよならドビュッシー」(2013)[BD]

火災で大火傷を負った少女がピアニストを志し、リハビリと練習に励む最中、遺産相続を巡るトラブルに見舞われていく様を描くミステリー作品。

従姉妹同士の遥とルシアは、幼い頃からとても仲良しで、共にピアニストを志す間柄であった。遥は当主である祖父・玄太郎の屋敷で両親らと共に暮らしていた。一方、ルシアの両親は紛争地域での人道支援活動に従事しており、ルシアを玄太郎の屋敷に残し、海外へと発つ事になった。ところが程なくして、ルシアの両親は現地で消息を絶ち、帰らぬ人となってしまう。ルシアは遥らと共に、屋敷で暮らす事になった。歳月が流れ、16歳になった2人は、ある夜、互いに夢を語り合う。遥は幼い頃のままピアニストを、しかしルシアはピアニストを諦め、看護師を希望する様になっていた。遥はピアニストになった暁には、ルシアの為にドビュッシーの「月の光」を演奏する事を約束する。

夜更け過ぎ、2人の寝室のある離れの建物に火災が起きる。火の手は早く、2人は炎に巻き込まれる。3日後、病室で意識を取り戻した遥は、ルシアと玄太郎が死んだ事を知る。遥自身も全身の34%に熱傷を負い、手術でかろうじて一命を取り留めたのであった。遥は顔にも判別不能な程の熱傷を負っていた為に、整形手術で元通りに修復されていたが、全身の皮膚は移植手術の影響で硬直し、後遺症が残っていた。社会復帰するには厳しいリハビリが必要とされ、通っている音楽専門の高校では疎ましがられる。遥のピアニストの夢は絶望視されたかの様に思えた。ところがそんな遥の事情を知り、岬というピアニストが専属指導を買って出る。岬は司法試験に合格しながら、プロのピアニストになった変わり者だったが、腕は確かで、遥の不自由な身体を考慮して、段階的な訓練を提案し、遥の技術を飛躍的に伸ばしていく。

一方、玄太郎の死に伴い、遺族には遺書に基づき遺産が分配される事になり、遥はピアニストになる為の諸経費としてのみ使用できる12億円を相続する。しかし、それ以後、遥には不可解な事故が相次ぐ様になり、岬は親族が関与している可能性を示唆する。遥は学校の推薦でコンクールに出場する事になり、岬と共に課題曲であるショパンドビュッシーの曲の猛特訓に励む。そんな最中、遥の母が転落事故で重症を負い、入院する。その後、遥に起こった不可解な事故が、お手伝いの女・綴喜による犯行だと判明する。警察によれば、玄太郎の遺産を信託財産として管理する加納が唆したのでは、との事だった。

遥は予選を通過し、本選出場が決まるのだが、直前になり手が動かなくなる。身体は回復しているはずであり、心因性の症状に違いなかった。何故か?実は、遥は死んだはずのルシアだったのである。火災の夜、遥の所有していたTシャツを借りて着ていた為に、そのプリントだけを頼りに人物判定がなされた挙句、整形手術を施された為に、家族でさえ誰も気付かなかったのだ。ルシアも目覚めた時には遥として扱われていた為に、言い出すタイミングを逸してしまい、遥になりきるしかなかったのだった。ルシアは遥の母親と口論の末、彼女が事故的に転落した事を岬に打ち明ける。しかし、岬は全てを察していた。遥とルシアの手の大きさが微妙に違う事実を、写真を見て知っていたのだった。岬はルシアを優しく舞台に送り出す。ルシアは、ドビュッシーアラベスクと月の光を涙ながらに最後まで弾き通し、遥に捧げるのだった。

原作はミステリー小説らしいのだが、映画である本作はミステリー色はかなり薄いというか、そっちを期待すると大いに肩透かしを食らうだろう。岬役の優男は、清塚信也という本物のプロピアニストらしく、本作が役者デビューらしい。通りで演技がちょっと浮いているワケだ。といってもそんなに悪くはない。全体的にちょっと締まりが無いから、これはこれでバランスが取れてしまっている(笑)外科医の吉沢悠の演技がちょっと臭すぎて、こっちの方がかなり酷い。なんでこんな不自然なキャラ付けしたんだろう。遥が実はルシアでしたってオチは、冷静に考えれば予想できたが、驚いたというよりふーんって感じで、いろいろ突っ込みたくなる。何よりテンポがイマイチで後半は飽きてくるから、あと20分くらいは削って欲しい。しかし、音楽をやっている人には、また違った楽しみ方ができるのかも知れない。僕はショパンドビュッシーもろくに聴いたことがないので。橋本愛がお好きならどうぞっと。

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