チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

フィフス・エステート/世界から狙われた男

ビル・コンドン監督作「フィフス・エステート/世界から狙われた男」("The Fifth Estate" : 2013)[BD]

内部告発集団ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジが、協力者ダニエル・シュミットとの出会いを経て、国家機密を次々にリークしていく様を描くスリラー作品。

2007年、ジャーナリストのダニエル(ダニエル・ブリュール)は、ベルリンで開催されたハッカー向けの国際会議で、ジュリアン・アサンジベネディクト・カンバーバッチ)と初めて出会う。ジュリアンはウィキリークスという団体を設立し、運営している天才的なハッカーで、ダニエルはジュリアンと接触を図る機会を窺っていたのだった。ウィキリークスは、企業や団体、或いは国家といった組織に蔓延る犯罪や不正を、自前のサイト上で内部告発者から募った情報を元にリークする集団であり、運営していく上で何より重要なのは、告発者の身元を確実に守るセキュリティ技術だった。ダニエルはウィキリークスの活動理念に共鳴し、ジュリアンにメンバーの一員として認められると、献身的に活動を共にしていく。

ダニエルのサポートによって、スイス銀行の巨額不正取引のリークに成功すると、米当局の介入により、一旦サイトが停止されてしまう。程なくして、復活を果たすも、ダニエルはウィキリークスのリソースが予想外に貧弱である事を知る。ジュリアンの巧みな偽装により、ウィキリークスはさも大規模な集団の体を装っていたが、実際にはジュリアンがサーバー1つで運営しているに過ぎなかった。貧弱なサイトでは内部告発者の信用など得られず、ウィキリークスの運営が軌道に乗るまで、ジュリアンはハッタリをかますつもりでいたのだった。また、ジュリアンは極端に人間不信な性格をしており、他人を滅多に信用しようとしなかった。更に、世界に革命をもたらすのに必要な事は、献身だという揺るぎない考えを持ち、それが余りに独善的であったが為に、孤高を貫いてきたのだった。

ダニエルはウィキリークスにのめり込む余り、勤めていた会社の退職を余儀なくされたが、それからもジュリアンと協力し、次々に機密情報のリークをし、ウィキリークス拡大に貢献していく。しかし、しばしば2人の間で、告発者の保護と、情報を編集すべきか否かについて、その優先順位を巡り、意見の対立が目立ち始める。

ある時、ウィキリークスは米陸軍情報部所属の男から、数十万点に及ぶ国家機密の提供を受ける。その中には米軍による民間人の殺害映像や、外交問題に発展しかねない不適切な公電記録が多数存在し、米国史上最大の機密流出になる事は明白だった。膨大な情報のリークを嗅ぎつけた大手メディアはウィキリークスと協力し、同時に発表する事を提案する。これはジュリアンやダニエルの身柄を当局から保護する意図もあったが、その為には情報内の個人名を始めとする秘匿すべき部分を編集する必要があった。これにジュリアンは激しく反発し、未編集でのリークを強行しようとするが、ダニエルはウィキリークスのシステムを破壊する事でこれを未然に防ぐ。ジュリアンとダニエルはその時を以って、決別するのだった。

 

"estate"というと「動産」を思い浮かべるのだが、本作の原題"The Fifth Estate"ではいわゆる「階級」の意味で用いられているらしい。聖職者、貴族、平民に次ぐ第4階級"The fourth estate"が、言論メディアを指して用いられた事から、"The Fifth Estate"第5階級は、ウィキリークスの様な大手メディアとは異なる新興勢力という意味合いで用いられている様だ。ジュリアン・アサンジの創設したウィキリークスが世界にもたらした衝撃を、事実ベースで映像化した様な作品だが、ジュリアン本人は本作に否定的らしい。それもそのはずで、ジュリアンの人となりを表すシーンのどれを取ってみても、彼のイメージを損なう様な描写になっており、これではさながらサイコ野郎の様である。天才と異常者は紙一重とは言っても、ちょっとネガチブ過ぎる。そう思いながら見ていたら、EDで「僕を貶めようとする動きは後を絶たないだろう。本とか映画とかでね。大事なのは惑わされないことだ」完全にうろ覚えだが、ジュリアンが画面越しにそう述べるシーンが挿入されてあり、要するに本作もそれに該当すると言わんばかりに警鐘を鳴らす、気の利いた演出がなされている。ちなみに、本作は2013年で最もコケた作品の1つらしい。やや淡々とした展開に終始していて、意外性に乏しいからやむを得ないところかなと思う。ジュリアン・アサンジ本人をよく知らないから、カンバーバッチがどれほど本人に肉迫しているかも分からないな。

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