チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

プロミスト・ランド

ガス・ヴァン・サント監督作「プロミスト・ランド」("Promised Land" : 2012)[DVD]

エネルギー企業の社員が天然ガスの採掘権を獲得すべく、田舎町で住民への交渉を始めるも、やがて企業の欺瞞に気付き、苦悩していく様を描くドラマ作品。

大手エネルギー企業グローバル・クロスパワー・ソリューションズに勤めるスティーヴ(マット・デイモン)は、天然ガス採掘権に係る営業実績を評価され、新たにペンシルベニアの田舎町マッキンリー一帯に眠る天然ガスの採掘権を獲得すべく、現地に赴く。町に到着したスティーヴは同僚のスー(フランシス・マクドーマンド)と合流すると、戸別訪問を開始し、土地のリース契約の交渉を行っていく。

スティーヴは会社を背負う立場から、巧妙に安値で吹っかけはするものの、自らもアイオワの田舎町で育った経験から、カネの重要性を身に沁みて分かっており、細々とした農産業を主力とするマッキンリーが衰退の一途を辿るのを見過ごせないのも、また本心であった。交渉を開始して間もなく、スティーヴは昇進が決まり、職務にも勢いが付く。

翌日、スティーヴは町を管理する代表者ジェリーと面会する。ジェリーは天然ガスに関するネットで得た知識を披元にスティーヴを揺さぶり、暗に高額な見返りを要求するが、スティーヴは巧みにジェリーを説得する。夜、バーを訪れたスティーヴは、教師のアリス(ローズマリー・デウィット)と出会い、意気投合する。アリスに唆され深酒し、泥酔したスティーヴは、翌日アリスの家で目覚め、スーとの待ち合わせに遅れる。

その日、住民集会が開かれ、グローバル社による天然ガス採掘に関する説明が行われ、スティーヴ達は一気に住民の賛意を取り付ける予定だった。ジェリーは住民を代表して、採掘が町にもたらすメリットについて説明を始めるが、そこへ集まった住民の1人で教師のフランクが立ち上がり、毅然として反対意見を述べる。ジェリーでは手に負えないと判断したスティーヴは、居ても立ってもいられず、自らの口から説得を試みるが、フランクはシェールガスの採掘法であるフラッキングの危険性と、町が将来に渡って抱えるデメリットについて、理路整然と語る。住民は次第にその意見に同調し始める。フランクはグローバル社による土地の評価額と、フランクが独自に算出した評価額が大きく違う事を暴露する。それを知ったジェリーはスティーヴに憤慨し、3週間後に住民投票にかける事を決める。すんなり進むはずだった交渉が、投票にかけられる事になり、スティーヴは本社の上司から叱責される。また、社の調査でフランクが実は凄腕のエンジニアである事も判明する。

翌日、町に環境保護活動家のダスティンが訪れ、グローバル社に対するネガティブキャンペーンを展開し始める。ダスティンは個人だったが、スマートかつ精力的に町を回り、住民に対し投票で反対に投じる様に説得していく。危機感を覚えたスーは、ダスティンにカネを手渡し、町から去るように求める。翌日、ダスティンは町から去るどころか、得たカネで更に反対活動を拡大していく。ダスティンはまた、アリスの勤める学校をも訪れ、生徒たちにフラッキングの有害性を説く。ダスティンが住民を懐柔し始めると、スティーヴ達は住民達に露骨に疎まれる様になり、交渉に応じない者が現れ始める。スティーヴはアリスの家を訪れ、悪意が無いことを伝える。アリスは都会で暮らした後に田舎に戻ってきた女で、スティーヴにも同情的だった。

スティーヴは住民に好意を抱いてもらおうと、祭りの開催を企画し、準備に精を出す。ところが、当日は大雨で祭りは中止を余儀なくされる。ダスティンの反対攻勢を覆す機会を逸し、失意のスティーヴとスーは、フランク宅に招かれ、会食する。スティーヴはフランクと町の行く末について会話するが、平行線を辿る。

その夜、スティーヴは本社からの荷物を受取る。それは、ダスティンが住民の説得に使用していた写真の捏造を証明する、決定的な資料だった。スティーヴとスーは、住民投票での逆転勝利を確信する。その直後、スティーヴは偶然ダスティンと遭遇し、住民に嘘を付き、グローバル社を貶めた事を詰る。ダスティンは会話の途中で、口を滑らせてしまい、自身が環境保護活動家では無く、実はグローバル社の社員である事を明かす。住民投票に持ち込まれた事を重く見た本社が、投票を中止させるべく、ダーティな環境保護活動家と称してダスティンを派遣したのだった。事の成り行きは本社の思惑どおりで、スティーヴは会社の手の上で踊らされていたに過ぎなかったのである。

住民投票当日、義憤に駆られたスティーヴは、これまでの経緯とグローバル社の手口を全て暴露し、住民に対し、カネに左右されない、真に自由な選択を促す。町での交渉を不意にした事で、スティーヴは会社を解雇され、スーは本社に呼び戻される。スーに別れを告げたスティーヴは、その足でアリスの家を訪ね、アリスは彼を迎える。

 

シェールガスを掘削する際に、大量に化学物質を添加した水を使用する為に、周辺一帯の土壌や地下水が汚染される危険性が指摘されている。いわゆるフラッキング(水圧破砕法)という掘削法だが、本作はそこに焦点を当てている。主人公スティーヴは、当のエネルギー企業の社員で将来を有望視されている男。自分が勤めるのは曲がりなりにも大企業で、不正など働くワケが無いと確信している。企業は採掘したガスで潤い、その結果、貧しい農家には大金が入ってくるのだから、互いにWin-Winだというのが信念だ。しかし、老練な反対派と狡猾な環境保護活動家の登場により、彼の信念と会社への忠誠心が揺らぎ始める。最後には会社に反旗を翻すまでに心変わりしてしまうと。まぁ、町で出逢ったアリスを好きになったというのも大きいんだよね。その点、スーはリアリスト。2人は結末まで対照的に描かれる。しかし、実際のところ、フラッキングってどうなんだろうね。

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