チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

メッセンジャー

オーレン・ムーヴァーマン監督作「メッセンジャー」("The Messenger" : 2009)[DVD]

戦地から帰国後、損耗兵告知班に配属された男が、苦慮しながらも任務に従事する様を描くドラマ作品。

戦地で脚と左目を負傷し、帰国した3等曹長ウィル・モンゴメリーは、恋人ケリーと久しぶりに再会するも、別の男アランと結婚前提で交際している事を知り、落胆する。程なくして、上官に呼び出されたウィルは、損耗兵告知班への配属を命じられ、残り数ヶ月の服務期間を、トニー・ストーン大尉と共に、戦死者の家族への訃報告知任務に当たる事が決まる。トニーは告知任務の規則をウィルに説く。すなわち、告知は最近親者だけ、時間は6時~22時、最近親者には触れてはならず、この任務が何より優先され、失敗は許されない、というものだった。更に、告知は身元確認から24時間以内に行われなければならず、目標は4時間以内とされ、ウィルは常時ポケベルを携帯し、待機しておく事が求められる。

ウィルはトニーに同行し、最初の訃報告知に臨み、任務の段取りを学ぶが、戦死者の母と身籠った未亡人の悲壮な慟哭に直面し、戸惑う。任務後、2人はバーに寄り、互いの境遇を語り合う。トニーはアル中が原因で禁酒を3年続けている事や、湾岸戦争で砲火の洗礼を受けた事を明かす。

ウィルは2回目となる任務を自身で行うとトニーに主張する。戦死者の父デイルはウィルの告知を聞くや否や、息子の死を嘆き、ウィルを罵倒する。ウィルとトニーは為す術も無く、デイルの元を後にする。

ウィルは左目の経過が芳しくない事を医師から伝えられる。次なる任務で、ウィルとトニーは戦死者ピターソンの妻オリビアの元を訪ね、ウィルが告知を行う。オリビアは心構えができていた様子で冷静に訃報を聞く。トニーはピターソン宅にシャツが干してあるのを見て、男がいると邪推する。ウィルは気丈なオリビアの姿に心が動かされ、その後もオリビアとその息子マットの様子を気にかける様になる。立ち寄ったバーで、ウィルは、父が死に、母が精神障害だとトニーに打ち明ける。トニーはウィルが家族に飢えていると指摘し、ウィルが告知任務に残ると告げる。

後日、ウィルは薬局に訪れた際に、モール内で偶然オリビアとマットを見つける。軍のリクルーターが少年達を勧誘している場に遭遇したオリビアは、リクルーターを非難し、諍いが生じる。そこへウィルが割って入り、場を収めると、2人を車で自宅まで送っていく。ウィルはオリビアの故障した車の状態を調べ、修理する様に勧め、オリビアと打ち解け合う。後日、その話を聞いたトニーはウィルが軽薄すぎると茶化す。

ウィルは、地獄の様な戦地と、打って変わって平和な本国との世界の違いに馴染めず、苦慮し続ける。その最中、ピターソンの葬儀が行われ、ウィルは参席したオリビアの様子を遠くで見守る。ケリーからアランが催すパーティへの招待状が届き、ウィルは失意に暮れる。

再びオリビアの元を訪ねたウィルはマットに、自分の率いた隊の旗をプレゼントする。オリビアから引っ越す事を告げられたウィルは、戸惑いながらも協力を申し出る。翌日、ウィルは再びオリビアと会い、好意を示すも、オリビアは受け入れられないと伝える。オリビアは、戦地に行き、戻ってきたピターソンが、出逢った頃と変わってしまった事、シャツから怒りと恐怖の匂いがした事や家族に辛く当たった事を話し、最後に戦地に行った時に死んだものと考えていた事を打ち明け、そこへウィルが現れ、ピターソンの死を聞いた途端、再び愛する様になってしまったと告げる。ウィルはオリビアの気持ちを理解し、オリビアへの思いを胸に留める。

ある時、ウィルは告知の際、親族に触れ、過剰に寄り添う。その直後、トニーは規則を破り、任務を逸脱したウィルを責め、詰る。ウィルはトニーよりも戦地での経験がある事を盾に、反駁する。

後日、上司に休暇を勧められたトニーは、ウィルとの関係を改善しようと、一緒に息抜きのドライブを提案し、トニーがナンパした女2人を連れ、湖に訪れる。トニーはウィルをそっちのけで女とセックスに興じる。ウィルは、トニーが禁酒を破った事を窘める。その後、2人は湖で語らい合いながら、休暇をのんびり過ごす。トニーはウィルが自分で責任を負い過ぎだと指摘する。

2人はその足で、ケリーとアランのパーティに乱入し、ウィルはケリーへの未練を断ち切る。その後、泥酔した2人は路上で夜を明かす。トニーは砲火の洗礼の話がハッタリだと打ち明け、戦場で撃たれたかったと悔やむ。夜になり、帰宅した2人の元にデイルが訪れ、告知時の非礼を謝罪する。

その日、2人は夜を徹して語り明かす。ウィルは戦地で仲間を簡易爆弾で失った時の話を聞かせる。ウィルは爆発の衝撃で負傷し、帰国した後、英雄扱いされる。しかし、仲間の死が自分の責任だと痛感し、自殺を図ろうとしたものの、日の出で思い直した事を打ち明ける。その話を聞き、トニーは号泣する。

後日、ウィルはルイジアナに引っ越す直前のオリビアの元を訪ねる。2人は連絡先を交換し、やり取りを続ける事を約束する。

 

 

劇中、「米軍は世界で一番兵士の命を大事にする」とかいう台詞があり、これが自前で戦争をやっている国のリアルなんだなぁと感じた。戦争に人間が介在し続ける限りは、戦死者が出るのは当然に避けられないのであり、そこで本作のテーマである告知班という、専属の任務が用意されているワケである。戦地に行った子や配偶者が、ただ無事に生還してくれさえすればいいと願う親族の元に、突然参上して訃報を告げるのだから、相当にメンタルが頑強でないと続けられない過酷で重大な任務である。尤も、一昔前は電報のみだったらしいのだが、それが今日ではこうして格別の配慮が為されている。それが例えどんな死であっても、尊厳をもって伝えられ、厳粛に弔われる。果たして自衛隊には戦死者を想定した、こういう制度があるのだろうか?そんな事にまで思いを巡らせた。戦地を離れたウィルとトニーの人間としての再生、そして友情をも描いており、その意味でも面白い。

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