チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

コングレス未来学会議

アリ・フォルマン監督作「コングレス未来学会議」("The Congress" : 2013)[DVD]

凋落したハリウッド女優が、スタジオの要求で自らをCG化したキャラにその座を明け渡し、やがて映画産業に訪れる技術革命に翻弄されていく様を描くSFドラマ作品。

 

ハリウッド女優としてキャリア25年目を迎えるロビン・ライトは、長らくヒット作に恵まれず、スター女優の座から凋落する。現在、ロビンは空港のすぐ傍の格納庫を改築した家で、娘サラと息子アーロンを女手一つで養うシングルマザーとして暮らしている。航空機マニアのアーロンはアッシャー症候群を患っており、ロビンは症状の行方に気を揉んでいるが、アーロン本人は航空機の観察やカイトを飛ばす事を趣味とし、また独学でグライダーを自作するなどして、気ままに過ごしている。

ある日、幼い頃からロビンの世話を焼いてきたマネージャーのアルは、ロビンが所属するミラマウント社CEOのジェフからもたらされた最後のオファーについてロビンに伝える。ロビンはアルと共に社を訪ねる。ジェフは出会った当時のロビンの輝かしい美しさを述懐すると、映画業界における俳優の状況が根底から変わると説く。ジェフはこれまでロビンが社にもたらした面倒や不祥事の数々を論うと、ロビンの肉体と感情の全てをスキャンし、サンプリングし、ロビンというCGキャラを作る事で、どんな作品にも出演してもらう事を要望する。ロビンはその真意を図りかね、難色を示す。ジェフはロビンの近年の凋落ぶりを指摘すると、トップ女優だった頃の若かりし頃のロビンをCGキャラとして出演させる事で、女優としてのロビンを救いたいのだと説く。ジェフはCG役者全盛となれば、ロビンに価値が無くなる為、今、契約を結ばなければロビンがスクリーンに映らなくなると説くと、契約の条件としてロビン・ライトが社の所有物となる事から、ロビン本人は報酬と引き換えに今後二度と演技ができなくなる事を明かす。ロビンはオファーを突っぱね、その場から立ち去る。

後日、アルがCG契約専門の弁護士スティーヴを連れてロビンの家にやって来る。アルはCGキャラと化した有名女優の出演作を見せ、その有益性を説く事でロビンの説得を試みる。ロビンは自分で選択する自由が奪われ、CGキャラが不本意な作品に出演させられる事を懸念するが、アルはこれまでも監督やスタジオの言いなりだったと説くと、今後はロビン本人が道具にならずに済む為に、オファーは救いだと諭し、自由を掴むように強く促す。

ロビンは、主治医バーカーによるアーロンの診察に同伴する。検査の結果、アーロンの聴力と視力に悪化の兆しが確認される。バーカーはアーロンが耳から入る情報を自分の意思で翻訳していると説くと、50年後の映画を比喩として用い、製作者が観客に電気的な刺激を加える事で、個人の潜在意識を引き出すようになる、すなわち、外部から物語だけを与えられ、観客の脳内に合わせて登場人物が変わるという、ずっと未来の世界を生きているのだと主張する。

程なくして、ロビンはアル、スティーヴと共に再び社を訪ね、契約に臨む。その際、ロビンはCGキャラの出演を禁じる作品ジャンルのリストを提出する。ジェフは眉をひそめ、契約金を弾んででもSFだけは入れる事を希望し、さもなくば拒絶する意向を示す。ロビンは席を立とうとする。ジェフはSFに出演するならロビンのCGキャラを34歳の若さに設定する事を約束する。ロビンはアルの勧めも受けて、契約に応じる。心変わりを懸念するロビンの希望により、即日、スキャンが行われる。

ロビンは社内に設けられたスキャン装置で表情と感情のスキャンに臨むが、途中で迷いが生じ、挫折してしまう。アルは、自らの幼少期から、マネージャー業を始め、ロビンと出会い、その人生を支えるに至るまでの経緯を感情豊かに語り聞かせ、ロビンの心を解きほぐす。アルは、母親となったロビンに寂しさを感じ、愛していると気付いた事を明かすと、アーロンの体調が悪化し、不安と恐怖に苛まれるロビンを技術が救ってくれるのだと諭す。ロビンはアロの話に悲喜こもごもの感情を揺さぶられ、スキャンが終了する。

それから20年後。ロビンのCGキャラが主演する「エージェントR」がヒットした事で、続編が製作される。熟年のロビンはミラマウント・ナガサキ社が開催する未来学会議へ招待され、会場となるアブラハマシティへ車で向かう。アブラハマシティへ通じるゲートで、ロビンはそこがアニメ専用地域である事を伝えられ、アンプルを吸うように命じられる。程なく、ロビン自身を含む、目に映る全てのものがサイケデリックなアニメと化していく。

ロビンはアニメ化したアブラハマシティのミラマウントホテルへ到着すると、思い思いの姿格好をしたアニメキャラ達でごった返す様を目の当たりにする。ロビンは用意された部屋で寛いでいる内に幻覚に苛まれ、虚実の判別が付かなくなり、錯乱する。

その後、ロビンはジェフの部屋に招かれる。ジェフは20年を経て尚活躍し続けるCGのロビンを評価すると、映画自体が過去の遺産となり、脚本家、コンテ描き、アニメーター、特殊効果担当、それら全ての仕事が不要になると主張する。ジェフは未来学会議で紹介するのが、ミラマウント・ナガサキが切り拓く新時代であり、それは自由選択の時代だと説くと、ロビンに新しい条件付きで契約の延長を促す。ジェフは今後、製薬部門が開発した化学物質を飲む事で、いかなるジャンルの作品でも、思い描いた通りに人物を想像できるようになると説く。

ロビンは大勢の観客が集まる船上のホールにジェフと共に同席する。会議が始まると、製薬部門のボヴスが登壇し、薬品が市場で販売され、誰もが購入できるようになると発表する。ボヴスは薬品で不満も嫉妬も無い世界が訪れ、夢が夢になると説き、観客は熱狂する。その後、特別ゲストとして、革命のシンボルと称されるロビンが登壇する。しかし、ロビンはボヴスの意に反して、観客に目を覚ます様に訴えかけ、薬品を開発するならアーロンの様な障害を抱える人達を救うべきだと主張する。更にロビンは願望を支配すれば、同時に良心も手放す事になり、罪悪感に苛まれて死ぬ事になると説き、自分は破滅のシンボルだと主張する。ロビンは警備員に連れ出される。ボヴスは気を取り直して、アブラハマシティがアニメ専用地域では無くなり、世界に広がっていくと説く。その直後、ボヴスは会場に潜んでいたスナイパーに狙撃され、観客達はパニックに陥る。

ロビンはホテルの外に追い出される。その直後、スナイパーがホテルにロケット弾を打ち込み、爆破すると、船外から革命軍が押し寄せ、一斉に侵入を開始する。同時に空中から幻覚誘発剤の散布が始まる。ロビンはそこに駆け付けたディランに救助され、船の地下に逃げ込む。その途中、ロビンは革命軍の中にサラが加わっている事を知る。

ロビン達は地下の船室に逃げ込む。ロビンはアーロンの身を案じ、幻覚に苛まれる。ディランは自らがミラマウント・ナガサキの元社員であり、未来学会議の内容を知って、今朝方辞職した事を明かす。ディランはロビン・ライト部に配属された後、20年間、アニメーターとしてロビンを担当していた事を明かすと、ロビンについて調べ尽くし、ロビンが自分の全てだと説く。

その時、逃走する社の幹部により、革命軍が経営を乗っ取り、薬の流通を止めた為に、夢の世界が終わる事が伝えられる。ロビンは夢と現実の区別が付かないとディランに訴える。ディランは製作のアイデアが尽きた時、若くて才能ある人間にロビンが奪われるのではないかと不安になり、年齢によって変わるはずの動きや感情を求めて、新たなロビンを探す旅をした事を明かす。

ふと目覚めたロビンはそこにディランがいない事に気付く。そこへジェフが現れ、ディランが流されていったと伝えると、ロビンが取り残されたのはスピーチのせいだと詰る。ジェフはシンボルはCGのロビンであり、老いたロビンには何の価値も無いと説くと、スピーチの代償として有無を言わさず、ロビンを船上へ連行して処刑の段取りを始める。ロビンは幻覚から逃れるべく、即死できる様に頭を撃つ様に請う。ジェフはこれが現実だと告げ、ロビンの頭を撃ち抜き、ロビンは船の外へ落下する。

救助されたロビンは、幻覚の影響で病床で寝たきりとなる。医師はロビンがアブラハマ革命時に幻覚誘発剤を吸引し、四ヶ月間、幻覚の中におり、自分の経験が幻覚だと思っている珍しい症例だと説くと、回復の見込みが無い為に、将来に希望を託して凍結する事を決める。凍結装置に入るロビンは、幻覚の中でカイトを飛ばすアーロンと再会する。ロビンはアーロンと共にカイトに引かれて氷の中へ入っていく。

20年後、ロビンは解凍され、覚醒する。病室にディランが面会に訪れ、医学が進歩し、解凍される日を待っていた事を明かすと、最後に会った者としての責任を説く。ロビンはサラが革命を生き延びたものの、アーロンがまだ捜索中である事に気を揉む。ディランはアーロンの遺伝子リストを持参するも、アーロンの痕跡が見つからず、もうこの世界にいない可能性を説くと、世界の仕組みが昔と変わっており、見つけるには長旅をする必要がある事を伝える。ディランはアーロンの手掛かりを探す為にロビンを病院から連れ出す。

ロビンは世界と時間が自分の主観で如何ようにも変わる世界を初めて目の当たりにする。二人は空中庭園と化したニューヨーク都心に訪れ、極彩色の街並みと思い思いの華やかな装いの人々を見渡す。ディランは人々が薬でエゴから解放された為に、競争も暴力もない、弱者もいなければ、秘密もない街になり、誰もが自分の望む姿で生きているのだと説く。ディランが薬で好きなものになれると伝えると、ロビンはアーロンと同じ様になりたいと希望する。

二人は薬局で薬を手に入れると、両腕を翼の様に変え、大空に羽ばたく。ロビンは町から離れた集落でサラが自然主義者として暮らしている事を知る。ディランは会いに行っても互いを認識できないと諭す。その後、二人は空港に降り立ち、そこでアーロンのカイトを見つける。二人がカイトを空に上げると、そこに飛来した航空機と衝突し、墜落する。二人は炎上する空港の前で肉体関係を結び、一つになる。

その後、二人は街のレストランで食事を取る。ディランは、薬を拒めばこの世界にいられないと悟った事を明かすと、向こう側に真実があり、幻想の世界を拒否した人達とこの世界の運営者達がいると説く。ディランは行けば戻れる確信がないとしながらも、口内に忍ばせていた、退職金代わりにミラマウント・ナガサキからもらった、一瞬にして幻覚を消すカプセルを示す。ロビンは向こうでアーロンを探しに行きたいと願うが、ディランはカプセルが一つしかない事から一緒には行けず、自分を捨てる事になるとして難色を示す。ディランはロビンの選択を尊重するとしながらも、出会う前からずっと愛しており、解凍を待ち続けていた事を伝える。ロビンは咄嗟にカプセルを飲み込み、ディランにキスをする。ディランは真実の自分を見ない様に請い、ロビンはそれに従って、振り返らずにその場から立ち去る。

程なく、幻覚が醒めると、ロビンは廃墟の中におり、目に映る人々は華やかな姿から虚ろで見窄らしい姿に変わる。ロビンは蹲るミラマウント・ナガサキの社員から、医者が空の上にいる事を聞く。列車で空港へ辿り着いたロビンは、カイトで飛翔するゴンドラに乗ってミラマックス・ナガサキの飛行船に訪れる。

ロビンは船内でバーカーと再会する。ロビンと同じく老いたバーカーは、昔は薬で真実から目を背けていたが、今は薬で真実を作り出しており、人間にとっての選択肢が美しくない世界で死を待つか、幻覚を見続けるかのどちらかだと説く。バーカーはアーロンがロビンの帰りを19年待ち続けていたものの、その間に症状が悪化し、視力をほぼ失いながらも、向こうの世界には行かなかった事、自分もいずれ死んでしまう為にアーロンに向こうへ行く様に勧めた事で、半年前にアーロンが決心し、向こうに行った事を明かす。悲嘆するロビンに、バーカーはアーロンを見つける術は無く、死を待つより向こうに戻った方が良いと諭すと、こちらに来た事でもはや同じ場所には戻れず、心と薬が導く場所に辿り着くであろう事を説き、戻る為の薬を手渡す。

ロビンは薬を飲み、アニメ化された幻覚の世界に戻ると、アーロンに成り代わってその誕生から現在に至るまでの人生を追体験し、その軌跡を辿ってアーロン本人と再会する。

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