マイケル・スピエリッグ,ピーター・スピエリッグ監督作「デイブレイカー」("Daybreakers" : 2009)[DVD]
感染により変異した吸血鬼が人類を圧倒し、血液の為に人間が飼育される近未来で、吸血鬼の血液学者が残り僅かな人間達と協力し、治療法を見つけるべく奔走する様を描くSFホラー作品。
2009年、コウモリを媒介し、人間を吸血鬼へと変化させる感染症が発生し、世界中に蔓延する。やがて吸血鬼は人類を数で圧倒し、世界は吸血鬼が支配する様になる。吸血鬼は人類に同化の機会を与えたが、人類がそれを拒んだ為に、国家の敵とみなす様になる。人類は吸血鬼の食料たる血液を供給する為に、捕獲された後、人間飼育場に送られ、生命維持装置に繋げられる。しかし、やがて世界的に人類の総数が減少すると、深刻な血液不足に陥り、吸血鬼は食糧危機に直面する。一方で、吸血鬼は血液不足により心身共に異常を来たし、凶暴なサブサイダーへと変貌を遂げ、見境なく血を求める様になる事から、深刻な社会問題となっている。
2019年、米国。ブロムリー=マークス製薬では代用血液の開発を続けるも、未だ実現には至らず、社内で管理する人間飼育場から血液を市場に供給している。人類の生息率が5%を下回り、必要な血液が月末までの分しか無くなると、会社は焦りを抱き、代用血液の開発を主導する血液研究班の主任エドワードに開発を急がせる。10度目の35歳を迎えたエドワードは人類に同情的で、人血の摂取を拒み続けており、また人間飼育場についても不快感を抱いている。
社長チャールズはエドワードをオフィスに呼び出すと、自らが2008年に癌を患い、一旦は死を覚悟したものの、吸血鬼と化し、不死となった事で癌が癒やされた事、その一方で娘アリソンが吸血鬼への「進化」を癌より恐ろしい病魔とみなし、同化を拒んだ為に、チャールズは冷酷に対処し、アリソンが逃げた事を明かすと、吸血鬼は祝福された存在だと説く。チャールズはエドワードの心情に理解を示すも、事態が深刻であり、代用血液が吸血鬼のみならず、人類を救う唯一の方法だと説くと、速やかに代用血液のテストを行う様に促す。
代用血液の動物実験が成功した事から、吸血鬼に対するテストを行う事になる。チャールズを始めとする会社幹部が見守る中、エドワードは被験者の体内に代用血液を注入するが、被験者は激しい拒絶反応を起こした末に破裂死し、テストは失敗に終わる。
世界中で血液の配給を巡って暴動が勃発し、各国当局が対処に追われる一方で、サブサイダーの被害が急増する。エドワードは帰宅途中に対向車とすれ違いざまに事故を起こす。エドワードは対向車へ救助に向かうと、車内から4人の人間が現れ、その内の一人、オードリーがクロスボウを撃ち、エドワードは腕を負傷する。パトカーが接近すると、エドワードは4人を自分の車の中に匿い、警察の聴取をやり過ごす。その際、オードリーはエドワードのIDを見て血液学者だと知ると、3人を連れてその場を後にする。
エドワードが帰宅して間もなく、軍に所属する弟のフランキーが誕生日を祝いにやってくる。フランキーは持参した上物の人血で乾杯しようとするが、エドワードはそれを拒む。フランキーは代用血液の研究資金が人間飼育場で儲けた金だと説く。エドワードは代用血液で人間を狩らずに済む様になると反論するが、フランキーは偽の血では何も解決しないと主張する。エドワードが血を捨てようとすると、フランキーはボトルを投げ割って帰ろうとする。そこに血に飢えた凶暴なサブサイダーが侵入する。エドワードはフランキーと共にサブサイダーを殺す。駆け付けた刑事は、吸血鬼同志で血を吸い合ったり、自分の血を吸う事でサブサイダーへの変異が急速化する事を明かす。
翌日の昼、オードリーがエドワードの自宅にやってくる。オードリーは代用血液は治療法では無く、他に方法がある事を明かすと、エドワードを信用できる血液学者と見込んで協力を請い、落ち合う場所と日時を指定したメモを手渡して去る。
血液の供給が足りなくなり、出資者達が飼育場から人間を連れ去り始め、ブロムリー=マークスの立場が危うくなる。チャールズはサブサイダー被害の件についてエドワードに同情する。エドワードは代用血液が完成すれば人血を供給しないと約束して欲しいと請う。チャールズは人血に高額を支払う客がいる限り、需要があると説く。
正午、エドワードは日中運転保護モードで、人里離れた郊外に位置するオードリーに指定された場所に赴く。エドワードはオードリーに促され、日光を遮る大樹の下で、エルヴィスと称する元吸血鬼の男と対面する。エルヴィスは9年間、吸血鬼で過ごした後、人間に戻った事を明かす。そこへ、エドワードの動向を探り、尾行してきたフランキーが現れ、隙を突いてオードリーを人質に取る。更に軍の車両がそこに迫ると、エルヴィスは隙を突いてフランキーを昏倒させ、エドワードに逃走を促す。エドワード達は軍の銃撃を掻い潜り、車で逃走を開始する。軍は3台の装甲車両で猛撃を仕掛けるが、エドワード達は辛うじてこれを退け、逃走に成功する。
その夜、とある湖で停車すると、エルヴィスはかつて日中にそこで事故を起こし、車から投げ出され、日光に曝され火だるまになった後、水中に突っ込み、気が付くと人間に戻っていた事を明かす。エルヴィスは太陽の光が治療法だと説き、オードリーはそれを安全な方法で再現すべく、エドワードに協力を求める。
チャールズはフランキーをオフィスに招くと、エドワードの行動監視について評価し、今後も続ける様に命じると、エドワードが会社の未来を担う血液研究者であり、すぐに戻るなら罪に問わない意向を示す。フランキーはエドワードと違い、吸血鬼でいる方が楽だと明かし、命令に従う意向を示す。
湖を発つと、オードリーは定期的に人間の仲間を探し集めている事を明かす。オードリーはエドワードが長らく血を摂取しておらず、飢えている事を察し、自らの血を提供する。程なく、オードリーが親から継いだワイン工場を改築し、集めた人間達を匿っているアジトに到着する。同時に、人間達を迎えに行くジャーヴィスの一行が出発する。オードリーは人間に協力する吸血鬼の上院議員ターナーを紹介する。ターナーは自らの部下にも人類再生の目的に共鳴する者がいる事を明かし、治療法が吸血鬼に悪用されるのを阻止する必要性を説く。
ブロムリー=マークスの人間飼育場から人間が次々に減っていく。世界的な血液危機により価格が急騰した事で、人血の入手は困難を極め、サブサイダーが激増する。人血を巡って各地で暴動が勃発し、警察や軍が鎮圧に駆り出される。
エドワードはアジト内の医療器具でエルヴィスの血液を検査し、体内で血液を変化させる必要性を悟ると、日光照射を制御して実験を行う事を提案する。エドワードは使われなくなったワイン発酵タンクに目をつけると、エルヴィス、オードリーと共に改造を施し、実験装置へ転用する。
ジャーヴィス率いる一行はアリソンを含む人間の仲間達を救助し、帰路に就く。道中、一行は軍に包囲され、襲撃を受ける。一行は反撃に応じるも軍に数で圧倒され、全滅する。アリソンは無線でアジトに危機を伝えた後に昏睡させられ、捕らえられる。軍は無線を逆探知し、アジトの位置を割り出す。
それを察知したターナーは、自らが所有する山小屋へ人間達を連れて逃走を開始する。エドワードは実験の好機を逃す事を拒み、死を覚悟して留まる意向を示す。エルヴィスとオードリーもそれに同調する。一方、アリソンはチャールズのオフィスで目を覚ます。チャールズは再会を喜び、もう安全だと諭す。アリソンはチャールズの腹部をナイフで刺して逃走を図るが、そこに兵士が駆け付け、アリソンを昏倒させる。
夜が明け、エドワード達は実験を開始する。エドワードは装置に入ると、制御された環境で日光に曝された後、水をかぶる。三度目の挑戦において、エドワードは炎に包まれた後、心臓の鼓動が始まり、人間に戻った事を確認する。その直後、アジトに軍が到着する。エドワード達は装置の下で息を潜め、兵士達の捜索をやり過ごす。一方、チャールズはオフィスにフランキーを呼び寄せ、アリソン確保の労をねぎらうと、監禁中のアリソンを吸血鬼に変える様に命じ、フランキーはそれに従う。
エドワードは日光の下に身を置き、人間に戻った事を実感する。ブロムリー=マークスの人間飼育場から遂に人間が姿を消す。チャールズはアリソンが監禁されている部屋に赴き、そこで人血を摂取せず、自傷を繰り返し、サブサイダーへと変異し始めているアリソンを目の当たりにし、ショックを受ける。アリソンはチャールズに恨み節をぶつけ、兵士に連行される。
サブサイダー危機に対応する為に、全米主要都市に軍隊の出動命令が下り、サブサイダーの殲滅作戦が始まる。エドワード達はターナーの山小屋に到着するが、既に襲撃を受けた後で、ターナーと全ての人間達が皆殺しにされている惨状を目の当たりにし、途方に暮れる。エドワードは研究班の同僚クリスに協力を打診する意向を示す。一方、軍は捕獲したサブサイダー達を一斉に太陽の下に晒し、処刑する。フランキーは目の前でアリソンが焼け死ぬのを見て動揺する。
エドワード達はクリスの家に侵入すると、帰宅したクリスに代用血液より有効な治療法が見つかった事を明かし、安定してそれを運用する為の協力を求める。クリスはエドワード達を欺き、密かに会社に通報した後で逃走を図る。間もなくそこに軍が急襲を仕掛け、オードリーが捕らえられる。エドワードとエルヴィスは辛うじて脱出すると、地下道を抜け、廃棄されたガレージに逃げ込む。そこにエドワード達を付けてきたフランキーが現れる。フランキーはエドワードが人間に戻った事を知ると、自責の念に苛まれながらも、吸血鬼にしなかったらエドワードが死んでいたのだと明かし、生きていて欲しかったのだと説く。フランキーはエドワードは助ける事ができても、オードリーは助けられないと諭す。エドワードは協力を求めるが、フランキーは応じる振りをしてエルヴィスの首元に咬み付く。その直後、フランキーの体に異変が生じ、エドワードは重大な事実を発見する。
エドワードはチャールズのオフィスに赴き、そこで拘束され、血を抜かれるオードリーを見つける。エドワードは人間でいるのが辛いと訴えると、自分とオードリーを吸血鬼に変えて逃がしてくれれば、代わりに家畜として人間を増やす方法を教えると提案する。チャールズはそれには及ばぬと説き、既にクリスが代用血液の開発に成功しており、二日後には大量生産が始まる事を明かす。チャールズは目的が治療では無くビジネスであり、そもそも治療すべき疾患では無いのだと主張すると、エドワードは不要であり、腰抜けだと詰る。エドワードはチャールズが自ら手を下さず、フランキーにアリソンを吸血鬼に変えさせた事を指摘し、腰抜けだと応酬する。チャールズはその挑発に乗り、エドワードに咬み付く。その途端、チャールズの体に異変が生じ、たちまち人間に戻る。エドワードは人間に戻った吸血鬼の血が治療法だと明かすと、チャールズを椅子に縛り付け、ビルに駆け付けた血に飢えた兵士達の前に晒す。チャールズは兵士達に八つ裂きにされ、餌食となる。
エドワードとオードリーはビルから脱出を図るが、ロビーで兵士達に包囲される。そこに人間に戻ったフランキーが駆け付ける。フランキーは自らを犠牲にする事で、二人を逃がそうとする。フランキーを餌食にした兵士が人間に戻り、更にその兵士を餌食にした別の兵士が人間に戻り、最後に僅かな兵士だけが人間として残る。そこにクリスが現れ、兵士達を銃で皆殺しにすると、治療法などあってはならないのだと説き、エドワード達をも射殺しようとする。そこにエルヴィスが駆け付け、クリスの心臓を背後から射抜き、破裂死させる。
夜明けが訪れ、エドワード達は吸血鬼を人間へと治療する為に旅立つ。