エルジン・ジェームス監督作「リトル・バード 164マイルの恋」("Little Birds" : 2012)[DVD]
田舎暮らしを厭う少女が親友と共に家出をし、恋する少年の暮らす街を訪ね、人生観を変えて行く様を描くドラマ作品。
カリフォルニア州のソルトン湖に面した寂れた田舎町で、18歳のリリーは母マーガレットと二人で暮らしている。父を自殺で亡くして以来、リリーは心を閉ざしがちになり、ある時、自殺願望が募って、脚の付根をカミソリで傷付ける。マーガレットはリリーの心情を慮る一方で、夜な夜な男を自宅に連れ込む様になり、リリーはマーガレットを露骨に忌避する。マーガレットはそんなリリーとの接し方に戸惑い、ある時、リリーに精神科医のカウンセリングを受ける様に促す。リリーは渋々それに応じるものの、医師に悪態を付いてやり過ごす。一方、リリーの叔母ボニーは戦傷者として帰還したマークの夫と幼子の世話に明け暮れ、リリーはしばしば手伝いに赴く。リリーと唯一無二の親友アリソンは、リリーが時折見せる危険を顧みない行動に戸惑いながらも、良き理解者として付き合いを続ける。アリソンは母を病で亡くしており、不甲斐ない父ジョセフと二人で暮らしている傍ら、近所に住むカウボーイのホーガンを父親の様に慕っている。リリーは町に息苦しさを覚え、逃避願望を抱く。アリソンはそんなリリーの気持ちを察し、親友の証として、リリーの腕に自分とお揃いのゴムバンドを付ける。
ある日、リリーとアリソンは、LAから町に遊びに来ていた、リーダー格のデヴィッド、ルイス、ジェシーを中心とする不良少年達と出会う。アリソンは関わりあいを躊躇うが、リリーは彼らの誘いに応じ、優男のジェシーとすぐに意気投合する。リリーはジェシーから帰り際にLAの連絡先を教わると、キスをして別れる。リリーはジェシーとの再会を希望し、LAに行く足を得るべく、ホーガンの家に放置されたままの車を盗む事をアリソンに提案するが、アリソンはそれを拒否する。
程なく、リリーは犬を虐めていた子供を過剰に怒鳴りつけた件で、その姉に意趣返しを受け、殺すと脅される。リリーはバーでトラックの運転手を引っ掛けてでも、町を出る決意を示す。アリソンは危険だと指摘するが、リリーは聞く耳を持たず、家出の準備を始める。その夜、アリソンはリリーを放っておけず、意を決してホーガンの車を盗み出すと、リリーを迎えに行く。リリーはアリソンの運転で町を出て、一路LAを目指す。
LAに到着して間もなく、リリーとアリソンはジェシー達三人と再会する。リリーは勧められるままにビールを飲み、アリソンそっちのけでジェシーとイチャつく。その夜、デヴィッドは通りでリリーにぶつかった青年に難癖をつけた挙句、殴り飛ばしてバッグを強奪する。デヴィッド達はねぐらとする、モーテル跡地の廃屋にリリー達を招く。バッグの中にはラップトップが入っており、デヴィッドはそれを悪事に利用しようと企む。アリソンはデヴィッド達を非難するが、逆にデヴィッドに軽侮され、疎外される。リリーはアリソンに、ルイスと仲良くなって楽しむ様に唆す。アリソンはルイスに体を求められるが、それを拒絶する。
翌朝、ジェシーはリリーを連れ出し、かつて家族と暮らしていたという、売りに出されている家に誘う。ジェシーは父、母、姉と共にスコッツデールの祖父母の家に移ったものの、自分だけが一ヶ月で家出し、LAに戻ってきた事を明かすと、仲間に汚させぬ為に秘密にする様にリリーに頼む。一方、アリソンは公衆電話から自宅のジョセフに連絡する。ジョセフはマーガレットと共に電話を待ち続けていたが、アリソンは無言で電話を切ると、次にホーガンに連絡する。アリソンはホーガンに涙ながらに車の件を謝る。ホーガンはそれを咎めず、二人が無事に戻ってくる様に諭す。
リリーはジェシーに体を求められ、受け入れようとする。その時、ジェシーは脚の付け根の傷に気付き、問い質すが、リリーが口を噤む様子から心情を察し、無理強いしない様に諭すと、自らの胸の手術痕を見せ、リリーの手に触れさせる。リリーはジェシーに身を委ねようとした矢先に、家の販売業者が客を連れて現れ、ジェシー達は逃げ出す。
ジェシー達がモーテルに戻ると、デヴィッドはネット広告を出して変態男を釣り、リリーを囮にしてモーテルに連れ込んだところを襲撃して金を強奪する計画を明かす。ジェシーはリリーを危険に晒す事に反対するが、デヴィッドはジェシーを説き伏せ、リリーは応じる意向を示す。広告に多くの反応が来ると、デヴィッド達はその中から温厚そうな中年男を選び、リリーが待ち合わせ場所に赴く。アリソンはリリーが誘拐される事を危惧する。
程なく、リリーはモーテルの一室に男を連れ込む。男が服を脱ぎ始めると、浴室に隠れていたデヴィッドが押し入り、男に銃を突き付ける。デヴィッドは財布と携帯を奪うと、妻に売春をバラすと脅して、口座の暗証番号を聞き出し、男を追い出す。リリーは銃を弄んでスリルに興奮するが、ホーガンに銃の扱いを受けているアリソンはリリーを咎める。
その後、デヴィッド達は強奪した金をスニーカー等に散財する。アリソンはリリーに町に帰る様に促す。リリーはそれに難色を示しながらも、夜に帰ると応える。アリソンは、リリーがジェシーから買ってもらったブレスレットを付ける際、自分が友情の証に付けたバンドを千切って捨てる様子を目の当たりにする。
その夜、デヴィッドは再び男を釣る段取りを付ける。アリソンはもう十分だと詰るが、デヴィッドはアリソンを疎むと、出て行く様に命じる。アリソンはリリーに一緒に帰る様に促すが、リリーはそれを拒む。アリソンはリリーがLAに来て変わったと指摘する。リリーはジェシーといて、生まれて初めて幸せを感じている事を明かす。アリソンはジェシーがリリーを愛してはおらず、遊んでいるだけだと諭す。リリーはジェシーと一緒に暮らす意向を示すと、一人で帰る様に促し、自分は手遅れだと説く。アリソンはそれを否定し、まだ引き返せると翻意を促すが、リリーは無理だと説く。アリソンは自分が親友である事を確認するが、リリーは他に相手がいなかっただけだと言い放つ。アリソンはリリーを罵って、その場から立ち去り、車に戻る。
その後、リリーは待ち合わせた男と会う。しきりに不安を漏らすその男は、モーテルに向かう途中で罠の可能性を疑い、リリーに罠では無いと約束する様に強いる。部屋に着いた後も、男は余りにできすぎた話に不安を抱くが、意を決してリリーの服を脱がせようとする。その時、デヴィッド達が押し入り、銃を突き付ける。男は途端にサイコパスな一面を現し、当惑するデヴィッドから銃を奪い取ると、激しくデヴィッドを殴りつける。それを見たルイスは逃走する。ジェシーは男を止めに入るが、逆にこっぴどく痛めつけられ、男に怯んで逃走する。男がリリーを犯そうとすると、そこに戻ってきたアリソンが、銃を奪って男を背後から射殺する。
アリソンはリリーを車で連れ帰る。リリーはジェシーからもらったブレスレットを窓から放り捨てる。夜明け前、二人はビーチに立ち寄り、かつて願望を語り合った様に波打ち際で遊ぶ。