チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

グランドフィナーレ

パオロ・ソレンティーノ監督作「グランドフィナーレ」("Youth" : 2015)[BD]

現役を引退した著名な老音楽家が、生涯の友人である映画監督と共に、保養に訪れたアルプスのリゾートホテルで、滞在中に経験する悲喜交交を描くコメディ・ドラマ作品。

 

80歳を目前に控える音楽家のフレッドは、生涯の親友で映画監督のミックと共に、今年もバカンスを過ごす為に、スイスのアルプス山脈内に位置する風光明媚な高級リゾートホテルに滞在する。フレッドは「シンプル・ソングス」の作曲で名を馳せて以降、世界を股にかけて華々しく活動し、ヴァネチア楽団で24年間指揮者を務めた後に引退して、余生を穏やかに過ごしている。また、フレッドはヴェネチアにいる妻メラニーとは久しく疎遠であり、その事に苦悩を抱えている。一方、ミックは5人の若い脚本家達を従え、自らの遺作と標榜する新作「人生最後の日」の台本の執筆に精励しており、旧知の大女優ブレンダを映画史に残る永遠のヒロインに据えると息巻く。フレッドの娘にしてフレッドのアシスタントを務めるレナは、ミックの息子ジョナサンと婚姻関係にある。ホテルには他にも多くの裕福な客が滞在しており、思い思いの保養に興じている。その中には新作撮影を間近に控え、役作りに励むハリウッドの若手俳優ジミー、お忍びで療養中のディエゴ・マラドーナ、副賞でホテル滞在を授受したミス・ユニバースらがいる。

ある日、フレッドの元に英王室儀典局職員がやってきて、エリザベス女王が勲章を授与する意向を伝えると共に、授賞式がフィリップの誕生日と重なる事から、BBCオケにおける「シンプル・ソングス」の指揮をフレッドに依頼する。フレッドは私事を理由にそれを頑なに拒む。ジミーはフレッドと対面すると、自らが多くの作品に出演していながら、その中の一つに過ぎないロボット役としてしか認知されていない事への不満を吐露し、「シンプル・ソングス」以外の作品が忘れられているフレッドと同じ悩みを抱えているのだと説く。レナはフレッドをホテルに残して、ジョナサンとポリネシアに二週間の旅行へ出発するに当たり、フレッドの無気力ぶりを案じ、メラニーに会いに行く様に勧める。

フレッドは日中はマッサージや灸などの施術、プールでの運動などに費やし、夜はテラスで催される余興を鑑賞するなどし、また定期的に医師の検診を受け、日々を送る。ある時、フレッドはミックに対し、60年前に二人が恋し、共に寝ないと誓ったギルダについて話を向ける。ミックは寝たかどうかを覚えていない事が悲劇だと説く。フレッドは両親が思い出せない程の記憶の衰えを吐露すると、レナもまた自らが父として、してやった事を忘れてしまうのなら報われないと嘆く。

夜、部屋に戻ったフレッドは号泣するレナを見つけ、ジュリアンがレナを捨て、他の女に走った事を知る。翌朝、ミックはジュリアンを呼びつける。ジュリアンは愛人で歌手のパロマを連れてやってくる。ミックはレナがジュリアンにはもったいないくらいの女だと説き、叱責する。ジュリアンとパロマは、レナとの離婚が成立次第、結婚する意向を示す。ジュリアンはその理由をミックに問われ、パロマが「ベッドで最高」なのだと答える。

その後、フレッドは悲嘆するレナから、ジュリアンがパロマに惹かれた理由を教える様にせがまれ、渋々その理由を明かす。フレッドはレナの気持ちに理解を示す。レナはそれを否定し、浮気ばかりしてメラニーの苦しみを顧みなかったフレッドを責める。レナはフレッドは音楽以外に関心が無く、子供はメラニー任せで、自分には何も与えてくれなかった事、メラニーには10年間、花も持っていかない事を咎める。フレッドは言葉を失う。

ミックは両親どころか、子供時代の事すら覚えておらず、唯一、自転車に乗れた瞬間について思い出せる事をフレッドに明かす。フレッドはレナに対し、自分が理解できるのは音楽の事だけだと認め、言葉が要らず、ただそこにあるからだと説く。ある晩、レナはパロマの悪夢で目覚めると、自分は「ベッドで最高」だとフレッドに対して自負する。フレッドは自らもまた「ベッドで最高」だから当然だと説く。

ある時、フレッドは毎日バイオリンで「シンプル・ソングス」を奏ずる、未熟な腕前の子供の部屋を訪ねると、自らが作曲者だと明かす。その子は「シンプル・ソングス」を練習曲にしており、とても綺麗な曲だと説く。フレッドは上手に弾くコツを忠告する。その子はやがてフレッドに謝意を伝える。

程なく、儀典曲職員が再びフレッドを訪ねてやってくる。職員は女王がフレッドの指揮を所望している事を明かし、改めて要請する。フレッドは私事を理由に固辞するが、職員にその理由を問い質され、「シンプル・ソングス」がメラニーの為に作った曲であり、メラニーだけが歌えるが、もう歌える状態では無い事を明かす。職員はそれに理解を示し、すごすごと引き揚げる。レナは傍らでその様子を聞き、涙する。一方、ミックは台本を脱稿すると、脚本家達に過去の映画が無意味で、新作だけに価値があると説き、乾杯して祝う。

登山家ルカはリゾート内でレナに一目惚れすると、宿泊客に登山を教えている事を明かし、山登りの素晴らしさを説く事で、レナにアプローチを図る。一方、ジミーはミックに、最も才能豊かな女優について尋ねる。ミックはそれが自分の映画で成功したブレンダであり、正真正銘の天才だと説くと、路上生活を起点にあらゆるものを盗んで強烈な個性を作り上げた事を明かす。ミックは意欲を失っているフレッドに対し、フレッドの音楽が皆に驚きや感動をもたらしたのだと諭す。

ある夜、ミス・ユニバースがジミーの前に現れ、ロボット役のファンである事と共に、自らも女優を志望している事を明かす。ジミーはミス・ユニバースがロボット役しか観ていない事に不快感を露わにし、ミス・ユニバースを皮肉ると、彼女もまたジミーに対して皮肉で応じる。またある時、ジミーの前に少女が現れ、ロボット役とは別の作品を見て感銘を受けた事を明かす。それから程なく、ジミーはいよいよ新作の配役であるヒトラーの風貌を装う。

ある日、フレッドはミックにメラニーに会いに行く様に勧められる。フレッドはギルダと寝ていたらどんな気分だったか考えている事を明かし、ミックも同じだと答える。フレッドは自分が人生を十分に愛さなかったと嘆く。ジミーはミックに対し、ホテルの客達を観察した末に、真に語る価値のあるものは恐怖では無く、欲望なのだと悟り、ヒトラー役を降りる意向を固めた事を明かす。

ある朝、ホテルの前で毎日瞑想を続けている一人の僧が空中浮揚する。その日、ブレンダがミックを訪ねてやってくる。ミックは突然の来訪に驚きながらも嬉々としてブレンダと対面すると、台本の完成を伝えると共に、来訪の目的を尋ねる。ブレンダはミックと出会って53年の間に11本の作品に出演した事を振り返ると、TVシリーズの出演が決まった為に映画を降板する意向を示し、その理由が金だと明かす。更にブレンダはミックの衰えを指摘し、最近の作品を酷評する。憤慨したミックは、枕営業していたブレンダを自らが拾って女優にしてやったのだと説く。ブレンダは借りを作らずとも自力で女優になれたと反論すると、ミックが既に終わった人間で、新作には誰も興味を持っておらず、自分が出演するから新作を撮れるのであり、その名誉を救う為に降板するのだと説く。ミックはブレンダが恩知らずで愚かであるが故に成功したのだと説くと、ブレンダ無しで撮影する意向を示す。ブレンダは映画が無くても人生は続くと諭し、その場を後にする。

ミックはジミーに、自らが50人以上の女優を育ててきた事で、「女優を育てる名監督」だと皆に感謝されている事を明かす。ジミーはそれを否定し、ミックは「名監督」それだけだと説く。一方、レナはルカに好意を募らせ、自らが「ベッドで最高」だと伝える。

ブレンダの降板により、映画の製作は頓挫し、脚本家達は帰る事になる。ミックは意気消沈する脚本家達に、代役が見つかり次第、撮影を始める意向を示し、発破をかけた後、駅で皆を見送る。帰り道、ミックは山道に面した草原で、自らがこれまで育ててきた、ブレンダを含む女優達が各々の役柄に扮して振る舞う幻想を目の当たりにする。ミックはその足でフレッドの部屋を訪ねると、ブレンダ抜きでは製作費が降りない見込みを示し、人間が美しいか、醜いかのいずれかだと説く。ミックはフレッドにバカンスが終わった後の予定を尋ねる。フレッドは普段通りに家に帰ると答える。ミックは自らには普段というものがなく、別の映画に取り掛かる意向を示し、感動が全てだと告げると、徐にバルコニーに向かい、フレッドの目の前で飛び降り自殺を図る。搭乗機でそれを知ったブレンダは慟哭する。

フレッドは悲しみに打ちひしがれながらも、バカンスの終わりを迎える。医者はフレッドにこれまでの検査結果を伝え、健康そのものだと説く。フレッドは自らがどうなるか理解しないままに年を取っていた事を明かす。医師は外界には「若さ」があるのだと説くと、生前のミックがギルダの話ばかりしていた事、ミックが子供の頃にギルダと手を繋いで数メートル歩いた、それがまさに自転車に乗れた瞬間だった事を明かす。

アルプスを離れたフレッドは、ヴェネチアに戻ると、畏敬するストラヴィンスキーの墓に花を手向けた後、認知症を患うメラニーが暮らす老人ホームを訪ねる。フレッドは、窓外を見つめたまま微動だにしないメラニーに対し、舞台に立つメラニーを初めて見て、恋に落ちた時の事や、メラニーの為に母親の宝石を売り、世間に生意気で俗悪な音楽家だと酷評され、メラニーから母親を売ったと非難された時の事を述懐すると、どんな苦痛や困難と遭遇しても二人が共にあり、そんな二人こそが「シンプル・ソングス」そのものだったのだと説く。

その後、フレッドは英王室の要請に応諾し、エリザベス女王とフィリップの面前で、スミ・ジョーを歌手に据えたオーケストラの指揮を執る。会場ではジミーがそれを見守る。一方、レナはルカと共に二人きりでロッククライミングに興じる。

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