チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

母の残像

ヨアキム・トリアー監督作「母の残像」("Louder Than Bombs" : 2015)[DVD]

戦場カメラマンの母が帰国中に事故で死去してから数年後、それぞれに苦悩や葛藤を抱える夫と二人の息子が時に衝突しながらも、困難を超克していく様を描くドラマ作品。

 

ニューヨーク在住の著名な戦場カメラマンのイザベルは、使命感に燃え、紛争地帯へ数多の撮影旅行を繰り返し、時に大怪我を負いながらも生還してきたが、帰国して間もなく、自宅近くで交通事故を起こして57歳で死去し、元俳優で高校教師の夫ジーン、長男ジョナ、次男コンラッドが残される。ジーンは、家族の心配を顧みずに、中毒の様に撮影旅行を繰り返すイザベルを予てから身勝手だと非難し、イザベルはその都度、ペースを落とすと約束していながらそれを守ろうとせず、夫婦仲に隙間風が吹いていた中での出来事だった。

数年後、ジョナは実家を離れて大学教授となっており、妻エイミーとの間に女児を儲ける。ジョナは院内で偶然、元カノのエリンと遭遇する。エリンは母が癌で死去した事を明かす。ジョナはエイミーの出産について明かすのを躊躇い、エリンはエイミーが癌を患っていると誤解し、ジョナに同情する。エイミーは赤子にイザベルと名付ける。ジーンは自らが勤務する高校に通うコンラッドと二人で暮らしているが、イザベルの死後、抑うつ的で心を開こうとしないコンラッドへの接し方に苦慮する。コンラッドは生前の母に妄執する一方で、クラスメイトのメラニーに好意を寄せる。ジーンはイザベルの死後、懇親会をきっかけに同僚のハナと密かに肉体関係を持つ様になったが、ハナがバツの悪さを訴えた為に距離を置いている。

ギャラリーがイザベルの回顧展を催す事になり、ジーンはイザベルの遺した素材の提供を要請される。ジーンはイザベルの死後、遺品を整理していない事から、ジョナに相談する意向を示す。生前のイザベルと撮影旅行に頻繁に出かけていたジャーナリストのリチャードは、NYタイムズに宣伝の一環でイザベルの記事を書く意向を示すと、その際にイザベルの死が実は自殺であり、イザベルが精神的に参っていた事に触れざるを得ないと説く。ジーンは自殺についてジョナは知っているものの、当時12歳だったコンラッドには話していない事を明かし、困惑する。

ジーンは帰宅途中のコンラッドを尾行し、電話口で友達と一緒にいると嘘を付いて、物憂げに独りで過ごす様子を目の当たりにする。コンラッドはジーンの尾行に気付くと、面識のない男の墓の前で倒れ込むなど不可解な行動を見せる。コンラッドの帰宅後、ジーンはゲームに没頭するコンラッドに話し合いの場を求めるが、コンラッドは自殺の真似事の様な悪態をついて拒否する。

程なく、ジョナは片道六時間をかけて一人で実家に帰省する。ジョナは信用できないギャラリーに素材を任せるのを嫌い、早速イザベルの職場で素材の整理を始める。ジーンはイザベルの事故の真相について、コンラッドに話す意向をジョナに伝えるが、ジョナはそれに反対する。ジーンはコンラッドにも知る権利があると反論する。その後、ジョナはイザベルのカメラに収められていたメモリーカードの中に、リチャードとの不倫を示唆する写真を見つけ、データを全て消去する。ジョナはやがてイザベルの自殺に関する記事が出るのを見越して、コンラッドに単なる不運な事故であり、尾ひれをつけたがる人達がいると諭す。ジョナは改めてコンラッドに真実を話すべきではないとジーンに訴える。ジーンはイザベルが塞ぎ込んでいたのは事実であり、ジョナが大学に行って家を離れている間も大変だったと説く。ジョナはその間にイザベルから頻繁に電話でやり取りしていた事を明かすと、育児放棄した妻と子煩悩な夫という筋書きが好都合だろうと詰り、主観をコンラッドに押し付けるべきではないと釘を刺す。ジョナは大学時代、イザベルが下宿に訪ねてきた際に、ジーンとの不仲を慮り、離婚を勧めたのだった。

間もなく、ジョナは帰宅したコンラッドが部屋で音楽に会わせて踊り耽っている姿を目の当たりにし、その意外な一面に驚く。二人はジーンの過去の作品を観たり、ゲームで遊んだりして楽しむ。コンラッドはふいに、自らがしたためた論稿をジョナに読ませる。それにはコンラッドの妄想、嗜好、体験談、夢の内容、イザベルとの思い出、ジョナに対する印象、ジーンの尾行などが雑多に織り交ぜられており、ジョナはそれが興味深いと評価する。ジョナは帰りを待つエイミーに不満を漏らし、すぐに帰ると約束する。その夜、ジョナはエリンの家を訪ねると、尚もエイミーの出産についてはおくびにも出さず、エリンとセックスする。ジョナはエイミーにもイザベルの事故の真相を伝えていない事を明かすと、エイミーがいつか離れていきそうだと漏らす。ジョナはエネルギッシュだったイザベルが落ち込んでいたという話に疑義を呈す。エリンはイザベルの脆さは意外だったと答える。ジョナはエリンが眠っている内に抜け出し、実家に戻る。

コンラッドはジョナを学校のグラウンドに連れていき、チアリーダー部員のメラニーに好意を寄せている事を明かす。ジョナはその場でエイミーから連絡を受け、ギャラリーと揉めている為にすぐには戻れないと嘘をつく。コンラッドは、自分について知ってもらう為に、したためた論稿をメラニーに渡す意向を示す。ジョナは高校が社交術やルックスによる厳格な格付けの世界であり、論稿がいかに素晴らしくてもメラニーは一顧だにしないだろうと説くと、数年息を潜めているよう諭す。その直後、コンラッドは構内でジーンとハナが抱き合っているのを偶然目撃する。コンラッドはハナの授業で悪態をつき、窘めるハナに更に唾を吐きかけて飛び出す。コンラッドはジーンと共に校長との面談を受け、ハナもその場に立ち会う。ジーンはコンラッドを自宅に連れ帰ると、もうハナとは会わないと約束し、悔悟と謝意を示す。ジーンは話し合いを求めるが、コンラッドはそれを拒絶し、部屋に篭って論稿を書き足す。コンラッドは完成した論稿を封筒に収めると、メラニーの家にそれを持参し、玄関口に置いて立ち去る。

ジーンはジョナが寝ている内にイザベルの素材を持ち出すと、リチャードにそれを託す。ジーンはその場でリチャードにイザベルのとの不倫について尋ねる。リチャードはそれを認めると、旅行中だけで国内では一度も無い事、結婚を希望していたが、家族を大切にするイザベルにはその気がなかった事を明かす。ジーンはイザベルに対して、また旅に出るのではないかと常に疑念と不満を抱いていた事を明かす。リチャードはイザベルが信念に従い、異国の地で夢に情熱を燃やす一方で、家族が恋しくなっていざ帰国すると長旅で疲労困憊し、更に子供の成長ぶりに戸惑い、家族の愛を感じながらも、邪魔者の様に扱われていると感じるなどし、二つの人生の狭間で苦悩していたと、その心情を描写する。

程なくして、NYタイムズにイザベルの大回顧展の宣伝と、それに伴うリチャードの記事が掲載される。ジョナはそれを読んでジーンを責める。ジーンはコンラッドを心配して連絡を取ろうとする。コンラッドは電話に出ず、親友ケネスと共に学生が集うパーティに出かける。道中、コンラッドは立ち寄った売店でNYタイムズの記事に目を通し、事故の真実を知る。パーティが行われている家の目の前でケネスが怯んで帰ると、コンラッドは一人で中に入るが、誰とも絡めずに所在なく妄想に耽りながら過ごす。コンラッドは帰り際にその家の前で泥酔して座り込んでいるメラニーを見つけ、一緒に帰る。コンラッドはメラニーに論稿を読んだか尋ねる。メラニーはそこで初めて、目の前にいるのがコンラッドだと知る。コンラッドはメラニーが民家の前で用を足している間に落涙する。明け方、コンラッドはメラニーを家に送り届け、帰宅する。コンラッドは部屋で帰りを待っていたジーンに、記事について尋ねる。ジーンは本当だと認める。コンラッドは黙っていた事を詰り、イザベルの様子を自分も一緒に見ていたと説く。ジーンは自らの非を認めると、涙を流すコンラッドを抱き締める。コンラッドは大丈夫だと応えると、ジョナも悩んでいるようだと伝える。ジーンはジョナに家に帰るよう促すと、深酔いしているジョナとコンラッドを車に乗せ、エイミーと赤子の待つジョナの家に向かう。

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