テア・シャーロック監督作「世界一キライなあなたに」("Me Before You" : 2016)[BD]
事故で半身不随となった富豪の男を介助する事になった女が、尊厳死を希望する男を翻意させる為に奮闘する様を描くロマンチック・コメディ作品。
明朗でお洒落好きな26歳のルイーザ(ルー)は、英国の郊外に位置する城に隣接した小さな町で家族と一緒に暮らしている。父バーナードは失業中の身で、妹カトリーナはシングルマザーである事から、ルーは家計の重要な担い手だったが、六年間働いたカフェの廃業に伴い、失業してしまう。ルーは恋人で生活カウンセリング業を営む熱血漢のパトリックに促され、職業センターを訪ねる。ルーは技能に乏しい為に職探しに難航すると思われたが、自宅から程近い城で暮らす、身体障害者の大富豪の運転と介助を半年間担う高給な仕事を勧められる。
ルーは意気揚々と城の中の屋敷を訪ね、障害者の母カミーラの面接を受ける。ルーは介護の経験が一切無い事を明かすが、カミーラは簡潔に息子の病状を説明すると、ルーを月曜から土曜のフルタイムの介助役に即採用する意向を示す。カミーラは雇われでは無く、友達になる事をルーに希望し、二年前にロンドンでバイクに轢かれて脊椎を損傷し、半身不随となった31歳の息子ウィリアム(ウィル)を紹介する。事故後、特別に設えた部屋に篭りきりのウィルは、会うやいなや、おどけてみせ、ルーを困惑させる。ウィルの介護士ネイサンはルーにタイムテーブルと薬の処方リストを教示すると、身体介助は無用であり、励まし役に徹する様に促す。
職務に就いたルーはウィルと親しくなろうとするが、ウィルがその度に悪態を付く為に、接し方に苦慮する。ルーはめげずに好意的に振る舞うが、早くも先行きに対する不安をカミリアに吐露する。カミリアはキャリアの為に大学に復学する意向を示し、ルーは家計の担い手としての責任を一手に負う。
10日が経ち、ウィルが事故前に交際していたアリシアが、かつての同僚ルパートと共にやってきて、ウィルに結婚を報せる。ウィルは素っ気なく対応する。アリシアはルーに対し、事故の後、ウィルに避けられ続けた事を明かし、その場を後にする。その後、ウィルは怒りに任せてアリシアと撮った写真を壊す。ルーはパトリックに仕事について報せる。パトリックは意に介さず、ルーにノルウェーへの旅行を提案する。
ルーは気を遣って写真立てを修繕するが、ウィルはそんなルーに悪態をつく。ルーはお金が必要だから仕事でやっているのだと反駁する。その後、ウィルはルーに対する接し方を少しずつ改め、気を許して笑顔を見せる様になる。ある日、ルーはウィルの定期検査の為に病院へ同伴する。ルーはウィルの体が回復を見込めない事をネイサンから聞く。
ある大雪の日、ウィルは風邪で伏せる。ルーは、ウィルの両親とネイサンが外出した事で対処に窮する。程なく、ネイサンが駆け付けた事でウィルは事なきを得るが、ルーはその時初めて、ウィルの手首に自傷痕を見つける。ルーは泊まり込みでウィルの看病に徹する。その最中、ルーはウィルに楽しい話をする様に求められ、悪夢を見た時にバーナードが歌ってくれたモラホンキー・ソングを口ずさみ、ウィルを楽しませる。ルーはまた、子供の頃に履いていたお気に入りのハチ柄のタイツについて語り、大人用が売っていない事を残念がる。
程なくウィルは風邪から回復する。ウィルは人生に疲れた者が住む様な町に留まらず、外へ出て服の趣味を主張すべきだとルーに説く。ルーはカフェを辞めて、大学でファッションを専攻するつもりだった事を明かす。ウィルはルーの可能性を指摘し、人生を精一杯活用する様に促す。ルーはウィルに伸ばしっぱなしの髭を剃る事を提案し、ウィルはそれに応じる。その後、ルーはウィルの父スティーヴンとカミーラがウィルのディグニタスを巡って口論しているのを立ち聞きする。スティーヴンは、自殺まで企てたウィルが尊厳死を望んでいる事から、その意向を尊重すべきだと主張するが、カミーラは与えられた六ヶ月間の猶予でウィルの決意を変えさせるべきだと反論する。ルーは雇われた本当の理由が自殺防止の監視役だった事を悟り、カトリーナに辞意を相談する。カトリーナはウィルを見捨てる事に反対し、死ぬ前リストを作る事で、残された時間に色んな場所を巡って楽しませ、ウィルの最後の時を飾ってやる様にルーに促す。ルーはそれが奏功し、ウィルの決心を覆す事に希望を見出す。
ルーは早速プランを練り、ウィルの両親に打診する。両親はそれを歓迎する。ルーはウィルを競馬に連れて行くが、それが空回りに終わると、次にクラシックコンサートを手配する。ルーはウィルと共にドレスアップし、コンサートを堪能する。ルーは誕生日会にウィルを招待し、ウィルは快諾する。ルーの両親はウィルを歓迎する。同席したパトリックはルーがウィルに世話する様子を見て嫉妬する。ウィルはサプライズでルーにハチ柄のタイツをプレゼントし、ルーは甚く感激する。
程なく、ウィルの元にアリシアとルパートの結婚式の招待状が届く。ウィルはルーを城の見晴らしの良い高所に誘うと、パリがいかに素晴らしい街かについて語る。ルーは一緒に行く事を提案するが、ウィルは昔の自分の姿の思い出を、不自由な体で不快な思いをして上書きする事を嫌う。ウィルはルーに結婚式への同伴を希望する。その後、バーナードはウィルのツテを得て、城のメンテナンス責任者として採用される。ウィルはルーに、家族の心配をせずに自分の道を歩む様に促す。間もなく、遺書委任状の専門家がウィルの元へやってくる。ルーはウィルの決意が揺るがない事を悟る。
ルーはウィルに同伴し、アリシアとルパートの結婚式に参列する。祝賀パーティの席で、ルーは車椅子のウィルの上に座り、賓客にダンスを見せつける。ウィルはルーが自らの元気の源だと説く。二人は会場を抜け出し、屋敷へ朝帰りする。
ルーはパトリックに、ウィルの旅に付き添う為にノルウェーには行かない事を伝える。パトリックは気分を害する。その直後、ルーはウィルが肺炎を患って入院したとの報せを受け、病院に駆け付ける。ルーはカミーラに代わってウィルに付き添い、回復を待つ。ネイサンは、ウィルが日頃苦しんでいる様子をルーに見せまいとしている事を明かすと、ウィルの苦悩を理解し、死の選択を尊重する意向を示す。ルーは自殺を見過ごす事を嫌い、ウィルを旅行に連れ出す事を提案し、ネイサンに同行を請う。ルーの帰宅するのを待っていたパトリックは、ウィルとの旅行の計画の概要を知ると、7年間交際してきた自分との落差を論い、呆然とする。ルーはウィルには自分が必要だと説くが、パトリックはルーの元から去る。
ウィルはルー、ネイサンと共にプライベートジェットでモーリシャスに訪れ、バカンスを楽しむ。嵐の夜、ルーはウィルとキスをする。その後もルーは、ウィルを楽しませる事で死を翻意させようと躍起になる。帰国前夜、ウィルは尊厳死について初めてルーに打ち明ける。ルーは自分が幸せにすると説き、翻意を請うが、ウィルはどんなに楽しくても現在の状態は元の人生とはかけ離れており、これ以上、落胆したまま生きる事は耐えられないのだと諭す。ルーはウィルと出会って生まれ変わったと説き、今しばらくのチャンスを求める。ウィルは自分の為にルーが普通の幸せを逃す事を嫌い、いま一緒にいる事がルーへの最高の贈り物だと説くと、戻り次第、スイスに行く意向を示し、ルーの同伴を希望する。ルーは最期を見届けるのは残酷だと説くと、ウィルと出会った事への後悔を示し、悲嘆する。
その後、ルーはウィルと言葉を交わす事無く、帰途に就く。空港へ迎えに来たウィルの両親に対し、ルーは辞意を告げて立ち去る。ジョージーは尊厳死が殺人だと主張し、ルーに関わらない様に命じる。ルーは無力感に打ちひしがれ、途方に暮れる。バーナードは誰にもウィルの決意を覆す事はできなかったはずだと説き、ルーを慰めると、ウィルがスイスへ出発した事を明かし、最期に立ち会ってやる様に促す。
ルーは直ちにスイスへと出発し、ウィルが最期を迎える風光明媚な場所に立つ施設を訪ねる。ルーはウィルに寄り添い、キスを交わす。ウィルはモラホンキー・ソングを静かに口ずさみ、ルーを励ます。間もなく、ウィルは両親を招き入れ、穏やかに最期を迎える。
数週間後、ルーは生前のウィルに促された通り、パリを訪ね、そこでウィルの遺書を開封する。その中でウィルは、自分の残した金で、ルーが新しい人生をスタートし、可能性を開花させる事、自分の死を悲しまず、健やかに生きる事を希望し、自らがルーと共にあると結ぶ。ルーはハチ柄のタイツでパリの街を軽やかに歩く。