ジェマイン・クレメント,タイカ・ワイティティ監督作「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」("What We Do in the Shadows" : 2014)[BD]
ウェリントンの古びた屋敷で共同生活を送るヴァンパイアのグループに密着し、現代社会を飄々と生きる彼らの実態を取材する体で描くモキュメンタリー・ホラー・コメディ作品。
ニュージーランド、ウェリントン。この街には人間社会に紛れて数十人のヴァンパイア達が生息している。ドキュメンタリー制作班は、この街の外れに建つ古めかしい屋敷で、共同生活を送っている四人のヴァンパイア達に同意を得た後、十字架を身に着け、保護の約束を取り付けた上で、取材を敢行する。
リーダー格のヴィアゴ(379歳)はしっかり者だが、神経質で口うるさいところが玉に瑕の男である。ヴィアゴはその昔、ロンドンから意中の少女カトリーヌを追ってニュージーランドにやってきたが、当時の召使のフィリップが船の手配を誤った為に、一年半も到着が遅れてしまい、その間にカトリーヌは別の男と結婚していた。今でも想いを断ち切れないヴィアゴは、カトリーヌの写真を収めた純銀ペンダントを大切に所持しつつ、しばしば養護施設で暮らす90歳のカトリーヌの姿を外から眺めている。ヴラディスラフ(862歳)はかつて串刺し公として恐れられた、拷問をこよなく愛する男で、また変態的で古めかしい考え方の持ち主である。ディーコン(183歳)はやや反抗的で、共同生活に対する意識が低く、仲間内では問題児と見做されている男である。ディーコンは元ナチスのヴァンパイアで、敗戦に伴ってニュージーランドにやってきたのだった。ピーター(8000歳)は古代のヴァンパイアで、主に地下の石棺の中に潜んでいる。かつてディーコンが旅の途中で訪れた古城の地下牢へ連れ込み、ヴァンパイアにしたのが他でも無いピーターだった。四人は時にいがみ合いながらも、100年近く穏当に生活を共にしてきたのである。
ある日、夜六時になると、ヴィアゴはいつもの様に他の三人を起こして回る。ピーターを除く三人はその日のミーティングを終えると、お洒落をして、獲物を釣る為に中心街へとバスに乗って遊びに行く。三人は街を散策した後、ヴァンパイアが集うクラブ「ビッグ・クマラ」を訪ねる。ディーコンはそこで人間の召使ジャッキーと会い、獲物となる男女を連れてくる様に命じる。ジャッキーは永遠の命を貰う契約をディーコンと交わしており、その代わりにクリーニングや屋敷の掃除などの雑用を従順にこなしている。
程なく、ジャッキーは知人のニックとジョセフィンを屋敷に連れてくる。ヴィアゴ達は二人を缶詰スパゲッティでもてなすと同時に、催眠術をかける。ニックは幻覚に翻弄され、屋敷から逃げ出そうとする。その間にジョセフィンはヴィアゴの餌食となる。ニックは三人から逃げ惑い、庭に出た途端に、そこで待ち構えていたピーターに捕まり、餌食となる。ニックはヴァンパイアにされ、四人の新たな仲間となる。ディーコンはニックをヴァンパイアにした事に不満を抱く。
二ヶ月後。ニックは人間の親友でIT関係の職に就くスチュをヴィアゴ達に紹介する。ニックはツテを利用し、人間の集うお洒落なクラブにヴィアゴ達を連れて行く。ヴァンパイアは招かれないと建物に入れない為、ヴィアゴ達は甚く喜ぶ。その帰り道、一行はヴァンパイアと同じく人間社会に溶け込んで生息する、アントン率いるオオカミ男の五人組と遭遇する。予てから反目する両者は、一触即発の事態を招くが、衝突は回避される。それを受け、ニックはスチュに自らがヴァンパイアだと打ち明ける。スチュはテクノロジーに疎いヴィアゴ達に、PCや携帯などを導入する。ヴィアゴ達はスチュを甚く気に入り、獲物では無く、仲間として受け入れる。
またある時、ニックは中心街へ遊びに行った際に、自らがヴァンパイアである事を吹聴し、ディーコンはそれを戒める。両者はいがみ合い、闘争に発展する。ディーコンはその足でジャッキーの家を訪ねると、ニックを仲間にした為にジャッキーが先送りになった事を伝える。ジャッキーは落胆し、苛立ちを募らせる。
ある朝、地下室が日光に曝され、ピーターが炎上する。ヴィアゴ達は駆け付けるも、手の施しようが無く、ピーターは死ぬ。日が落ちた後、ヴィアゴ達は地下室を調査し、そこでヴァンパイア・ハンターの死体を見つけると、その男が地下室の窓を破って侵入し、石棺の蓋で押しつぶされて死ぬも、窓から差した日光がピーターを焼いたのだと確信する。間もなく、駆け付けたニックは、街でヴァンパイアだと明かした際に、その男がヴァンパイア・ハンターを自称した事を明かす。ディーコンは憤慨し、冷静な話し合いを求めるニックと闘争を始める。そこへ、騒動への苦情を受けて二人の巡査がやってくる。二人は屋内の立ち入り調査を求める。ヴィアゴはそれに応じ、二人に催眠術をかける事で辛うじてやり過ごす。その後、ヴィアゴ達はニックを裁判にかけ、ヴァンパイアと吹聴して望まざるハンターを招き、ピーターが殺されるに至った廉でニックに有罪を宣告すると、屋敷からの無期限追放を言い渡す。
数ヶ月後、地元のヴァンパイア、ウィッチ、ゾンビの団体が数年に一度開く、恒例のアンデッドの舞踏会への招待状が屋敷に届く。ヴラドは今回は自らが主賓だと期待していたものの、激戦を繰り広げてきた因縁の仲の「ビースト」が主賓だと知り、強い拒絶反応を示す。
舞踏会が開かれる6月6日午後6時が近づき、ヴィアゴとディーコンはここ一番の仮装を身に纏うが、ヴラドは行くのを拒否する。ヴィアゴ達は意気揚々と会場の絶望の大聖堂に訪れると、集まったアンデッド達と親交を深め、ダンスに興じる。ディーコンの前にヴァンパイアと化したジャッキーが現れ、ニックに噛まれた事を明かす。ヴィアゴ達はニックと、同伴して参加したスチュと再会する。間もなく、ヴラドの元カノの「ビースト」こと、主賓のポーリーンが恋人ジュリアンと共に、集まった客達に挨拶回りを始める。その際、ポーリーンはスチュが人間だと察知する。ヴィアゴ達は大騒ぎになる前に会場からの脱出を図る。ポーリーンはルールを破って人間を招き入れた事を非難する。ポーリーンはスチュが童貞だと見抜き、会場のアンデッド全員に獲物として認識される。そこへ正装したヴラドが現れ、スチュとカメラマン二人を噛まぬ様に命じる。ジュリアンはそれを拒み、ヴラドと闘争を始める。ヴラドが窮地に陥ると、スチュはジュリアンを背後から柱で串刺しにして殺す。ヴィアゴ達は会場を抜け出すと、スチュを称える。
帰り道、一行はアントン達と遭遇する。アントン達は、満月が昇って変身する前に、体を鎖で木に縛り付けようと躍起になっていたところで、折り悪く現れたヴィアゴ達と口論になる。そうこうしている内に雲の切れ間から満月が姿を現し、アントン達は変身する。ヴィアゴ達はスチュを逃がす為に悪戦苦闘するが、その甲斐虚しく、スチュとカメラマンの一人が餌食となる。ニックはスチュの惨状を目の当たりにし、悲しみに打ちひしがれる。ディーコンはどんな死であれ見届けるのが、ヴァンパイアの宿命だと説き、ニックを慰める。間もなく、巡査二人が救急車と共に駆け付け、スチュが野犬の群れに襲われたと判断し、遺体を収容する。
後日、屋敷にニックがオオカミ男として復活したスチュとアントン達を連れてやってくる。スチュの提案で、それを機にヴィアゴ達とオオカミ男達の交流が始まる。また、ヴィアゴはカトリーヌをヴァンパイアにして屋敷に住まわせ、年の差を物ともせず、永遠に一緒に過ごす事を誓う。ヴラドはポーリーンと復縁する。ジャッキーは夫を使い魔にし、立場を逆転させる。