チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

はじまりへの旅

マット・ロス監督作「はじまりへの旅」("Captain Fantastic" : 2016)[DVD]

父親の方針により、山奥の森の中で社会と隔絶された生活を営む一家が、入院中の母親の突然の死に伴い、葬儀に参列する為に森を離れ、旅路の中で大きな変化に直面する様を描くコメディ・ドラマ作品。

 

父ベンを家長とするキャッシュ一家(長男ボウ、長女キーラ、次女ヴェスパー、次男レリアン、三女サージ、三男ナイ)はオレゴンの山奥、社会から隔絶された森の中で、狩猟・採集、販売用の工芸品の制作などを行い、自給自足の生活を営む。ベンは子供達を学校に通わす代わりに、自らが教師となり、生存術の過酷な訓練と読書を中心とした独学による教養習得を子供達に課す。長らく精神病を患っている母レスリーが、入院の為に山を離れて三ヶ月余りが経つ頃、ボウは素手で鹿を狩る儀式に臨み、ベンに少年から男になった事を認められる。

間もなく、ベンは一家の移動手段であり、また教室でもあるスティーヴと名付けたバスで、ボウと共に麓の町に出かける。ボウはそこで同年代の女子達と遭遇し、変人扱いされて誂われる。ボウは私書箱の郵便物を受け取り、ベンに内緒で出願した名だたる難関大学の数々から合格通知が届いた事を知る。一方、ベンはレスリーの容態を聞く為に、妹ハーパーに連絡し、昨夜レスリーが手首を切って自殺した事を知らされる。その夜、ベンは子供達にその事実を報せ、それでも今まで通り生活するのだと説く。子供達は皆一様に悲嘆するが、反抗期のレリアンはベンに対する激しい怒りを表出する。ベンはレスリーから届いた遺言状を紐解き、その内容に驚く。

翌日、ベンは子供達を通常通りの訓練に駆り出す。ベンは再び町を訪ね、レスリーの父ジャックに連絡する。ジャックはベンのせいでレスリーの人生が不安定になったのだと詰る。ベンは二人で決めた人生だったのだと反論すると、レスリー仏教徒であり、遺言で火葬を望んでいた事を伝える。ジャックはベンを葬儀に招く事を拒否し、来たら逮捕してもらうと脅す。レスリーの母アビゲイルは、五日後にニューメキシコの教会で葬儀を行う予定を伝えるも、ジャックに従うようベンに促す。ベンからジャックの意向を聞いた子供達は、それが不当な決定だと反発するが、その一方でベンが逮捕される事を心配する。

翌朝、子供達は揃って身支度を済ませると、葬儀へ赴く事をベンに熱望する。ベンはそれを聞き入れず、崖登りの訓練を命じる。その最中、レリアンは右手を負傷するが、ベンは自力でなんとかするよう命じる。バスで戻る途中、ベンはレスリーの死で意気消沈する子供達の姿に衝き動かされ、葬儀へ行く事を決断する。一家は意気揚々とニューメキシコへ向けてバスで出発する。

子供達は初めて目にする街並みや市民の姿に目を見張る。道中、バスがパトカーに止められ、ベンは警官からテールライト切れを指摘されると同時に、学校に行っていない子供達の様子を訝しがられる。子供達は在宅教育の成果を示すと共に、聖歌を合唱して警官を退散させ、事なきを得る。ベンは子供達にとっての初めてのファミレスでの食事を中止すると、スーパーで心臓発作を偽装し、その隙に乗じて子供達に食料を万引きさせる。その後、一家はクリスマスの代わりに、畏敬の念を抱く哲学者ノーム・チョムスキーの誕生祝いを行う。ベンはボウに弓矢、それ以外の子達には戦闘用ナイフを贈る。レリアンはクリスマスを祝わない事に反発する。

程なく、一家はハーパーの家に到着し、ハーパーとその夫デイヴ、二人の息子ジャスティン、ジャクソンと共に夕食を囲む。ハーパーはオーガニックな食材で一家を饗すが、ベンがかつてデイヴとレスリーが口論した件や、レスリーが精神病に因って自殺した件について、息子達に無配慮に言及した事に気分を害して食事を中座する。ベンは子供に嘘は良くないと説く。ハーパーは理解できない事柄から子供達を守っているのだと反論する。デイヴが仲裁に入り、ベンが謝罪する事でその場は収められる。

翌朝、ハーパーとデイヴはベンの子供達を心配し、学校に通って仕事に就く為のまともな環境が必要だと説く。ベンは子供達の心身を鍛え上げる事で、彼らの人生を救っているのだと主張すると、ジャスティン、ジャクソンを呼び出し、権利章典について説明を求める。二人がまともに応えられないでいると、ベンは次にサージを呼び出し、自分の言葉で権利章典を説明させ、ハーパー達を説き伏せる。

一家はハーパーの家を出発し、ニューメキシコを目指す。ボウは大学進学についてベンに打ち明けるのを躊躇う。一家は途中のキャンプ場に宿泊する。ボウはそこでの鍛錬中に同年代のクレアに声をかけられる。クレアは純朴なボウに興味を示し、会話の流れでキスをする。ボウは初めてのキスに興奮する。クレアは人気の無い場所へボウを連れて行こうとして、一緒に来ていたクレアの母親エレンに見つかる。ボウは衝動に駆られてクレアにプロポーズし、エレンに一笑に付される。

翌朝、クレアとエレンに見送られ、一家を乗せたバスは出発する。やがて、一家は目的地の教会に到着する。葬儀が始まると、一家は自分達なりの正装で葬儀に乱入し、参列者を困惑させる。ベンは神父の弔辞を遮って登壇すると、レスリー仏教徒であり、全ての既成宗教を嫌っていた事を明かし、レスリーの遺言状を読み上げる。「自分が死んだら火葬して欲しい。葬儀では音楽とダンスで自分の生涯を祝って欲しい。遺灰は人がたくさんいる公共の場所へ持っていき、速やかにトイレに流して欲しい」ベンは参列客の顰蹙を買う。ジャックは警備員に頼み、ベンを教会から追い出す。ベンはレスリーや子供達の望みを尊重すべきだと訴える。ジャックは子供達だけを埋葬に連れて行く意向を示す。ベンは子供達と共にバスに乗ると、埋葬を阻止する為に棺を運ぶ車を追いかける。子供達はベンが逮捕される事を怖れる。ベンはその意を汲み、やむを得ず埋葬の阻止を諦め、キャンプ場へと引き上げる。

レリアンはレスリーの精神病がベンのせいであり、自分達の暮らしは完璧な生活などとはまるで違うとボウに訴える。それに触発されたボウは、ベンに大学の合格通知を見せる。ベンは合格を評価しながらも、自分を欺いてまで試験を受け、出願した事を咎める。ボウは生前のレスリーが手伝ってくれた事を明かすと、大学への進学を切望する。ボウは更に、ベンのせいで子供達が皆変人扱いされており、本で学んだ事以外は何も知らないでいる事を責め、レスリーはそれに気付いていたのだと説く。その直後、ベン達はレリアンが書き置きを残して単身ジャックの邸宅に行った事を知り、バスで連れ戻しに行く。

レリアンはベンに対し、ベンがレスリーを殺したのだと詰り、レスリーが森を出たいと訴えてベンと口論していた事を明かすと、ジャックと一緒に暮らす意向を示す。ジャックはレリアンの手の怪我について論い、ベンの行っている事は児童虐待であり、それでは子供達が社会に出る事はできないと諭すと、子供達の養育権を巡って裁判で争う決意を示す。ベンは反発するが、ジャックは直ちに警察に連絡する。ベンは子供達と共に邸宅の前に茂みに身を隠し、警察から逃れると、ヴェスパーをレリアンの救出に行かせる。ヴェスパーは屋根に上がってレリアンのいる二階の部屋に向かうが、その途中で転落して頭部を地面に打ち付ける。

直ちに病院に搬送されたヴェスパーは、検査の結果、脳には異常が無いものの、頚椎を損傷し、危うく死ぬか麻痺が残る寸前だった事が判明する。ベンは子供達をジャックの元へ一旦預ける事を決意する。アビゲイルはベンが治療を提案する前にレスリーから送られてきた手紙を見せる。レスリーはその中で、ベンと森で築いた物は楽園であり、言葉にならない程の幸せを感じ、病気は治ると確信している旨を綴る。

ベンは子供達にジャックの元へ留まるよう命じるが、子供達はベンと離れて暮らす事に反対する。ベンは森にいればレスリーが治ると思ったが、結果的にやり過ぎだった事への悔悟を示すと、自分といたら人生がダメになると諭す。ベンはジャックに子供達を託し、断腸の思いでバスに乗って邸宅を離れる。ベンは途中に寄った給油所のトイレで、生えるに任せていた髭を剃り落とし、そこから程近い場所で野宿する。その夜、バスの床下に隠れていた子供達が姿を現す。レリアンはベンと和解する。子供達はレスリーの願いを叶える事を熱望する。ベンは子供達を危険に晒す事を厭うが、子供達はチョムスキーの教えを反芻し、ベンを翻意に導く。

一家レスリーが土葬された墓地に忍び込み、墓から棺を掘り起こして持ち去る。道中、ボウもまた生えるにまかせていた長髪を短く刈る。翌朝、一家は湖の畔でレスリーの遺体を火葬し、陽気な歌とダンスで祝うと、空港のトイレに遺灰を流す。ボウはナミビア行きを決意し、ベンは最後の人生訓を説いてボウを送り出す。その後、一家は森を離れ、麓に設けた農場で自給自足の新たな生活を始める。同時に子供達はそれぞれ学校に通い始める。

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