バリー・レヴィンソン監督作「ザ・ベイ」("The Bay" : 2012)[BD]
港湾汚染により大繁殖した寄生虫が、港町にもたらす惨劇を描くホラー作品。
2009年の独立記念日に、メリーランド州のチェサピーク湾に面した港町クラリッジで起きた惨劇の様子について、ドナは3年を経て、重い口を開く決意をする。ドナは自らが取材で得たフッテージに基づき、証言を始める。当時、ドナは地元テレビ局にインターン勤務するリポーターを務めており、カメラマンと共に、独立記念日を祝う町の模様を伝えるはずだった。クラリッジは漁業と養鶏業を主な産業に据える小さな港町で、市長の肝いりで建設された海水淡水化施設により、今後一層の発展が見込まれていた。7月4日の朝、ビーチは記念日を祝う人の群れでごった返していた。突然、疱疹で体中が血まみれの女が悲鳴を上げる。更に多くの者達が、続々と原因不明のその疱疹に見舞われ始め、町のアトランティック病院に搬送されていく。院長は初めて見るその症状と、患者数の増大に危機感を覚え、CDCに報告し、助言を求める。CDCは過去の事例と照合し、対応を協議する。
実はチェサピーク湾には、養鶏工場から大量の糞が垂れ流されており、一部で問題視されていた。人体に有害な物質を含む、鶏糞による水質汚染の程度を確認すべく、数週間前から環境保護省の調査が始まっていたのだった。2人の科学者が湾を訪れ、魚を検査したところ、湾内にはワラジムシに似た寄生虫が大量に発生し、魚を内部から食い荒らしている事が判明する。2人は湾内の鶏糞汚染と寄生虫の因果関係を報告書にまとめ、町長に送付していたが、それは黙殺されていた。後日、海岸で2人の遺体が、全身を何かに食い荒らされた様な状態で発見される。
一方、住宅地でも路上で遺体が発見され始め、警察は対応に追われていたが、当初は原因が分からず、殺人が疑われていた。住人の間では、大規模なテロを危惧する声も囁かれ始め、次第に町はパニックに陥っていく。病院では、患者の症状が悪化の一途を辿り、体内に侵入し臓器を食い荒らす寄生虫の存在が明らかになる。CDCは原因となる寄生虫と、その発生源におおよその見当を付ける。寄生虫は湾内の水だけに留まらず、淡水化施設のろ過装置をも、幼虫の段階で通過し得る可能性が示唆される。もはや手遅れと断じたCDCは、院長に対して患者を放棄し、病院から退避するよう要請する。その頃になると、町全域で携帯が不通となり、報道機関も麻痺し始めていた。現地の状況をリアルタイムで綴っていたドナのブログも、FBIにより閉鎖されてしまう。一緒にいたカメラマンも寄生により死亡する。ドナはこの惨劇を境に、リポーター職を辞している事を打ち明ける。
その後、港湾内に夥しい数の魚の死骸が浮いているのが発見され、町の死者数は数百人規模に増していく。町長は騒動の最中、事故死する。院長は惨劇が隠蔽される事を察知し、自ら犠牲となって最期の映像を残す。国土安全保障省はCDCと協議し、秘密裏にこの件を処理する旨を伝える。その後、海には塩素が投入され、寄生虫は死滅、事態は収束へと向かう。町には財政支援と引き換えに、箝口令が敷かれ、この惨劇は公式には存在しない事になっているが、ネット上に情報がリークされた事で明るみとなる。
流行りのファウンド・フッテージ型ホラー作品。湾内に棲息する現生の小さな虫が、汚染による突然変異で巨大化し、肉を食い荒らす恐ろしい寄生虫と成り、住民を襲い始める。これをストレートに描くと、大したハナシにはならないかも知れないが、ファウンド・フッテージだとケレン味たっぷりの臨場感ある作風になる。それが低予算系ホラーと親和性が高い所以だろう。しかし、そろそろお腹いっぱいな感じだし、新機軸が欲しい。本作に登場した寄生虫が具体的にどんな種だったのか、分からなかったが、ワラジムシで画像検索すると、まさにそれっぽいのが出てくる。CDC内でグソクムシに似た映像が登場したが、同じワラジムシ目らしいから、近縁種なんだろう。ちなみに食い荒らすと言っても、グロ度は低めで、虫もCGだろうから正視に堪えないという程ではない。しかし、寄生しないにしても、あんな虫がいる場所を想像したら、背筋が凍っちゃうな。