チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

クラウン

ジョン・ワッツ監督作「クラウン」("Clown" : 2014)[DVD]

偶然見つけたクラウンの衣装を身に纏った事で、悪魔と化していく男の姿を描くホラー作品。

不動産販売会社に勤める夫ケントと、歯科医の妻メグは、幼子のジャックの誕生日パーティを盛り上げる為に、クラウンの出張サービスを依頼する。ところが当日になり、業者側の都合が付かなくなる。仕事先の担当物件で、メグから連絡を受けたケントは、屋内で偶然見つけた古い箱の中にクラウンの衣装を見つけ、持ち出す。

ケントはクラウンの衣装を身に纏って帰宅し、サプライズ演出でジャックを大いに喜ばせる。夜、ケントはそのままの姿で寝入ってしまうが、翌朝、目覚めると衣装とカツラが外れずに困惑する。ケントはやむなくそのままの姿でジャックを学校に送り、担当する物件に直行する。ケントは尚も衣装を強引に外そうと試みるが、カツラと鼻は癒着しており、衣装は道具を使っても傷ひとつ付かず、当惑する。

そのままの姿で帰宅したケントが、メグに窮状を伝えると、メグは器具を使って力づくで鼻を外そうと試みる。皮膚ごと剥がれ、転げ落ちた鼻を愛犬シャドーが食べる。ケントは病院で傷跡の治療を受けるも、その言動から精神に問題を抱えていると医者に疑われる。程なくして、ケントの心身には徐々に不穏な変化が現れ始め、無性に空腹感が募るようになる。ケントは原因を探るべく、物件の所有者に連絡を取る事にする。所有者のマーティン・カールソンが既に死亡している事が判明し、ケントはマーティンの弟ハーバートが営むカールソン・コスチュームに目星を付け、連絡する。ハーバートは開口一番に衣装に触れぬ様に厳命するが、ケントが既に着用している事を伝えると、ケントを店に招く。

店を訪ねたケントは、ハーバートがマーティンと長らく音信不通で、その死を初めて知った事を明かし、衣装がはるか昔から北欧地域に伝わる物だと告げた上で、クラウンの起源を語り聞かせる。それは元々、山に住む魔物で、子供らを洞窟に誘いこみ、冬の間、毎月1人ずつ、全部で5人を食らっていた。それがいつしか、恐怖は忘れ去られ、子供を喜ばせる道化になったという。ハーバートは飲み物に薬を盛り、ケントを昏睡させ、縛り付けると、悪魔を倒すと告げ、首を切り落とそうとするが、不意に目覚めたケントは抵抗し、拘束を解く。ケントがハーバートから奪った銃を突きつけると、ハーバートはケントが纏っているのが、衣装では無く、悪魔の皮膚と髪だと告げる。

動転したケントはハーバートを拘束し、帰宅すると、殺されかけた事をメグに伝え、警察に通報する様に命じる。しかし、そこに居合わせたメグの父ウォルトらに気が触れたと思われ、ケントはハーバートを連れ、車で逃げ出す。ケントの体に肉体的な変化が始まり、変身が始まったと察知したハーバートは、ケントを殺そうとするが、ケントは咄嗟に車を衝突させる。重傷を負ったハーバートはケントに自ら命を絶つ様に命じるが、ケントはその言葉を顧みず、森に逃げ込む。

森に潜むケントの元に、ボーイスカウトの少年が現れ、食べ物を差し出すと、ケントは少年の指を食いちぎる。一方、ケントが重大な問題を抱えていると案じたメグは、ケントが置いていったハーバートのノートの記述から、邪悪なクラウンとの関連を見出す。ケントは更に変身が進み、子供を食べたいという耐え難い衝動に駆られ始め、自身が管理する物件の一つに身を隠す。

メグは次第にシャドーが凶暴化し始めた事に不審感を抱く。そこへケントから電話があり、メグは心配している事を伝えるが、ケントは自殺を仄めかして電話を切る。その直後、ケントは拳銃自殺を図るが、死ねない事を知る。メグは夜を徹して、ケントの管理する物件を虱潰しに当たって探し始める。ケントはペアの回転式電鋸を用意し、自ら首の切断を試みるが、怯んで失敗する。そこへ、クラウン姿のケントに懐いた幼い男児が訪れると、事故的に折れて飛び散った電鋸の刃が体を貫通し、男児は死ぬ。衝動に耐え兼ねたケントは子供を食らう。そこへメグが訪れ、戸外から呼びかけると、ケントは入室を制止する。メグはケントの苦悩に理解を示し、妊娠している事を打ち明けると、ケントは部屋を出る。

メグと共に帰宅したケントは、地下室に入り、危害を及ぼさぬ様に鎖で頑丈に緊縛させる。メグはノートから解決する術を探り、カールソン兄弟とクラウンの関係を知る。メグは入院中のハーバートの元を訪れ、ケントを救う方法を尋ねるが、ハーバートは自分しかケントを救えないと主張し、ケントを信用しない様に告げる。

メグはケントが衣装を発見した物件に赴き、屋内で拘束椅子とビデオカメラを発見する。メグはカメラのテープを再生し、異形の姿をした魔物が椅子に拘束されている様子を写した記録を観る。その頃、学校で嫌がらせを受けたジャックは、無断で帰宅する。ケントは、帰宅したジャックを地下室に誘い込むと、泣いている理由を尋ね、嫌がらせをした少年コルトンについて聞き出し、拘束を解かせる。ジャックが無断で帰宅した事を知ったメグは、自宅に急行する。

帰宅したメグは、ジャックの無事を確認し安堵する。一方、ケントはコルトンの家に訪れると、コルトンに襲いかかり、肉体を食らう。その夜、凶暴化したシャドーがメグに襲いかかる。そこへ病院を抜け出したハーバートが駆け付け、シャドーの首を斧で跳ね、殺す。ハーバートはクラウンの衣装の真実を知るに至った経緯を、メグに語り聞かせる。

ある日、ハーバートの店にアイスランドから荷物が届いた。それはその土地の貴族が所有していた物で、他は朽ち果てていたが、クラウンの衣装だけが無事だった。ハーバートはその衣装を役立てようと思い、マーティンが勤務する小児がん病棟に着ていった。ところが、やがて変身が始まり、ハーバートはマーティンに助けを求めた。マーティンは悪魔が望む物を与え、ハーバートの呪いを解くことができた。生贄にしたのは死にかけの子供5人だった。それ以来、ハーバートは悪魔を滅ぼす方法を探し続け、一方のマーティンは衣装を守り続けてきたのだった。

ハーバートは、衣装はどうやっても処分できないが、悪魔は首を跳ねる事で殺せると主張する。ジャックはケントがコルトンの家に向かったと打ち明け、メグはハーバートと共にケントの足取りを追う。コルトンの惨殺死体を発見した2人は、子ども達が集まりそうなアミューズメント施設に目星を付け、急行する。

ケントは施設の遊具に潜み、子供を襲い、食らう。異常を察知した子供とその親達はパニックとなり、一斉に施設から逃げ出す。メグとハーバートは、血痕を辿って内部へ向かい、そこで悪魔に変貌を遂げたケントを発見する。ハーバートは悪魔に斧で襲いかかるも退けられる。メグはケントの心に自我がまだ残っていると訴えかけ、救いたいと哀願するが、悪魔は子供一人と引き換えにケントを解放すると告げる。悪魔はジャックが適当だと仄めかし、2人のお気に入りの場所に連れてくる様に告げ、その場を立ち去る。

警察が駆けつけると、メグは施設を後にし、ジャックを守りたい一心で少女を誘拐する。しかし、約束の場所に着き、差し出そうとする直前になって思い留まる。メグは、ジャックがウォルトと共に自宅に戻っている事を知ると、ジャックの身を案じ、急行する。メグが帰宅するや否や、悪魔が現れ、ウォルトを殺し、ジャックを引き渡すように迫る。メグはジャックを守ろうと必死で抵抗し、ハンマーで悪魔を撃退すると、首を切断する。悪魔から衣装が剥がれ落ち、ケントの死体が露わになる。その後、衣装とカツラは無傷のまま、警察に証拠品として保管される。

 

 

スパイダーマン新作の監督に抜擢された、超期待の新人ジョン・ワッツ監督の初メジャー作品。おそらく本作が評価されての事だろうと、期待していたのだが、斬新なテーマと趣向で非常に面白く、ホラーの傑作だと思った。クラウンというのは日本でいうところのピエロで、厳密には意味合いが異なる様だが、兎にも角にも、現代ではファニーな存在のクラウンが、実は恐ろしい悪魔という設定になっている。クラウンの衣装が都合よく見つかるのは、なかなか強引ではあるものの、一度身に付けたら最後、心身共に悪魔と化していくという、その過程がリアルに描かれているのが良い。平凡なマイホームパパがやがて邪悪な悪魔と化し、子供を一人ずつ殺しては、バリボリ食らっていく様になるのだが、そこに滲み出る苦悩が次第に薄れていく描写も良い。グロ演出は、度が過ぎてコメディにならない様に、絶妙に配慮されていて痛快。

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