チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

リピーテッド

ローワン・ジョフィ監督作「リピーテッド」("Before I Go to Sleep" : 2014)[BD]

後遺症で記憶を一日しか維持できなくなった女が、その原因と治療法を探る過程で、事の真相に迫っていく様を描くミステリー・スリラー作品。

ロンドンの閑静な住宅街。ある朝、ベッドで目覚めたクリスティーンは、隣で眠っている男が何者で、自分がどういう状況にあるのか、一切思い出せず困惑する。男は自分が夫のベンだと明かすと、クリスティーンが置かれている境遇について説明を始める。

クリスティーンは現在40歳。二人は1999年に結婚したが、14年前にクリスティーンは交通事故に遭った。頭を怪我したクリスティーンは記憶障害を患い、記憶を一日しか維持できなくなり、朝には全てを忘れ、20代前半の状態に戻ると言う。

ベンは自分を信じる様に諭す事でクリスティーンを安心させると、アルバムを開いて二人の馴れ初めについて語る。ベンはクリスティーンが生活をする上で必要な事柄を、ホワイトボードにリスト化しており、今日が記念日である事を明かすと、出発の荷造りをして待つ様に告げ、出勤する。

クリスティーンは顔に殴られた痕がある事にふと気付く。その直後、クリスティーンの記憶障害の担当医で、ベンには内密に原因と治療法を探っているというナッシュから連絡があり、寝室のクローゼットの箱に隠したカメラを取り出す様に命じる。クリスティーンはカメラに記録された映像を見て、それが過去の自分が撮影した映像日誌だと知る。

その二週間前。ナッシュはクリスティーンの通院に伴い、送迎を行う。ナッシュは六ヶ月前にクリスティーンを偶然公園で見かけた時の話をする。ナッシュは同僚からクリスティーンの症例を聞いていた為、神経心理学者と自己紹介し、心因性の論文を準備中だと告げて無料の治療を申し出ると、クリスティーンはそれに同意して電話番号を教えてくれた。クリスティーンはベンに治療の可能性を説いたが、ベンは過去の治療が混乱を招くだけだったという理由で否定的だったという。

ナッシュはクリスティーンにカメラを与え、襲われても前日の記憶を辿れる様に、映像日誌を撮る様に促すと、クリスティーンが10年前に工業団地内で瀕死の状態で発見された時の事を打ち明ける。ナッシュは、診断書に拠れば負傷の原因が頭部への強打である事を伝えると、当時の新聞記事を見せる。ナッシュはクリスティーンだけが犯人を知っており、カメラの件をベンに伏せる様に命じると、毎朝、カメラの存在を電話で教えると告げる。クリスティーンはその夜から、眠る前に密かに自分の置かれた状況についてカメラに向かって語り、それを撮影する。

翌朝、クリスティーンは再び記憶が消えた状態で目を覚ます。ベンは近くの学校で化学の教師をしている事を明かす。クリスティーンはカメラの記録を見て、ベンによる交通事故の話が嘘だと知る。その後、クリスティーンはナッシュに連れ出され、クリスティーンが発見された、空港から程近い工場敷地内の現場に赴く。ナッシュはクリスティーンを発見した従業員の男に当時の様子を聞く。男はクリスティーンが裸にシーツを纏った姿で血塗れだったと証言する。ナッシュはクリスティーンが近隣のホテルにいた可能性を推測し、診断書に性交の痕跡があったが、精液が発見されず、警察はレイプでは無いと結論付けた事を伝える。クリスティーンはベンを裏切るような事はしないと主張する。その夜、クリスティーンは事件当夜の事を思い出す決意をカメラに語り、記録する。ベンに体を求められたクリスティーンは、記憶が断片的に戻り始め、何者かに襲われた瞬間がフラッシュバックする。

翌日、クリスティーンはナッシュによる検査に応じ、クレアという女の写真に反応した事が伝えられる。その夜、クリスティーンはクレアについてベンに尋ねる。ベンはクレアが大学時代の友人だと伝え、以前にもクリスティーンがクレアの事を思い出した事を明かすと、クリスティーンが事故に遭った後、クレアは引っ越し、それ以来、疎遠になった事を伝える。クリスティーンがクレアについて黙っていた事を咎めると、ベンはクリスティーンの混乱を怖れて、隠していた事を詫び、クリスティーンがクレアと撮った写真を見せる。ベンはクレアがクリスティーンの記憶障害に耐えられなかったのだと理解を促す。クリスティーンは嘘を付かぬ様に請うが、ベンは自分にも対処できない重荷がある事を説く。クリスティーンはベンを信用しない様にカメラに語り、記録する。

翌朝、クリスティーンはカメラの記録を見て、浴室に貼ったクレアの写真が消えている事に気付く。クリスティーンはベンが隠した写真を見つけ出すと、クレアとの記憶の断片を思い出し、更にベンとの間に儲けた息子の事を思い出す。クリスティーンはベンを呼び戻すと、息子について問い質す。ベンは息子アダムが8歳の時に髄膜炎で亡くなった事を打ち明け、密かに保管していたアダムの生後間もない写真と出生証明書をクリスティーンに見せると、クリスティーンが当時、入退院を繰り返していた事を伝える。クリスティーンは息子の死の事実が受け止められず、悲しみに暮れると、判明した事実をカメラに語り、記録する。

翌朝、クリスティーンはカメラの記録を見て、悲しみの余り、涙する。クリスティーンはナッシュにアダムの件について聞き、その気遣いに信頼を寄せていく。クリスティーンはベンに治療の事を話すべきか相談する。その後、クリスティーンは事故に遭う前の自分が良い母親だったか、ベンに尋ねる。ベンはクリスティーンがアダムを愛する最高の母親だったと伝える。クリスティーンはベンの経験してきた苦悩を理解し、隠していた事を許すと、もう二度と隠し事をしない様に請う。ベンはクリスティーンに詫びる。その夜、クリスティーンの夢の中にアダムが書いた落書きが現れ、それによりクリスティーンを襲った男の名がマイクだと示唆される。

翌日、クリスティーンは再びナッシュに連れ出され、車で港に辿り着く。ナッシュがクリスティーンを抱き寄せると、クリスティーンはナッシュの名札を見て、ファーストネームがマイクだと知り、車を飛び出す。ナッシュはクリスティーンを捕まえ、鎮静剤で眠らせる。その後、自宅で意識を取り戻したクリスティーンは、ナッシュから連絡を受け、記憶の穴を想像で埋める作話という症状に陥っている事を指摘される。その上でナッシュは、ベンに関して話しておきたい事があると告げる。

翌日、ナッシュはクリスティーンを連れ出すと、弱っている患者は医師に特別な感情を抱く事があり、自分もまた逆転移という現象で心が動いてしまったと説き、倫理的問題があり、担当医を続けられないと告げ、後任を手配した事を明かす。ナッシュは朝、電話する前にクリスティーンがカメラの事を覚えていた事を指摘し、治療の可能性を予見する。更にナッシュは、ベンが2007年にクリスティーンを精神科病院からケアセンターへ転院させた事を明かす。ナッシュは施設の所長に電話して、クレアから連絡があった事を知り、クリスティーンにクレアの電話番号を伝える。所長の話では、施設の記録に拠ると、クリスティーンは四年前にベンと離婚しているという。

クリスティーンはクレアに連絡し、折り返しの連絡を求めると、学校にベンを訪ね、離婚の理由について問い質す。ベンはアダムが病死した為だと告げると、一時は自分を失ったが戻ってきたのであり、もう二度とクリスティーンを離さないと誓う。

翌日、クレアから連絡があり、クリスティーンからの連絡を心待ちにし、引っ越しはしていない事を明かす。その後、二人はグリニッジ天文台で再会を果たす。クレアは、アダムがクリスティーン、ベン共々にとても愛されていた事、クリスティーンが育児と同時に教師の仕事を始めた為に悪戦苦闘していた事、それがきっかけでよくベンと口論していた事、クレアが週二回の子守を申し出ると、途端にクリスティーンが活き活きとしてきた為に、愛人の存在を指摘すると、クリスティーンがそれを認めた事を打ち明ける。クリスティーンは、ベンが事件後に愛人の存在を知った為に、自分を気遣って事件の事とクレアの事を隠すのだと悟る。更にクレアは、事件後にベンと長い時間を共に過ごすようになった事で、情に流され、一度だけ関係を持った事を打ち明ける。クレアは距離を置くべきだと思い、クリスティーンの元から去ったのだと釈明すると、クリスティーンにベンがいる幸運に気付く様に促す。クレアは別れ際に、ベンがクリスティーンと離婚した時に、ベンに時期を見て渡して欲しいと託された手紙をクリスティーンに渡す。

その手紙の中で、ベンは記憶障害を負った後のクリスティーンとアダムの関係について語る。ある日、クリスティーンはアダムを連れて逃げた為に、アダムは酷く脅えた。アダムはクリスティーンを恐れていたが、クリスティーンはベンやアダムの辛さを忘れて、病院で幸せそうにしていたという。ベンはクリスティーンへの愛を伝えると共に、8歳のアダムを辛い目に遭わせたくないと訴え、クリスティーンは一人の方が幸せだと理解を求める。

その後、クリスティーンはベンに許しを請い、愛を訴える動画を撮影し、ベンにそれを見せると、ナッシュに治療を受けていた事と映像日誌について打ち明ける。クリスティーンはベンを信じ切れずに秘密にしていた事を詫びるが、ベンはナッシュとの浮気を疑う。クリスティーンは自らの不貞の許しを請い、改めてベンに愛を訴える。その途端、ベンはクリスティーンの顔を殴り飛ばし、家を出て行く。クリスティーンはクレアに連絡し、ベンに殴られた事を伝えると、クレアはクリスティーンの身を案じ、ベンに電話すると伝える。クリスティーンはベンに殴られた事をカメラに語り、記録する。程なく、クレアから連絡があり、ベンが現在一人住まいでクリスティーンとは四年会っていない事が判明する。クレアはクリスティーンにベンの外見を描写させると、それが別人だと指摘する。その時、ベンが帰宅した為、クリスティーンは咄嗟に浴室に隠れ、クレアに助けを求めるが、住所が分からずに為す術も無く逃げ惑う。クリスティーンは裏口から脱出を試みるが、ベンに捕まり、薬品で昏睡させられる。

そして記念日の朝が訪れる。ベンの出勤後、クリスティーンはカメラの記録を振り返って自らの状況を悟り、更に殴られた痕を発見する。程なく、ナッシュの勤務する病院にベンが現れ、クリスティーンに近づかぬ様にナッシュに命じる。

その夜、ベンはクリスティーンを連れ出し、空港近くのホテルへ入る。クリスティーンが何の記念日で、なぜここに来たのか尋ねても、ベンはそれに答えず、クリスティーンに思い出すように命じる。クリスティーンは不意に、その部屋で浮気していた記憶を取り戻し、目の前の男がマイクだと悟る。マイクは実の夫ベンがクリスティーンを捨て、自分が傍に残り、面倒を見て来たと主張すると、ベンがクリスティーンを施設に置き去りにした事が耐え切れず、偽造書類で連れ出し、これまでベンを演じてきた事を打ち明ける。マイクはその目的がクリスティーンの世話と大切に愛する事だと説き、説明と嘘を繰り返す日々に疲れたと告げると、ベンを演じるのを終わりにし、マイクに戻る為にクリスティーンをこの部屋に連れて来たのだと明かす。

クリスティーンはあの夜、ベンに電話で真実を伝えようとしたマイクを制止した事で、激昂したマイクに血塗れになる程、苛烈な暴行を受けた事を思い出す。マイクは悪気は無く後悔していると弁明するが、クリスティーンは部屋から出ていこうとする。その途端、マイクは激昂し、クリスティーンを痛めつけると、カメラの記録を全て消去し、争いの終わりを告げる。マイクはクリスティーンを引き寄せ、キスする様に命じ、ベンとアダムを忘れる様に促すと、アダムはもうクリスティーンを忘れていると口走る。その言葉でクリスティーンは、アダムが生きている事を察知し、それをマイクに問い質すが、激しく殴打される。クリスティーンは必死で抵抗し、首尾よくマイクを昏倒させると、部屋から脱出して警報を鳴らす。警察と救急隊がホテルに駆け付けると、保護されたクリスティーンは搬送前に、もう誰にも人生を奪われないという誓いをカメラに記録する。

後日、病院に搬送されたクリスティーンの元に、ナッシュが見舞いにやって来る。ナッシュは医師では無く友人として来た事を告げると、クリスティーンが肋骨骨折と脳震盪を起こしていた事を明かし、面倒を見る人が必要だと説く。更にナッシュはマイクが逮捕され、安心する様にクリスティーンに諭すと、呼んできた本物のベンを面会させる。ベンは離婚がアダムの為だったと詫びると、自分もアダムもクリスティーンの事を愛していると告げ、控えていたアダムを呼ぶ。クリスティーンは幼い頃のアダムと交わした言葉遊びをする事で、記憶を取り戻し、アダムを抱き寄せる。

 

浮気した男がサイコパスな男だった為に、死ぬほど殴られた挙句に、記憶障害まで負わされ、毎日記憶が初期化してしまうという中年女の話である。夫と離婚した女に漬け込み、首尾よく夫に成り済ます事で10年も共同生活を続けるというサイコ男の鬼畜ぶりは相当なものだが、元はといえば女が夫を裏切って浮気に興じていたのが事の発端である。最初こそ女が悲劇のヒロイン然と見えていたのだが、オチを知ってしまうとどうにも複雑な気持ちになってしまった。さほどミステリー要素があるワケでも無く、犯人はコリン・ファースしかあり得なかったから、意外性は乏しい。ストーリーよりニコール・キッドマンの演技を堪能する作品かなと。

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