チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

ハッピーボイス・キラー

マルジャン・サトラピ監督作「ハッピーボイス・キラー」("The Voices" : 2014)[DVD]

トラウマによる幻聴・幻覚に苛まれる男が、心の声によって殺人を唆され、破滅の道を歩んでいく様を描くブラック・コメディ作品。

 

アメリカの田舎町ミルトンで水回り設備製造会社に勤めるジェリーは、廃業したボウリング場の管理室に愛犬ボスコ、愛猫Mr.ウィスカーズと共に暮らしている。ジェリーは過去のトラウマに起因する幻覚と幻聴に苛まれており、定期的に精神科医ウォーレンの診察を受けている。ジェリーはその心を反映して、ボスコからは善の声を、ウィスカーズからは悪の声を幻聴として聞き、孤独を紛らせている。

出荷部の新人ジェリーは、ある時、上司デニスから社内で催されるパーティの準備の手伝いを命じられる。ジェリーは好意を抱く経理部所属のフィオナが来ると聞いて、意気揚々と準備に臨む。その後、ジェリーはウォーレンの診察を受け、近況を伝えると共に、好きな人がいる事を明かす。ウォーレンはジェリーが会社に馴染んでいるのを知って安心する。

パーティ当日、ジェリーはフィオナの発案したダンスを一緒に踊り、楽しい時を過ごす。後日、ジェリーは経理部を訪ね、フィオナをデートに誘うが、経理部の同僚リサ、アリソンを交えて飲みに行く事になる。ロンドン出身のフィオナは彼氏との結婚をふいにした事を明かし、経理部でバイト暮らしをしている事を嘆く。ジェリーに好意を寄せるリサは、気持ちを仄めかすが、ジェリーはそれを意に介さず、フィオナを車で送る。帰り道、ジェリーは中華料理店での食事の約束をフィオナと交わす。

ジェリーに興味の無いフィオナはその約束をすっぽかし、リサ、アリソンと共にカラオケに行く。ジェリーは中華料理店で一人寂しくフィオナを待ち続けた後、土砂降りの雨の中を悲しみながら車で帰路に就く。フィオナは車のある会社までリサに送ってもらうが、車が故障して動かない事が分かり、足止めを食らう。程なく、そこへジェリーの車が通りかかると、フィオナはジェリーを呼び止め、同乗を請う。フィオナは店に行けなかった事を詫びると、その代わりと称して町外れのバーガー店へ食事に誘う。

道中、飛び出して来た鹿が車に衝突し、フロントガラスに突っ込む。ジェリーは瀕死の鹿が苦しみを訴え、死を望む声を聞くと、ナイフで絶命させる。フィオナはジェリーの異常な行動に慄き、車外へ飛び出すと、森に逃げ込む。ジェリーは逃げ惑うフィオナに追い付くも転倒し、勢い余ってナイフをフィオナの胸に突き刺してしまう。ジェリーは激しい出血で苦悶するフィオナに愛を伝えると、めった刺しにして殺害する。

ジェリーは死体をそのままにして帰宅すると、ボスコ、ウィスカーズに事情を伝える。ボスコは警察に出頭した上で、殺意が無かった事を伝える様にジェリーに促すが、ウィスカーズはそんな突拍子も無い話が信用されるはずは無いと説き、ジェリーには殺意があったのだと指摘すると、死体の回収を命じる。

明け方、ジェリーは死体を回収すると、その足で解体用の道具一式を買った後、ウォーレンの診察に応じる。ウォーレンはジェリーが薬を飲むのを疎かにしている事を知ると、指示に従わねば精神病棟に逆戻りだと戒める。ジェリーは帰宅すると、フィオナの遺体を解体してパック詰めにし、生首を冷蔵庫に収納する。ジェリーはウォーレンの指示通りに薬を飲もうとするが、ウィスカーズは友達を失い、暗く孤独な世界に迷い込む事になると諭し、それを制止しようとする。しかし、ジェリーは冷蔵庫のフィオナに命じられるままに薬を飲む。

眠りに落ちたジェリーは、義父の暴力に母共々虐げられ、喋る靴下に逃避していた少年時代の夢を見る。薬が効き始めると、ジェリーは幻覚と幻聴の無い、孤独で暗鬱な現実の世界で目を覚ます。そこではボスコとウィスカーズの声も聞こえず、ジェリーは血塗れのフィオナの生首を見て嘔吐すると、薬を全て捨て去る。やがて薬の効果が切れると、ジェリーに再び幻覚と幻聴が戻る。フィオナは冷蔵庫に独りきりでは寂しいと嘆き、リサを殺して連れてくる様にジェリーを唆す。

出勤したジェリーは、デニスからフィオナと連絡が付かない事について問われるが、帰国したのかも知れないと白を切る。ウィスカーズはボスコの制止を遮り、リサを殺す様にジェリーを唆し、殺す事で生きている実感が味わえるのだと誘惑する。

ジェリーはリサを飲みに誘う。リサは離婚したばかりで猫だけを引き取った事を明かすと、ジェリーと意気投合し、自宅に誘う。ジェリーはリサの家に向かう前に、廃屋と化した生家にリサを招く。ジェリーはドイツから渡米した母が長らくホームシックだった事、幼少期に友達に恵まれなかったジェリーが、家で孤独に過ごしていた事を明かす。ジェリーは屋内に入ると、母の最期を想起する。少年だったジェリーは精神病棟に連れ戻されるのを拒む母に頼まれ、その手で母の命を絶つと、そこに警察が駆け付け、ジェリーは精神病棟に入ったのである。リサはジェリーの悲嘆する姿を見て、同情すると、キスをする。リサはジェリーを自宅に招き、2人は関係を持つ。

嬉々として朝帰りしたジェリーは、冷蔵庫のフィオナに催促され、目的を思い出す。一方、リサは従業員名簿でジェリーの自宅を調べ、サプライズの訪問を企てる。

殺しを躊躇うジェリーは、自分が殺人鬼では無く、フィオナを殺したのが自分であって自分では無いのだとウィスカーズ達に弁明する。ウィスカーズは幻聴が全てジェリー自身の声だと指摘する。そこへリサがケーキを持参してやって来る。ジェリーはリサを出迎えると、ドアがロックされたと偽り、リサを帰らせて天窓から室内に戻ろうとする。鍵開けに慣れたリサは、先にドアを開けて室内に入るが、腐敗物や糞が散乱し、大量の血痕が付着した内部の様子に慄き、更にテーブルの上にフィオナの首を見つけ、驚愕する。慌てて帰ろうとするリサをジェリーは制止するが、リサは必死で抵抗し、脱出を図る。ジェリーは説得を試み、逃げようとしたリサを押し倒す。リサは衝撃で首の骨を折って、間もなく絶命する。ジェリーはリサの首を切断し、冷蔵庫の中にフィオナと共に並べる。

アリソンはフィオナが出勤せず、ジェリー共々連絡が取れない事を心配する。同僚のデイヴは、ジェリーがかつて精神病棟に入れられた当時の新聞記事を紹介する。アリソンはリサの身を案じて、ジェリーの自宅を訪ねる。ジェリーはアリソンをも殺害し、首を冷蔵庫に並べる。ボスコはジェリーの蛮行を見かね、ウィスカーズの指摘通りの悪人だと詰る。

ジェリーはフィオナ達が唆す殺人の衝動に耐えかね、ウォーレンの元へ助けを求めに駆け込む。ジェリーは薬を完全に断ち、幻聴に苛まれている事を明かすと共に、三人殺した事を告白し、悔やんでいる事を伝える。ウォーレンが密かに通報しようとすると、ジェリーは激昂し、ウォーレンをガムテープで拘束した後、車に乗せて人気の無い場所へ連れ出す。

ジェリーは義父のせいで母が死を選んだのだと嘆き、神が自分に責苦を味わわせる理由を問い質す。更に、ジェリーはこれまで十分我慢したのだから、殺人ぐらい許されるのだと主張し、声が聞こえる理由を問い質す。ウォーレンは声に抗う事はでき、従う必要は無いのだと説き、あらゆる不幸の原因は孤独にあり、ジェリーはもう孤独では無いのだと諭す。一方その頃、デイヴは同僚アディと共にジェリーの自宅を訪ね、部屋に押し入り、惨状を確認すると、通報する。

夜、ジェリーはウォーレンを自宅へ連れ込むと、恐怖に慄くウォーレンにフィオナの生首を紹介する。程なく、警察が駆け付け、ボウリング場を包囲する。ジェリーはウォーレンを部屋に残し、浴室のダクトを通ってボウリング場を抜ける事で、裏口からの逃走を企てるが、ダクト内のガスの配管を誤って足で破断し、屋内にガスが漏れ始める。警察は屋内に突入すると、ウォーレンを救出する。ウォーレンはジェリーが病気だと保安官に明かし、傷つけないように請うが、保安官はそれを顧みず、屋内に特殊部隊が突入する。その直後、充満したガスが電気で引火し、爆発する。

ボウリング場に到達したジェリーは立ち込める火煙に包まれる。ウィスカーズの声は逃げる様にジェリーに命じるが、ボスコの声は苦しみを終わらせられると説き、留まって死ぬ様に促す。ジェリーはその場にうつ伏せになり、最期を迎える。ジェリーの心の中で、ウィスカーズはボスコに負けを認める。両者は好意を伝え合った後、互い違いの道へと別れる。ジェリーは正装姿で死後の世界に遷移し、そこで母、義父、フィオナ、リサ、アリソンと再会する。更にそこへイエスが降臨すると、皆は楽しい歌とダンスに興じる。その後、ジェリーはイエスにフォークリフトで天国へと搬送される。

f:id:horohhoo:20160309155659j:plain

f:id:horohhoo:20160309155702j:plain

f:id:horohhoo:20160309155705j:plain

f:id:horohhoo:20160309155708j:plain

f:id:horohhoo:20160309155713j:plain

f:id:horohhoo:20160309155716j:plain

f:id:horohhoo:20160309155720j:plain

f:id:horohhoo:20160309155723j:plain

f:id:horohhoo:20160309155728j:plain

f:id:horohhoo:20160309155732j:plain

f:id:horohhoo:20160309155736j:plain

f:id:horohhoo:20160309155740j:plain