ジョン・ポーグ監督作「テスター・ルーム」("The Quiet Ones" : 2014)[DVD]
負の心的エネルギーを除去する事で心の病を治療できるという仮説を実証すべく、心理学者が精神疾患を持つ女を対象に行う実験の恐ろしい顛末を描くスーパーナチュラル・ホラー作品。
1974年、オックスフォード大学。心理学者のジョセフ博士は、超常現象が潜在意識の現れに過ぎないとする自らの仮説を証明し、それを精神医学に活かすべく、親に捨てられ、精神疾患を持つ20代のジェーンを被験者として迎えると、アパートの一室に留置し、助手のクリッシー、ハリーと共に研究に勤しむ。
ジョセフは新たに学外のカメラマン、ブライアンを実験の記録係として雇う。ブライアンは、ジェーンがイーヴィと称する女の子の人形が見えると告げた直後に、超常現象が生じる様子をフィルムで確認すると、里親の元を転々としてきたジェーンが最初は快く迎え入れられるものの、やがて不可解な事が起き、悪魔の仕業だと疑われてきた事、ジェーンは過去を覚えておらず、また自殺願望を持っている事を知る。ブライアンはジェーンへの接し方を教わり、撮影に臨むが、ジェーンの言動を目の当たりにし、先行きに不安を覚える。ジョセフは負のエネルギーがテレキネシスとして発現すれば、腫瘍を除去する様にエネルギーをも除去する事で、心の病を根治できると主張する。ジョセフはジェーンにイーヴィに擬えた人形をプレゼントし、それに負のエネルギーを送り込む様に促す。ジェーンは永遠に眠りたいと訴える。ジョセフ達はジェーンに対する監視と投薬を続ける。ある時、ジェーンは突然、錯乱し、助けを求めて暴れ始める。
ジョセフは研究の発端について述懐する。異常心理学を専門としていたジョセフは、ある時、12歳の少年デヴィッド・Qに出会った。ごく普通の少年だったデヴィッド・Qは一変して、超常現象を起こし始め、それを父親が話したおとぎ話のキャラクター、グレガーの仕業だと主張する様になった。ジョセフの実験によりデヴィッドは回復していたが、信仰深い母親により実験が打ち切られたのだという。
程なく、実験に伴う騒音が災いし、ジョセフの研究は大学に予算を打ち切られる。ジョセフはジェーンを他へ移す事を決意する。クリッシーとハリーは引き続き実験に協力する意向を示し、ブライアンもそれに同意する。ジョセフ達は大学を離れ、郊外に建つ古い屋敷の一室にジェーンを移すと、EMFスキャナや脳波測定器などの実験機材を搬入し、実験を再開する。ジョセフは、イーヴィが出て来る様にジェーンに対する働きかけを強める。ブライアンはジェーンを不憫に思う余り、情が湧き始め、ジェーンに花を摘んで持っていく。ジェーンは早くイーヴィを見つけて欲しいと請う。
ジョセフはジェーンに催眠療法を用いてイーヴィが出て来る様に促す。その最中、ジェーンが死にたいと告げた直後にカメラが飛ばされる現象が生じる。ジェーンはイーヴィが遊んでいたと説く。ジョセフは実験の進展に喜び、三人と乾杯する。
引き続き、ジェーンに対する監視と投薬が続けられる。ジェーンは人形の髪を毟り始める。クリッシーはその意図をジェーンに尋ねる。ジェーンは自分を助ける事はできず、いない方が良いのだと告げると、突然クリッシーを執拗に殴り始める。ジェーンはイーヴィが自分の中にいると主張すると、ブライアンに抱いて欲しいと訴え、体を求める。ジョセフはそれを制止すると、ジェーンがブライアンの気持ちに気付いているのだと説く。
再度の催眠療法の最中、ジェーンはイーヴィが来たと告げる。その途端、EMFのレベルが急上昇する。ジョセフはイーヴィにノックで合図する様に促す。ジェーンが燃えていると訴えると、ジョセフは火への反応を見る為に、ろうそくの火をジェーンの腕に当てる。ジェーンが悲鳴を上げると、ブライアンはすかさず実験を中止させるが、ジョセフはそれを咎める。その夜、ブライアンは異変を察知すると、実験室の様子を覗いに行き、そこで自傷して血まみれになったジェーンを見つける。クリッシーはジェーンを医者に見せるべきだと主張するが、ジョセフは最後まで実験をやり遂げる様に説き伏せる。
ブライアンはジョセフの実験方針に疑義を呈し、ジェーンに他の治療法を勧めるが、ジェーンはそれを拒む。ジョセフは投薬量を増やして、新たに交霊会を模した催眠療法を試みる。ジェーンは屋敷が燃えていると説き、熱さを訴える。ジェーンは更に人形を掴み上げると、イーヴィが燃えている、ここからは逃げられない、焼き尽くされるなどと叫び始める。その途端、人形が発熱し、ジェーンは手に火傷を負う。一同はジェーンを休ませる為に担ぎ上げた途端、ジェーンの口から悍ましい異形の物体が飛び出る様子を目撃する。ジョセフはそれがテレプラズムだと主張し、次がジェーンの心的エネルギーを解放し、永遠に取り除く、転移の段階だと説く。ブライアンはジェーンに休息が必要だと主張し、クリッシーとハリーもそれに同意する。ブライアンはそれを認め、ジェーンに休息を与える。
後日、ジョセフは再び交霊実験を行い、イーヴィに人形に入る様に命じる。間もなく、屋内で叩きつける様な音が轟き始める。ジョセフ達は音の源の方へ向かうと、その先のクローゼットが独りでに開く。ジョセフは中の様子を覗うと、突然何かに手を噛まれて負傷する。
ブライアンは全てがジョセフのヤラセであり、自分を騙そうと画策しているのでは無いかという疑いを募らせる。ブライアンはクリッシーとハリーに細工について説明すると、実験が無意味であり、ジェーンを苦しめているだけだと訴える。ブライアンは人形にも何かが仕込んであるはずだと主張し、それを証明する為に刃物を人形に突き刺す。その途端、実験室のジェーンが悲鳴を上げ、駆け付けたブライアン達は、激しく吐血して苦悶するジェーンを見つける。ジョセフはブライアンが自らに疑いを抱いた事に理解を示すと、イーヴィを追い出す為にブライアンが必要になると説く。
ジョセフ達はジェーンの精神状態を具現化する生体電気エネルギーを写真に収める実験を行い、負のエネルギーの中にイーヴィの姿が写し出される。ジョセフはイーヴィを必ず消せると説き、ジェーンを励ますが、ジェーンは消したくないと主張する。
クリッシーはジョセフを誘惑するが、ジェーンに付きっきりで見守るジョセフはクリッシーを邪険に扱う。 クリッシーは、ジョセフが愛するジェーンを手に入れる為に、治療に躍起になっているのだとハリー達に主張する。その直後、クリッシーは機材に近づいた途端に、感電して吹き飛ばされる。クリッシーはジェーンに殺されかけたと訴えるが、ジェーンは自分では無く、イーヴィの仕業だと主張する。ジョセフは無意識下におけるエネルギーの発現が予想外の展開だと説く。
その夜、屋敷は突然の停電に見舞われ、ジェーンが実験室から姿を消す。間もなく、ジェーンが悲鳴を上げ、助けを求める。暗闇の中、一同は声のする方へ向かい、子供部屋でジェーンを発見する。ジェーンはベッドに焦げ付いた赤子の痕跡から、赤子を抱え上げようとする。その途端、炎が生じ、ジェーンの脇腹に不可解な印が刻まれる。ジョセフはそれが悪魔崇拝の象徴「シジル」だと主張する。クリッシーは霊的存在の可能性を疑い、恐れを露わにする。ジョセフはオカルトの発想だと一蹴すると、全ての超常現象がイーヴィを消すヒントだと説き、科学者らしく考える様に命じる。ジェーンはブライアンの取り憑かれていたという主張を否定し、イーヴィがジョセフと共に作ったものだと説き、実験の継続を求める。ジョセフは実験に反対する者に出ていく様に命じる。それを受け、クリッシーとハリーは屋敷を後にする。ジェーンは、ブライアンにジョセフを信じて留まるように請い、キスをすると、イーヴィのおかげで生まれて初めて幸せになれそうだと説く。
翌日、ブライアンは密かにジョセフの所持する書類の中から、ジェーンに関する記録を漁る。ブライアンは更なる情報を得るべく、フィルムを買いに行くと偽って、大学の図書館を訪ねる。一方、クリッシーは入浴中に超常現象に見舞われ、危うく死にかける。クリッシーとハリーは再び屋敷に戻ると、ジェーンを精神科病院に閉じ込めるべきだとジョセフに訴える。そこにブライアンが資料を携えて戻り、調査で判明した事実を明かす。
カルト教団の教祖ドワイヤー博士は、千里眼を持つ娘イーヴィが悪魔を転生させると信じていた。1954年、ドワイヤーはイーヴィが啓示を受けたと主張し、信者達を建物に閉じ込めた。間もなく、建物は火事に見舞われ、皆が焼け死んだ。その時に死んだとされるイーヴィには、口唇の裏にシジルと同じ母斑があったのだという。
ブライアンはイーヴィがジェーンに取り憑いているのだと主張するが、ジョセフはそれを真に受けず、ジェーンがカルト教団について知っていた可能性を指摘すると、ジェーンが催眠療法で意識の底からイーヴィの名を引き出したのだと反論する。ジョセフはジェーンに対し、イーヴィについてどこで知ったのか、手を上げて追求する。ブライアンはそれを制止するが、ジョセフはブライアンを殴り飛ばし、出ていく様に命じる。
その夜、ブライアンはクリッシーとハリーにジェーンを連れて出ていく決意を示し、車を借り受ける。その直後、ブライアンはデヴィッド・Qの実験記録を収めたフィルムを観ているジェーンを見つける。その記録から、デヴィッド・Qがジョセフの実子であり、1969年に精神科病院で自殺した事が判明する。そこへジョセフが現れ、人生を捧げてきた仮説こそが答えだと説き、自分を信じる様にジェーンに請う。その途端、全員の体にシジルが刻まれ、クリッシーとハリーは見えない力によって殺される。
ジェーンはブライアンに対し、自らがイーヴィであり、将来を考慮して報道されないまま、名前を変えて里親の元へ送られた事、過去の記憶に蝕まれて心が壊れ、記憶を失った事を明かすと、口唇の裏のシジルを見せ、自分は死ぬまで治らないのだと嘆く。ジェーンは自分の中で何かが燃えていると訴える。ブライアンは助かる方法があるはずだと諭す。その途端、ジェーンは豹変し、誰にも自分は救えないと告げた後、ブライアンの首を締めて殺そうとする。そこにジョセフが現れ、ジェーンに薬を注射して眠らせると、ブライアンを木材で殴って気絶させる。
ジョセフはブライアンを椅子に縛り付けた後、ジェーンを薬品で仮死状態にし、蘇生させるまでの過程の生体電気現象を写真に収め、映像と共に科学的根拠を残そうと企てる。ブライアンは力づくで拘束を解くと、ジョセフを殴り殺し、ジェーンに蘇生措置を施す。ジェーンは息を吹き返すや否や、許しを請い、ブライアンを部屋から弾き出す。間もなく、ジェーンの体が炎に包まれると、悪魔が覗き窓越しにブライアンに向かって飛び出す。
その後、ブライアンは屋敷の全員を殺した疑いをかけられ、警察署で取り調べを受ける。精神を蝕まれたブライアンは、全ての記録がカメラの中にあると主張するが、刑事はフィルムが全て焼けたと伝える。ブライアンは掌を翳し、そこから煙を生じさせる。