ニコラス・ウィンディング・レフン監督作「ブリーダー」("Bleeder" : 1999)[DVD]
恋人の妊娠を境に精神が不安定な状態に陥った男が、友人や恋人を巻き込みながら辿る、悲劇的な末路を描くクライム・ドラマ作品。
ある日、貸しビデオ店で働く無類の映画好きのレニーの元に、親友レオがやってきて、アパートで同棲する恋人ルイーズとの間に子供ができた事を報せる。ルイーズは母親に妊娠8週目を電話で伝える。帰宅したレオは、妊娠が確かなのか問い質すと、前回と同じ様に中絶を促すが、ルイーズはそれを拒む。そこへルイーズの兄ルイがルイーズの妊娠を母親から聞いてやってくる。ルイはレオの様子がおかしい事を察知し、ルイーズの面倒をしっかり見る様に命じる。レオはルイが働くクラブへ同行する。
その夜、レニーは映画館から帰る途中で客のいないデリの前を通りがかり、そこで売り子として働くレアに見惚れる。一方、レオとルイがクラブの前に着いて間もなく、ドアマンの男がアラブ人への差別感情を剥き出しにする。そこへアラブ人の男と白人の男の二人組が客としてやってくる。ドアマンは二人組の入店を頑なに拒否する。白人は意趣返しにドアマンを銃撃する。ルイと店のスタッフはその場で白人の男を取り押さえると、店の中に連れ込み、激しいリンチを加える。レオはその様子を傍で見ながら、帰りたいと訴える。
翌朝、レオはルイーズにその事を話す。レニーはバスを待つレアに声をかけ、ビデオ店やデリで面識がある事を明かす。レアが素っ気なく応じると、レニーはレアがかつて借りたビデオの感想を聞いて、立ち去る。その夜、レニー、ビデオ店の店主キッチョ、レオ、ルイはビデオ鑑賞の為に集まる。レオはレニーにレアとの進捗について尋ねるが、レニーがまだ何もしていない事を知ると、普通では無いと詰る。レオ達はビデオを観る前にキオスクに立ち寄る。レオは会計が高いとアラブ人の店員に難癖を付ける。ルイはそれに乗じて、店員を口汚く罵倒する。レニーは店員に誤ってその場を執り成す。ビデオ鑑賞の最中、レオは映画の演出について難癖を付け、登場人物がみな銃を持っており、扱い方を知っている事に疑義を呈す。更にレオは、ルイの店で起きた出来事について触れると、ルイに人や動物を撃った経験を問い質し、ルイーズに内緒で拳銃が欲しいと訴える。ルイはそれを拒む。その後、レニーはデリを訪ねると、注文のついでにレアに趣味について尋ねるなどし、映画に誘う。レアはそれに応じる。一方、ルイーズは妊娠してからセックスしていない事への寂しさをレオに訴える。レオはそれに取り合わず、外出する。
翌日、ルイーズはコインランドリーで幼子と赤子を連れたミカと知り合い、アパートに招く。一方、レオはビデオ店にレニーを訪ね、入手したばかりの拳銃を見せ、実弾が入っている事を明かす。レニーは用途を尋ねるが、レオは分からないと答える。レニーはレアと映画館に行く意向を示す。アパートに戻ったレオは、ルイーズが子連れの女を連れ込んでいる事に不快感を露わにする。ミカが帰るや否や、レオはルイーズを張り飛ばすと、即座に殴った事を謝り、抱き締める。その後、レアは映画館の前でレニーを待つ。レニーはその様子を離れた場所で見て、立ち去る。
翌日、ルイはアパートを訪ね、ルイーズに機嫌が悪い理由を問い質す。ルイーズは最近のレオの様子がおかしい事を明かし、殴られた事を認める。憤慨したルイは、レオに話を付けに行く意向を示す。ルイーズは暴力を止めて欲しいと請う。ドアの前でレオの帰りを待っていたルイは、ルイーズを殴った事を咎め、次にやったら殺すと脅す。その夜、レニー達四人は再びビデオ鑑賞の為に集まる。その最中、ルイはレオを睨み続け、一触即発の雰囲気になる。レオは徐にスクリーンの前に立ち、ルイに拳銃を突きつけると、自分とルイーズの生活に干渉せぬ様に命じ、罵声を浴びせる。レオは実弾の入っていない拳銃の引き金を引いて驚かせる。その後、四人はバーガーショップで食事する。レオは過剰反応だったと弁解し、ルイと形ばかりの和解をして見せる。ルイが出ていくと、レオは驚かせるのが目的だった事を明かし、拳銃を捨てる意向を示す。レオは僅かな稼ぎでボロい部屋に住んでいるにもかかわらず、子供が生まれる事を嘆き、自分には何も無いと卑下して立ち去る。
アパートに戻ったレオは、ルイーズが勝手に私物を片付けて部屋の模様替えをした事に激怒する。ルイーズは喧嘩したくはないと訴える。レオはルイーズが殴られたとレイに告げ口した事を咎め、嘘つきだと詰る。ルイーズはそれに反発する。レオは口論の末にルイーズを押し倒して、腹を蹴り飛ばすと、自分の人生を台無しにするなと命じ、子供など要らないと言い放って出ていく。ルイーズは母親に連絡し、助けを求める。ルイは母親からその報せを受けると、仲間を従えてレオの元へ向かう。ルイ達は夜道でレオを襲撃し、無人の倉庫へ連行すると、レオを鎖で吊るし上げる。ルイは警告したはずだと説くと、HIVに感染している男を呼び、金を払って採取した血液をレオに注射する。
翌朝、レオは鎖から解放された状態で目を覚ます。レオはアパートに戻ると、ルイーズに連絡し、流産した事を知って慟哭する。レオは拳銃を持ち出し、ルイを見つけると、路上で白昼堂々銃撃する。次にレオは自らの掌を撃ち抜き、倒れたルイの真上から流血をかけた後、自分の口に銃口を突っ込んで自殺を図る。ルイーズはアパートに戻って間もなく、電話でその報せを受ける。
後日、レニーはキッチョと共に葬儀に向かうが、直前で翻意し、一人で帰る。それから程なく、レニーは他のビデオ店に移る話が来た事をキッチョに明かす。レニーはレオの墓を見舞った後、デリを訪ねると、レアにすっぽかした事を詫び、改めて映画に誘う。レアは今度は店で待つというレニーを信頼し、誘いに応じる。