チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

きみがくれた未来

バー・スティアーズ監督作「きみがくれた未来」("Charlie St. Cloud" : 2010)[BD]

事故で弟を亡くした青年が、それを受け入れられずに森で毎夕弟の霊と会い続け、夢を捨てて生きる内に、愛する女と出会う事で転機を迎える様を描くドラマ作品。

 

2005年、西海岸の港町クインシー。大学進学を控える高校生のチャーリーは、看護師の母クレアと11歳の弟サムと暮らしていた。ヨット部の主将を務める腕前を誇るチャーリーは、町で開催されたヨットの大会にサムと共に愛艇スプレンディド・スプリンター号で出場し、並み居る強豪を押さえて優勝を果たす。チャーリーはサムに二人でいつか世界へ船出する事を約束する。晴れて卒業式を迎えたチャーリーは、スタンフォード大学のスポーツ奨学金を獲得するものの、家計を慮り、一年バイトした後で進学する意向を示す。式後、チャーリーは親友から夜の卒業パーティへ誘われる。

帰宅後、チャーリーは無類のレッドソックスの大ファンで野球選手を目指すサムに、進学するまで練習に付き合う事を約束し、日没を報せる港の大砲がその合図であり、一度でも遅刻したらお終いだと説く。クレアはチャーリーにサムのお守りを任せ、夜勤に出かける。チャーリーはサムに夕食を用意すると、密かに車でパーティに出かけようとするが、サムはそれに気付いて連れて行くようせがむ。道中、サムはチャーリーが進学して離れ離れになる事を寂しがるが、チャーリーは都度帰省する事を約束する。その直後、車はトラックに衝突される。心停止したチャーリーは救命士フロリオによる電気ショックで蘇生を果たすが、サムが死んだ事を知って慟哭する。

程なく、親族が集まりサムの葬儀が執り行われる。サムの死を受け入れられず、悲しみに打ち拉がれるチャーリーは、サムのグローブを棺に入れるよう促されるがそれを拒み、現実から逃避する様に傍の森へと駆け込む。開けた場所に出たチャーリーは、そこでサムと遭遇する。サムはキャッチボールする約束だと説く。チャーリーはその場所で毎日大砲を合図に会う事をサムに約束する。

それから五年後。ヨットから遠ざかり、進学を延期したチャーリーは、母が他所へ移ったのに伴い実家を離れ、町の墓地管理人として働く傍ら、毎夕欠かさず森でサムと会い続けていた。チャーリーは自らが現世に留まる霊に会える事を自覚し、墓地に現れる戦死した親友の霊と再会する。その一方で、町の住人はチャーリーがサムの死で気が触れたと噂する様になる。ある時、チャーリーのかつてのクラスメイトで、ヨット乗りのテスが、亡き父の墓前の花の管理が行き届いていない件で苦情を入れに来る。

程なく、チャーリーは町でフロリオと偶然出会す。フロリオはチャーリーの近況を尋ねると、自らがガンを患っている事を明かすも、心残りは無く、チャーリーの蘇生という奇跡まで目の当たりにし、充実した人生だったと説く。フロリオはチャーリーが夢を捨てて生きている事を察すると、再び生を得た理由を考えるべきだと説き、奇跡を無駄にせず、墓地の外に出て自分の人生を歩むよう促す。その直後、チャーリーはテスが単独世界一周ボートレースに最年少で挑戦する事を知る。

その夜、チャーリーは同僚アリステアが港の傍の店で催す結婚記念パーティに出席する。チャーリーは港に停泊しているテスのボートをスケッチする。チャーリーは5年前の大会で打ち負かしたかつての上級生の男が、サムの事故を論って挑発した為に、男を殴り飛ばして店を出る。チャーリーはテスのボートを間近で観察する。そこへ店の一部始終を見ていたテスが現れる。チャーリーは予てから研究していた、鯨の尾びれに着想を得た新技術の舵のデザインを見せる。その際、テスはチャーリーが描いたボートのスケッチを見て感銘を受ける。チャーリーはレースの幸運を祈ってテスと別れる。翌朝、テスはレースを目前に控え、低気圧が接近する中、テスト航海に出港する。

後日、チャーリーは頭に傷を負ったテスが父の墓前で横たわっているのを見つける。テスは荒れた海に出て怪我をした事を明かす。チャーリーは宿舎でテスの怪我を手当する。テスはレースから戻る半年後に再会する意向を示すが、チャーリーはテスをその日の夜の食事に誘う。チャーリーはいつもの様に森でサムと会った後、宿舎にテスを招いて食事を振る舞い、談笑に興じる。チャーリーはテスと墓地に出て愛を結ぶ。

翌朝、一人で目覚めたチャーリーは、宿舎のドアに「私を見つけて」というメモを見つけ、傍の湖へテスを探しに行く。テスは倉庫で長らく眠っていたスプレンディド・スプリンター号に乗って現れる。チャーリーはテスと共にヨットを疾駆させて楽しむ。夕方、二人は傍の灯台の上で過ごす。テスは父の葬儀で詠んだという「挑戦」を意味するカミングスの詩に言及すると、チャーリーと一緒にレースに挑む事を希望し、休暇を取ってレースのサポートチームに入るよう請うが、チャーリーはそれは無理だと説く。その時、大砲が鳴り、チャーリーはテスを灯台に残して森へ急ぐ。チャーリーはサムに遅れた事を詫びる。サムはチャーリーが自分を忘れ始めているのだと嘆き、一人きりでいると消えてしまいそうだと怖れる。チャーリーはその必要は無いと宥めるが、サムはチャーリーの後ろにテスがいる事を詰る。チャーリーを追ってきたテスは、チャーリーが心に問題を抱えている事を心配する。チャーリーは毎夕サムと会うのが約束であり、テスと一緒にいるとサムが遠のいてしまうと説く。テスは過去に囚われていてはいけないと諭し、森から出るよう促すが、チャーリーはそれを拒み、テスと決別する意向を示す。テスはチャーリーがサムと違って生きているのだと告げて森を後にする。チャーリーは死んだも同然だと呟く。

翌朝、チャーリーは町のカフェを訪ね、港湾責任者から、テスが三日前の嵐の日に出向して以来、行方不明になっている事を聞く。チャーリーは直ちに宿舎に戻ると、テスが出したはずの倉庫のヨットが五年前のまま眠っている事を確認し、テスが霊だったのだと悟る。間もなく、チャーリーは墓地で再び怪我をしているテスを見つける。テスは自分が見える理由を尋ねる。チャーリーはサムが見えているからだと答えると、テスもまた彷徨っているのだと説く。テスは体が冷たくなったと訴えると、自分を見つけて欲しいと頼む為に現れたのだと告げて消える。チャーリーは為す術無く途方に暮れる。夕方、チャーリーは森でサムに会い、テスが死んでいた事を伝えて落胆する。サムは自分がいると告げる。

その夜、宿舎にフロリオの妻がやってきて、フロリオの死を伝えると共に、フロリオから頼まれたという、奇跡の答えと称する聖タダイを象ったペンダントをチャーリーに託す。妻はそれが絶望した者の守護者だと説く。チャーリーはフロリオの生前の言葉の真意を理解し、テスが生きていて自分に見つけて欲しいのだと悟る。チャーリーは港を訪ね、テスのコーチのティンクに船で捜索させるよう請うが、ティンクは既に捜索が打ち切られた事から拒否する。チャーリーはアリステアの協力を得て、ティンクに無断で船を出す。ティンクはそれに気付いて船に飛び乗ると、捜索に行く事を認めるが、水温を考えれば三日も持たないとの見込みを示す。チャーリーはテスが絶対に生きていると主張する。

チャーリー達は低気圧に挑戦したであろうテスが向かった方角へ船を向けるが、夜が明け、昼を過ぎても尚見つからず、捜索は難航する。チャーリーは日没までに町に戻れる地点を超え、テスの捜索を続ける事を決意する。町で大砲が鳴る頃、チャーリーはサムと二度と会えない事を詫びて落涙する。サムは現世を去り、天に召される。その直後、チャーリーは夕空に一筋の流れ星を見つける。チャーリーはその方角に船を向け、岩場の傍で転覆したテスのボートを見つける。チャーリーは決死の覚悟で海に潜り、船内の捜索に向かうが、テスは見つからず、溺れそうになって岩場に上がる。チャーリーはそこで低体温状態で昏睡するテスを見つけると、這い寄ってテスを抱き締めて温める。間もなく、救難ヘリが到着し、二人を搬送する。病室で目覚めたチャーリーは、アリステアからテスが助かった事を聞く。

後日、チャーリーはスクラップ寸前の古いボートを入手し、それに乗って退院したテスに会いに行く。チャーリーはテスが復帰し次第、それで一緒に世界を周ろうと誘う。テスはテスト航海の前夜に会ったきりのチャーリーと、なぜか一緒に過ごした情景が浮かぶ事への戸惑いを吐露する。チャーリーはそれが夢では無く現実だと説くと、カミングスの詩を暗唱する。テスは父が好きな詩をチャーリーが知っている事を不思議に思う。チャーリーは新たな人生を踏み出すよう促し、手を差し伸べてテスを船に乗せる。

その後、チャーリーは墓地管理人を辞し、町を出る事を決意する。大砲が鳴ると、チャーリーは最後に森を訪ね、もういなくなったサムに対し、約束を破った事を詫びる。チャーリーの目に映らないサムは、傍らで自分なら大丈夫だと答える。チャーリーはいついかなる時も兄弟だと約束し、その場を後にする。森から出てきたチャーリーをテスが迎える。その後、二人はボートで世界を周る旅に出航する。

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