ステイシー・タイトル監督作「バイバイマン」("The Bye Bye Man" : 2017)[DVD]
考えても、言ってもいけない邪悪な存在の名前を口に出してしまった若者達が、その存在に幻惑され、命を狙われていく様を描くスーパーナチュラル・ホラー作品。
ウィスコンシン州マディソン。大学生のエリオットは恋人サーシャ、親友ジョンと共に寮を出て、大学から程近い場所に見つけた古い二階建ての家屋を家賃を折半して借りる。予想以上の家に喜んだ三人は、地下室に放置された家具を部屋に設えて生活を始める。その夜、サーシャはエリオットと暮らす二階の寝室で、ドアが一人で開閉する不気味な現象を経験する。程なく、エリオットの兄バージルが妻と娘アリスを連れて引越し祝いにやってくる。エリオット達は友人を大勢招いてパーティを開く。アリスはエリオット達の寝室に忍び込み、ナイトテーブルから一人でに落ちた古いコインを拾って持ち出そうとするが、翻意してテーブルの上に置いて出ていく。その直後、エリオットもまた落ちているコインを拾って引き出しに入れるが、コインは一人で床に落ちる。エリオットは不審に思って、引き出しの中を確かめ、底面に敷かれた紙に「考えるな、言うな」という言葉が無数に書き殴られているのを見つける。更にエリオットはその紙の下に「バイバイマン」と刻まれているのを見つける。サーシャはクラスメイトで霊感が強いというキムを招き、パーティの後に浄霊を依頼する。エリオットとジョンは霊感を信用せずに誂う。キムは力を証明する為に霊視に臨み、エリオットの両親の事故死などを言い当てる。エリオットはそれを真に受けず、キッチンの鍋に鍵を隠した後で何をしてきたかキムに問い質す。キムはそれを言い当てると、何者かの訪れに不快感を示し、「考えるな、言うな」と繰り返し呟いて錯乱する。ジョンは何の事か尋ねる。エリオットは咄嗟に「バイバイマン」と口にする。その途端、家の電気が落ちる。その夜、エリオットは不穏な気配を感じて目を覚ます。エリオットは一階に降り、ジョンが寝室でキムとセックスしている声を聞いた後で、何かを頻りに引っ掻く音を聞いて外の様子を窺う。
翌朝、ジョンはセックスが上手くいかなかった事を不可解に思いながらキムを車で送っていく。ジョンはキムの体からウジが湧き出る幻覚を見て慄くと、キムを降ろしてそそくさと帰る。エリオットは軒先の壁に不気味な引っかき傷を見つける。サーシャは風邪にも似た不調を訴え始める。エリオットはジョンがサーシャと密通しているかの様な幻覚に惑わされる。その夜、エリオットは引っ掻く音が聞こえる地下室で引っ掻き傷と古いコインを見つける。その直後、エリオットはすぐ傍を大型の動物が通り過ぎるのを目の当たりにする。サーシャはノートに無意識の内に書き殴った「考えるな、言うな」の羅列をエリオットに見せると、何者かが近づいてきており、忘れようとする程にそれを考えてしまうのだと訴える。エリオットはバイバイマンは妄想だと諭すが、サーシャはそれを否定する。その後、エリオットは眠っている内に電車が三人の男女を轢き殺す悪夢で飛び起き、暗闇から姿を現すバイバイマンの幻覚を目の当たりにする。
翌日、サーシャは大家を訪ね、物件の気味悪さを訴えると、ナイトテーブルの所有者について尋ねる。エリオットは手掛かりを探す為に図書館を訪ね、「考えるな、言うな」のキーワード検索で、用済みファイルの中に保管された、記者ラリー・レドモンによる古いボツ原稿と「考えるな、言うな」と繰り返し書き殴られた紙を見つける。1968年10月、アイオワ州で家族と四人の若者を殺害した10代の少年が、その動機について「バイバイマンがそうさせた」と答えた為、正気を失っていると見做されたのだという。エリオットは司書ワトキンスに、バイバイマンについて調べている事を明かす。ワトキンスは当時の記録に基づき、ラリーが記事をボツにした後に、マディソンで八人の友人と家族を散弾銃で殺害し、パイプクリーナーを飲んで自殺を図った事、事件に関する記述は何者かによって削除されて他に残っていない事を明かし、バイバイマンの存在を消したかったのだろうと推察する。エリオットはサーシャの身を案じて迎えに行き、ジョンがサーシャを車に乗せて走り去るのを目の当たりにする。
エリオットは車でキムの家を訪ね、再度の霊視を依頼する。既にルームメイトのケイティを殺したキムは、依頼に応じてエリオットに同行する。キムは考える程にコインや列車の音と共にそれが近づいてきて、誰かが知って広まり、皆が正気を失って死んでいくのだと訴えると、ケイティに名前を言ってしまった事を明かし、ガンは切除すべきだと説く。その直後、キムは踏切で事故を起して動けないでいる家族の幻覚に惑わされ、助けに行く。エリオットはキムのバッグに入っていた血塗れのハンマーを持ったままキムを止めに向かうが、キムは列車に轢き殺される。夜、警察の実況見分が行われる中、サーシャとジョンが駆け付ける。エリオットは惑わされて殺されると訴え、二人に名前を誰にも言わぬよう釘を刺すが、ジョンは指図される事に反発する。二人の喧嘩を止めに入った刑事ショウは、エリオットの言動からドラッグの使用を疑う。エリオットはキムが危険だったと欺くが、ショウはハンマーを持ったエリオットがキムを追いかけていたという機関士の証言と共に、キムの家でケイティの死体が見つかった事を明かす。エリオットは関与を否定し、サーシャとジョンに名前を言うなと命じるが、その言動が怪しまれて署に連行される。
ショウはエリオットに対する取り調べの場で、キムが遺書でケイティの殺害と共にエリオット達の殺害をも予告していた事を明かし、事実を話すよう促す。エリオットは「考えるな、言うな」を繰り返し自分に言い聞かせ、話す事を拒む。ショウはこのままでは奨学金も恋人も失う事になると諭す。エリオットはショウに子供がいる事を知ると、話すだけで皆残らず死ぬと説き、巻き込みたくないのだと哀願する。エリオットはバージルの迎えで保釈されるが、家族を巻き添えにする事を嫌って一人で帰る。
夜更け、エリオットは帰宅するや、サーシャとジョンが寝室でセックスしている幻覚に惑わされ、ジョンをバットで殴り飛ばす。その時、ワトキンスが連絡を寄越し、バイバイマンの事を考えてしまうと訴え、エリオットの家に行く意向を示す。ワトキンスは家族を皆殺しにした包丁を持って家を出る。エリオットは眠っているサーシャの上着から、レドモン夫人の家の住所を記したメモを見つけると、気絶したジョンを地下室に閉じ込め、ナイトテーブルを家の前の雑木林の中に放り投げて、レドモン夫人の家に向かう。
エリオットはレドモン夫人に協力を求める。夫人は亡き夫ラリーが関与した悪夢の様な出来事を語る。ラリーは少年が家族を殺した件を取材中に、死神の様な邪悪な者が心を乱したという噂を聞きつけた。ラリーが記録を残すために詮索し続ける内に、考えても言ってもいけない名前の悪魔がやってきた。ラリーがアイオワから戻った三日後、夫人は家中に「考えるな、言うな」と殴り書きするラリーを見つけた。ラリーは猟犬を見て、コインの音がしたら合図であり、その名前を知れば逃れられないと説くと、猟銃でその名前を知る者を皆殺しにして消滅させた。夫人はその名前を知らされなかった為に助かったのだという。夫人はエリオットに拳銃を託すと、同じ様に名前を知った全員を殺した後で自殺するよう促す。エリオットはそれを否定し、怖れなければ力を奪えるはずだと主張すると、直ちに家に向かう。その途中、エリオットは幻覚に惑わされ、路上に包丁を持って立っていたワトキンスを撥ねた拍子に横転事故を起こす。
サーシャが眠りから目を覚まして間もなく、ジョンは意識を取り戻して二階に向かう。サーシャはジョンにエリオットの幻覚を、ジョンはサーシャに血塗れのキムの幻覚を見て惑わされる。駆け付けたエリオットは、ジョンがハサミでサーシャを滅多刺しにしているのを見て、止めに入り、ジョンを射殺する。しかし、それは幻覚で、エリオットはジョンを滅多刺しにしていたサーシャを殺してしまった事に気付いて慟哭する。そこにバイバイマンが猟犬を率いて現れ、エリオットの額に指をかざす。エリオットはバイバイマンがバージル達を狙っていると悟る。その時、バージルがアリスを連れてエリオットを励ましにやってくる。エリオットは玄関越しに、名前が口から出そうになるのを必死で抑えながら、バージルに帰るよう哀願する。そこへバイバイマンが歩み寄ってくると、エリオットは自らの頭を撃ち抜いて自殺する。間もなく、二階の部屋で倒れたライトが引火して家は炎上する。
消火作業が行われる中、バージルはアリスを連れて失意の内に帰路に就く。アリスは軒先のゴミ箱に捨てられたテーブルの引き出しに、二枚のコインを見つけた事を明かす。バージルは引き出しに何が書いてあったか尋ねる。アリスは暗くて読めなかったと答える。一方、現場に駆け付けたショウは、瀕死の状態で搬送される直前のジョンに、その名前を尋ねる。ジョンはそれを伝える。