ブライアン・ベルチノ監督作「ザ・モンスター」("The Monster" : 2016)[DVD]
自堕落に暮らす女が、離婚した夫の元へ愛娘を送り届ける途中の夜道で凶暴な怪物の襲撃に遭い、娘を守る為に命懸けで奮闘する様を描くホラー作品。
アル中でヘビースモーカーのキャシーは離婚後、娘リジーを引き取るもろくに面倒を見ず、交際相手ロイと自堕落な生活を送っていた。酒に溺れ、時に手を上げるキャシーに対して、リジーは同情する一方で殺意すら抱く事もあり、愛憎の狭間で葛藤していた。しかし、いよいよリジーはキャシーの元を離れて父親の元で暮らす運びとなる。
その日、キャシーはリジーを離れた場所で暮らす元夫の家に送り届ける事になっていたが、前夜に泥酔して予定の起床時刻を寝過ごす。リジーはキャシーに起きるよう促すが、キャシーは結局夕方まで眠り続け、リジーは不貞腐れる。キャシーは古い車にリジーを乗せ、暗くなる前に出発する。リジーは荷物に加え、幼い頃から愛用する歌が鳴る犬のぬいぐるみを持参する。途中の給油所に寄った際、キャシーは父親の家に着いたら渡すつもりだったという、祖母の形見の腕時計を餞別として譲る。
キャシー達は休憩を挟みながら進む内に夜を迎え、大雨に見舞われる。深夜0時を過ぎ、車は人気のない古い林道に差し掛かる。間もなく、車は何かに衝突して急停止を余儀なくされ、その際の衝撃でキャシーは額と手首を負傷する。キャシーはリジーに携帯で緊急通報するよう命じる。その矢先に車のバッテリーが落ち、二人は暗い林道で孤立する。リジーは電話で大凡の現在地を伝え、救急車とレッカー車を手配してもらう。キャシーは外に出て車の損傷具合を確認すると、リジーに父親に連絡して迎えに来てもらうよう命じ、自らは事故の処理をした後でロイに迎えに来てもらう意向を示す。キャシーは車の前方に横たわる狼の死骸の様子を観に行く。キャシーは死骸に事故と関係ない傷口がある事に気付き、そこに残された大きな牙を見つけるが、牙の主について測りかねる。
二人は車内で待機する。程なく、後方からトラックがやってきて、車の前方に停車する。リジーは狼の死骸が忽然と姿を消した事に気付く。トラックの主ジェスは二人の荷物をトラックに移すと、牽引の準備を始めるが、キャシー達は車内に留まる。ジェスは車軸が折れ、オイルが漏れている事を確認すると、修理が必要だと説き、早速作業に取り掛かる。キャシーは携帯で父親に連絡しようとするが、リジーが携帯をバッグに入れた事を知ると、外へ出るのを怖がるリジーにトラックまで携帯を取りに行くよう命じる。リジーは車の下のジェスに断って、トラックへ向かうが、ドアの鍵がかかっていて開かない事に気付く。ジェスは修理が終わるのを待つよう命じる。リジーは死骸があった場所から道路脇の森へと続く血痕を辿り、茂みの中で食い荒らされた狼の死骸を見つける。リジーは車に戻り、死骸を見つけた事をキャシーに報せる。キャシーはリジーを落ち着かせる為に、何かがいても人間は襲わないと諭す。
キャシーは痺れを切らし、クラクションを鳴らしてジェスを急かす。しかし、ジェスからの反応が無い為、キャシーは外へ出るのを止めるリジーを説き伏せて、ジェスを捜しに行く。キャシーは車の下に残されたライトを見つけ、周囲を見渡す。その直後、ボンネットの上に、もぎ取られた血塗れの右腕が落ちてくる。キャシーは咄嗟に車内に戻り、リジーと共に救急車が来るのを待つ。間もなく、二人は前方の茂みからレッカー車へ這い寄るジェスに気付く。キャシーはジェスを助けに行こうとするが、リジーは哀願してそれを止める。ジェスの背後に異形の怪物が現れると、キャシーはクラクションを鳴らしてジェスにそれを知らせようとする。ジェスはトラックのドアを開けた矢先に、怪物に襲われて食い殺される。
キャシーは恐れ慄くリジーに、トラックの鍵があれば逃げられるのだと諭すと、ジェスの元へ探しに行く意向を示し、静かに待っているよう命じる。キャシーが外へ出ようとした矢先に、怪物はフロントガラスを破ってキャシーを引きずり出し、食らいつく。その時、二人の救命士ジョンとレスリーが乗った救急車が到着し、怪物はその場から退く。ジョンは腹に深傷を負ったキャシーを救急車に運び込む。レスリーは周囲の状況を確認すると、検視官と動物管理局に出動を要請する。ジョンはキャシーの応急処置を済ませると、レスリーの様子を観に行く。間もなく、レスリーだけが戻ってくる。怪物はジョンの亡骸をフロントガラスに投げつけると、レスリーを引きずり出して餌食にする。キャシーは救急車を急発進させ、逃走を図るが、その直後に怪物に側面から体当たりを受け、救急車は車道の外へ転落する。
キャシーはリジーが大事を免れた事を確認して安心する。その矢先に、怪物は車内への侵入を図る。キャシーは咄嗟にライトで怪物を照らして退ける。キャシーは怪物が灯りを忌避する事に気付く。キャシーは車内の備品で即製のトーチを作り、自らが囮となって炎で怪物の注意を引く意向を示すと、その隙に外に出て全力で道路まで逃げるようリジーに命じる。リジーはキャシーと離れる事を拒む。キャシーはリジーに勇気を出すよう促すと、自分が生きていた証たるリジーを死なせるわけにはいかないのだと諭す。リジーは助けを呼んでくると約束する。
キャシーはトーチを灯して森の中に入り、怪物の接近を察知すると、火を消すと同時にリジーに合図を送る。怪物はキャシーに襲いかかり、食らいつく。リジーはキャシーを置いて行けず、怪物を背後から殴りつけた上、ライトで照らして退ける。リジーはキャシーに自分を残して逝かぬよう訴えるが、キャシーは息を引き取る。リジーはキャシーのライターを携えて救急車に戻る。意を決したリジーは、備品の可燃性スプレー缶を持ち出すと、身を隠してぬいぐるみの発する音で怪物を誘き寄せようと企てる。間もなく、怪物はそれに反応し、ぬいぐるみに飛びつく。キャシーはその隙に乗じて外へ出ると、追ってきた怪物にライターとスプレーによる火炎放射を浴びせる。炎上した怪物はのたうち回った末に絶命する。リジーはかつてキャシーに自分より良い大人になり、幸せになると言われた時の様子を回想する。やがて夜が明ける。キャシーの言葉通りに恐怖に打ち勝ったリジーは、森を抜けて平原に出る。