チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

マダム・マロリーと魔法のスパイス

ラッセ・ハルストレム監督作「マダム・マロリーと魔法のスパイス」("The Hundred-Foot Journey" : 2014)[BD]

インド出身の若き料理人が、老舗レストランのオーナーとの出会いと対立を経て、成長していく様を描くコメディ・ドラマ作品。

インドのムンバイで幸せな日々を過ごしていたカダム家。幼少の頃より、母から料理の手解きを受けたハッサンは、成長し、一人前の料理人となる。ところが、一家の長である父が政治家に当選するや否や、政治闘争に巻き込まれる。暴徒化した政敵の放った火で自宅は全焼し、母は死ぬ。ムンバイを追われた一家6人は、イギリスに移住するが、生活は行き詰まり、1年足らずでヨーロッパ大陸へと渡る。ハッサンはその間も料理の勉強を続けていた。

一家がフランスの山間の道に差し掛かった時、車が故障し、足止めを食らう。そこへ若い女マルグリットが通りがかり、一家の手助けをする。マルグリットに導かれ、一家は近くの小さな町に到着し、そこで一夜を明かす。翌朝、カダム父とハッサンは、町外れに廃れた元レストランの跡地を発見する。道を隔てた向かいにある老舗の1つ星フレンチレストラン「ル・ソール・プリョルール」に、太刀打ちできずに手放された物件だった。父とハッサンはそこで向かいのレストランのオーナーであるマダム・マロリーと出会う。

父はマダムに対抗意識を燃やし始め、独断で物件を購入し、インド料理レストランを開業する道筋を付ける。ハッサンは廃屋で古びた料理本を見つけ、フレンチの伝統的な料理を学ぶ。市場を訪れたハッサンはマルグリットと再会し、彼女がマダムの店で修行中の副料理人である事を知る。廃屋はインド料理レストラン「メゾン・ムンバイ」へと改築され、開業日が決まると、ハッサンらは町で宣伝活動に精を出す。ハッサンはマルグリットからフレンチに関する料理本を受け取り、伝統的なフレンチの研究を行う。開業準備の店にマダムが視察に訪れ、大音量の音楽にクレームを付ける。ハッサンはマダムに請われるまま、店のメニューを手渡す。

開業前日、父は母の形見のスパイスボックスをハッサンに譲り渡す。父とハッサンは食材を調達すべく市場を訪れるが、必要な食材の品切れに直面する。メニューを見たマダムが全て買い占めたのだった。2人は大急ぎで食材を隣町で調達し、開業へと漕ぎ着ける。無事開業したものの、客がやってこない事に業を煮やした父は、半ば強引に客引きを行い、その甲斐あって、次第に店は繁盛してくる。大音量の音楽に矢も盾もたまらず、マダムは町長に騒音の件でクレームを付ける。

一方、ハッサンはマルグリットと親しくなり、フレンチの基本5ソース「ベシャメル」「ヴルーテ」「オランデーズ」「トマト」「エスパニョール」について知る。料理本を元に独自に5ソースを作ったハッサンは、後日、マルグリットに試食してもらう。マルグリットはそこでハッサンの料理人としての才能を知る。

建国記念日、カダム父はマダムへの意趣返しとして、市場で鳩を買い占める。その日は、マダムの店に大臣が訪れる事になっており、鳩料理を出す予定だった。ハッサンは自身で作った鳩のロティを携え、マダムの店を訪れ、父の行いを詫びる。マダムはロティを一口食べると、残りを棄ててしまう。しかし、内心、マダムはハッサンが料理人として類稀なる才能を持ち合わせている事に驚愕する。危機感を覚えたマダムは、以後、カダムの店の営業を妨害し始める。その夜、ハッサンは森で出会ったマルグリットにキスをする。戻ったハッサンは店の壁に嫌がらせの落書きを発見する。その直後、暴漢により店に火を付けられ、ハッサンも両手に火傷を負う。

マダムは店のシェフ、ジャン=ピエールの犯行だと見抜き、彼を解雇する。責任を感じたマダムは、カダムの店の壁を掃除する。そんなマダムをハッサンは店に招き、自身のレシピで一緒にオムレツを作る。マダムはハッサンの腕を認め、マダムの店の料理人として採用する事を認めるが、カダム父は反対する。ハッサンは喜び勇んでマルグリットのアパートに報告に訪れるが、マルグリットはハッサンの才能に嫉妬すると同時に、マダムの店への足がかりにされたと思い、2人の関係は気まずくなる。カダム父はハッサンの決意に押され、渋々了承する。

手の火傷が癒えたハッサンはマダムの店に移り、修行を積んでいくが、尚もマルグリットとの蟠りは解消しなかった。ハッサンは店伝統のレシピを、スパイスで改良し、より洗練させていく。

大臣が訪れる建国記念日、ハッサンは鳩料理を任される事になる。その頃になると、マダムとカダム家の親交は深まり、マダムとカダム父も親密になり始める。ミシュランの星発表の日が訪れ、マダムの店には初めて2つ星が進呈される。マダムは心から喜び、ハッサンに感謝する。しかし、それも束の間、程なくしてハッサンはパリの一流レストランに引き抜かれる。ハッサンはマルグリットに礼と別れを告げ、パリへと発つ。

最新式のレストラン「ラ・バレヌ・グリーズ」の料理人に採用されたハッサンは、その腕を存分に振るい、飛ぶ鳥を落とす勢いで、一躍、時の人となる。その評判はメディアに乗って、マダムやカダム父の元にも届く。ところがハッサンは、次第に都会での料理人としての生活に違和感を覚え始める。同僚のインド人の弁当を食べたハッサンは、懐かしい故郷と母の味を思い出す。一方、マダムとカダム父はハッサンの成功を互いに喜び、より親密になっていた。

星発表の日、ハッサンはパリから田舎町に戻り、マルグリットの元へ向かう。ハッサンはマルグリットにある提案をし、マダムの店で一緒に料理を始める。その最中、2人はキスをする。マダムの店で星の発表を待つパーティが催される。その場にハッサンが現れ、カダム父は驚く。ハッサンはパリから引き揚げた事を、マダムはハッサンに店を譲った事を明かす。ハッサンはマルグリットをビジネスパートナーとし、皆で一緒に3つ星を獲得する事を誓う。

 

印仏文化の折衷をテーマに、若き料理人の成長と恋の行方を描く、ほのぼのとしていながら深みのあるコメディ。ハッサンとマルグリットだけではなく、マダムとカダム父の関係を描いているのが面白い。マダムもカダム父も最初はお互いにいがみ合っていたのに、ハッサンを介す事で、やがて共にダンスに興じるまでに親密になる。そう、本作は熟年男女のラブコメでもあるのだ。一方、ハッサンは天才肌で、いろんな物事をすぐに吸収してしまうが、マルグリットはそんなハッサンを尊敬しつつも、自分も料理人として修行中の身だから、才能に嫉妬してしまうのよね。厳しいマダムがハッサンにゾッコンなのが面白くないんだな。ハッサンは天才故に、マルグリットのそんな気持ちに鈍感で、時に傲慢な一面を垣間見せてしまう。ハッサンがパリから戻ってくる事は予想できたが、こんな風に纏めるとはね。サレオツな作品で和むわ。

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