チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

福島第一原発事故 7つの謎

NHKスペシャルメルトダウン』取材班 著「福島第一原発事故 7つの謎」(2015)

原発地震津波の被害に見舞われ、次々と建屋が水素爆発を起こし、やがてメルトダウンに至るまでの数日間に、現場では実際に何が起き、職員達はどの様な対応をしたのか。事故からおよそ4年(刊行時)が経つのに、未だ明らかにされない謎の数々。本書はその中でも、ベントが難航した理由や、大量の水が炉の冷却に上手く回らなかった理由など、7つの謎について、原発の構造というハード面と、東電本社と現場という分断された組織のソフト面から、最新の知見や、極秘資料を元に分析・究明を試みた一冊だ。この手の本は、この4年余りで何冊か読んできたが、さすがに最新刊というだけあって、内容が充実しており、また謎に対するアプローチがハード面に紙幅を割いているのが新鮮で、非常に読み応えがあった。吉田証言や、武藤元副社長に対するインタビューを含め、最近明らかになった事実も反映されているし、各号機の上京が、分刻みで悪化していく様は、こう言っては不謹慎かも知れないが、臨場感たっぷりでさながらサスペンス小説の様に真に迫っている。事故直後、経験した事の無い対応を迫られた職員や、現場作業員達の決死の覚悟を垣間見る思いである。東電本体のお粗末な組織運営の実態は明らかにされてきたが、現場で事故対応に当たった多くの職員達のおかげで、既のところで東日本の壊滅的被害を回避できた事を痛感する。そして、何をさておいても、運が味方した事だけは努々忘れてはならないと思う。