ダン・ギルロイ監督作「ナイトクローラー」("Nightcrawler" : 2014)[BD]
刺激的な事件・事故を追い求めて夜の街を奔走するフリーカメラマンが、やがて違法な手段を用いて成功を収め、狂気に満ちていく様を描くクライム・スリラー作品。
ロサンゼルス。ルイスは学歴や職歴が無い為に定職に就けず、資材の盗品密売で日銭を稼いでは貧しいアパート暮らしを送る。ルイスは勤勉で志が高く、粘り強い事を売りに、学べて成長できる仕事を探すが不振な日々が続く。
ある夜、ルイスは盗品を売り捌いた帰り道で、交通事故の現場に遭遇する。程なくしてカメラマンが駆け付け、事故を起こした車両から警官が懸命に被害者を救助する様子の撮影を始める。ルイスは撮影の一部始終を観察し、彼らがテレビ局に映像を売り込むフリーのカメラマンだと知る。ルイスはその中のジョーに自分を雇えないか打診するが、拒否される。
翌朝、ルイスはニュースでジョーの撮った素材が使用されているのを見て、カメラマンの仕事に商機を見出す。ルイスは高級自転車を盗んで質に入れると、得た金でハンディカメラと無線傍受機を購入する。その晩、ルイスは早速、警察無線を傍受し、事件や事故が起こり次第、手当たり次第に現場に駆け付けて撮影を強行するが、警察官に追い払われる。ルイスは競合するプロカメラマン達と大きく見劣りするカメラと不慣れな技術で苦慮しながらも、カージャック事件の被害者が救命措置を受ける姿に肉迫し、至近距離で撮影する。
ルイスは撮った素材をKWLA6局に持ち込むと、早朝のニュース番組のディレクターのニーナを訪ね、他社よりも近くで撮っている映像だと売り込む。ニーナは興味を示し、編集のフランクと共に映像の確認を行うと、市民へのカージャックの警告にすべきだと主張し、その朝のトップに映像を使用する事を決断する。ルイスは1000ドルをふっかけるが、ニーナは映像が低画質な上、他局に持ち込むには遅すぎると諭し、250ドルで買う。ニーナは良い機材を買い、更に関係者への取材を行う様にルイスに忠告すると、その腕を見込み、視聴者の興味を引く刺激的な都市犯罪の映像を撮り次第、一番に自分に連絡する様に依頼する。
その朝、ルイスは放送された自分の映像を自宅で確認し、手応えを感じる。ルイスは一心不乱に警察無線を傍受する事で、瞬時にコード判別ができる様になる。程なく、ルイスは助手を雇う為に求人広告を出し、高卒の無職で定住先の無いリックが面接にやってくる。リックは仕事を欲しており、何でもやるとアピールする。ルイスは緊急無線のコードを覚えて、進路を指示し、車を見張るという仕事の内容を明かすと、無給の研修扱いからのスタートでありながら、学習できて正社員登用の可能性もある有意義な仕事だと説き、リックの採用を決める。日銭にも困窮するリックが少額でも給料が欲しいと請うと、ルイスは一晩30ドルを提案し、リックは承諾する。
その日の夕方、ルイスは早速リックを助手に付け、無線のコードを覚えさせながら、金になりそうな事件が起こるのを車内で待つ。夜、ビル火災が発生すると、ルイスは現場へと急行するが、リックの進路指示が不正確だった為に、ジョーの会社に先を越される。リックは急かされた為だと弁解するが、ルイスはリックの不手際の責任を問うと、コミュニケーションの必要性を説くことで発破をかける。その後、民家の銃撃事件に駆け付けるが、ここでも他社に出し抜かれる。ルイスは警察官が被害者家族に事情聴取を行っている隙を見て、規制線を潜り抜けて屋内に忍び込み、現場の撮影を強行する。ルイスは被害者家族の写真の位置を銃痕の傍に移動し、フレームに収める事で、恣意的な映像を撮る。
ルイスは素材を局に持ち込む。フランクは不法侵入だと指摘するが、ニーナは意に介さず、最高の素材だと評価し、番組に採用する。ルイスは学歴が無くともその気になれば学べると説き、ネットで得たビジネスの知識と仕事に対する姿勢をニーナに披露すると、テレビの仕事が得意だと自負する。
その後も、ルイスはリックを従えて連日特ダネを追いかけ、事件や事故の現場を回り、過激な映像の撮影を続け、得た報酬で撮影機材や無線傍受機をアップグレードしていく。更にルイスは、これまで移動に使用していた中古車を高馬力なスポーツカーへと新調する。
ある夜、ルイス達は警察が到着する前の事故現場に駆け付ける。ルイスは撮影に都合の良い様に遺体の位置を移動し、映像に収める。ニーナは素材を持ち込んだルイスのシャツに着いた血に気付き、指摘するが、ルイスはそれをはぐらかし、ニーナを食事に誘う。ニーナは仕事仲間とデートしない主義を明かし、歳が倍近く離れている事を指摘するが、ルイスは年上嗜好を明かすと、拒めば仕事のパートナーとしての関係が壊れる事を示唆する。
ルイスの躍進を危惧したジョーは、自社の事業拡大計画を明かすと、一緒に組む事でエリアを半分に分け、独占する事で売上が倍増になると提案する。ルイスはそれを拒絶し、ジョーをコケにする。
ニーナはレストランでルイスとの食事に応じる。ルイスはニーナの情報をネットで調べ尽くしており、褒めちぎる。ルイスはカメラマンの会社を起こす野望を明かし、次のレベルに達する為に冒険と機材の充実が必要だと説くと、ニーナと公私共に人生を分かち合いたいと希望する。ニーナは困惑し、仕事仲間としての礼儀からデートに応じたのだと明かす。ルイスは自分の提供する素材の視聴率上昇に対する貢献ぶりを主張すると、来月が視聴率の調査期間に当たる事を指摘し、ロサンゼルスで最低視聴率のKWLA6において最長二年契約の深夜番ディレクターというニーナの足元を見て、他局と契約する事を仄めかし、肉体関係を強要する。ニーナは脅迫だと指摘するが、ルイスは交渉だと開き直る。
ある夜、ルイスはリックの覚えの悪さを詰る。リックは二ヶ月間も酷使され続けている事を嘆き、昇給を要求する。その夜、ルイス達は飛行機墜落事故の現場へ急行するも、ジョーに出し抜かれ、コケにされる。挙句、ルイスは素材確保もままならず局に戻る。ニーナは大口を叩きながら結果を出して来なかったルイスの失態を詰ると、約束通りに刺激的な映像を撮ってくる様に命じる。
憤慨したルイスは、翌朝、ジョーのバンに忍び寄り、細工を施す。その夜、ジョーは移動中にバンで事故を起こす。ルイスは現場に駆け付けると、致命傷を負って搬送されるジョーを何食わぬ顔で撮影する。その後、ルイス達はグラナダヒルズの住居への強盗侵入の現場に、警察より先に到着する。ルイスは住居の敷地内に侵入すると撮影を開始する。その直後、二人組の男が屋内で発砲を繰り返した後、車で逃走する。ルイスは男の顔とナンバープレートを撮影すると、住居の中に忍び込み、銃殺された二人と絶命寸前の一人、屋内の様子を一通り映像に収めた後、警察の到着寸前にリックと共に逃走する。
ルイスは不都合な部分はカットした上で、素材を局に持ち込む。放送するには法的、道徳的に問題視されるも、モザイク処理で身元を伏せれば可能だと判断される。フランクは倫理的な問題が残ると主張するが、ニーナは採用を決断する。ルイスは視聴者が求めている刺激的で価値のある映像だと説き、15000ドルから譲らない意思を示す。ニーナが難色を示すと、ルイスは他局に持ち込もうとして15000ドルを押し通す。更にルイスは、社名を口頭とテロップで入れる事、ニーナのチームに自分を紹介する事、局の上層部と番組のキャスターに会わせる事を要求し、今後値段交渉を行わず、自分の提示する数字が最低額だと言い渡す。最後にルイスは、おまけと称してジョーの事故映像も提供する。
ニーナは取引に応じ、ルイスをキャスター二人に紹介し、ルイスはその朝の本番に立ち会う。要求通りに番組トップの独占映像の中でキャスターにより社名が連呼され、ルイスが現場に駆け付け、救助や支援を行おうと屋内に入り、カメラに回したと報じられる。
放送直後、ルイスの自宅にロス市警の刑事フロンティエリとリーバーマンが訪れ、撮影の経緯を聴取する。ルイスは住居のドアが開いており、救助目的で入った事を伝え、映像を売るのが仕事だと説くと、男二人が車で逃げる姿だけを見たと明かし、編集済みの素材を提供する事で、犯人を撮影した事を隠匿する。
ルイスはナンバープレート検索で車の登録者を特定すると、夜中にリックを連れてその住所に向かう。リックは警察に知らせる様に促すが、ルイスは事業を拡大する好機だと説くと、リックの勤務態度に対する評価を伝え、副社長への昇進を打診し、リックの言い値で給料を一晩75ドルに上げる。
ルイス達は登録された住所で犯人の車を発見すると、張り込みを始める。リックは捜査報奨金として5万ドルが支払われる事を知ると、ボーナスを要求する。ルイスは犯人と警察官で銃撃戦が起こる事を想定し、その瞬間を撮影する為に好都合な場所を選んで通報しようと企図する。リックは巻き込まれる事を危惧し、改めて見返りを求めるが、ルイスは成長事業で経験を積めるのも有益だといなす。リックは憤慨し、協力が見返りと引き換えだと主張するが、ルイスはクビを仄めかす。リックは通報せずに犯罪が起きるのを待って撮影するのが違法だと指摘し、今夜の仕事を最後に報酬の折半を要求する。ルイスがそれに応じると、リックはこれまでに溜め込んだ鬱憤を晴らす様に、ルイスの人間性を真っ向から否定して罵る。
犯人の男二人組が車に乗って出発すると、ルイス達は尾行を始める。やがて男達が中華料理店に入り、注文を始めると、ルイスは警察に通報し、殺人犯と称して男達の特徴と居場所を伝える。リックは店の客達に危害が及ぶ事を危惧するが、ルイスは店の真向かいから撮影する様にリックに強要する。リックがそれを拒むと、ルイスは協力すると同意した以上、手を引く事は許されないと恫喝し、リックはやむを得ず応じる。ルイスは車内から男達の動向を撮影する。
程なく、警官二人が店に駆け付け、客として入店する。間を置いて更に二人の警官が応援に現れ、入店するのと同時に男達が発砲し、銃撃戦が始まる。警官一人が負傷し、男の一人が射殺され、別の男は負傷しながらも車で逃走を始める。ルイスは隣のリックに撮影を任せ、パトカーの後ろから男の車を追跡する。男の車はパトカーと激しいカーチェイスを繰り広げた挙句、パトカーを退けるものの、横転して停車する。ルイスは男の車に駆け寄り、中の様子を確認すると、リックを呼び寄せる。リックはルイスに死んだ男の撮影を促されて車に接近するが、ルイスに欺かれ、一命を取り留めていた男に銃撃されて致命傷を負う。男は駆け付けた警察官に射殺される。ルイスはその一部始終を撮影する。ルイスは、信用出来ない従業員を雇い続ける事で会社の成功を逃すわけにはいかないとリックに告げると、カメラをリックから奪う。リックはその場で息絶える。
ルイスはその足で素材を局に持ち帰る。ニーナは相棒を失っても尚、撮影を続けたルイスを讃え、素材をルイスの言い値で買い取る。放送直前に、ロス市警のフロンティエリ達が駆け付け、素材の使用中止と証拠としての提供を命じる。ニーナは素材が局の資産だと主張し、令状が無い事を盾に拒否する。
その直後、グラナダヒルズの銃撃事件の住居内でコカインが発見された事が判明する。フランクは裕福な白人宅への強盗殺人事件という当初の筋書きでは無く、麻薬がらみの抗争だと指摘するが、ニーナは番組の掲げるテーマがあくまで郊外に忍び寄る都市犯罪だと主張し、コカイン発見の件を扱う事を拒否する。ルイスに感化されたニーナは、ルイスがスタッフ皆をレベルアップしたのだと説く。
ルイスは署に出頭し、フロンティエリによる聴取を受ける。ルイスは中華料理店で通報した経緯を話す様に求められると、男二人にアパートを突き止められ、その後、車で尾行されている事に気付くも、上手く撒く事で料理店に辿り着き、男達が銃を持っているのを確認し、通報したのだと説く。フロンティエリはそれが作り話だと指摘すると、ルイスが警察に情報を意図的に隠して撮影のネタにしており、殺人だと主張する。ルイスはそれがプロとして許されない行為だと開き直り、相棒の仕事まで撮るのが仕事だと強弁する。
その後、ルイスは専用のバン二台を購入し、三人の研究生を雇って事業を拡大する。ルイスは三人に仕事に対する持論を説くと、正社員登用を目指して努力する様に発破をかけ、夜の街へと撮影に繰り出す。