デヴィッド・フィンチャー監督作「ゴーン・ガール」（"Gone Girl" : 2014）[BD]
突然の妻の失踪により、疑惑の目を向けられた夫が窮地に陥る様を描くサイコ・スリラー作品。
2012年7月5日、ミズーリの住宅街に住む夫妻ニックとエイミーは、結婚５年目の記念日を迎える。２人はNYで７年前に出会い、情熱的に惹かれ合い、結婚。その後、ニックの母が病に倒れた為に、ミズーリに移住してきたのだった。ニックとエイミーは共に元ライターだったが、不況の煽りを受け、失職。ニックは大学で文芸表現を教え、エイミーはアメイジング・エイミーというベストセラーシリーズで築いた財産が残っているものの、経済問題が火種となり、２人の仲は破綻寸前だった。
記念日の朝、ニックは双子の妹マーゴと共同経営するバーを訪れる。記念日には毎年、エイミーがニックにヒントを元に宝探しをさせるのが慣例となっていたが、ニックはその事に辟易していた。自宅の異常を伝える連絡を受け、ニックが帰宅すると、室内が荒らされ、エイミーの姿が消えていた。ニックの連絡で駆けつけた刑事ボニーは、屋内の様子を調べ、失踪事件と断定。翌日の記者会見で公開捜査を呼びかける事に決まる。自宅が犯行現場として捜査の対象となり、ニックはマーゴの家に身を寄せる。ボニーの元に、近隣に住み、エイミーの親友と称するノエルが現れる。ニックはエイミーの日中の行動や血液型を答えられず、また、家、車、バー、全てがエイミー名義である事をボニーは不審に思う。その後、エイミーの下着の引き出しからヒント１と記された封筒が見つかる。
6日、エイミーの両親が同席し、記者会見が開かれ、ボランティア捜索本部とウェブサイトの設置が伝えられる。ニックはボニーに、かつてエイミーと交際し、その後、つきまとって接近禁止命令を受けたデジーと、性的暴行容疑で逮捕されたトニーの存在を明かす。ニックはヒント１の示すのが大学のオフィスだと悟り、そこでヒント２が見つかる。ニックは次に示す場所が父の家だと確信するが、ボニーに知らせず、１人で向かう。室内でヒント３を見つけた直後に、ボニーと鉢合わせとなるが、しらを切る。しかし、ニックはヒント３が示す場所が分からなかった。
7日、近隣のボランティアが付近一帯を一斉に捜索し始める。ニックがノエルを知らない事、カードで高級品を買い漁っていた記録、またエイミーが銃を買おうとしていた証言から、ボニーはニックへの疑いを深める。メディアでは失踪事件の報道が加熱し、ニックが容疑者の様に批判され始める。ニックにはマーゴが心の支えだった。夜、ニックの元に教え子で愛人のアンディが押しかける。
8日、ニックはマーゴにアンディとの関係を知られ、詰られる。ボニーはエイミーが銃を求めた動機を探る。鑑識により、自宅で大量の血液を拭きとった跡が発見される。ニックは祈りの夜の集会で、真摯にエイミーの生還を訴えかけるが、ノエルがエイミーが妊娠していた事を暴露し、ニックは窮地に立たされる。犯行現場の偽装、カードの多額負債、エイミーの生命保険増額、そして検査の結果、妊娠が確定し、ボニーはエイミーが殺害されたと疑う。ニックは捜査への協力を拒む。ボニーは父親の家で燃えかかったエイミーの日記を発見し、ニックの犯意につながる証拠だと確信する。一方、ニックはヒント３の示すのがマーゴの家傍の薪小屋だと悟り、そこで贅沢品の数々を発見する。その中にエイミーからの記念日の贈り物があった。マーゴと共に開封すると、中にはパンチとジュディの人形が入っていた。ニックとマーゴはエイミーの真意を知る。5日、ニックはエイミーに離婚を切り出すつもりだった。しかし、それを察知したエイミーは巧みに事件へと誘導したのだった。
7月5日、エイミーの失踪計画は始まった。ニックを殺人犯で死刑にする為に、用意周到に準備された計画だった。ノエルと親友になったのも、ニックの悪評を吹聴したのも、カードを使い込んだのも、生命保険を増額させたのも全てエイミーの仕業だった。更には妊娠も巧妙に偽装し、自らの血液を抜いて床に撒き拭きとり、凶器とニックの犯意を裏付ける日記は敢えて見つかるようにした。世間が虐待の末に殺された憐れな妻と同情する様に。あとはニックによる殺害を偽装し、自殺するだけだった。結婚生活は互いに影響を及ぼし合い、互いに別人を演じさせるものだった。しかし、ニックは自分の都合で田舎に引っ越させ、更に浮気をした。エイミーにはそれが許せず、ニックに報いを受けさせたかった。エイミーは計画どおりに事が運んでいる様子をメディアで確認し、ほくそ笑む。
7月9日、ニックは妻殺しの夫の救世主の異名を持つ、辣腕弁護士ボルトに弁護を依頼する。依頼を快諾したボルトはまず、トミーとデジーに会って話を聴くように指示する。トミーはかつて、エイミーと交際し、ほどなくして支配し始めた事を嫌気し、会わない様にしたら、巧妙にレイプを偽装され、強姦容疑で訴えられた事を打ち明ける。デジーはニックを取り合わなかった。
7月10日、ボルトがニックの元へ訪れ、調査が開始される。ボルトはエイミーの捜索と同時に、アンディの動向を探る。ボルトはニックに全米ネットのシャロンの報道番組で、インタビューを受け、大衆の支持を取り付ける様に提案する。一方、エイミーは宿泊していたモーテルで、不良カップルに大金を所持している事を知られ、全て強奪されてしまう。エイミーの計画は崩れる。
7月12日、ニックは番組の収録に臨むが、直前になってアンディが機先を制し、会見を開き、ニックとの関係を暴露する。風当たりが強まるのは必至だったが、それでもニックはインタビューを受け、謙虚に自らの過ちを認め、エイミーへの愛を訴えかける。一方、エイミーは密かに手紙で連絡を取り合っていたデジーに連絡し、ニックによる虐待で殺されると訴え、同情を引く。デジーは自身が所有する別荘にエイミーを招き、一緒に出直す事を勧める。
翌日、番組がOAされるとニックに対する同情票が集まりだす。しかし、エイミーによる匿名を装った通報を受け、ボニーが薪小屋を捜索し、贅沢品を発見、ニックとマーゴは共犯の疑いで署に連行され、取り調べを受ける。その後、書斎の暖炉で凶器が押収され、２人は逮捕される。
7月26日、ニックとマーゴは保釈され、ボルトと共に公判準備に取り掛かる。一方、エイミーは次なる計画を開始する。
8月3日の朝、エイミーはデジーの監禁虐待とレイプを偽装し、監視カメラの記録に残す。その夜、エイミーはデジーを誘惑しSEXに持ち込むと、行為中に殺害する。
8月4日の朝、エイミーは血まみれで車を運転し、メディアの取り囲む中、自宅に戻る。ニックは怒りを押し殺して出迎える。病院で検査を受けたエイミーは、デジーに誘拐された後、監禁されていたと訴える。ボニーは日記とのつじつまが合わない事を指摘するが、エイミーははぐらかす。以後、捜査の主導権はFBIに移り、ボニーは関与できなくなる。エイミーはニックと共に帰宅する。エイミーの生還はミシシッピの奇跡として、メディアに大きく取り沙汰される。ニックは騒ぎが収まり次第、家を出て行くと告げるが、エイミーはファンを利用し、破滅させる様に仕向けると脅す。
8月9日、ニックとマーゴはボルト、ボニーと会合する。ボルト、ボニー共々、お手上げで、もはや事件から手を引かざるを得なかった。その頃には、事件を題材にした本の出版とテレビ化が決まり、更にバーのフランチャイズ化も決まっていた。
9月23日、夫妻は自宅で全米ネットの番組のエレンのインタビューを受ける事になっていた。ニックはこれまでの経緯を洗いざらいぶちまけるつもりでいた。ところが直前になり、エイミーは本当に妊娠している事を打ち明ける。かつてニックが、不妊治療の検査の為にクリニックに送った精子を利用したのだった。ニックは激昂し、エイミーを罵倒するが、エイミーは憎みあい、支配しあい、苦しめ合うのが結婚だと告げる。ニックは絶望しながらも、夫婦生活を継続するしかない事をマーゴに伝え、理解と協力を得ようとする。完璧な妻と謙虚な夫、理想の夫婦を演じるよりほか無かった。
本作も映画館で観てきて、二回目の鑑賞になるのだが、オチが分かっていてもドキドキさせられる。妻の失踪から始まり、夫に容疑がかかる流れから、いったい誰がこの結末を予想できようか。いわば序破急テイストで、二転三転するストーリーに翻弄されまくりの、悲しすぎる喜劇が繰り広げられるのである。不貞に興じる馬鹿夫に対する、修羅と化したサイコ妻による復讐譚として、エンタメ度も相当に高い。一にも二にもエイミー役のロザムンド・パイクの演技が素晴らしく、最高の美しさと最狂のサイコっぷりが惜しみなく発揮されている。普通の映画じゃちょっとお目にかかれない様なシーンが多く、中でもエイミーが瓶を使ってアナルファックされた痕跡を残そうとするシーンなんか、僕の想像力が追いつかなくて、最初は何をやっているのか理解できなかった。ますますこの女優のファンになってしまったわ。2014年のベストはこれかな。
