チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

インフェルノ

ダリオ・アルジェント監督作「インフェルノ」("Inferno" : 1980)[DVD]

錬金術士が著した古書「三母神」の秘密に迫る者達が、次々と不審な死を遂げていく様を描くスーパーナチュラル・ホラー作品。

4月。ニューヨークのアパートに暮らす詩人ローズは、アパートの隣に建つカザニアンが営む古書・古物店で、ロンドンの建築家ヴァレリが著した「三母神」を購入する。ローズは、ヴァレリがその著作の中で恐ろしい秘密を日記の形で書き残している事を知る。すなわち・・・

ヴァレリは三人の母達の依頼で、ローマ、ニューヨーク、フライブルクにそろぞれ家を建てたが、後に三人が災いの女神で世界を滅ぼそうとしている事を知った。ため息の母サスペリオルムが最年長でフライブルクに、最も美しい涙の母ラクリマルムがローマに、最も若く残虐な暗黒の母テネブラルムがニューヨークに住む事になった。彼女達は建てた家に忌まわしい秘密を隠した。彼女達は母と言っても生命を生み育てない。三姉妹として生まれた彼女達の家のある地域はやがて腐敗が進み、悪臭に満ちるだろう。それが彼女達の秘密に近づく第一の鍵となる。第二の鍵は彼女達の家の地下室に隠されており、そこに住む者の名と肖像がある。第三の鍵は君の靴底の下にある。・・・というものである。

ローズはローマに暮らす弟で楽理の学生のマークに、三母神についてしたためた手紙を投函すると、カザニアンの店を訪ね、三母神の真偽について尋ねる。足が不自由なカザニアンは、それが昔の錬金術士が書いた本だと伝える。ローズは本の記述どおり、アパートの付近で甘ったるい匂いがすると主張するが、カザニアンは菓子を作る匂いで昔からそうだと指摘する。

ローズは店を出ると、アパートと店の間に位置する入口から地下室へ忍び込む。ローズは廃材が乱雑に放置された内部を進むと、地面に空いた穴から水中に沈んだ階下にキーホルダーを落としてしまう。ローズはやむを得ず、水中に潜ってキーホルダーを探しに行くが、沈んだ遺品の中から腐乱死体が現れると、動転して、地上へ脱出する。程なく、ローズの侵入を知った何者かにより、穴が廃材で封鎖される。

マークは講義の受講中に、ローズからの手紙を開封して読み始めるが、不意に左前に座る猫を抱えた女が自分を凝視し、何かを呟いている事に気付く。マークは手紙を読み進められず、便箋に仕舞う。講義が終わると女は姿を消し、マークは上の空で机に手紙を置いたまま部屋を後にする。マークの隣に座っていた友人サラは手紙を見つけると、それを預かる事にする。

その夜、サラはタクシーで帰宅途中に手紙を読むと、その内容を確かめる為に古文書館に立ち寄る。その時、サラは甘ったるい匂いを自覚する。サラは三母神を手に取り、それが著者の友人と称するヴァレリが残した日記で、フィクションでは無い事を知る。著者はヴァレリが有名な建築家であり、錬金術士としても名声があったが、数年前に忽然と姿を消した事を明かし、日記が謎を解明するかも知れないと告げる。

ふとサラは何者かが自分を呼ぶ声を聞き、その直後に閉館時間となる。サラは密かに本を持ち出すと、地下の出口へ向かうが、その先の怪しげな部屋で、何かを鍋で煮詰める巨躯の人物に出口を尋ねる。その人物はサラが三母神を持っている事を知ると、突然襲いかかる。サラは本を投げ捨て、古文書館を脱出し、アパートに帰宅する。

サラは独りでいる事を恐れ、出会した同じアパートの住人カルロを部屋に招く。サラはマークに連絡し、手紙を読むべきだと伝えて部屋に呼ぶ。その直後、部屋の電気が落ちる。カルロはヒューズを確かめに行くが、不安を感じたサラが後を追うと、首をナイフで貫かれたカルロと遭遇する。そこにローブを纏った巨躯の人物が現れ、ナイフをサラの背中に突き刺して殺す。

程なく、サラのアパートに到着したマークは、手紙の破られた断片を見つけ、第三の鍵のくだりを確認する。その直後、マークはサラの死体を発見し、警察に通報する。アパートから出たマークは、猫を抱いた女が車に乗って通り過ぎるのを目撃する。

マークは帰宅すると、ローズに連絡し、手紙が読めなかった事を伝える。ローズはマークにニューヨークへ来る様に請うと、その途端、電話が途絶える。ローズは部屋に何者かが侵入するのを察知し、逃走する。その際、割れたドアノブで手に切り傷を負う。ローズが裏階段から脱出を図ると、部屋に侵入した何者かが三母神を回収する。ローズは追手から逃れ、アパート内の廃屋の一室へ逃れるが、そこで人間ではない何者かに襲われて殺される。

翌日、ローズのアパートにマークが到着する。マークは管理人から合鍵を受け取り、エレベータに乗ると、車椅子に乗った声を喪ったアーノルド教授と、彼を世話する看護師に遭遇する。

ローズの部屋に着くや否や、ローズの友人エリースがやってくる。エリースは伯爵の夫が仕事で旅行が多く、また自分は体が弱いために、五年近く一人暮らしをしている事を明かす。マークはローズが呼んでおいて留守なのは妙だと訝る。エリースはこのアパートは空き部屋が多く、前の持ち主は風変わりな人だった事、カザニアンの店でローズがよく珍しい本を買っていた事を伝える。執事のジョンが迎えに現れ、エリースは部屋に戻る。

その頃、閉店後のカザニアンの店に何者かが侵入し、三冊の三母神を盗み出す。気配を感じたカザニアンは、店内を見回り、本が盗まれた痕跡を見つける。一方、エリースはローズの部屋のドアノブの下で血痕を踏んでいた事に気付く。エリースはジョンを帰らせると、再びローズの部屋を訪ね、マークにローズが死神に取り憑かれた様に怯えていた事を伝える。エリースは三母神について言及すると、ローズがそれを本で読んで事実だと思い、この建物が三母神と関係があると考えていた事を明かす。エリースは最近、監視されている様な、また、誰かが傍にいる様な気がすると訴える。その時、エリースは突然何者かの笑い声を聞く。マークはドアノブの下に付着しているのが血痕だと察知すると、痕を辿って裏階段へ向かう。

マークは階段を下りた先の部屋から覗いた、通風口が発する光の明滅と風に当たると、酩酊状態となる。エリースはマークを心配して後を追うと、窓越しに向かいの建物でローブを纏った巨躯の人物にマークが引きずられていくのを目撃する。エリースはその人物に察知された事に気付くと、逃走を図り、部屋に戻ろうとするが、どの部屋も鍵が掛けられている事に気付き、最上階へ向かう。エリースはそこで無数の猫達に襲われた後、巨躯の人物にナイフで刺殺される。

命からがらアパートに戻ったマークは、そこに現れた管理人と看護師に心臓の不調を訴え、介抱される。その後、ローズの部屋で目を覚ましたマークは、エリースの部屋を訪ねるが不在だと知る。その頃、カザニアンが管理人を訪ね、アパートの猫達が店に侵入する事の苦情を訴え、通報して始末させると言い渡す。そこに訪れたマークは、カザニアンにローズについて尋ねるが、カザニアンは古本を売っただけだと答える。マークは第三の鍵について尋ねるが、カザニアンはそれには答えず、今夜が46年ぶりの皆既月食だと伝える。

その夜、カザニアンは店に忍び込んだ猫達を捕まえて、袋詰にして運び出すと、近所の池に沈めに行く。ところが、カザニアンは池から出ようとした矢先に転倒する。その時、皆既月食が起きると、夥しい鼠達が現れ、カザニアンに襲いかかる。池の傍でホットドックを売る店主が、カザニアンの悲鳴を聞いて駆けつけると、カザニアンの首を包丁で叩き切り、死体を鼠達に投げ渡す。

一方その頃、管理人とジョンはエリースの隠した貴金属を見つけ、せしめようと計略を巡らす。管理人はエリースが貴重品を持って家出したと、夫に連絡する様にジョンに命じる。管理人はこれからは自分達が贅沢をして暮らすのだとほくそ笑む。その直後、ジョンは電話をかけに行くが、何者かに殺される。管理人はジョンの身を案じて探しに行くが、そこでジョンの死体を発見すると、落下した蝋燭の火がカーテンに引火し、管理人は炎に包まれた後、転落死する。

マークはローズの部屋の床下に不可解な空間の存在を察知すると、床を抉じ開け、壁を掘り抜く。マークはそこにヴァレリが記した文書、すなわち・・・三母神、そなた達の地獄の火を迎え、我が心楽しむ・・・の一節を見つける。建物の延焼が始まる頃、マークは空間に潜り込み、階段を下ったその先でアーノルドが暮らす部屋に辿り着く。マークは部屋から看護師が去ったのを見計らい、アーノルドの元へ向かう。

アーノルドはかつてロンドンではヴァレリと名乗っていた事を明かすと、自分の建てた家が三母神の目と耳になり、この建物が自分の体になったと告げる。マークがローズの行方を問い質すと、アーノルドは暗黒の母に聞かれるとまずいから近寄るように促す。マークが接近すると、アーノルドに不意を突かれて注射を打たれた為、吸い出そうとする。一方、アーノルドは声帯マイクのコードが首に引っかかり窒息状態となる。マークはアーノルドを救おうとするが、アーノルドは自分が死んでも何も変わらず、彼女達が何も変えさせないと説き、自分は主人では無く、召使に過ぎないと告げる。マークが主人が誰か問い質すと、アーノルドはそれがじっとお前を待って、見張っていると告げる。

延焼が進み、屋内に煙が充満し始める。マークは逃げ込んだ先の禍々しい部屋で、看護師と遭遇する。看護師は昔の様に燃えて崩れ落ちるとつぶやく。マークは逃げる様に促すが、その途端、部屋のドアが閉じられる。看護師は、お前はもうおしまいだと告げ、暗黒の中で手を取られ、苦しみでは無く快感に浸れると説くと、その姿を鏡の中に移す。看護師は、ローズの様に自分を求めたマークを望み通り迎えてやると告げると、自分こそ三母神であり、三人は一体で別名を持っており、それが死神だと明かして、鏡を割って真の姿を表し、マークに襲いかかる。マークは燃え盛る建物から辛うじて脱出し、そこへ警察と消防隊が駆け付ける。死神は倒壊する建物の中で、炎に包まれて姿を消す。

 

 

ダリオ・アルジェント魔女三部作のサスペリアに続く二作目だが、連続性は無く、三部作と聞かなければ関連付けて見ることも無かったと思う。監督のこだわりはひしひしと伝わってくるのだが、いかに人を異常性を伴った形で残虐に殺すかに重きを置きすぎていて、ちょっと空回りしている様な気がする。主役のマークに焦点が当たるのが遅いせいで、途中まで誰が主役なのかよく分からず、没入できないのも残念に感じた。ラストの死神が鏡からデデーンと登場するシーンは、そんな風に出てくるのかよ!って具合に意外だったから、思わず笑ってしまった。アイデアは凄く面白いし、当時はこの演出がさぞかし効果的だったのだろうが、現代の視点で見るとどうしても怖くは見えないんだよなぁ。それでも僕はダリオ・アルジェントの作品が好きだ。三作目も当然見る予定。

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