チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

ノー・ワン・リヴズ

北村龍平監督作「ノー・ワン・リヴズ」("No One Lives" : 2012)[BD]

普通では無い愛の形を追求する謎の男が、強盗団にさらわれた自らの女を奪還すべく、惨劇に及ぶ様を描くバイオレンス・ホラー作品。

 

車でカーゴを牽引しながら移動中の男とベティは、人里離れた林道に差し掛かると、途中でモーテルを見つけ、宿泊する。その頃、地元警察とFBIは、半年前に行方不明になった少女エマを森で捜索しており、エマ自身が誘拐直後に木の幹に刻んだと思しき、自らの生存を伝えるメッセージが発見される。報道でその様子を見たベティは自分には無理だが彼女は運を開いたと呟く。男は運は常に開けるが、先は見えないと応える。男はベティの下腹部の傷痕にくちづけをすると、自分のせいだと謝る。ベティは男が何もかも変わっていると指摘すると、自分は普通になりたいと告げる。男は変わりたいがそれは無理だと説く。ベティは自分より彼女の方が好きなのか尋ねるが、男は自分に愛の差は無く、その形が違うのだと主張し、二人は愛しあう。

ホーグをリーダーとする強盗団(タマラ、フリン、デニー、イーサン)は、住人一家の留守を見計らって豪邸で家財を搬出する。そこへ予期せず一家が戻ってきた為、ホーグは事態を穏便に収拾しようと企てるが、短気で跳ね返りのフリンは一家を全員射殺する。ホーグは激昂し、フリンを咎めると、一同に計画の中止を命じ、警察が駆け付ける前にその場から逃走する。

男はベティと共にモーテルを出発すると、近所のレストランへ入る。そこに引き上げてきたホーグ達も訪れる。フリンは家財の収奪に失敗した事を仲間に責められ、ホーグは埋め合わせをする様にフリンに命じる。フリンは食事中の男とベティに絡み始める。男は引っ越しの途中だと認めると、自分達に構わぬ様に諭すが、フリンはそれに憤怒し、男を脅迫する。フリンがベティに手を出そうとすると、男はナイフを手に取ろうとするが、ベティはそれを制止する。そこにホーグが駆け付け、二人に詫びを告げると、フリンを連れ出し、強盗団は店を後にする。

その後、店を出た二人の車は夜道を走行中にフリンに襲撃される。フリンは二人を給油所に監禁すると、カーゴごと車を奪い、ホーグの屋敷に持ち帰る。フリンはホーグに埋め合わせだと説き、二人の処置をホーグの弟イーサンに任せ、金回りの良さそうな二人を脅す事で銀行口座の暗証を聞き出す目論見を伝える。ホーグはフリンの見境のない行動を戒める。

給油所に現れたイーサンは、ベティの首元にナイフを押し当て、男を脅迫する。ベティは自らの決心を伝え、男に許しを請うと、来世で会う希望を告げた後、自らナイフに首を押し付けて死ぬ。男は憤激し、手錠を外すと、イーサンを惨殺する。一方、フリンは男の車のトランクの中に囚われている少女を発見する。少女は逃亡を図るが、フリンは少女を捕らえ、ホーグの恋人タマラと共に屋敷の中に担ぎ込む。少女は男が危険だと訴え、すぐに逃げるべきだと主張する。ホーグはイーサンに連絡する様に娘アンバーに命じる。少女は男が警察から逃げている事を明かし、男が自分を探しにやって来て、一同が皆殺しにされると警告する。イーサンから返事が無い事が分かると、少女はイーサンが既に死んでいると指摘する。ホーグはタマラとデニーにイーサンを連れ帰る様に命じる。

給油所に着いたタマラとデニーはそこでイーサンとベティの死体を発見し、驚愕する。二人はイーサンの死体を車に担ぎ込む。アンバーは少女に同情し、自分の服を貸し与える。少女が着替える際、アンバーは少女の体の無数の傷痕を目の当たりにする。少女の素性を訝るアンバーは、全米の犯罪を扱うリアリティ番組で最近紹介されていた、オレゴン大学の大量殺人事件を思い出す。出版王の娘エマ達が開いたパーティで14人の学生が惨殺され、エマが行方不明になり、事件は未解決のままになっていたが、最近になり事件に進展があり、木の幹にメッセージを刻んだガラス片に付着した血液がエマの物と判明したのである。アンバーは番組の録画をホーグ達に見せ、一同は少女がエマだと確信する。家族は情報提供者に200万ドルの報奨金を懸けており、フリンはその話に目の色を変える。ホーグは男が事件の犯人だと悟り、フリンは強盗とは桁違いな儲け話だと意気込む。アンバーはエマに助ける事を約束するが、エマは反抗の意思を露わにする。

タマラとデニーがイーサンの死体を持ち帰る。ホーグはイーサンの死体を確認すると、男を探し出して復讐する事を誓う。フリンとデニーが死体を小屋に運び込んで、立ち去ると、死体の中に身を隠していた男が姿を現す。エマは一同がベティに手をかけた事を知ると、おしまいだと告げる。エマは逃走を企てるが、屋敷の外に男が潜んでいる事に気付き、翻意して留まる。

男はカーゴの中に隠した武器で装備を整える。一方、ホーグ達も迎え撃つ準備を整え、男の捜索に乗り出す。ホーグが屋敷から出た途端、ケーブル付きのボウガンが放たれ、森の中に引きずり込まれる。更に男は仕掛けた武器で屋敷に奇襲を仕掛け、デニーが深手を負う。一同は屋敷の中に逃げ込むが、その直後、彼らのバンが爆発させられる。エマは男が逃げ道を塞いでいるのだと説き、生き残る道は自分しかないとフリンに伝える。男は小屋の粉砕機にホーグを吊るし、拷問にかける。男は犯罪者としての格の違いを説くと、ホーグを粉砕し、肉塊にする。

エマは男に監禁されていた時の事を回想し、普通では無い男の愛の形に思いを巡らせる。エマはホーグが拷問の後に殺される見通しをアンバーに伝えると、自分は男の作品であり、愛されているから殺されない事を明かす。

タマラは失血で弱っていくデニーの対処に苦慮し、医者に見せるべきだと訴える。アンバーは納屋にジープがあると伝えるが、フリンはそれが長らく壊れていると説く。アンバーはこのままでは皆助からないと嘆くが、タマラはそれを戒める。アンバーはホーグ亡き後も母親面するタマラを詰り、二人は取っ組み合いの喧嘩を始める。フリンがそれを制止するやいなや、ドアから叩きつける音が聞こえてくる。一同はドアの前に吊るされた袋を見つけ、フリンがそれを蹴飛ばすと中からホーグの肉塊が飛び散る。デニーは今すぐに逃げないと自分の身が持たない事を察し、アンバーと共にジープを取りに行く事を決意する。

納屋に着くもジープのエンジンがかからない為に、デニーが修理を始める。程なく復旧したところに男が姿を現し、デニーの顔をエンジンに押し付け、重傷を負わせる。男は森に逃げ込んだアンバーを追跡する。フリンはその隙を見計らってジープで逃げるべきだとタマラに主張する。納屋に着くと、フリンはデニーが生きている事に気付き、息の根を止めようとするが、タマラはそれを制止し、ジープに運び込むと、一同はその場から走り去る。男はアンバーにナイフを投げ付け、致命傷を負わせる。男は発信機でエマが移動している事を感知すると、アンバーを放置して立ち去る。アンバーは助けを求めて森を脱したところでジープに撥ねられて死ぬ。

フリン達は病院の前にデニーを置き去りにして逃走する。一方、男は通りがかった若者グループの車に相乗りし、追跡する。フリン達はモーテルに身を寄せる。管理人はフリンの出したクレジットカードが、以前泊まった男から奪った物だと察知し、密かに警察に通報する。フリンはホーグ達の死に関与してない事にして、タマラとエマに口裏を合わせるように促す。フリンはエマを警察に引き渡さずに家族の元に直接連れ帰る事で、報奨金を釣り上げようと画策する。浴室でシャワー中のタマラはエマに密かに銃を手渡し、フリンを殺す様に促す。

エマは再び男に監禁されていた時の事を回想する。エマは男に普通では無い愛の形を見せられ、結局自らの意思で男の命を救ったのだった。

モーテルに保安官がやって来ると、フリンはエマに銃を突きつけながら、保安官に対応する。一方、男は浴室に忍び込むと、不意を突いてタマラの首を締め、殺そうとする。その時、保安官がフリンに身分証を求めた為、フリンは保安官を射殺し、エマはフリンを殺し損なう。男は咄嗟に浴室から脱出する。フリンは浴室で襲われた直後のタマラを発見すると、当惑して射殺してしまう。逃げ出したエマを追ってフリンが外に出た途端、男がパトカーでフリンを撥ねて昏倒させる。エマは男に発砲し、殺そうとするが、すぐに弾切れになり、近くの廃車置場に逃げ込む。

男はエマを追い詰めると一緒に来るように命じるが、エマは手に取った鉄パイプで男を殴りつける。そこにフリンが現れ、ショットガンで奇襲を仕掛けると、男はエマを庇って被弾する。男は防弾チョッキを身につけていた為に難を逃れ、フリンを格闘の末に退ける。フリンは再びショットガンを手にするが、発砲の直前にエマがフリンを殴って昏倒させる。エマは男を殺すのは自分だけだと説き、男にショットガンを突き付ける。男は自分とエマが特別な関係であり、ここで自分が死ぬのでは陳腐な結末だと説きながらも、引き金を引く様に促す。エマはその通りにするが、ショットガンの扱い方を知らなかった為に発砲できず、男はショットガンを奪う。男は自分を殺せないのだと諭すと、エマの下腹部に埋めた発信機を取り出し、自由にする時が来たと告げる。男はフリンとそこに駆け付けたモーテルの管理人を射殺すると、エマを残してその場から立ち去る。

その後、男は医者を装って病院に侵入すると、病室のデニーに「誰も生き残れない」と告げ、その首を切り裂いて殺す。程なくその病院にエマが救急車で搬送されてくると、報道陣が押し寄せ、地元の強盗団が誘拐犯だと報じられる。男はストレッチャー上のエマの手にそっと触れると、病院から姿を消す。

 

 

ちょっと珍しい日本人監督によるハリウッド作品だが、和製ホラーなノリを感じるでもなく、バイオレンス風味強めでちょっと悪趣味なグロ演出が特徴的。謎の男がサイコパスとは一味違う犯罪美学に基づき、大量殺人をやってのけては、若い女を自らの所有物の様に手元に置いて可愛がる、という作業を長らく続けているという事が仄めかされる。男はドラキュラの様な人智を超越した存在かと思ったのだが、どうやら普通の人間らしく、極めて理性的でありながら異常性を宿している不気味な存在である。その男を演じるのがルーク・エヴァンスで、その立ち振舞が醸し出す雰囲気から、今まで僕より年上だと思っていたのだが年下じゃないか。渋すぎる。死体の中からヌルっと出現するシーンはかなり印象的。死体をミンチにするシーンもなかなか強烈。何が強烈って音が(笑)

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