チラ裏レベルの人生記(仮)

自分が自分で無くなった時に、自分を知る為の唯一の手掛かりを綴る、極めて個人的な私信。チラ裏レベルの今日という日を忘れないように。6年目。

籠の中の乙女

ヨルゴス・ランティモス監督作「籠の中の乙女」("Κυνόδοντας" : 2009)[DVD]

塀に覆われた邸宅に住み、親が子供達に社会と完全に隔絶された状態での成長を強いる、ある一家の奇怪な暮らしぶりを描くドラマ作品。

 

父、母、成人を過ぎた息子、上の娘、下の娘からなるその家族は、郊外に位置する邸宅で暮らしている。敷地は高い塀で覆われ、外部と隔絶されており、広い庭とプールを備えている。子供達は生まれて以来、敷地から出た事が無く、日中は両親が独自に用意した教材で知識を得たり、プールで泳いだり、忍耐ゲーム(熱湯に指を入れる時間を競う、麻酔薬を吸って目覚める速さを競うなど)に興じるなどして、しどけなく過ごしている。子供達はゲームの順位に従って両親からシールを貰い、集めた枚数に応じて何らかの褒美を貰う。子供達はまた、塀の向こう側にもう一人の兄弟がいると教えられており、しばしば姿なき兄弟と張り合ったり、塀の向こうに食べ物を投げ込んだりするが、塀に近づきすぎると父から罰を与えられる。夜は全員が食卓を囲んで夕食を取る。父はその後で娯楽と称して、昔撮った自分達のホームビデオを見たり、外国の歌謡曲を独自の通訳を混じえて聞かせたりする。父は、子供が家を出るのは、危険と向き合う準備ができた合図たる、犬歯が抜けた時であり、また外界で身を守る為には車に乗って行かねばならず、運転を学ぶのは犬歯が生え替わった時だと、子供達に言い聞かせている。唯一車に乗って出かけられるのは、工場に幹部として勤務する父だけである為、家族は買い物リストを作るなどして、生活に必要な物を父に所望する。父は工場の守衛を勤めるクリスティーナを金で雇って、目隠しをさせて自宅に招き、息子のセックスの相手にしている。母はベッドの傍の戸棚の奥に、出先の父との連絡用に電話機を隠している。父は犬のレックスをトレーナーに預けているが、遅々として躾が進まない事に苛立ちを覚えている。子供達は皆、上空を通過するジェット機がオモチャだと考えており、それを手に入れる機会を窺っている。

ある時、クリスティーナは上の娘が欲しがっていた、光るカチューシャを譲る代わりに、自らの陰部を舐める様に求める。上の娘はそれに応じる。その後、上の娘は下の娘に、そのカチューシャを譲る代わりに、自らの肩を舐める様に求める。下の娘はそれに応じる。またある時、息子が褒美に貰ったジェット機の模型で遊んでいると、上の娘はそれを奪い取り、門扉の穴から敷地の外へ投げ捨てる。上の娘は更に息子の腕を包丁で斬りつける。上の娘は母に折檻される。下の娘は息子に、父に頼んで車で取ってきてもらう様に勧める。息子に頼まれた父は、飛行機を取ってくる。

ある時、庭に一匹の猫が姿を現す。娘達は恐れ慄く。息子は草刈りばさみを持ち出し、猫を滅多刺しにして殺す。母からその報せを受けた父は、自らの服を切り刻み、全身に血糊を塗りつけた状態で帰宅すると、子供達に塀の向こうの兄弟が最も危険で獰猛な動物、猫に食いちぎられて死んだ事を明かす。父はそれが無防備に外へ出た兄弟のミスであり、敷地から出なければ安全だと説くと、猫が家に侵入した際の備えと称して、母と子供達に四つん這いになって犬の様に吠える練習をさせる。その後、一家は礼服を着用し、塀の向こう側に花を投げ入れて、死んだ兄弟を弔う。その後、母は父に「妊娠」を提案する。父はそれを受け、子供達に母が双子と犬一匹を産む事を報せる。子供達は部屋や服やオモチャをシェアする必要に迫られる事に不満を漏らす。父は頼れる家族が増えると説き、子供達に拍手で母を称えさせる。

ある時、息子は潜水のゲームに勝利し、より大きなジェット機の模型を貰う。上の娘はそれを奪い取る。上の娘は下の娘に、自らの腹部を舐める様に促す。下の娘は進んでそれに応じる。またある時、父はプールに魚を放流する。次女は魚に気付くと、父に捕まえて欲しいと請う。父はそれに応じ、モリで魚を獲ってみせる。

クリスティーナは息子とのセックスを終えた後、上の娘にヘアジェルと引き換えに陰部を舐める様に求める。上の娘は以前貰ったカチューシャが光らなかった事への不満を述べ、嘘つきだと詰ると、クリスティーナのバッグを漁って取り出した二本のビデオテープを要求する。クリスティーナはそれを拒む。上の娘はカチューシャと交換で陰部を舐めさせた件を父に言いつけると脅し、クリスティーナは渋々ビデオテープを貸す。上の娘はクリスティーナの陰部を舐める。その夜、上の娘は密かに起き出し、居間でビデオを観る。そこへ物音を察知した父が起きてくる。上の娘は慌ててビデオを隠すと、怖くて眠れないのだと欺く。

それ以降、上の娘はその二本のビデオ(ロッキーとジョーズ)に強く影響され、絶えず劇中の言動を模倣する。間もなく、それは父の知るところとなり、上の娘はテープを父に差し出す。父はそのテープを自らの手にガムテープで巻きつけると、それで上の娘を殴りつけ、折檻する。上の娘はそれに懲りず、下の娘に自らをブルースと呼ぶ様に促す。その後、父はクリスティーナの暮らすアパートに押しかけると、その部屋に備え付けられていたビデオデッキでクリスティーナを殴り飛ばす。父はクリスティーナに対し、家族への悪行の報いと称して、子供を産んだら悪党に育つ様に願っていると吐き捨てる。

その夜、息子は下の娘に足をハンマーで殴られ、悲鳴を上げる。両親が駆け付けると、下の娘はハンマーを持った猫が窓から逃げていったと主張する。父は母に対し、躾が甘いからだと叱責すると、クリスティーナの代わりを探す必要性を説く。翌日、両親は裸の息子を目を瞑らせた状態で浴槽に座らせると、同じく裸の上の娘と下の娘の体を弄らせ、相手を決めさせる。それを受け、母は上の娘を別人の様に化粧させ、息子のセックスの相手をさせる。長女は日中に両親の寝室に忍び込み、電話機を見つけ出すと、無造作にダイヤルを回すが、繋がった相手の声に怯んで電話機を元に戻す。

程なく、両親の結婚記念日を迎える。一家は正装し、部屋を飾って祝う。上の娘は息子が弾くギターに合わせて、取り憑かれた様に踊る。母はそれを見て止めさせる。その夜、上の娘は家族が寝入っている隙に、洗面台でダンベルを使って犬歯を叩き折る。上の娘はそのまま門扉へ向かい、そこに停まった父の車のトランクの中に身を潜める。間もなく、目覚めた父は、血塗れの洗面台に犬歯を見つける。父は慌てて敷地の外へ出て、暗闇の中で上の娘を探す。母、息子、下の娘は門扉の前で犬の様に吠え続ける。

翌日、父は普段通り、車に乗って出かけると、工場の建屋の前で停車して中に入る。トランクは閉じたまま・・・

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